映画通信シネマッシモ


映画通信シネマッシモは、2018年4月をもって、終了しました。

ブログ終了にあたり、たくさんのあたたかいコメントをお寄せいただき、本当にありがとうございました。
皆さまの映画ライフに少しでもお役に立てたならこれほど嬉しいことはありません。
長い間のご愛顧に心より感謝いたします。

ライアン・ゴズリング

ブレードランナー 2049

Blade Runner 2049 (Original Motion Picture Soundtrack)
2049年、カリフォルニア。従順なレプリカント(人造人間)が労働力として製造され、人間社会と危うい共存関係を保っていた。旧型の違法レプリカントを追うLA市警のブレードランナー・Kは、レプリカント開発に力を注ぐウォレスの巨大な陰謀を知る。たどり着いたのは、かつて優秀なブレードランナーとして活躍しながら、ある女性レプリカントと共に忽然と姿を消し、30年間行方不明になっていたデッカードだった。だが、ウォレス社の陰謀の闇の鍵を握るデッカードには、命懸けで守り続けてきた秘密があった…。

レプリカントと捜査官ブレードランナーの戦いを描いたSF映画の金字塔「ブレードランナー」の35年ぶりの続編「ブレードランナー 2049」。ブレードランナーのKが目撃するのは、アイデンティティーを求めてさ迷うレプリカントの新たな進化だ。そこには、ある奇跡の存在があり、Kに、人間とレプリカントとの違いや、人間らしさとは何かという疑問を投げかけることになる。抑圧された職場で働き、貧困地区で、虐げられ、蔑まれながら生きるKというキャラクターが抱える深い孤独は、例えようもないほど悲しい。ハードボイルドな物語に流れる通奏低音は、我々は何のために生まれてきたのか?という根源的なテーマなのだ。

前作があまりに伝説的な作品なので、続編への不安は誰もが持つことだろうが、その心配は無用と断言する。今や巨匠の風格さえ漂うドゥニ・ヴィルヌーヴ監督は、前作に敬意を払いつつ、進化・拡張したストーリーを作り上げた。レプリカントが心を持つという設定は、感情を持つ人工知能という形ですでに現実になっている。本作の素晴らしいところは、“作りもの”であるレプリカントの心や記憶が人間よりも人間らしいものだとしたら、“本物”である人間の人間らしさとはいったい何かという問いに収束していく点だ。Kとジョイの独創的なラブシーンや、守り抜いた秘密へとたどり着いたデッカードの表情を見れば、その答えの一つは愛だと思っても差し支えないだろう。一流のキャスト・スタッフ、哲学的で深淵なメッセージ、しびれるほど圧倒的な映像美と、驚愕と恍惚がせめぎあう2時間43分だ。文句無しの傑作である。
【95点】
(原題「BLADE RUNNER 2049」)
(アメリカ/ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督/ライアン・ゴズリング、ハリソン・フォード、アナ・デ・アルマス、他)
(映像美度:★★★★★)
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ラ・ラ・ランド

【早期購入特典あり】ラ・ラ・ランド コレクターズ・エディション スチールブック仕様(初回限定生産)(2枚組)(オリジナルチケットホルダー付) [Blu-ray]
夢追い人が集まる街ロサンゼルス。女優の卵のミアは映画スタジオのカフェで働きながらオーディションを受けているが落とされてばかり。一方、場末のバーで、ピアノを弾いているセバスチャンは、いつか自分の店を持ち、思う存分大好きなジャズを演奏したいと願っていた。そんな二人が偶然出会い恋に落ちる。互いの夢を応援し合いながら一緒に暮らし始めるが、セバスチャンが生活のために加入したバンドが売れたことから、二人はすれ違いはじめ、溝が出来ていく…。

女優の卵と売れないピアニストの恋の顛末を華麗な歌とダンスで描くミュージカル「ラ・ラ・ランド」。往年のハリウッド製ミュージカルへのオマージュをふんだんに取り入れながら、いつの時代も変わらない、夢を追う若者たちの揺れ動く心情を組み合わせる。一見クラシックなスタイルに思えるが、「セッション」で緊張感あふれる音楽ドラマを作り上げた俊英デイミアン・チャゼル監督は、そこに21世紀ならではの息吹を吹き込んだ。仕事へのこだわりと妥協、キャリアや野心とが、恋愛の幸福や不安と共にせめぎ合う物語は、非常に現代的である。ストーリーはとてもシンプルで、いわゆるボーイ・ミーツ・ガールもの。同時に、映画や芸能界の舞台裏を描くバックステージものでもある。アーティストとして自分の夢を追うべきか、あるいは現実と妥協すべきか。仕事の浮き沈みが同じタイミングならば、ミアとセバスチャンがすれ違うこともなかっただろうに。運命のいたずらに翻弄される二人の姿に、ふと「シェルブールの雨傘」が重なって見えたりもする。出会いから恋の喜びを歌い上げる前半は、ダイナミックでエモーショナルな魅力にあふれ、流麗な映像に目を奪われる。だが圧巻はやはりラストの15分だ。人生の“もしも…”が怒涛の歌とダンスで表現され、感動と興奮は頂点に達するだろう。これこそ観る者を幸せにする映像マジックと呼ぶべき映画の力だ。主演のエマ・ストーンとライアン・ゴズリングの見事な演技と、歌と踊りにも魅了される。懐かしいのに新しい、新たなミュージカル映画の傑作の誕生だ。
【95点】
(原題「LA LA LAND」)
(アメリカ/デイミアン・チャゼル監督/ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン、J・K・シモンズ、他)
(映像マジック度:★★★★★)
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ナイスガイズ!

ナイスガイズ! [Blu-ray]
1970年代のロサンゼルス。13歳の娘ホリーを抱えるシングルファーザーで、酒浸りの情けない私立探偵マーチは、口より先に手が出る、腕っ節の強い示談屋ヒーリーに強引に相棒にされ、失踪した少女を探すことに。簡単な事件のはずだったが、二人は、ある映画に関する連続不審死事件にたどり着き、さらには、巨大な利権をめぐる、国家規模の陰謀へと巻き込まれてしまう。マーチとヒーリーは、次々に現れる殺し屋の襲撃をかわしながら、事件の真相に迫っていくが…。

ハチャメチャな探偵コンビが陰謀に巻き込まれるコメディタッチのバディ・ムービー「ナイスガイズ!」。70年代が舞台ということで、設定といい音楽といい、激しくレトロなのだが、ヘタレと乱暴者のコンビは、アクションもギャグもノリノリ(悪ノリと呼ぶべきか)で、70年代の懐かしさを醸し出すいきのいい活劇に仕上がった。前半はとにかく笑わせ、後半はまったく別モノに見えた事件がからみあう、ちょっとユルめのハードボイルドへ。ポルノ女優の怪死、排ガス規制訴訟、政府高官へとつながり、巨大な陰謀へと発展していく。監督のシェーン・ブラックは、監督作は多くはないが、脚本家としてはベテランの人だ。「リーサル・ウェポン」の脚本家で、凸凹コンビが活躍するオフビートなサスペンスアクションの「キスキス、バンバン」の監督と聞けば、バディ・ムービーが上手いのも納得である。情けないシングルファーザーの探偵を演じるライアン・ゴズリングは、今、一番旬な俳優だが、本作ではコメディ・センスも見せてくれた。対して、役作りか、はたまた素なのかは不明だが、そのでっぷりと膨張した体形が“くまモン”化しているオスカー俳優のラッセル・クロウもまた、乱暴者の無免許探偵を巧みに演じている。だが本作で一番魅力的なのは、マーチの娘ホリーをキュートに演じるアンガリー・ライスだろう。度胸があって機転がきく13歳は、車の運転までこなしながら、時には頼りない父親の相棒となり、時には母親のような妻のような包容力さえ感じさせる。そんなしっかりもののホリーの存在が、ダメダメの負け犬の大人たちに、人間として一番大切な優しさを教えるのだ。ちなみにアンガリー・ライスは「スパイダーマン」の新作にも出演予定。要注目のニューヒロインである。
【60点】
(原題「THE NICE GUYS」)
(アメリカ/シェーン・ブラック監督/ラッセル・クロウ、ライアン・ゴズリング、アンガーリー・ライス、他)
(レトロ度:★★★★☆)
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マネー・ショート 華麗なる大逆転

マネー・ショート 華麗なる大逆転 ブルーレイ+DVD セット [Blu-ray]
2005年のアメリカ。変わり者の金融トレーダーのマイケルは、サブプライム・ローンが数年以内に債務不履行に陥る可能性がある事に気付くが、ウォール街では一笑を買ってしまう。そこで「クレジット・デフォルト・スワップ」という金融取引に目をつけ、新たな戦略で出し抜いてやろうと考える。同じ頃、マイケルの動きを察知した、銀行家ジャレットはヘッジファンドマネージャーのマークに連絡を取り、伝説の銀行家ベンらもまた、経済破綻の到来を予測し、ウォール街を出し抜こうと図っていた…。

世界金融危機の到来を予期した金融界の4人のアウトサイダーたちの物語を描く「マネー・ショート 華麗なる大逆転」。リーマン・ショックの裏側を描くこの映画、経済破綻という結果が分かっているのに、めっぽう面白い。専門的な経済用語が飛び交うが、そこは「俺たち」シリーズを手掛けたコメディー畑のアダム・マッケイ監督、テンポよく、飽きさせない演出で、難しいコトをやさしく紐解いてくれるので、安心してほしい。金融危機を予想した数少ない投資家やトレーダーたちが、どう動いたか。金融界のモラルのなさやそのハチャメチャぶりがいかにひどいか。我々庶民にとっては、飛び交う金額の桁が大きすぎて、実感できないのが難点だが、アメリカの狂乱が世界中に与える大打撃は理解できる。この映画の副題は“華麗なる大逆転”だが、物語に痛快さはなく、むしろ漂うのは悲哀と憂鬱だ。劇中で、ブラピ演じる伝説の銀行家ベンが、経済破綻に賭けて勝利を確実にした若者たちに言う。「単純に喜ぶな。これでアメリカの無数の庶民が家と職を失い、破産するんだぞ」。自国の悲劇と崩壊を予測し、それに賭けて勝利しても、そのマネーゲームの後味はすこぶる苦いのだ。クリスチャン・ベールをはじめ、俳優陣は揃って好演。中でも、コメディアンだが最近ではめっきり演技派になったスティーブ・カレルが演じる神経症のトレーダーの人間性を深く掘り下げているのは、金融界のアンモラルを何とか正そうとしているかのようだ。アカデミー賞では脚色賞を見事に受賞。物語の随所で、ドラマと関係のないスターたち(実名でカメオ出演)が難解な経済用語や仕組みを観客に向かって比喩で説明するというエンタテインメント風の演出が、ユニークかつ効果的だった。
【85点】
(原題「THE BIG SHORT」)
(アメリカ/アダム・マッケイ監督/クリスチャン・ベール、ブラッド・ピット、ライアン・ゴズリング、他)
(ビター度:★★★★☆)
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マネー・ショート 華麗なる大逆転@ぴあ映画生活

オンリー・ゴッド

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賛否両論を巻き起こしたバイオレンス満載の復讐劇「オンリー・ゴッド」。話は不可解だが、強烈な色彩の映像に目が釘付けになる。

ジュリアンは、アメリカを追われ、タイのバンコクでボクシングジムを経営しながら裏で麻薬密売に手を染めている。ある日、兄のビリーが娼婦を殺した罪で、惨殺される。アメリカで巨大な犯罪組織を牛耳る母親のクリスタルは、溺愛するビリーの死を知って駆けつけ、怒りのあまりジュリアンに復讐を命じる。仲間とともに 復讐に動きだしたジュリアンだったが、彼らの前に、元警官で今はバンコクの裏社会を取り仕切っている謎の男チャンが立ちはだかる…。

「ドライヴ」のニコラス・ウィンディング・レフン監督の新作のテーマは神との対峙。だがその語り口は異様にして不可解だ。兄ビリーは娼婦をなぶり殺しにした罪で処刑される。ジュリアンは兄のしたことを知りそれもやむなしと考えている。兄弟の母親で凶暴なクリスタルはジュリアンを支配下におき復讐を厳命する。一方で、元警官のチャンは、背中に刀を隠し持ち、悪を成敗する獰猛な“神”なのだ。こんな異様なキャラクターばかりで、誰にも感情移入できないまま、ストーリーは進んでいく。毒々しい夜のネオンのように極彩色の映像が延々と続いて、見ているこちらの感覚はいつしか麻痺してしまうのだ。しかも、静かな狂気を漂わせるジュリアンが、壮絶な復讐劇を繰り広げるのかと思ったら、相手のチャンの前でさっぱり歯がたたず、返り討ちにもならない始末。いったいこれを復讐と呼んでいいものなのかどうか首をかしげる。チャンは荒ぶる神で、神の前では人間など何の力もないということなのだと納得するしかない。じっくりと描く拷問、突如歌う神、刀で一刀両断にするバイオレンス。何から何まで理解不能だが、それを凌駕してしまうのが、赤と青の強烈な色彩の映像の力だ。抑えた演技で熱演するライアン・ゴズリングは「ドライヴ」に続いてレフン監督とのコンビだが、宗教とも神話ともつかないストーリーの中で、無気力に漂うかのような浮遊感を醸し出している。
【50点】
(原題「ONLY GOD FORGIVES」)
(デンマーク・仏/ニコラス・ウィンディング・レフン監督/ライアン・ゴズリング、クリスティン・スコット・トーマス、ヴィタヤ・パンスリンガム、他)
(バイオレンス度:★★★★☆)
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オンリー・ゴッド@ぴあ映画生活

ドライヴ

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LAを舞台にしたハード・ボイルドタッチのクライム・サスペンス「ドライヴ」。名なしの主人公のロマンチシズムが泣ける。

昼間は映画のスタントマンと車の修理工、夜は強盗の逃走を請け負うプロの逃がし屋“ドライバー”。寡黙な彼には、家族もおらず、過去も謎のままだ。そんな男が、同じアパートに住む人妻アイリーンに思いを寄せる。彼女もまた、自分と息子に優しくしてくれるドライバーに好意を寄せ、二人は親しくなるのだが、アイリーンの服役中の夫スタンダードが戻ってくる。いったんは身を引く決意をしたドライバーだったが、マフィアの罠にはまったスタンダードを助け、トラブルに巻き込まれてしまう…。

寡黙で、感情はめったに見せずに機械のように仕事をこなす。そんなクールな主人公は静のイメージである。だからこそ、突如として爆発する暴力に思わず身がすくむのは、人妻アイリーンだけでなく、観客も同じだ。どこか70年代のハードボイルドを思わせるストーリーは、主人公が、自分を拾ってくれた恩人の復讐と、生涯一度の恋である愛する女性のために闘いを挑み、逃れられない運命に巻き込まれるフィルム・ノワールだ。劇中には、容赦ないバイオレンス描写が盛り込まれているが、作品の残り香は、むしろラブストーリーのイメージに近い。爪楊枝をくわえた名なしのドライバーを演じるライアン・ゴズリングの静と動の演技が見応えたっぷりだ。脇に、アルバート・ブルックスやロン・パールマンというくせ者俳優を配したのも渋い。ニコラス・ウィンディング・レフン監督は、日本での知名度こそまだ高くないが、注目株であることは間違いない。何しろ、運転免許も持たずにカーアクションを撮り、デンマーク出身なのに、夜のLAをこんなにも魅力的に切り取ってみせる才人だ。ハードボイルドに優しさは欠かせない。この監督はそんな映画の鉄則を十分に理解している。今後が楽しみな監督の一人だ。
【70点】
(原題「DRIVE」)
(アメリカ/ニコラス・ウィンディング・レフン監督/ライアン・ゴズリング、キャリー・マリガン、アルバート・ブルックス、他)
(クール度:★★★★☆)
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ドライヴ@ぴあ映画生活

スーパー・チューズデー 正義を売った日

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アメリカの大統領選の駆引きと人間模様を描く「スーパー・チューズデー 正義を売った日」。腹黒さと信頼が入り乱れる、硬派な政治ドラマだ。

スティーヴン・マイヤーズは、マイク・モリス知事の大統領選挙キャンペーンチームで広報官をつとめる若き野心家だ。戦略担当として手腕を発揮する彼は、今後の選挙戦において重要な拠点となるオハイオ州での予備選討論会の後、対立陣営から密会を持ちかけられる。一方で、同じチームの女性インターンのモリーと親しくなる。この二つの出来事が、やがて選挙戦を揺るがす事態へ発展し、スティーヴン、モリス、ベテランの参謀ポールらを予想不可能な運命へと巻き込んでいく…。

ハリウッドのトップスターのジョージ・クルーニーが、監督・出演・制作を務めた、スリリングな政治サスペンスだ。スーパー・チューズデーとは、民主、共和両党の候補者を選ぶ各州の選挙が集中する日のこと。アメリカのみならず、世界中が注目する米国大統領選では、スキャンダルやネガティヴ・キャンペーン、有力者の取り込みなど、情報操作や心理戦は当たり前。そんな駆け引きと裏切りが横行する中では、正義や忠誠心の意味は刻々と変化し、原型をとどめない。主人公は、大統領候補のクルーニーではなく、モリス陣営のナンバー2を演じるライアン・ゴズリングだ。政治に理想を求めていた主人公が、非情ともいえる策略家になっていく様と、その中でみせる彼なりの正義。一度はワナにはまり絶対絶命になるものの、モリスの決定的なスキャンダルを握ってからのゴズリングの変貌ぶりは見事だ。物語は、権謀術数を操らなければ生き残れない権力の構図を浮き彫りにする。終盤、モリスとスティーヴンが暗がりで対話するシークエンスは、武器を持たない殺し合いにも似て緊張感たっぷりだ。政策や人格などは二の次。保身のためならどんな手も使う政治の世界を、スリルたっぷりの娯楽作で批判してみせるクルーニーの手腕が冴える。フィリップ・シーモア・ホフマンやポール・ジアマッティら、脇を固めるくせ者俳優の使い方も上手い。原作は、実際に選挙キャンペーンで働いていたボー・ウィリモンによる戯曲「ファラガット・ノース」。アメリカの政治とは、裏切りやスキャンダルも含めて“ショー”なのだ。主役になるには清濁併せ持つタフな精神力が必要ということだろう。
【70点】
(原題「THE IDES OF MARCH」)
(アメリカ/ジョージ・クルーニー監督/ライアン・ゴズリング、ジョージ・クルーニー、フィリップ・シーモア・ホフマン、他)
(情報操作度:★★★★☆)
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スーパー・チューズデー 〜正義を売った日〜@ぴあ映画生活

ラブ・アゲイン

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冴えない中年男の自分改造計画が思いがけない波紋を呼ぶ「ラブ・アゲイン」。ウェルメイドなラブ・コメディだが、意外な人間関係で“世間は狭い”と判らせる。

真面目を絵に描いたような中年男キャルは、ある日突然、妻のエミリーから離婚を切り出される。仕事も家庭も順調だと思っていたキャルは、妻の浮気に大ショック。一人寂しく地元のバーで飲んでいたところを、プレイボーイのジェイコブと知り合う。キャルは、妻への未練を断ち切るべく、若いジェイコブからファッションや女性との接し方などを教えてもらい、新しい人生を歩もうとするが…。

妻の浮気といえば夫には大事件だが、この主人公の怒りは、妻や浮気相手への怒りよりも、情けない自分に矛先が向く。それはキャルが、波風とは無縁だったぬるま湯のような人生を、心のどこかで反省している証拠だ。だが、高校時代の恋人だった妻しか愛したことがない彼には、女性への免疫力はない代わりに、誰よりも深く妻を愛する純情がある。そんなキャルが、ジェイコブの導きで次々に女性にモテまくり、おしゃれな男に変貌するのは、男性側には都合がよすぎる展開なのだが、そうそう世の中が甘くないことは、マリサ・トメイ演じるセクシーな女性教師との“縁”で、しっかりクギをさして、判らせるという仕掛けだ。個人的に、キャルとエミリーの仲よりも気になったのは、キャルの13歳の息子ロビーと、ベビー・シッターのジェシカとの歳の差カップル(?)の恋の行方。ジェシカは実はキャルに恋していたりするのだが、登場人物が一同に会して、ドタバタ劇がなんとか収まった後に、ジェシカがキャルに小さなプレゼントをする場面が、なかなかニクい。とことん男性目線の物語だが、将来のイケダンへの“教育”も抜かりはないのだ。アメリカでは大人気のコメディ俳優スティーブ・カレルの魅力ありきの作品だが、おいしいところを持って行ったのは、どんな役もひょうひょうとした軽さで演じる隠れ演技派ライアン・ゴズリング。この俳優が今、超売れっ子である理由がよく判る。
【60点】
(原題「CRAZY STUPID LOVE」)
(アメリカ/グレン・フィカーラ、ジョン・レクア監督/スティーヴ・カレル、ライアン・ゴズリング、ジュリアン・ムーア、他)
(ハートウォーミング度:★★★★☆)
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ラブ・アゲイン@ぴあ映画生活

ブルーバレンタイン

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壊れかけた夫婦の、やるせない現在と幸福な過去の対比がリリカルで美しい。痛ましいストーリーなのに、不思議とみずみずしさが記憶に残る。

努力して看護師の資格を取り病院で忙しく働く妻シンディと、ビールを飲みながら壁にペンキを塗るような怠惰な仕事に甘んじている夫ディーンは、結婚7年目を迎えた夫婦。娘と3人で表面上は平穏に暮らしている二人は、互いに相手に対して不満を募せているが、そのことを話し合おうとすると決まって喧嘩になる。そんな時、不注意から愛犬を死なせてしまったことから、互いへの不満が表面化してしまう…。

描かれるのはわずか24時間の出来事だ。主人公たちの気持ちの変化を、過去の出来事をフラッシュバックで説明する手法はオーソドックスなものだが、美しい思い出が指の間からこぼれ落ちるようなはかない感覚は、独特の味わいがある。シンディは別の男との間にできた娘の父親になってくれたディーンに対して負い目がある。一方、ディーンは、仕事や収入に関して妻への引け目がある。二人とも娘を深く愛してはいるのだが、日々の暮らしの小さな不満と不安が、じわじわと上がる水位のように夫婦を侵食してしまい、気付いた時には身動きできなくなってしまっている。過去の出来事が、出会いから、ぎこちない愛の告白、希望に満ちた結婚と、手持ちカメラで生き生きと自由に撮られているのに対し、現在のパートは三脚で固定したカメラで息苦しいほどの緊迫感を持ってとらえられている。夢中で愛し合った過去と、生活に押しつぶされそうな現在、そしてある決断の末に何かが始まる未来へ。一組の男女の気持ちの移ろいを、残酷で美しい時間そのものを主人公にして物語る作品だ。
【65点】
(原題「BLUE VALENTINE」)
(アメリカ/デレク・シアンフランシス監督/ライアン・ゴズリング、ミシェル・ウィリアムズ、他)
(やるせなさ度:★★★★☆)
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映画レビュー「ラースと、その彼女」

ラースと、その彼女 (特別編) [DVD]ラースと、その彼女 (特別編) [DVD]
◆プチレビュー◆
リアル・ドールとの恋物語は一見キワモノだが、中身は温かくて素敵な感動作。ゴズリングの表情が繊細だ。 【70点】

 シャイで孤独な青年ラースは人付き合いが大の苦手。そんな彼が兄夫婦に紹介した恋人ビアンカは等身大のリアル・ドールだった。兄と義姉、町の人々は最初は面食らうが、ラースを傷つけまいとビアンカを受け入れていく…。

 俗に“スモール・タウンもの”と呼ばれる映画がある。平和な町でのちょっと変わった出来事をハートフルに描く作品群で、小規模なコミュニティーでしか成立しえないストーリーが特徴だ。本作はまさにそれ。雪に覆われたスモール・タウンのぬくもりが、ジンワリと胸にしみてくる。

 まず、リアル・ドールと聞いて、アンなことやソンなことを想像しているそこの貴方、この際、よからぬ思いはきっぱりと捨てよう。何しろ本作は、アカデミー賞オリジナル脚本賞にノミネートされた秀作だ。物語は、凡人が思い描く方向へは決して向かわない。とはいえ、コミカルな前半から、どうやって決着するのかと実は心配だったのだが、その着地点は見事なものだった。

 ラースが極端に人見知りするのは、母の死に責任を感じ、それがトラウマになって心を閉ざしているためだ。人と接触しても、その人がいつか自分から去ってしまうかと思うと怖くてたまらない。恐れが妄想を呼び、心の病が人形を擬人化したのだ。ラースとビアンカを診察したバーマン医師は「人形を恋人と思い込むラースの世界を、周囲が受け入れてあげることが問題解決の糸口」と助言する。それから、町の人すべてが参加した“お芝居”の幕があがった。

 面白いのは、最初はラースのことを変人扱いしていた周囲の人々が、徐々に変わっていくことだ。ビアンカを恋人と認め、パーティに招待し、仕事まで世話する。彼女に「ハーイ」と声をかけるとラースが代わりに挨拶を返す。救急車と入院は少々やりすぎだったが、町の人々が、忘れかけていた交流を取り戻したことは間違いない。本人は気付いていないが、ラースはこんなにも周りから愛される存在なのだ。そんな日々の中、ビアンカが突然倒れてしまったことから、事態は急転。生と死をみつめた真摯なドラマになっていく。

 人間は自分たちに似せた“ひとがた”を作るナルシストだと言われる。人形に恋するモチーフが映画に登場するのは必然の流れだ。ハリウッド映画「マネキン」のようにポップなファンタジーもあれば、カルトの極北「追悼のざわめき」のようなハードな作品まで、その振り幅は広い。本作の魅力は、人形との恋という突飛なスタートから、小さな町のヒューマニズムを経由して、主人公の心の再生というゴールへ至る道を、地に足をつけて描いたことだ。人とかかわるのは時に大変なことだけど、トライするだけの価値はある。ラースのように他人よりちょっと時間がかかってもいいじゃないか。この風変わりな恋物語は、寒い日に飲むスープのようだ。滋味があって心と身体が温まる。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)ハートフル度:★★★★☆

□200年 アメリカ映画 原題「LARS AND THE REAL GIRL」
□監督:クレイグ・ギレスピー
□出演:ライアン・ゴズリング、エミリー・モーティマー、ポール・シュナイダー、他

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