映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「ジャスティス・リーグ」「火花」「ギフテッド」「光」etc.

メル・ギブソン

ハクソー・リッジ

Hacksaw Ridge [Blu-ray]
ヴァージニア州の田舎町で育ったデズモンド・ドスは、幼少期の苦い体験から「汝、殺すなかれ」の教えを守ると固く心に誓っていた。やがて第二次世界大戦が激化すると、デズモンドは、衛生兵ならば自分も国に尽くせるとして、恋人ドロシーや父親の反対を押し切って陸軍に志願する。1945年、沖縄に到着するが、ハクソー・リッジと呼ばれる激戦地での過酷な闘いにさらされる…。

武器を持たずに人命救助に徹した実在のアメリカ兵、デズモンド・ドスの困難な戦いを描く人間ドラマ「ハクソー・リッジ」。ハクソーはのこぎり、リッジは崖の意味で、沖縄の激戦地の前田高地を指す。衛生兵のデズモンドは、地獄のような戦場で、包帯とモルヒネだけを手に断崖付近を駆け回り、たった一人で75名もの命を救った男だ。彼がこの奇跡のような行動に至るまでのドラマが非常に丁寧で説得力がある。幼少期の両親の不仲、第一次世界大戦の惨状を見た父親の心の傷、初々しい恋などで、デズモンドの人柄を手際よく描いていく。新兵訓練キャンプでは、武器を持たないことを、静かに、でもきっぱりと主張したため、上官や兵士たちの執拗ないじめに遭うが、それでもデズモンドの信念は揺るがない。ここまでの演出が的確でエモーショナルなため、いざ戦場に放り出されたときには、誰もがデズモンドの目線で戦争の現実をみつめられるようになっている。それにしても接近戦の戦闘描写の、なんと壮絶なことか。手足が吹き飛び、頭を打ちぬかれ、爆風と砂塵で息もできない臨場感。肉片と血しぶきが舞う地獄絵図は、監督メル・ギブソンの本領発揮といったところだ。戦闘シーンが生々しく残虐だからこそ、デズモンドが、このような場でも「殺さずに、救いたい」との信念を貫いた並外れた強さが際立つのだ。彼の勇気ある行動は、信仰心のためというのが本作のスタンスだが、仲間たちは、どんな困難に遭遇しても決して自らの信念を曲げないデズモンドの姿に、信仰以前の、人としての強さを見たに違いない。ただ、この舞台が日本であること、今、日本もアメリカも先行きが見えない岐路に立っていることを思うと、複雑な思いを禁じ得ない。デズモンドの立ち位置は、軍隊用語でいう良心的兵役拒否だが、自らを良心的協力者と呼んでいたそう。繊細さと大胆さを兼ね備えた男を、アンドリュー・ガーフィールドが真摯に演じて好演だ。近年、お騒がせのゴシップばかりが目立ったメル・ギブソンだったが、監督として「ブレイブハート」以来の秀作に仕上げて鮮やかな復活劇となった。圧倒的な暴力の中に、確かに存在した奇跡のような実話は、今までにないタイプの戦争映画に仕上がっている。
【80点】
(原題「HACKSAW RIDGE」)
(豪・米/メル・ギブソン監督/アンドリュー・ガーフィールド、サム・ワーシントン、テリーサ・パーマー、他)
(信念度:★★★★★)
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エクスペンダブルズ3 ワールドミッション

エクスペンダブルズ3 ワールドミッション [Blu-ray]
消耗品軍団が最強の敵と対峙する人気アクションシリーズ「エクスペンダブルズ3 ワールドミッション」。ついに世代交代か?!と思ったら、まだまだ健在のオヤジ祭りだった。

最強の傭兵軍団エクスペンダブルズを率いるバーニー・ロスは、CIAの作戦担当ドラマーから、かつてバーニーと共にエクスペンダブルズを結成した仲間で、現在は悪に染まった組織の大物・ストーンバンクスを捕獲せよという命令を受ける。世界各地で攻防を繰り返すが、ストーンバンクスの強大な力を思い知らされたバーニーは、もう決して若くはない仲間たちの身を案じ、チームを解散。新たに若いメンバーを募って任務を遂行しようとするが…。

回を重ねるごとに、アクション・スターが増え、それに比例するかのように、展開がユルくなるこのシリーズだが、今回は、原点回帰とばかりにアクション度が増している。かつての仲間で最強の敵と対峙することになるバーニーらは、NY、モスクワ、ブカレスト、メキシコ、アフリカなどワールドワイドに駆け回る。さらに、肉弾戦に銃撃戦、列車暴走、ビル爆破、軍用ヘリや戦車まで登場し、やりたい放題だ。今回新たに参戦した、ハリソン・フォードは、本人のアクションはほとんどないし、メル・ギブソンにウェズリー・スナイプスは、問題アリの私生活を思わせる暴れっぷり。若手には何と女性キャラもいるのだ。リアル? そんなものは知らないとばかりの、スタローンの“荒唐無稽”愛は計り知れない。物語は若手のメンバーとベテランメンバーが協力して戦うというテッパンの作り。だが肉体勝負のアクション俳優にとって、老いというのはかなりシリアスな問題なので、この点を見据えたストーリーは、なかなかシビアともいえるのだ。もちろん、コ難しいことを考える必要は、まったくない。オヤジ・パワー全開で突っ走る娯楽作、次は誰が加わるのか?と考えるだけで楽しくなる。例によって、見終わって何も残らないが、それこそが消耗品のイイところだろう。
【60点】
(原題「EXPENDABLES3」)
(アメリカ/パトリック・ヒューズ監督/シルベスター・スタローン、ハリソン・フォード、メル・ギブソン、他)
(ますます豪華キャスト度:★★★★☆)
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エクスペンダブルズ3 ワールドミッション@ぴあ映画生活

キック・オーバー

キック・オーバー [Blu-ray]キック・オーバー [Blu-ray]
大金を隠し持つ男が無法地帯の刑務所内でサバイバルする「キック・オーバー」。カオスに満ち溢れたエル・プエブリートそのものが主役。

アメリカでマフィアから大金を強奪した“ドライバー”は、国境を越えてメキシコへと逃亡を図るが失敗。逮捕され投獄されたのは、メキシコ側にある史上最悪の刑務所“エル・プエブリート”だった。そこは金さえあれば、酒、麻薬、銃、女と、何でも手に入る無法地帯。ドライバーは、そこで世慣れた少年キッドと出会い、情報を収集し、ハビという人物が刑務所内を支配していることを知る。凶悪な囚人だけでなく、悪徳所長、汚職警官までもがドライバーの命を狙うが、目的は彼がマフィアから奪い、隠している大金だった。ドライバーは何とかしてこの刑務所から脱獄を図ろうとするのだが…。

近頃、映画以外の私生活でゴシップ欄を賑わせてばかりだったアクション・スターのメル・ギブソン。彼の出演映画35本目の記念作が、こんなB級映画とは少々寂しい気がする。だが、出世作の「マッドマックス」も公開当初はまったく話題にならなかったことを考えると、B級映画はギブソンの主戦場と考えていいかもしれない。本作で面白いのはその舞台設定だ。小さな町を意味するエル・プエブリートは、かつて実在し、メキシコ一ひどい刑務所として知られた凶悪犯専用刑務所。厳しい監視体制が敷かれているはいるが、そこには、鉄格子の代わりに、大通りやレストランや店があり、家族が暮らす住宅がある。女性や子供もいて、恋人たちが結婚し出産し、年寄りが死んでいく。独特のコミュニティーなのだ。元軍人で腕っぷしが強いドライバーは、そこでは金以外では、暴力よりむしろ、情報やスキル、人間関係がすべてと判断し、さまざまな手で立ち回る。この物語は、アクションや勧善懲悪ではなく、特殊な環境で“ビジネスライクに”生き抜くサバイバル劇なのである。権力者のハビは実は病気で、希少な臓器を必要としているという設定のため、グロテスクなシーンがあるかと思えば、主人公がアメリカでマフィアのボスと対峙する際に、大スターのクリント・イーストウッドの名前を利用するなど、とぼけたユーモアも。ドライバーが関与したもともとの犯罪や、大金強奪とその在り処の説明が著しく不足するなど、脚本は極めて大雑把だが、生命力あふれるエル・プエブリートの活写や、主人公の世渡など、テンポの良さのおかげで意外にも退屈しない。映画のラストに主人公がつぶやく原題の意味と、悪に寄り添うラフでタフな主人公を演じるメル・ギブソンのやんちゃぶりにも納得してしまうのだ。
【50点】
(原題「HOW I SPENT MY SUMMER VACATION」)
(イギリス/エイドリアン・グランバーグ監督/メル・ギブソン、ピーター・ストーメア、ダニエル・ヒメネス・カチョ、他)
(テンポの良さ度:★★★★☆)
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キック・オーバー@ぴあ映画生活

復讐捜査線

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英国の名作TVドラマをリメイクしたアクション・サスペンス。なかなかの内容なのに、マズい邦題のせいで損をしている。

ボストン警察のクレイブンは、最愛の娘エマを目の前で射殺される。最初は殺人課の刑事であるクレイブンを狙っての犯行だと思われたが、実は軍需企業に勤務していたエマを狙った犯罪だった。父親のクレイブンは、その会社で政府ぐるみの犯罪行為が行われていて、それを告発しようとした娘を狙った犯行だと突き止める…。

資料によると、オリジナルは英BBCが1985年に製作したTVシリーズで、英国テレビドラマ史上最高傑作との呼び声も高い「刑事ロニー・クレイブン」だそう。このTV版は未見だが、オリジナルを手がけたマーティン・キャンベル監督のセルフ・リメイクによる本作は、なるほど骨太なサスペンスだ。核エネルギーを扱う軍需企業と政治権力が結託して行う犯罪行為を告発する内容は、後半はやや雑になるものの、恋愛要素を潔く省いた非常に硬派な作りである。愛する家族を殺され復讐に燃える刑事というのは、犯罪サスペンスのひとつのパターンだが、本作で目を引くのは、政府側の人間でプロの揉み消し屋兼殺し屋のジェドバーグの存在だ。謎めいた彼には、独特のスタイルがあり、主人公と対立する立場にいながらひそかにサポートしたりする。時に人生を達観したような哲学的な台詞と、胸に秘めた正義感で男気を感じさせるジェドバーグを演じるレイ・ウィンストンがすばらしい。元ボクサーという異色の経歴を持つこの俳優は、ハイテンションな役が多いが、本作では珍しく寡黙な役どころ。物静かだが有無を言わせぬ迫力を醸し出すのがさすがだ。放射能による被爆という事実が発覚してからは、にわかに現実味を帯びてくる気がするのは原発事故が今も収束しない日本ならではのリアリティで、戦慄が走る。あぁ、それなのに、このB級臭プンプンの邦題は何なんだ!中身は渋いサスペンスで、無念の死をとげた娘を思う父の愛が胸を打つ佳作だということを知ってほしい。
【70点】
(原題「EDGE OF DARKNESS」)
(米・英/マーティン・キャンベル監督/メル・ギブソン、レイ・ウィンストン、ダニー・ヒューストン、他)
(硬派度:★★★★☆)
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復讐捜査線@ぴあ映画生活

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アポカリプト

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深遠な文明批判の映画かと思いきや、かなりアクション度数が高い作品。古代マヤ語、無名俳優、凄惨な暴力描写と個性を出しつつ、監督自らのアクション映画の経験をも活かすしたたかさが見える。ラストのやや読めるオチも上手い設定だった。困るのは疾走する主人公がサッカー選手のロナウジーニョに見えること。
【75点】
(原題「APOCALYPTO」)
(アメリカ/メル・ギブソン監督/ルディ・ヤングブラッド、ダリア・ヘルナンデス、ジョナサン・ブリューワー、他)
(スピード感度:★★★★☆)

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サイン

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◆プチレビュー◆
思わせぶりなこのサインだがその正体は…。巨額の費用をかけた、とうもろこしのCM映画か?!

妻の事故死以来、信仰心を失った元牧師グラハムのとうもろこし畑に、突如として奇怪なミステリー・サークルが現れる。同時に、家族の周りで、そして全世界で不可思議な出来事が起こり始めた。人間とは違うと思われる不気味な生物を目撃したグラハムは、家族を守るために、立ち上がるが…。

こういうのを確信犯というんじゃないのか?!絶対秘密主義の脚本、全世界試写会禁止、映画公開まではノベライズ本も発行できない。このように、期待感を煽り、映画前半もジワジワと出し惜しみしながら、衝撃の結末で、“あらら…なんじゃこりゃ”というオチをつける。観終わった観客のブーイングまで計算してかますハッタリは超一流で、やはりこの目で謎を確かめねば!と思わせる。判っててやってるに違いない!

信仰を失った元牧師が体験する超常現象の数々。なぜ、彼と家族の周りに出現したのか。世界の終わりなのか。神の啓示なのか。絶望の予感に脅かされるグラハムとその家族。子供達は予知能力に目覚め、ついに家は何者かに侵略されてしまう。物事には偶然はなく、全て予兆があるというのが、シャマラン監督の世界感。

SF、スリラー、恐怖映画…といった方向で宣伝がなされたため、誤解しがちだが、実は一人の男が家族の絆と愛で、信仰を取り戻すお話だ。かといって、特に作品に深みがあるわけではない。むしろ恐怖の中でのユーモアを上手く利用しながら、観客をひっぱっていく、非常に良くできたB級映画と言える。話の筋やディティールは二流映画のテイストなのに、超一流の俳優の起用でバランスをとっているのもいつものお約束だ。

何でもギブソンは私生活では敬虔なカトリック教徒らしい。このギブソンの弟を演じるのは、何やら顔つきがメルに似ていなくもないホアキン・フェニックス。夭折のアイドルだった兄リバーと、イマイチ暗い妹サマーに挟まれたホアキンは、良質な作品に出演しながら、個性的な演技派俳優としての道をひた進む。本作では、元マイナーリーグでならした打撃の名手である弟メリル役で、ラストに重要な役目を担う。でも、ホアキンが劇中で本当に担っているのは“笑い”の部分。内向的な兄を支え、恐怖に対峙しながら、かなり笑わせてくれる。アルミ箔の帽子や、水着ビデオ、家族で行う最後の晩餐などでは、彼がマジメになればなるほど可笑しい。

監督は天才的なコケオドシの腕で観客を楽しませ、自分の中の宗教観を披露していく。エンターテイメントの術は認めるものの、なぜにド田舎に住む主人公が、個人的な信仰心を取り戻すのに、世界規模、宇宙規模の話にする必要があったのか?!と疑問。別に“そんなもの”に遭遇しなくても、偶然と必然を実感できるチャンスはいくらでもあるんじゃないのか?神サマだって昨今、そんなにヒマじゃないと思うけど。なんてことない物事をここまで思わせぶりに表現できる監督の腕は、どーよ?!

笑撃の…、いや衝撃の瞬間に、“それ”の姿がスクリーンに映った途端、私はスベッた。見えない“何か”を描くことで映画界の寵児となったシャマランの、あからさまな映像。逆光といえども、何ともおマヌケな姿を見せられて力が抜ける。当然、集中力も欠如し、私の頭の中には、「?」と「!」と「@@」だけが残った。全ての謎が解けた代償に味わう脱力感。あぁ、どうしてくれる。

□2002年 アメリカ映画 原題「Signs」
□監督:M.ナイト・シャマラン
□出演:メル・ギブソン、ホアキン・フェニックス、他

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ワンス・アンド・フォーエバー

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◆プチレビュー◆
ベトナム戦争を美化するなどもってのほか。こういう作品は許せない!

1965年、米軍のハル・ムーア中佐率いる部隊は戦地イア・ドラン渓谷で北ベトナム軍に包囲される。それは泥沼化するベトナム戦争の始まりを告げる激戦だった。UPIの戦場カメラマン、ジョー・ギャロウェイは米軍に同行し、地獄のような戦いをカメラに収めるが、そこで敵軍のベトナム兵の思いをも知ることに。戦場で戦う男たちがいる一方で、残された家族も試練と戦っていた…。

21世紀最初の悲劇である9.11テロ事件。この大事件以来、アメリカ映画は確実に様変わりした。強いアメリカ、正義の国家が“悪”をやっつけるという構図が求められ、数多くの戦争映画が製作されたが、テロ以後の風潮のどさくさに紛れて、よりにもよってベトナム戦争を美化するとは…。

この映画の背景となる時代は1965年。つまりベトナム戦争が始まってまもない頃だというところがミソ。まだ、兵士も軍も国家も戦う意義を熱く感じていた時代なので、登場人物に、後のベトナム戦争ものに見られるような反戦気質や迷いはない。実際に400名の新兵を率いて戦ったハル・ムーア中佐と戦場カメラマンのジョー・ギャロウェイの共著によるノンフィクションはベストセラーとなり、兵士たちの人間性と家族愛を全面に打ち出した物語は、原作同様、映画館でも涙をさそうかもしれない。

兵士たちは頑張りました。敵もたいしたもんでした。留守を守る家族もりっぱでした。みんなみんなエラかった。この八方美人的展開はいったいナンだ?!完全に視点がぼやけてしまっては、せっかくリアルに描いた激しい戦闘シーンも活きてこない。

さらに、過酷な戦闘とは裏腹に、戦争と人間の狂気がまったく描かれていないのはなぜ?仕方がないので、兵士の家族の不安や、愛する人を失った悲しみに力点を置き、更には敵兵の家族までも範疇に入れて描く。「戦争と家族」を平行して描くやり方は、従来の戦争映画と一線を画すもので、その意欲は評価しよう。でもラストのセリフは、「国のために戦ったんじゃない。戦友たちのために戦ったのだ。」とくる。ならば、家族愛ではなく、兵士の友情を描くべきだろう。

メル・ギブソンの背後に見える“家族と国家と正義のために”というメッセージは、建国当時の時代ならとにかく、泥沼のベトナム戦争が背景だと、どうにもあざとい。敵も味方も家族を思う気持ちは同じと簡単に言うが、ベトナム戦争の最大の誤算はアジア人の価値観を理解できなかったことにある。ほとんど一方的にやってきて、結果的に大量虐殺と大規模生態系破壊を行って去っていったアメリカ人から「両国が共有した痛み」と言われても、ベトナム人が納得できるだろうか?

そんな矛盾だらけの物語の中でも印象的なエピソードと言えるのが、中佐の妻ジュリーが戦死した兵士の訃報を家族のもとに届ける場面。毎日、数が増える電報に、自分の夫のものがあるのではと怯えつつ、部下の命を預かって戦う中佐の妻である重圧と、夫の身を案じる不安で押しつぶされそうになりながら、死の配達を続ける姿には、さすがに目頭が熱くなった。

第一、第二次世界大戦、東西冷戦と、世界規模の戦争では負けなしのアメリカが、唯一黒星を喫したのがベトナム戦争。莫大な犠牲を伴って、その上敗北を味わった戦いを「意味のない戦争だったのでは?」と回顧するのが辛すぎるのは判るが、それでもその思いと折り合いをつけて「ディア・ハンター」や「地獄の黙示録」「プラトーン」などの力作を作ってきたではないか。それなのに、21世紀に突入して“負けはしたけどリッパに闘いました”じゃ、あまりにも非建設的だ。残念でならない。

□2002年 アメリカ映画 原題「We Were Soldiers」
□監督:ランダル・ウォレス
□出演:メル・ギブソン、バリー・ペッパー、マデリーン・ストウ、他

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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