映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
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(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」「ユダヤ人を救った動物園」etc.

ラース・アイディンガー

ブルーム・オブ・イエスタディ



ホロコースト研究所に勤める40歳のトトは、ナチスドイツの戦犯を祖父に持つ出自から、家族の罪と向き合うために研究に人生を捧げていた。だが、精神が不安定な彼は、2年かけて準備したアウシュヴィッツ会議のリーダーからはずされてしまう。最悪な気分のまま、フランスから来るインターンの女性ザジを迎えにいくが、彼女はホロコーストの犠牲になったユダヤ人の祖母の無念を晴らすために研究に打ち込んでいた。目標は同じだが正反対の立場の二人は最初は反発し合うが、やがてお互いに自分にない何かを求めるように強く惹かれていく…。

ナチスの戦犯を祖父に持つ男とホロコーストの犠牲になった祖母を持つユダヤ人女性が恋に落ちる異色のラブストーリー「ブルーム・オブ・イエスタディ」。ナチスやホロコーストを描く作品は、題材が題材だけにシリアスで生真面目に描かれるのが通常だ。だが本作は、新しいアプローチでそんな常識を打ち破る、変化球のような映画である。トトはキレやすい性格で、ナチス親衛隊員の祖父を告発した本を書いたことで家族から勘当され、妻との間には大きな問題を抱えている、精神的に不安定な男性だ。フランスからやってきた若い女性ザジもトトに負けず劣らずエキセントリックな性格で、突発的にトンデモないことをやらかす型破りな性格。祖母をホロコーストで亡くしているのに、ナチスの暴挙を茶化したりする彼女に、トトは激しく反発するが、やがて惹かれあうことになる二人には、共に秘密があって…というストーリーである。

被害者と加害者が極限状態で愛し合う“衝撃”は、名作「愛の嵐」が代表格だ。精神を病んだ者同士が恋に落ちるのは、映画ではもはや定番とも言える設定。本作はナチス映画に新風を吹き込むもので、過去に囚われるばかりではなく、未来を見据えようというメッセージは理解できる。だが、情緒不安定なトトとザジの言動があまりに極端で、共感することが難しい。さらに、二人が抱えるさまざまな問題など、余計な設定が多すぎてまったく交通整理ができていない。トラウマを背負った被害者と加害者の子孫が恋に落ちる様を、あっさりとしたユーモアで描いてくれれば、もっと好感が持てたものを。ラストには光明が見えるが、ただのラブロマンス化した感もある。ホロコーストの歴史的因縁を背負った男女の恋という“素材”は面白いのに、キャラクターの性格やユーモアのセンスなどの“料理法”を間違ってしまったような映画だった。実に惜しい。
【55点】
(原題「THE BLOOM OF YESTERDAY」)
(独・オーストリア/クリス・クラウス監督/ラース・アイディンガー、アデル・エネル、ヤン・ヨーゼフ・リーファース、他)
(ユニーク度:★★★★☆)
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パーソナル・ショッパー



パリで、多忙なセレブのために、服やアクセサリーの買い物を代行するパーソナル・ショッパーとして働くアメリカ人のモウリーンは、数ヶ月前に双子の兄を亡くし、悲しみから立ち直れずにいた。ある時、モウリーンの携帯電話に正体不明の人物から奇妙なメッセージが届き、その人物に誘導されるかのように、依頼主の服を身に着けるというタブーを犯してしまう。同時に彼女の周囲で不可解な出来事が次々に起こり、ついにモウリーンはある事件に巻き込まれる…。

セレブの買い物を代行する女性が、謎めいた事件に巻き込まれるミステリー「パーソナル・ショッパー」。オリヴィエ・アサイヤス監督と主演のクリステン・スチュワートのタッグは「アクトレス〜女たちの舞台〜」に次いで二度目だ。ハリウッド映画とは全然違う顔をみせるスチュワートは、今回もまたセレブの秘書的な地味な役。ただ「アクトレス」と大きく異なるのは、ヒロインが霊能者というスピリチュアルな設定であることだ。モウリーンは、兄の死から立ち直れず、彼が住んでいたパリを離れないのは、生前二人が、先に死んだ方がサインを送ると誓いあっていたから。モウリーンの携帯に次々に届く謎めいたメッセージの送り主は、誰なのか。もしや死後の世界からのものなのか。…と、ミステリーからオカルトへと傾くかに思えたが、終わってみれば、そのどちらでもなかった。依頼主の高価なドレスを身に着けるというタブーは、今より豊かな、別人になりたいというモウリーンの心の欲望だが、物質主義を単純に否定しているわけではない。霊能力があるが、それが事件の解決を助けるわけでも、スピリチュアルな世界を肯定するわけでもない。共に個性的な設定なのに、活かしきれてない印象なのが残念だ。だが、深い孤独と喪失感を抱えたヒロインが、自己を解放する物語としてみれば、なかなか興味深い。雇い主とはほとんど電話で話すだけ。遠いアラビア半島にいる恋人とのやりとりはPCの画面を通して。謎の人物とのミステリアスな会話は携帯のメッセージ。ヒロインはいつも、そこにいない人物と共に生きていた。それは、現世にいない死者を感じる霊能と重なって見える。ファッショナブルかつ不思議なテイストの心理劇だが、別人になりたいと心の奥底で願ったヒロインが、結果的に、アイデンティティーを取り戻すストーリーは、示唆に富んでいて悪くない。
【65点】
(原題「PERSONAL SHOPPER」)
(フランス/オリヴィエ・アサイヤス監督/クリステン・スチュワート、ラース・アイディンガー、シグリッド・ブアジズ、他)
(スピリチュアル度:★★★☆☆)
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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