映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
毎日のレビューは分かりやすく簡潔な寸評で、週1本の長文映画レビューでは作品をディープに掘り下げます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる公開作品 ◎
「ファミリー・ツリー」「ダーク・シャドウ」「サニー」

ユアン・マクレガー

人生はビギナーズ

BeginnersBeginners
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人生に臆病な主人公が知る“始まり”を描く秀作「人生はビギナーズ」。愛犬アーサーが超がつくほど最高!!

38歳独身のアートディレクターのオリヴァーは、臆病な性格のため恋人もおらず、“友人”は仕事と犬だけだ。そんなオリヴァーの父で末期ガンの宣告を受けたハルが、突如「自分はゲイだ」とカミングアウトする。病に侵されながらも残りの人生を楽しむ父の姿を見て、次第にオリヴァーも心を開き始める。やがて訪れる父の最期。傷心のオリヴァーは、風変わりな女性アナと知り合い恋に落ちるのだが…。

文学の世界に私小説というものがある。ならば私映画というものがあったっていい。これは監督のマイク・ミルズが自らの体験を映画にした、とびきり素敵なプライベート・ストーリーだ。父のカミングアウトによって主人公の心にさまざまな葛藤が生まれる。「75歳で余命僅かの父に若い男の恋人?!」「両親は本当に愛し合っていたのか?」「ふたりの間に生まれた自分って?!」。だが自分らしく生きると決めた父の潔さは、何よりもオリヴァーの背中を押してくれた。実体験に基づいているだけに、ディテールが非常にリアル。それでいて絶妙なユーモアが漂う。父と暮らした日々、恋人アナとの現在、父やオリヴァー自身の過去という異なった時制を行き来しながら物語ることで、肉親の死という重すぎる事実と喪失感を少しずつ軽くしていく演出も上手かった。優柔不断で臆病者のオリヴァーを演じるユアン・マクレガーが適役だが、何といっても父ハルを温かく魅力的に演じきった名優クリストファー・プラマーが素晴らしい。マイク・ミルズ監督初のオリジナル脚本によるストーリーは、主人公が勇気を持って殻を破り一歩踏み出す瞬間を辛抱強く見守っている。その優しさを一番よく知っているのは、オリヴァーの愛犬でジャックラッセル・テリアのアーサーだ。アーサーのウィットに富んだ心の声が字幕というのがこれまた良い。さらにさらに!最高なのはこの映画のラストである。“The End”や“Continue”ではなく、表れる文字は原題でもある“Beginners”。これを見た瞬間、この映画は宝物になった。
【75点】
(原題「BEGINNERS」)
(アメリカ/マイク・ミルズ監督/ユアン・マクレガー、クリストファー・プラマー、メラニー・ロラン、他)
(人生讃歌度:★★★★★)
チケットぴあ

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人生はビギナーズ@ぴあ映画生活

映画レビュー「ゴーストライター」

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◆プチレビュー◆
重層的な仕掛けと丁寧な演技で魅せる政治ミステリー。主人公に名前がないのが象徴的だ。 【70点】

 元英国首相アダム・ラングの自叙伝執筆を、破格の報酬で依頼されたゴーストライターは、ラングが滞在している米国のとある孤島へと向かう。取材を重ねると、やがてラング自身の過去に秘密があることに気付くのだが…。

 ゴーストライターとは、他人に成り代わって、文章や作品を代作する人のことを言う。主人公は最初から今回の仕事には乗り気ではないのだが、そのイヤな予感は見事にあたる。曇天の孤島、門外不出の原稿、前任者の不審な死。主人公はラングに初めて会う時、自分をこう紹介する。「僕はあなたのゴーストです」。幽霊なら最初からいないも同然。特別な能力も武器もない彼は無力なゴーストだが、幽霊だからこそ多くの謎に音もなく忍び寄れる。

 小さな手がかりや偶然から、前任者の足跡を追い、やがて驚愕の事実にたどり着くプロセスが実に緻密だ。ラングの戦争犯罪から、CIAとの結託、自叙伝の原稿に埋め込まれた真実を知る頃には、観客は、ピアーズ・ブロスナン演じるラングの顔が、元英国首相トニー・ブレアに見えてくる。国家規模の“身売り”の話に、英国の凄腕スパイ、ジェームズ・ボンド役でならしたブロスナンをキャスティングするなど、ポランスキーもヒネリが効いたことをする。

 英国系の俳優たちの抑えた演技がこの映画の魅力のひとつだ。ゴースト役のユアン・マクレガーの頼りない風情といい、トム・ウィルキンソンの怪しげな気配といい、役者の使い方が上手い。共通するのは、どこか居心地の悪そうな表情だ。パリ生まれのユダヤ系ポーランド人であるポランスキーは、米、英、仏と各国で映画を撮った異邦人。孤独なまなざしは常に作品ににじみ出る。

 ゴーストとは、誰の、いや、何のことだったのか。過去の秘密が染み込んだ原稿が宙に舞うとき、指導者や国家さえ操る不気味な影が見える。本作の主人公には名前がない。ゴーストは普遍的で、代わりはいくらでもいるのだ。大掛かりなCGや派手なアクションは何一つないが、小さな伏線が最後には見事に実を結ぶ、ミステリー映画の王道のような作品で、映画ファンにはたまらない。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)ミステリアス度:★★★★☆

□2010年 仏・独・英合作映画  原題「THE GHOST WRITER」
□監督:ロマン・ポランスキー
□出演:ユアン・マクレガー、ピアース・ブロスナン、キム・キャトラル、他

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ゴーストライター@ぴあ映画生活

ブローン・アパート

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社会派ドラマなのか、ミステリーなのか、ラブストーリーなのか。軸がはっきりしないので、せっかくの魅力的なキャストが生きてこない残念な作品だ。ロンドンに住む若い母親は、警察の爆弾処理班として働く夫と4歳になる息子と共に、平穏に暮らしていた。決して裕福ではく、夫の仕事は心配がつきものだが、それでも良き母、良き妻として過ごしていた彼女が、ふとしたことから知り合った新聞記者のジャスパーと関係を持ってしまう。ある日、ジャスパーとの情事の最中に、サッカー観戦に出かけた夫と坊やが爆破テロ事件に巻き込まれて命を落とすという悲劇が起こってしまう…。

テロの犠牲者の顔写真を巨大なバルーンにプリントして街の上空に浮かべるオブジェのような映像は、決して消えない悲劇の記憶を際立たせ、思わずハッとするセンスを感じる演出だ。だが、映画はテロの悲劇を浮き彫りにすることには明らかに失敗して焦点のボヤけた印象しか残さない。物語は、国際テロリストの大物であるオサマ・ビンラディンへの手紙という形で語られる。この語り口が、愛人との情事に溺れた若い母親の罪の意識とマッチせず、不自然なのだ。しかも、テロへの静かな抗議を描く社会派ドラマなのかと思っていたら、巨大サッカースタジアムでの爆破テロには、実は夫の上司も関わるある秘密があって…というサスペンス風な展開に。本当に愛していたのかどうかも分からないジャスパーとの関係もはっきりしないまま、ヒロインは街をさまよい、テロにつながる人物の家族に接触するがその目的も不明。これでは、見ている側はストーリーに集中できない。そもそも、主人公が欲望のままに新聞記者と関係を持つという設定が必要とも思えないのだ。ミシェル・ウィリアムズとユアン・マクレガーという実力派の共演なのに、これではあまりに惜しい。ヒロインには名前がなく、ただ“若い母親”というだけ。命を落とすことはなくてもテロに巻き込まれる可能性は、誰にでもあるということか。実際に地下鉄での爆破テロが起こったロンドンを舞台にしたことでリアリズムは感じられる。音楽は梅林茂が担当。遠い日に坊やと一緒に海で遊んだ幸せな記憶が繰り返し描かれ、浜辺を走る母子のかげろうのような姿が記憶に残った。
【40点】
(原題「Incendiary」)
(イギリス/シャロン・マグアイア監督/ミシェル・ウィリアムズ、ユアン・マクレガー、マシュー・マクファディン、他)
(共感度:★☆☆☆☆)


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ブローン・アパート@ぴあ映画生活

ヤギと男と男と壁と

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マジですか?!思わず確認したくなるのは、米軍に実在したという超能力部隊のお話。米ソにはスーパーナチュラルな力を軍事力として利用するため、研究を重ねてきた歴史があることは知られているが、こんなにも根が明るくノホホンとされては、戦争そのものがバカバカしくみえてくる。2003年、地方紙の記者であるボブは、離婚の痛手から立ち直るべく、スクープを求めてイラク戦争の取材に赴く。偶然クウェートで知り合ったリンという男が、以前取材した、米軍の超能力特殊部隊“新地球軍”所属の軍人と知り、イラクに行くというリンに同行することに。道中、リンは、80年代に設立された超能力部隊の驚くべき歴史を語り始める…。

コメディ・タッチの娯楽作だが、原作はジョン・ロンスンのノンフィクション「実録・アメリカ超能力部隊」。れっきとした実話がベースなのだが、いったいどこまでが本気…、いや、本当なのかと首をかしげたくなる。なにしろ、壁を突き抜け、見つめるだけでヤギを絶命させるパワーを持つ超能力プロジェクトの名前は“ジェダイ計画”だ。この話の語り部が「スター・ウォーズ」で若きオビ・ワン・ケノービーを演じたユアン・マクレガーなのだから、これだけで掴みは成功といえよう。超能力の師であるジェフ・ブリッジスや、隊員のジョージ・クルーニー、ケビン・スペイシーという並み居るオスカー俳優が、楽しげに演じているおかげで、物語はリズミカルかつ軽妙なテイストで進む。彼らの必殺技は、キラキラ眼力。そもそも、この力、超能力というより、ベトナム戦争時のカルチャー・ムーブメントである、ラブ・アンド・ピースのヒッピー文化に近いのだ。自称エスパーのリンのやることはどこまでもアホらしく効力などないのだが、たまにはまぐれ当たりも。どうだい、信じてみたくなっただろ?と言わんばかりのクルーニーの眼力が、ボブの人生を少しだけ優しい方向へと向かわせる。地球上から争いごとをなくすための超能力部隊の奮闘がコミカルかつアイロイニカルに描かれるが、結局は、最新テクノロジーも怪しげな超能力も、すべては戦争に使われてしまうという、シニカルなメッセージも透けて見えた。演技達者がズラリと揃うが、なぜか女っけはなし。ちょっと不思議である。
【60点】
(原題「THE MEN WHO STARE AT GOATS」)
(アメリカ・イギリス/グラント・ヘスロヴ監督/ジョージ・クルーニー、ジェフ・ブリッジス、ユアン・マクレガー、他)
(実践的度:★☆☆☆☆)


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ヤギと男と男と壁と@ぴあ映画生活

ウディ・アレンの夢と犯罪

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ロンドン三部作の最終章は、ささやかな野心と皮肉な運命を描く人間ドラマ。ビジネス界での成功を夢見る兄イアンと、ギャンブル好きの弟テリーは、小型クルーザーを購入し、カサンドラズ・ドリーム号と名付ける。イアンは恋人相手に分不相応な見栄をはりながらも、新生活を夢見ていた。だがギャンブルで大負けしたテリーが巨額の借金を背負ってしまう。兄弟は大金持ちの伯父ハワードに助けを求めるが、彼からとんでもない“頼みごと”を持ちかけられ…。

カサンドラズ・ドリームは、テリーがドッグレースで大勝した時のゲンのいい犬の名前。だがカサンドラとは実は、ギリシャ神話に登場する王女で、神から未来を予言する力を授かるが彼女の予言は誰からも信じてもらえないという悲劇の預言者の名前なのだ。このことから兄弟の運命は見えてくる。彼らはどこにでもいる労働者階級の人間で、決して不幸なわけではないのに現在の生活レベルに漠然とした不満がある。さしたる努力もせず、才能もなく、なんとなく“金持ちになりたい、華やかな暮らしがしたい”と望む小心者だ。伯父からの頼みとはなんと殺人。悩み抜いた二人の行動とその顛末は、人生に楽な一発逆転の機などなく、悪事には高い代償が伴うことを教えるものだ。アレンは、ロンドンを舞台にした作品群では、上流階級に食い込もうとする人間の野心をテーマにしているが、本作は「タロットカード殺人事件」の明るさはなく「マッチポイント」の男女の危うさとも無縁のシリアスな悲劇。だからこそ、ラストがもっと効果的であるために、小市民の出来心や悪事など珍しくもないとばかりの会話で潔く終わった方が鮮やかだったと思う。ともあれ兄弟が乗る船の下には、罪悪感という海が広がっていたというわけだ。北欧の巨匠ベルイマンに心酔しているだけあって「人生において確実なのは死ぬことだけ」と言い切るアレンは、コメディであれシリアスであれ、いつも悲観的である。
【65点】
(原題「CASSANDRA'S DREAM」)
(イギリス/ウディ・アレン監督/ユアン・マクレガー、コリン・ファレル、他)
(皮肉度:★★★★☆)

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フィリップ、きみを愛してる!

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主人公は「愛してる」の一言のために懲役167年をくらった男。これが実話だというから恐れ入るが、何ともロマンチックな犯罪者だ。警官のスティーヴンは大事故で命を失いかけたのを機に、自分らしく生きようと決意。警官を辞め、ゲイであることをカミングアウトし、詐欺師人生に突入する。保険金詐欺で投獄された刑務所で心優しいフィリップと出会い一目惚れ。彼を喜ばせたい一心で出所後も詐欺を繰り返すが、フィリップに嘘がばれてしまう…。

ブランドものの服や小物、優雅な邸宅。ゲイ・ライフとはかくもお金がかかるものなのか!と驚くが、それ以上の驚きは、IQ169の天才の破天荒な生き方だ。好きな人の好みの自分を演出し、その人が喜ぶ顔が見たいと思うのは、男も女も同じだが、スティーヴンの場合、そのやり方がハンパじゃない。ひとつの嘘のためにさらにつく嘘が雪だるま式にふくらんで、詐欺を繰り返しては発覚、投獄されては脱獄する。ホントにこの人、頭がいいの?と疑いたくなるのは、これだけの頭脳ならまっとうに働けば、豊かな人生がおくれるはずだからだ。思うにスティーヴンは、大事故と同じほどのスリリングで刺激的な人生を求めていた違いない。

主人公のやってることは明らかに犯罪なのに、演じるジム・キャリーの怪演に近い熱演にいつしか説得されてしまい、これは崇高な純愛だと頷いてしまった自分がいた。スティーヴンが、騙されたと知ってショックを受けたフィリップに会おうとする努力は涙ぐましいばかり。命懸けで愛を伝えるスティーヴンの生命が終わろうとする、まさにその時、ビックリ仰天の事実が分かる。アメリカというところは、騙す話も騙される話も、あきれるほどドラマチックだ。ジム・キャリーの恋のお相手フィリップを演じるのは子犬のように可愛い表情がキュンとくるユアン・マクレガー。刑務所の中だというのに、ラブラブな恋愛モードに浸る二人が微笑ましい。ちなみに本物のスティーヴンは現在1日23時間の監視下で服役中。お気の毒というか自業自得というか。もちろん物語には誇張があるだろうが、なんだかこの話、あまりに映画的でどうにも憎めない。
【60点】
(原題「I LOVE YOU PHILLIP MORISS」)
(フランス/グレン・フィカーラ、ジョン・レクア監督/ジム・キャリー、ユアン・マクレガー、他)
(純愛度:★★★★★)


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フィリップ、きみを愛してる!@ぴあ映画生活

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彼が二度愛したS

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好漢ヒュー・ジャックマンが悪役を演じるのは新鮮だが、内容は平凡な官能サスペンス。孤独な会計士ジョナサンは偶然知り合ったハンサムな弁護士ワイアットに導かれハイソな秘密クラブにのめり込むことになる。だが謎めいた美女Sを愛したことから運命が狂いはじめる。中盤から主人公がハメられたのが分かる展開だが、あまりに先が読めてサスペンスとしての魅力が薄い。だが、官能シーンはエロティックというよりスタイリッシュに描かれているので上品さがある。謎解きやどんでん返しの驚きは少ないが、意外にもセンスある邦題と、都会の孤独をすくい取ったムードは良かった。
【55点】
(原題「DECEPTION」)
(アメリカ/マーセル・ランジェネッガー監督/ヒュー・ジャックマン、ユアン・マクレガー、ミシェル・ウィリアムズ、他)
(エロティック度:★★★☆☆)

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アレックス・ライダー

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英国発のジュニア版007。諜報部にスカウトされた少年の活躍を描く物語だ。妙なユルさが英国らしいが、スパイだった叔父が本人が知らないうちにスパイ教育を施していたという設定が巧み。主演のアレックス・ベティファーは、ファンが増えそうなイケメン君だが、劇中に披露する怪しげな日本語に苦笑した。豪華でツボをはずした脇役が確信犯的でこれまた笑える。シリーズ化するらしいが、それにしては印象が地味か。
【50点】
(原題「Stormbreaker」)
(独・米・英/ジェフリー・サックス監督/アレックス・ベティファー、ユアン・マクレガー、ミッキー・ローク、他)
(美青年度:★★★★☆)

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ビッグ・フィッシュ

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◆プチレビュー◆
バートン監督得意の毒気は薄いが、作品の質が落ちたわけではないので、バートン映画初心者にもおすすめ。

自分の人生をおとぎ話のように語る父親エドワード。子供の頃は楽しかったその話も大人になった息子ウィルには、真実を話そうとしない父親への反発の材料でしかなかった。そんな父が病に倒れ、ウィルは久しぶりに帰郷することになる。相変わらずのホラ話にうんざりするウィルだったが、やがてそのウソの中に真実が隠されていることに気付きはじめる…。

独特の世界観で多くのファンを持つティム・バートン監督。オモチャ箱のような映像の中に、しっかりと毒を含ませてダークな世界を作り上げる。特に原案・製作まで務めた「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」はアニメーター出身の彼の持ち味が十分に活かされていて、大人のファンが多い。

そんなバートンの新作は、従来ほどの毒気はなく、ファンタジーの美しさが前面に出た心あたたまる愛の物語だ。ホラ話で自分の人生を脚色する父親と、堅実な性格で父に反発する息子。映画は父エドワードが語る過去の冒険物語と、現在の物語の2本立てで進行する。おとぎ話の部分の壮大で美しい映像は絶品。厳しい現実との対比で、さらに絶妙に観客の感動を誘う仕掛けになっている。

結婚指輪で巨大な魚を釣った話、洞窟に住む巨人の話、恐ろしい魔女との出会い。どれもワクワクするような“お話”だが、その中にひそむ父の真実の姿を感じはじめるのは、若き日の母と出会ってから。何事にも屈せず前向きに生きていく父の姿は、それが例えホラ話でも胸を打つ。体育会系の容姿のユアン・マクレガーが、楽観的で若きエドワードを演じて魅力的だ。一面の水仙で画面が埋め尽くされるシーンは、特に忘れがたく、バートンならではのぬくもりのある映像で、まさに映画マジックだ。

父の話はウソばかりではないことを知ったとき、父がいかに皆から愛されているか、母との愛情がいかに深いかを観客は理解するだろう。アルバート・フィニーとジェシカ・ラングの名優二人がバスタブにつかって愛情を語るシーンは、この映画随一の名場面だ。そもそも映画というのは想像力が発端で生まれるようなもの。この作品は、人生には“物語”が必要なのだということを教えてくれる。生きてきた年数が違っていても、物語を共有することで気持ちを受け継ぐことができるのだ。

□2003年 アメリカ映画  原題「BIG FISH」
□監督:ティム・バートン
□出演:ユアン・マクレガー、アルバート・フィニー、ジェシカ・ラング、他

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ムーラン・ルージュ

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◆プチレビュー◆
トム・クルーズ夫人という肩書きも利用しつくして見事独り立ち。頑張れ、ニコール!

19世紀末のパリ。有名ナイトクラブ、ムーラン・ルージュのスターにして高級娼婦のサティーンと貧しい戯曲作家クリスチャン。二人は出会ってたちまち恋に落ちる。しかし、投資家の公爵も彼女を手に入れようと画策。二人の行く手には暗雲が…。

この映画の前半はれっきとしたコメディなのだ。それもかなり笑えるスクリューボールコメディ調。これが悲恋だということを一瞬忘れてしまいそうなほどだ。話そのものは何の新鮮味もない古典的なものだが、その物語に目も眩むような絢爛豪華な映像とポップな音楽がドッキングしている。宝石箱をひっくり返したような映画とはこのことだろうか。ヘンテコにしてドハデな悲恋ものミュージカルだ。

圧倒的な映像の美しさに目を奪われる。禁断の酒アブサンの幻想そのままに、俗っぽく猥雑、それでいて魅惑的な世界に引き込まれいく。また、ミュージカルといっても完全に時代考証無視で、現代のポップスが続々と登場。意外なアレンジで観客を飽きさせない。踊りはショー形式の群舞が中心。また、サティーンが空中ブランコに乗りながら歌う「ダイヤモンドは女性の親友」は、伝説のスター、マリリン・モンローが「紳士は金髪がお好き」の中で歌った曲で、アメリカ映画の大女優への敬意が見て取れる。

あまりにも前半がハジケているので、後半の悲恋部分が少々退屈に感じるのは気のせいか。障害や犠牲は悲劇へ進むお約束だが、カビ臭いストーリーだからこそ、ゴージャスな映像が際立ったのかもしれない。

冒頭で20世紀フォックス社のロゴマークをおしゃれなアレンジで登場させる演出は必見。華やかに開く真紅の緞帳は、期待感を高めると同時に、この物語が全てひとときの夢の世界、舞台の上での虚構であることを告げている。フレンチカンカンは世紀末の快楽の象徴で、エロティックな狂乱の中に純粋な恋が咲く。高級娼婦と貧乏作家の悲恋を歌と踊りで綴った本作は、今までにないタイプの、異色の悲恋コメディミュージカルだ。

□2001年 アメリカ映画 原題「Moulin Rouge!」
□監督:バズ・ラーマン
□出演:ニコール・キッドマン、ユアン・マクレガー、他

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
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新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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