二転三転するサスペンス・アクション「顔のないスパイ」。60歳を越えたギアが身体をはったアクションで頑張っている。
ワシントンで上院議員殺害事件が起こり、その手口から、死んだはずの旧ソ連の伝説のスパイ、カシウスの名が浮上する。犯人はカシウスなのか?彼は生きていたのか?真相を探るため、冷戦時代を知るCIAのベテラン諜報員で引退していたポールと、カシウス逮捕に情熱を傾けるFBIの若き捜査官ベンがチームを組むことになる。やがて、カシウスの正体が明らかになるのだが、そこに浮かび上がったのは、なんとチーム・リーダーのポールの姿だった…。
伝説のスパイ、カシウスは誰なのかという謎解きは主題ではない。開始30分ではやばやとカシウスの正体はポールであることが分かってしまうところを見ると、本当のテーマは、カシウスについて研究論文を書くほど精通し、逮捕に情熱を燃やすと同時に、カシウスに尊敬の念を抱くベンが、どうやってカシウスの正体に気付くのか、またカシウスはなぜ復活したのかということにある。話は二転三転し、最後の最後に大どんでん返しが待っているという仕掛けだ。リチャード・ギアは悪役には迫力不足なのだが、今回はそれが枯れたイメージと重なり、ラストの言動に生きてくる。ただ、20年前のシーンも同じギアが演じるというのはあまりにも無理がある。また、時計に仕込んだワイヤーで相手を一瞬にして殺害する“必殺仕事人”チックな殺人が、いつも目撃者一人いないなど、脚本には甘さを感じる。もうひとつの“甘さ”は、ベンがカシウスの正体に気付き、カシウスもまたベンの本当の姿に気付くラストだ。だが、カシウスの言葉は、スパイの孤独と悲哀が漂うもので、カシウスを追いながらも強く魅了されているベンだからこその帰結なのかもしれない。アクションシーンでは、ロシアの軍隊格闘術である“システマ”が採用されているのが珍しく、1949年生まれのギアが身体をはってこの武術にチャレンジして役者魂を見せている。
【55点】
(原題「THE DOUBLE」)
(アメリカ/マイケル・ブラント監督/リチャード・ギア、トファー・グレイス、マーティン・シーン、他)
(どんでん返し度:★★★★☆)

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