映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「アトミック・ブロンド」「バリー・シール」「あゝ、荒野 後篇」「我は神なり」etc.

ラッセル・クロウ

ナイスガイズ!

The Nice Guys (OST)
1970年代のロサンゼルス。13歳の娘ホリーを抱えるシングルファーザーで、酒浸りの情けない私立探偵マーチは、口より先に手が出る、腕っ節の強い示談屋ヒーリーに強引に相棒にされ、失踪した少女を探すことに。簡単な事件のはずだったが、二人は、ある映画に関する連続不審死事件にたどり着き、さらには、巨大な利権をめぐる、国家規模の陰謀へと巻き込まれてしまう。マーチとヒーリーは、次々に現れる殺し屋の襲撃をかわしながら、事件の真相に迫っていくが…。

ハチャメチャな探偵コンビが陰謀に巻き込まれるコメディタッチのバディ・ムービー「ナイスガイズ!」。70年代が舞台ということで、設定といい音楽といい、激しくレトロなのだが、ヘタレと乱暴者のコンビは、アクションもギャグもノリノリ(悪ノリと呼ぶべきか)で、70年代の懐かしさを醸し出すいきのいい活劇に仕上がった。前半はとにかく笑わせ、後半はまったく別モノに見えた事件がからみあう、ちょっとユルめのハードボイルドへ。ポルノ女優の怪死、排ガス規制訴訟、政府高官へとつながり、巨大な陰謀へと発展していく。監督のシェーン・ブラックは、監督作は多くはないが、脚本家としてはベテランの人だ。「リーサル・ウェポン」の脚本家で、凸凹コンビが活躍するオフビートなサスペンスアクションの「キスキス、バンバン」の監督と聞けば、バディ・ムービーが上手いのも納得である。情けないシングルファーザーの探偵を演じるライアン・ゴズリングは、今、一番旬な俳優だが、本作ではコメディ・センスも見せてくれた。対して、役作りか、はたまた素なのかは不明だが、そのでっぷりと膨張した体形が“くまモン”化しているオスカー俳優のラッセル・クロウもまた、乱暴者の無免許探偵を巧みに演じている。だが本作で一番魅力的なのは、マーチの娘ホリーをキュートに演じるアンガリー・ライスだろう。度胸があって機転がきく13歳は、車の運転までこなしながら、時には頼りない父親の相棒となり、時には母親のような妻のような包容力さえ感じさせる。そんなしっかりもののホリーの存在が、ダメダメの負け犬の大人たちに、人間として一番大切な優しさを教えるのだ。ちなみにアンガリー・ライスは「スパイダーマン」の新作にも出演予定。要注目のニューヒロインである。
【60点】
(原題「THE NICE GUYS」)
(アメリカ/シェーン・ブラック監督/ラッセル・クロウ、ライアン・ゴズリング、アンガーリー・ライス、他)
(レトロ度:★★★★☆)
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パパが遺した物語

パパが遺した物語 [Blu-ray]
1989年。小説家のジェイクは交通事故で妻を亡くし、自らも長期入院することになる。幼い娘ケイティと再会できたのは7ヶ月後で、ケイティに「ずっと一緒だ」と約束しながらも、ジェイクの病は悪化し、ついに他界してしまう。現代、大人になったケイティは大学院で心理学を学んでいるが、過去のトラウマから人を愛することができず、男性とは一夜限りの関係ばかり続けていた。そんな彼女の前に父の小説の大ファンだという青年キャメロンが現れる。彼の誠実な人柄に惹かれながらも、ケイティは大切な一歩を踏み出せない…。

人間ドラマ、とりわけ親子愛を描いて高い評価を得てきたガブリエレ・ムッチーノ監督の新作「パパが遺した物語」は、父と娘の時を超えた愛の物語だ。物語は大きく2つのパートに分かれていて、過去のパートとして、幼いケイティを懸命に愛しながら病や経済的な理由から追いつめられていく父ジェイクの姿を描く部分と、現在パートで、人を愛せなくなったケイティが父の小説を読み、自分を本当に愛してくれる人と出会い未来へと向かう部分。それぞれ丁寧に描かれているのだが、その2つのつながりがあまり上手くない。それは邦題にもなっている“パパが遺した物語”である小説がどんな内容で、それによってケイティの心が救われるというプロセスが雑だからだろうか。父娘の愛と本物の恋愛の2つの愛を描く感動作で豪華で実力ある俳優たちがずらりと揃っているのに、バランスの悪さが目立ってしまった。一方で、幼いケイティを演じる新星カイリー・ロジャースちゃんがあまりにも愛らしく、大人の俳優たちを完全にくってしまうほどの名演をみせてくれるのは嬉しい驚きだ。劇中で効果的に使われる、カーペンターズの名曲「CLOSE TO YOU」の優しいメロディがずっと耳に残る。
【60点】
(原題「FATHERS AND DAUGHTERS」)
(米・伊/ガブリエレ・ムッチーノ監督/ラッセル・クロウ、アマンダ・セイフライド、アーロン・ポール、他)
(父娘愛度:★★★★☆)
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ノア 約束の舟

ノア 約束の舟 [Blu-ray]
旧約聖書の有名エピソードを新解釈を交えて描く「ノア 約束の舟」。狂気にかられる人間はアロノフスキーの十八番だ。

ある日、ノアは大洪水がやってきて世界が滅亡する夢を見る。これは堕落した人間を滅ぼす神の啓示で、責任感にかられたノアは、罪のない動物たちを救い生命を維持するために洪水に備えて巨大な箱舟を作り始める。ノアの父親を殺した宿敵がノアの計画を知り、舟を奪おうとするが、ついに大洪水が始まる。動物たちとノアの家族を乗せた舟だけが流されていく中、ノアは家族に、神に託された恐ろしい使命を打ち明ける…。

世界中、とりわけキリスト教圏では賛否両論、上映禁止騒ぎまで巻き起こっている本作。鬼才監督アロノフスキーが、旧約聖書の超有名エピソードを、新解釈を交えて、スペクタクルなVFXで活写する。そもそも、いくら人間が堕落したとはいえ、自分が作った人間の、それも罪もない人々まで、いっきにリセットするかのような大洪水を起こす神の啓示は、かなりのムチャぶりである。だが聖書に書いてある以上、それは有無を言わさず尊重すべき崇高な宗教なのだ、少なくともキリスト教では。まるで「ロード・オブ・ザ・リング」と「トランスフォーマ−」を足して2で割ったような堕天使のクリーチャーに、激しく違和感を感じるが、彼らがお手伝いしてくれたから箱舟作りが間に合ったという説明にとりあえず納得しておく。問題視されているのは、神の使命に従うことが本当に正しいのか苦悩するノアという部分だろう。神の啓示を遂行ればするほど狂気を帯びていくノアは、聖書版“ブラック・スワン”のよう。狂信者のごときノアの行動は、宗教というより原理主義の盲信を思わせて背筋が寒くなりもする。アロノフスキーは大洪水の後の箱舟を密室に見立て、閉ざされた空間での心理劇として描き、ノアとその家族に答を模索させる演出をとっている。神の創造と進化論が同居するかのような映像もあり、賛否が分かれても無理はない。聖書的解釈はさておき、一滴の水からみるみる花が芽生え、森ができ、川が大地を潤す奇跡の映像美と、大洪水のスペクタクルの迫力には間違いなく圧倒される。
【65点】
(原題「NOAH」)
(アメリカ/ダーレン・アロノフスキー監督/ラッセル・クロウ、ジェニファー・コネリー、レイ・ウィンストン、他)
(賛否両論度:★★★★☆)
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ニューヨーク 冬物語

ニューヨーク 冬物語 ブルーレイ&DVDセット(初回限定生産/2枚組/デジタルコピー付) [Blu-ray]
19世紀末から2014年まで時を超えて生きる男の愛を描く「ニューヨーク 冬物語」。これは新種の宗教映画か?!

1900年代のニューヨーク。ピーターは、裏社会を牛耳る強盗団のボス、パーリーのもとで悪事に手を染めていたが、ある時、ボスを裏切り追われる身となる。逃亡する前の最後の仕事にと押し入った邸宅で、美しい令嬢ベバリーと出会い、2人は運命的な恋に落ちる。だがベバリーは不治の病で死に、ピーターもまた強盗団に追いつめられ、橋から落下してしまう。一命をとりとめたピーターは記憶を失くし街を彷徨うが、そこは100年後の2014年のニューヨーク。生きる意味を探すピーターはある母娘と出会うが…。

原作はマーク・ヘルプリンの小説「ウィンターズ・テイル」。1983年に出版され世界中でベストセラーになっているそうだ。身分違いの恋、降りかかる障害、不治の病…と、プロットだけ聞くと韓国ドラマのようだが、この話は100年の時を超えて生きる不思議な男の物語。ではファンタジーなのかと思いきや、物語は意外なテイストで、なんと宗教ものの趣なのである。ピーターは、不思議な白い馬に助けられるが、それはどうやら守護天使。ラッセル・クロウ扮する悪党のバーリーもまた時を超えて生きていて、時々、暗闇に身をひそめる“上司”と密会し、愛による奇跡を阻止すべく策を練っている。立場上、ネタバレは避けるが「何でそうなるの?!」とツッコミを入れたくなった。何しろ、映画を全面的に応援しないといけない立場の配給会社の宣伝担当が、あまりのストーリー展開に腹を立てているのだから、推して知るべしというものである。何のために生きているのかと、哲学的な命題があるが、それはピーターにある使命があるから。これを純粋な愛情ととらえることができれば、感動できるが、私の場合、残念ながらスベッてしまった。見るべき箇所を懸命に探ってみたら、ありがたいことにちゃんとある。それは薄命の令嬢ベバリーの妹ウィラで、21世紀に登場する老ウィラを演じているのは「北北西に進路を取れ」の名女優エバ・マリー・セイントだ。出番は少ないが、年を重ねても美しく、奇跡を信じる大らかなキャラを好演している。久し振りに健在な姿を拝めて嬉しかった。
【45点】
(原題「WINTER'S TALE」)
(アメリカ/アキヴァ・ゴールズマン監督/コリン・ファレル、ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ、ジェニファー・コネリー、他)
(不思議度:★★★★☆)
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ブロークンシティ

ブロークンシティ [Blu-ray]
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大物政治家の陰謀に立ち向かう私立探偵を描くクライム・サスペンス「ブロークンシティ」。因縁の相手と対決するには刺し違える覚悟が必要なのだ。

ビリーは、7年前に警察官を辞職し、今はしがない私立探偵を開業している。NYが8日後に控えた市長選に沸くなか、ビリーは現市長のホステラーから呼び出され、ホステラーの妻キャサリンの浮気調査を依頼される。ビリーとホステラーは7年前にビリーが警察を辞めるきっかけとなったある事件の秘密を共有する間柄だった。調査を始めたビリーはキャサリンの相手が市長選の対立候補の右腕アンドリュースだと知り愕然とする。ビリーは調査結果をホステラーに渡すが、直後、アンドリュースが殺される。ビリーはホステラーの陰謀に利用されたことに気付くのだが…。

汚れた街(ブロークンシティ)とはニューヨークのことか、はたまた街を牛耳る悪徳政治家たちの隠喩か。いずれにしても一介の私立探偵である主人公が戦いを挑むには、相手は大きすぎる。現市長と対立候補の戦い、再開発業者と現市長との癒着、同性愛にそれぞれの正義と、物語のプロットそのものは、目新しさは特にない。だが、捜査中に容疑者を射殺した過去を背負う私立探偵ビリーと、裏金や癒着という悪徳を内包する市長のホステラーは、共に正義の側にはいないところに物語の深みがある。ビリーを捨て駒と考えるホステラーと、そうはさせないと意地を見せるビリーは、共に切り札を持っていて、同時にその札を切ることに。正直、先読み不能の状況になるが、ここでキーパーソンになるのが、ビリーを無実にした上で辞職をすすめた警察の上司フェアバンクス。いわばグレーゾーンにいるフェアバンクスの立ち位置が、勝敗を分けることになる。ビリーには“一寸の虫にも五分の魂”の意地があるが、そこには、過去の贖罪の意味が込められているのだ。このあたり、元警官の私立探偵という、ハードボイルドではおなじみのキャラクターの“それでも捨てられない正義”が垣間見えてグッとくる。個人的にはビリーの秘書兼助手のケイティのキャラが大いに気に入った。窮地に陥った探偵を救うのは、いつだって、仕事ができて気風がよく頼もしい助手なのだ。マーク・ウォルバーグがタフでダーティなヒーローを、ラッセル・クロウが腹黒い政治家をそれぞれ演じて適役。小品のクライム・サスペンスだが、キャスティングが意外なほど豪華だった。
【60点】
(原題「BROKEN CITY」)
(アメリカ/アレン・ヒューズ監督/マーク・ウォールバーグ、ラッセル・クロウ、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、他)
(ノワール度:★★★★☆)
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アイアン・フィスト

アイアン・フィスト [Blu-ray]
ヒップホップのスター、RZAが初監督を務めた極彩色のカンフー・アクション「アイアン・フィスト」。バイオレンス描写満載だがどれも戯画化されたショーのよう。

19世紀の中国。さまざまな部族が抗争に明け暮れるジャングル・ヴィレッジに住む黒人の鍛冶屋は、敵対する猛獅会と群狼団から、それぞれ特注の武器を依頼される。抗争に巻き込まれるのを避けたい鍛冶屋だったが、娼館ピンク・ブロッサムで働く恋人を身請けするために引き受ける。ある時、猛獅会の首領の金獅子が部下に殺害され、後継者問題から内部紛争、さらに部族間の抗争へと発展し、村全体を巻き込む巨大抗争へと発展する。同じ頃、金塊輸送の噂を聞きつけ、村には多くのよそ者がやってくる。その中には謎の白人ジャックの姿も。金獅子の息子ゼン・イーを助けた鍛冶屋は捉えられ、両腕を切断されてしまう。窮地を救ってくれたのはジャックだった…。

ヒップホップ・ユニット、ウータン・クランのリーダーのRZAは、クエンティン・タランティーノの「キル・ビル」や「ジャンゴ」で音楽を担当していたが、俳優としても「アメリカン・ギャングスター」や「G.I.ジョー バック2リベンジ」に出演するなど、映画界での実績もある人。本作では、タランティーノの全面バックアップのもと、原案、脚本、音楽、主演、監督と、まさに大車輪の活躍で、オタク趣味全開で張り切っている。カンフー映画や日本のアニメを偏愛しているだけあって、荒唐無稽の無国籍カンフー活劇を楽しげに活写してみせた。てんこもりのバイオレンス描写にはあっけにとられるが、マンガチックで、あまりにもカリカチュアライズされているため、案外平気で見ていられる。両腕を切り落とされた謎多き鍛冶屋は、自らの過去をとうとうと話し始めるが、それだけで映画が1本できそうなほど波乱万丈の人生なのだ。ともあれ、ジャックやゼン・イーの助けを借りて作った“鉄の拳(アイアン・フィスト)”を両腕に装着し、長く封印していたカンフーを開放した鍛冶屋は、愛するものを奪った悪党に戦いを挑んでいく。激闘の舞台がほとんど室内なので、小技が多く取り込まれ、特にクライマックスの戦いの舞台となる娼館ピンク・ブロッサムでは、色鮮やかな画面の中、創意工夫に満ちたアクションが繰り広げられて見ていて飽きない。かつての香港映画が得意とした武侠アクション映画に、ヒップホップのノリの良さを加え、ラッセル・クロウやルーシー・リューといったスターたちを配したことで、ゴージャスかつでたらめな楽しさが加わった。もはやリアリティは完全無視。これぞ規格外。ここまでハジケまくるバイオレンス・アクションは久しぶりだった。
【55点】
(原題「THE MAN WITH THE IRON FISTS」)
(アメリカ/RZA監督/ラッセル・クロウ、ルーシー・リュー、RZA、他)
(趣味全開度:★★★★★)
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映画レビュー「レ・ミゼラブル」

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◆プチレビュー◆
伝説的大ヒットミュージカルの映画化「レ・ミゼラブル」。音楽の力に圧倒される、力強い作品だ。 【70点】

 19世紀のフランス。パンを盗んで19年間服役したジャン・バルジャンは、仮釈放されるが生活に窮し、再び盗みを働く。だが、司教の真心に触れて改心。名前も変え工場経営者兼市長となるが、バルジャンを執拗に追う警部ジャベールに追われることに。そんな時、薄幸の女性ファンティーヌと出会う…。

 原作は文豪ビクトル・ユーゴーの大河小説「ああ無情」。誰でも一度は読んだことがある名作で、これをミュージカル化した舞台は、世界43ヶ国、21ヶ国語で上演され、27年間という驚異的ロングランと6千万人を超える動員数を達成した伝説の大ヒット舞台ミュージカルだ。

 つまり物語は誰もが良く知るもので、ドラマチックな展開や結末まで熟知しているということ。映画で描かれるストーリーも、予定されたことしか描かれない。それでも圧倒的な風格を持つ物語に、惹きつけられるだろう。

 登場人物の人生は皆、苦難に満ちている。改心してからのジャン・バルジャンは人として正しくありたいと願いながら、常に難しい選択を強いられる。女工ファンティーヌもまた、娘コゼットのため、娼婦へと身を落とし極貧生活の末に死んでいく。それら個人の悲しみが、格差と貧困にあえぐ19世紀フランスで、自由を渇望する時代の空気に重なり、大きなうねりとなってバルジャンらを呑みこんでいく様は、まさしく大河のようである。

 このミュージカル映画の最大の特徴は、感情の高まりや劇的な展開をすべて歌だけで表し、ダンスはいっさいないということだ。「英国王のスピーチ」でオスカーを受賞したトム・フーパー監督は、通常のミュージカル映画製作の常識を覆し、演技と歌を同時に収録するという撮影スタイルをとった。メインキャストには有名スターがひしめくが、ミュージカルに慣れた俳優もそうでない者も、一律、情感豊かなのはそのためだ。音楽そのものがこれほど観客の感情を揺さぶる作品はめったにない。

 アン・ハサウェイが歌う「夢やぶれて」を筆頭に、「オン・マイ・オウン」や「民衆の歌」など、珠玉のナンバーが素晴らしい。登場人物の多くが命を落とす中、美しく成長したコゼットと情熱あふれる青年マリウスの若い2人の純愛にすべてを託すことによって、未来への希望を謳いあげた。無償の愛、贖罪と救済、人間精神の尊さ。いつの時代もそれは生きる喜びとなる。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)壮大度:★★★★☆

□2012年 イギリス映画 □原題「LES MISERABLES」
□監督:トム・フーパー
□出演:ヒュー・ジャックマン、アン・ハサウェイ、ラッセル・クロウ、他
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スリーデイズ

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平凡な小市民が練り上げた脱獄計画は、生活のすべてを犠牲にする覚悟があってこそ。切実で孤独な戦いが胸に迫るが、主演のラッセル・クロウはミスキャスト。

大学教授のジョンは、愛する妻子と共に幸せに暮らしていた。だがある朝、突然警察が自宅に突入。妻のララが身に覚えのない殺人容疑で逮捕されてしまう。それから3年。妻の無実を証明するために奔走したジョンの努力も虚しく、裁判では妻に不利な証拠が提出され、殺人罪が確定する。絶望したララが獄中で自殺未遂を起こしたことから、ジョンは、自らの手で妻を取り戻すことを決意。生活のすべてを犠牲にして脱獄計画を立て始める…。

仏映画の秀作「すべて彼女のために」を、才人ポール・ハギスの手でリメークしたのが本作。オリジナル同様、犯罪の真意や真犯人の立証には焦点を当てず、愛する妻と家族の幸せを取り戻すため、脱獄計画を実行にうつす男の悲壮な決意と息詰まる逃走劇を描いていく。特殊能力や権力など何も持たない平凡な男が、法を破ることを決意するには、警察や法制度への絶望的な不信感と、妻への、決して揺るがない深い愛情があるからだ。脱獄計画を決意してからのジョンには長い準備期間があり、覚悟は出来ているのだが、突然知らされた妻ララには心の準備が出来ていない。車のドアから身を投げ出すのは彼女なりの抗議なのだろうが、その後の無言の語らいによって腹を決める場面など、妻の側の心理も絶妙に描きこんでいるのが目を引いた。ただ、ラッセル・クロウというキャスティングはどうなのか? オリジナルの仏映画で、バンサン・ランドンが醸し出した、平凡で弱い小市民という風情は、クロウにはない。演技は上手いが、明らかにミスキャストだろう。とはいえ、クライマックスの、警察からの逃亡劇はすさまじい緊張感で目が離せない。爽快感さえ漂うラストのその後に付け加えた、事件の真相の小さなエピソードとその顛末が、ほろ苦い余韻を残していた。
【65点】
(原題「THE NEXT THREE DAYS」)
(アメリカ/ポール・ハギス監督/ラッセル・クロウ、エリザベス・バンクス、リーアム・ニーソン、他)
(夫婦愛度:★★★★★)



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映画レビュー「ロビン・フッド」

ロビン・フッド ディレクターズ・カット版 (2枚組) [DVD]ロビン・フッド ディレクターズ・カット版 (2枚組) [DVD]
◆プチレビュー◆
伝説的義賊の誕生秘話を虚実を巧みに絡めて描く歴史アクション。肉食系オヤジヒーローに注目だ。 【65点】

 12世紀末。イングランドの十字軍遠征の兵士として帰国途上だった弓の名手ロビンは、フランスで、ある英国人騎士の暗殺現場に遭遇。彼の遺言でノッティンガムの父親に剣を届ける。領主サー・ロクスレーから屋敷に留まるように懇願されたロビンは、次第に領民や未亡人のマリアンとも心を通わせていく…。

 中世の吟遊詩人が歌った伝説の義賊ロビン・フッド。だがこの映画での彼は、まるで実在の人物のように歴史に溶け込み、リアリティーをもって観客に迫ってくる。あまりに有名なロビン・フッドの物語は、何度となく映画化され、かつてエロール・フリン、ショーン・コネリー、ケビン・コスナーなどが、それぞれの持ち味で演じてきた。それではこのラッセル・クロウのロビンの存在意義とはなんだろう。すでにヒーローとして正義を行なうロビンではなく、どうやって彼が己の運命と向き合い、戦う意義を見出していったかを、分かりやすく紐解いていく。これはいわば、ロビン・フッド・ビギニングなのだ。

 そんな知られざるロビン・フッドを演じるのがオスカー俳優のラッセル・クロウ。この俳優は、何をやってもオレ様状態なのだが、そんな彼だからこそ、男気たっぷりのアウトロー系オヤジ・ヒーローがぴったりハマる。マリアンとの恋も、出会った途端に一目ぼれという情熱ではなく、ゆっくりと互いの恋を熟成する大人モードだ。しかもマリアン役はケイト・ブランシェット。ただのしおらしい姫君ではないことは、簡単に予想できる。だがジョン王の悪政と凶作で苦しむ民衆の苦悩と、イングランドを狙うフランス軍の侵攻という二つの危機が迫る中、そうそう甘いラブ・ロマンスに時間を割くわけにはいかない。かくして、リドリー・スコット印の壮麗な戦闘へとなだれ込むというわけだ。

 リドリー・スコットのこだわり。それはやはり映像美。中世イングランドのなだらかな田園や深い森の自然描写の美しさは言うまでもない。歴史ものらしい衣装や建築、生活様式も、細部まで目配せが効いている。だがスコット監督の真骨頂は、クライマックスの戦闘シーンにつきるだろう。迫力の大俯瞰で見せる白い崖・ドーヴァーでのバトルには、目を見張った。何より、森のイメージのロビン・フッドを、海辺で戦わせるところがニクい。英国出身のスコットは、やがて世界の海を制するイングランドへの誇りを込めているのだろうか。それならば、黄金時代の象徴的君主エリザベスを演じたケイト・ブランシェットをキャスティングしたことも納得がいく。

 領主ロクスレーの息子の身代わりになるという設定はかなり突飛なのだが、ロビンがノッティンガムにやってきたのは、運命だったに違いない。自らの出自を知り、母国のために戦うと決めたとき、ロビンは、得意の弓だけでなく剣をも握る。主人公が戦うモチベーションを高めていくプロセスが、歴史に絶妙に重なった。伝説とフィクション、さらに重厚な史実を上手くブレンドさせた脚本は、娯楽性にあふれていて、手堅い出来栄えだ。何よりハリウッド大作ならではのスター共演で華やかさはバツグン。見る前は、手垢のついたヒーローものを何をいまさら…と思っていたが、見終われば、見事にスコット版ロビン・フッドを楽しめた。シャーウッドの森に住む義賊は最初から正義のヒーローだったわけではない。悪代官をこらしめて得意になる単純な暴れん坊でもない。ロビンは自らの意思で“ロビン・フッドになった”のだ。ヒーローとは、皆が望むその場所に誕生するものなのである。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)男気度:★★★★★

□2010年 米・英合作映画 原題「Robin Hood」
□監督:リドリー・スコット
□出演:ラッセル・クロウ、ケイト・ブランシェット、ウィリアム・ハート、他

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映画レビュー「3時10分、決断のとき」

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◆プチレビュー◆
勧善懲悪ではない複雑な面白さがある異色西部劇。オリジナルに比べアクション度がアップした。 【70点】

 妻と二人の息子と共に牧場を営むダン・エヴァンス。借金が返せず生活が困窮したため、強盗団のボスを護送する仕事を引き受ける。最初は報酬が目当てだったが、ダンは男の誇りをかけ、この危険な仕事をやり遂げる決意をする…。

 全米では2007年に公開され大好評、オスカーにもからんだ作品だというのに、日本公開まで随分と時間がかかった。西部劇が作られる数はめっきり減ったが、それでもアメリカ人の心の原風景であるこのジャンルは根強い人気がある。もっとも、今やそのアメリカ魂を演じるのは、オーストラリア(生まれはNZ)とイギリス・ウェールズの俳優だ。しかし、この二人が意外なほど良い。

 タイトルにある3時10分とは、3時10分発のユマ行き列車のこと。逮捕したベン・ウェイドを刑務所に入れるためにはその列車に乗せねばならないが、目的地の駅までの途中には、ボス奪還を狙う手下の一味や、アパッチ族の襲撃、さらにウェイドに恨みを持つ男たちなど、数々の障害が待ち受ける。そんな中、互いに警戒しつつも善玉ダンと悪玉ウェイドの間に不思議な絆が生まれるのが興味深い。というのも、ウェイドという男、頭がよくクールで、優しさと非情さを併せ持つ魅力あるキャラなのだ。いい悪役はいい映画の必要条件のひとつと言える。物語は、男同士の誇りが共鳴し、スリリングな局面を迎えていく。

 だが、この話の裏側には単純な善悪ではない屈折した事情がある。南北戦争では狙撃の名手だったダンは、今は悪どい地主から嫌がらせを受けている。妻に苦労をかけ、息子たちに毅然とした姿を見せられない。その悔しさは、生活苦から卑屈になった自分への憤りだ。一方ウェイドは、親に捨てられ誰の力も借りずに生きてきたならず者。命懸けで護送の仕事をするダンに、羨望にも似た感情を抱くのは、自分とは無縁の“家族”の存在をダンの後ろに見たためだ。

 それにしてもクリスチャン・ベールという役者は損な人だと思う。主役クラスの上手い俳優なのにいつも共演者に食われている。「ダークナイト」では故ヒース・レジャーに、「ターミネーター4」では人間と機械の合成キャラに見せ場をさらわれた。本作でも終始ラッセル・クロウにおされているベールだが、クライマックスの演技は素晴らしい。なぜ自分がこのやせた土地にこだわるのか、なぜ護送の仕事に命を懸けるのかを話すシーンは泣かせる場面だ。その後のクロウの予想外の行動も、ベールの男気あってこそである。

 借金のために護送の仕事を引き受けたダンに、ウェイドが「金をやるから自分を逃がせ」と誘惑しプレッシャーをかけるあたりは、まるで心理劇のような緊張感で、思わず息をのむ。はたしてダンはどんな決断を下すのか。オリジナルの「決断の3時10分」(1957)は隠れた名作だが、本作とはラストが異なる。オリジナルが、立場の違う男同士の奇妙な友情の物語だったのに対し、リメイクの本作で重視したのは父から子へ伝える本当の男らしさ。それは、命よりも大切な誇りを守ることに他ならない。家族の絆が希薄になり、人間関係も利害や競争が優先の現代、この愚直なまでの生き様は心に沁みる。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)男気度:★★★★☆

□2007年 アメリカ映画 原題「3:10toYuma」
□監督:ジェームズ・マンゴールド
□出演:ラッセル・クロウ、クリスチャン・ベイル、ピーター・フォンダ、他

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執筆やラジオ出演など、メールと電話で対応可能な場合は、全国から仕事を受注していますので、まずはお問合せください。
プロフィール
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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