映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「アサシン・クリード」「ラビング」「お嬢さん」etc.

リドリー・スコット

オデッセイ

オデッセイ 2枚組ブルーレイ&DVD(初回生産限定) [Blu-ray]
宇宙飛行士で植物学者のマーク・ワトニーは、火星での有人探査中に強烈な嵐に巻き込まれてしまう。仲間の乗組員はワトニーが死亡したと思い、火星を去ってしまうが、彼は生きていた。水も空気も通信手段もなく、基地に残された食料はわずかという危機的状況の中、ワトニーは何とか生き延びようとする。一方、地球では旧式の通信手段からの交信で、ワトニーの生存に気付いたNASAが、ワトニーを救出すべく大胆な計画に挑もうとしていた…。

火星に取り残された宇宙飛行士の決死のサバイバルを描くSF大作「オデッセイ」。水も空気も通信手段もない宇宙でサバイバル…と聞いて悲壮なストーリーを連想するだろうが、この物語の主人公ワトニーは、あきれるほど前向きだ。演じるマット・デイモンの素朴で誠実なキャラが重なって、誰もが主人公を応援したくなるはず。ワトニーが絶対に希望を捨てずに生き抜くと決め、知恵と勇気で難題をひとつひとつクリアしていく姿は、時にコミカルで時にシニカル。彼の生存が公表され、今や地球のすべての人がかたずをのんで見守るワトニー救出作戦を繰り広げる地球側のドラマもまた、見応えがある。確信犯的に時代遅れでダサいディスコ・ミュージックがこれでもか!とばかりに流れる中、絶望的な状況さえジョークにしてしまう人間の楽天性に魅せられた。なるほど、本作がゴールデン・グローブ賞で「コメディ・ミュージカル部門」にノミネートされたのも納得である。ジェシカ・チャステインやジェフ・ダニエルズ、キウェテル・イジョフォーら演技派と、クリステン・ウィグ、マイケル・ペーニャらコメディ系のキャストとのアンサンブルも絶妙だ。リドリー・スコット監督らしい美しく精緻な映像も健在。近年のSF「プロメテウス」などの悲壮感とは対極にあるスーパー・ポジティブSFエンタテインメントで、見ているこちらも元気がもらえる秀作だ。
【85点】
(原題「THE MARTIAN」)
(アメリカ/リドリー・スコット監督/マット・デイモン、ジェシカ・チャステイン、クリステン・ウィグ、他)
(ポジティブ度:★★★★★)
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オデッセイ@ぴあ映画生活

エクソダス:神と王

旧約聖書の出エジプトを描くアドベンチャー大作「エクソダス:神と王」。聖書の独自解釈が興味深い。

紀元前1300年。最強王国エジプトで、王家の養子として育ったモーゼは、兄弟同然の固い絆で結ばれていたはずのエジプト王ラムセスに反旗を翻す。自分がヘブライ人だと知ったモーゼは、虐げられていた40万のヘブライの民を率いて、新天地を求め、エジプトを脱出する苦難に満ちた旅に出るが、彼らをラムセスの大軍が襲撃。紅海に追いつめられ絶対絶命と覚悟したとき、信じられないことが起こる…。

リドリー・スコットの久々の新作は、過去にも映画化された旧約聖書の出エジプトをテーマにしたスぺクタクル史劇。映像派のスコット監督らしく、壮大な冒険活劇として、また災いや奇跡がてんこもりのディザスター・ムービーとして見どころ満載な力作だ。もちろん昨今の聖書ものにならって、監督独自の解釈で描かれる描写には、驚きや疑問もあるだろう。例えばかつてチャールトン・ヘストンが威風堂々と渡った紅海も劇的には割れてくれないし、ラムセス王と決別するときのモーゼの残念そうな表情や、何かと意見してくる神(意外な姿をしている)に対しても、モーゼは単純には信じてないばかりか、神に対して特に恐れや敬いも感じられないのだ。しかし、それは神の方も同じで、モーゼを選んではみたものの、彼を全面的に信頼してはいない。だが、だからこそ、契約的な取引で事を成すわけで、人は変わるが石に記した戒律は変わらないというセリフに帰結するわけだ。宗教的な解釈はさておき、映像的に注目なのは、エジプトを襲う災いの数々だ。ナイル川が真紅に染まる様子や、イナゴの群れに人食いワニ、王さえも逃れられない疫病など、多分にB級ホラー的な内容なのだが、格調と迫力で活写する特殊効果に思わず目を見張る。消化不良のような終わり方が少々気になるが、現在もまだ人々は苦難の旅の途中ということかもしれない。亡き弟トニー・スコットに捧げられた作品であることも付け加えておきたい。
【65点】
(原題「EXODUS:GODS AND KINGS」)
(米・英・スペイン/リドリー・スコット監督/クリスチャン・ベール、ジョエル・エドガートン、ベン・キングスレー、他)
(スペクタクル度:★★★★☆)
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エクソダス:神と王@ぴあ映画生活

悪の法則

悪の法則 21分拡大版本編ディスク付豪華2枚組 (初回生産限定) [Blu-ray]
危険な裏ビジネスに手を染めたことから壮絶な運命をたどる人々を描く心理サスペンス「悪の法則」。主役級スターが勢ぞろいし、不条理劇を豪華に彩る。

テキサス、メキシコ国境付近の町で弁護士をしている若くハンサムな“カウンセラー”は、美しい恋人ローラとの結婚を控え、何不自由なく暮らしているが、ふとした出来心で、友人の実業家ライナーや、裏社会に精通するブローカーのウェストリーと組んで、メキシコの麻薬カルテルを相手に、危険な裏ビジネスに手を染める。だが正体不明の黒幕が仕掛けた罠によりカウンセラーと彼の周囲のセレブリティたちは、命さえ脅かす危険で巨大なトラブルに巻き込まれていく…。

金も社会的地位も、美しい容姿さえも、何不自由ない“カウンセラー”が出来心で裏ビジネスに手を出したその理由は、恋人をより満足させ、自分もより豊かな暮らしがしたいという「ちょっとした欲」だった。だが“素人”のカウンセラーの欲など、この物語の黒幕のそれにくらべるとひよっこ並み。裏ビジネスに安易に手を出したのはなるほど悪いことだが、実はカウンセラーには一連の危機に値するような落ち度はない。つまり身に覚えのない出来事によって、カウンセラーは周囲の人々を地獄への道連れにして悲劇へとひた走るのだ。その不条理ぶりときたら、壮絶という言葉以外、思いつかない。全員が主役クラスのスターたちが従来のイメージを覆す役に挑戦しているが、人間の闇をあぶりだす名手の作家コーマック・マッカシーによる脚本は、それぞれに衝撃的な運命を用意して、情け容赦ない。とりわけライナーの愛人マルキナを演じるキャメロン・ディアスの得体の知れない妖艶な演技には、ド肝を抜かれた。ブラピ演じるブローカーは何度も「手を引け」と忠告するが、それでもカウンセラーは道を誤る。悪とはこんなにも甘美な誘惑の香りがするものなのだろうか。真の主役はさておき、とりあえず物語の軸はカウンセラー。マイケル・ファスベンダー演じる彼だけが名前がないのが象徴的だ。つまり誰もが同じ落とし穴に落ちる可能性があるということである。全体を通して会話劇で成り立っている作品なのに、こんなにも緊張を強いられるとは。人間性の極北をドライに描いた恐ろしい傑作である。
【75点】
(原題「THE COUNSELOR」)
(米・英/リドリー・スコット監督/マイケル・ファスベンダー、ペネロペ・クルス、キャメロン・ディアス、他)
(不条理度:★★★★☆)
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悪の法則@ぴあ映画生活

JAPAN IN A DAY [ジャパン イン ア デイ]



動画サイト「YouTube」に寄せられた映像で綴る“3.11”から1年後の1日を描いた「JAPAN IN A DAY [ジャパン イン ア デイ] 」。平凡な日常に改めて感謝したい。

東日本大震災が起こった2011年の“3.11”。巨匠リドリー・スコットが「1年後の“あの日”を、あなたはどう過ごしましたか?」との問いを投げかけると、世界中から、YouTubeを通して多くの投稿動画が寄せられた。約8,000件、およそ300時間の動画を基に作られた1本の映画には、特別な日、あるいは特別ではない大切な日常が映されている。

世界初、そして地球規模のプロジェクト「LIFE IN A DAY」は、日常を記録した投稿映像によるソーシャル・ネットワーク・ムービーという画期的な企画だった。本作は、同じ試みながら、日本が自然の驚異にさらされ、世界中に衝撃を与えた“3.11”から1年後の1日を記録する。あの日を忘れずに心に刻むという主旨で、巨匠リドリー・スコットの製作総指揮で作られた作品だ。夜明けの街で飲み会に興じる若者、父子での公園へのお出かけ、仕事にいそしむ人、日曜日の家族風景などさまざまな日常が切り取られる。出産やプロポーズという特別な感動もある。その1日は何気なく始まって、ごく静かに終わっていくのだ。だが、私たち日本人は“3.11”という記憶を抜きにして1年後のその1日を迎えることはできない。被災者の方々にとっては、今も癒えない傷を抱えてこの映画を見るのは、もしかしたらつらいことかもしれない。そうと思うと、私は、一般の劇映画や記録映画と同等に、冷静に鑑賞することが出来なかった。仮設住宅の仏壇の前に父、母、妻、娘の4人の遺影が飾られている光景には言葉を失うし、その男性が「娘を胸に抱き何度も名前を呼んだ」と語った時は、思わず涙ぐんだ。それでも彼は「1年後だからといって、肩肘はらずに、前に進むようにしたい」と穏やかに語る。彼の表情には控えめだが笑顔もあった。「頑張る」という言葉が、あの日以来、まったく違う重みを持つ言葉になった気がするのは私だけではないだろう。1分1秒、一瞬の連続の中で私たちは生きている。どんなに大きな悲しみの後にも、新しい明日がやってきて、人生は続いていく。このブログでは作品評価として直観的に点数を付けているが、本作ではそれは避ける。映像メディアが人々に希望を与える力があることを、私は信じている。
【点数評価なし】
(原題「JAPAN IN A DAY」)
(日本・イギリス/フィリップ・マーティン、成田岳監督/、他)
(頑張ろう、日本!度:★★★★★)
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JAPAN IN A DAY [ジャパン イン ア デイ]@ぴあ映画生活

映画レビュー「プロメテウス」

プロメテウス 2枚組ブルーレイ&DVD&デジタルコピー (初回生産限定) [Blu-ray]プロメテウス 2枚組ブルーレイ&DVD&デジタルコピー (初回生産限定) [Blu-ray]
◆プチレビュー◆
人類の起源という根源的な謎に挑んだSF超大作「プロメテウス」。壮大で幻想的なビジュアルに圧倒される。 【65点】

 2093年、考古学者エリザベスら17名のクルーは、宇宙における人類の起源を解明するため、宇宙船プロメテウス号に乗って地球を出発する。だが、2年後にたどり着いた惑星で、彼らは、地球上の常識では計り知れない、驚愕の真実を目の当たりにする…。

 「ブレードランナー」、「エイリアン」など、映画史に残るSF作品を手がけた巨匠リドリー・スコットは、どうやら、人間を“第一の原人”とは考えていないようだ。人間が最初に生まれたという発想そのものが、傲慢だとさえ言い切る。人類の起源を、科学や宗教を超えた解釈で描くこの作品は、スコット監督が導き出した、ミステリアスな可能性の物語だ。

 冒頭、荒々しい岩肌の大地と巨大な瀑布の岸に立つ知的生命体“エンジニア”が、自分の肉体を分解してばらまいているのはDNAなのだろうか。宗教や進化論をものともせず、一気に人類誕生の新説を提示するから、潔い。その突拍子も無い提言を、思わず信じてしまいたくなる、異様な惑星の光景や、宇宙船内部のガジェットなど、イマジネーションあふれる幻想的なビジュアルは、映像派のリドリー・スコットだけが持つ説得力と言えよう。

 地球上の複数の遺跡に共通したサインを、宇宙からの招待状と解釈したエリザベスたちは、たどり着いた惑星で、洞窟の奥のビッグフェイスの彫像、並べられた無数の壷、光を放つ奇妙な施設などを目にする。それは“神の領域”というより、恐怖が充満した地獄のような暗黒の空間。宇宙に対する安直なシンパシーを叩き潰し、失望を煽る暗い展開は、まさに先読み不能だ。

 巨大企業が出資したプロメテウス号内部には、ある秘密が隠されているのだが、その鍵を握るのが、精巧なアンドロイドのデヴィッドである。端正で無表情なデヴィッドを演じるマイケル・ファスベンダーが適役で、国際的なスターが集うこの超大作の中でも、とりわけ存在感がある。

 想像を絶するクライマックスの果てに、科学者でありながら、信仰を拠り所にするエリザベスと、人間の感情は理解できるが自分自身は感情を持たないアンドロイドのデヴィッドが行動を共にするのを見ると、世界の大いなる“矛盾”を受け入れざるを得ない。だが多くの謎を内包した物語は、未来の世界で遠い宇宙の果てまで来た人類が、太古へと回帰するという、アイロニカルなもの。人類に火という知性を与えた神プロメテウスの名は、第二のプロメテウスと呼ばれる原子力にも使われている。失意が充満するこの世界で、パンドラの箱の底に残った希望を見出すには、人類には、まだ長い航海が必要なのだろうか。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)壮大度:★★★★★

□2012年 アメリカ映画 □原題「PROMETHEUS」
□監督:リドリー・スコット
□出演:ノオミ・ラパス、マイケル・ファスベンダー、シャーリーズ・セロン、他

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プロメテウス@ぴあ映画生活

LIFE IN A DAY 地球上のある一日の物語

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YouTube上で募集した映像のコラージュで、実験的なドキュメンタリー。地球上の誰もが、自らのストーリーを語る資格とチャンスがあることに気付く。

2010年7月24日に撮影した映像を世界中のユーザーから募集し、優秀な作品を編集して1本の映画にするというプロジェクトがスタートする。集まったのは、世界192の国と地域から、のべ8万本、時間にすると、なんと4,500時間を超える映像作品だ。そこには、地球上で起こる“特別ではない”さまざまな出来事が、記録されていた。メイン監督を「ブラック・セプテンバー」や「ラスト・キング・オブ・スコットランド」を手がけた俊英ケヴィン・マクドナルドが務めている。

恋愛、結婚、出産、宗教やポップ・カルチャーなど多くのテーマが語られる。だが332組342人の“共同監督たち”がカメラを向けるのは、しばしば愛する家族や自分自身のごく日常的な風景だ。日本から選ばれた映像のひとつが、カメラマンの相川博昭さんが投稿した作品で、父子家庭の朝の様子が飾らないタッチで描かれている。雑然とした部屋の中、起きたばかりの父と子が、亡き妻の遺影に線香を上げて始まる新しい1日には、哀しさと温かさが同居していた。製作総指揮はリドリー・スコットとトニー・スコットの兄弟。彼らの製作会社のスコット・フリーがプロダクションとなって、世界最大の動画共有サイト・YouTubeと組み、世界規模の画期的な映画作りとなった。出来上がったものは、名付けてソーシャル・ネットワーク・ムービー。実際、これが“映画”なのか?と問われれば、まだ疑問符もあるのだが、特別なものではない日常生活もさまざまな側面があり、集まれば物語が出来上がるという考え方は面白い。何より、見知らぬ誰かと同じ時間や思いを共有し、一体感を得たいとの願いは、確かに“今”の空気感だ。映画の最後に登場する少女はまだ若い。彼女が言う「私は特別な存在ではないし、今日1日も平凡な日だった。でも好奇心は持ち続けたい」との言葉で印象的だった。
【65点】
(原題「LIFE IN A DAY」)
(英・米/ケヴィン・マクドナルドと332組342人の共同監督たち)
(企画の面白さ度:★★★★☆)



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LIFE IN A DAY 地球上のある一日の物語@ぴあ映画生活

映画レビュー「ロビン・フッド」

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◆プチレビュー◆
伝説的義賊の誕生秘話を虚実を巧みに絡めて描く歴史アクション。肉食系オヤジヒーローに注目だ。 【65点】

 12世紀末。イングランドの十字軍遠征の兵士として帰国途上だった弓の名手ロビンは、フランスで、ある英国人騎士の暗殺現場に遭遇。彼の遺言でノッティンガムの父親に剣を届ける。領主サー・ロクスレーから屋敷に留まるように懇願されたロビンは、次第に領民や未亡人のマリアンとも心を通わせていく…。

 中世の吟遊詩人が歌った伝説の義賊ロビン・フッド。だがこの映画での彼は、まるで実在の人物のように歴史に溶け込み、リアリティーをもって観客に迫ってくる。あまりに有名なロビン・フッドの物語は、何度となく映画化され、かつてエロール・フリン、ショーン・コネリー、ケビン・コスナーなどが、それぞれの持ち味で演じてきた。それではこのラッセル・クロウのロビンの存在意義とはなんだろう。すでにヒーローとして正義を行なうロビンではなく、どうやって彼が己の運命と向き合い、戦う意義を見出していったかを、分かりやすく紐解いていく。これはいわば、ロビン・フッド・ビギニングなのだ。

 そんな知られざるロビン・フッドを演じるのがオスカー俳優のラッセル・クロウ。この俳優は、何をやってもオレ様状態なのだが、そんな彼だからこそ、男気たっぷりのアウトロー系オヤジ・ヒーローがぴったりハマる。マリアンとの恋も、出会った途端に一目ぼれという情熱ではなく、ゆっくりと互いの恋を熟成する大人モードだ。しかもマリアン役はケイト・ブランシェット。ただのしおらしい姫君ではないことは、簡単に予想できる。だがジョン王の悪政と凶作で苦しむ民衆の苦悩と、イングランドを狙うフランス軍の侵攻という二つの危機が迫る中、そうそう甘いラブ・ロマンスに時間を割くわけにはいかない。かくして、リドリー・スコット印の壮麗な戦闘へとなだれ込むというわけだ。

 リドリー・スコットのこだわり。それはやはり映像美。中世イングランドのなだらかな田園や深い森の自然描写の美しさは言うまでもない。歴史ものらしい衣装や建築、生活様式も、細部まで目配せが効いている。だがスコット監督の真骨頂は、クライマックスの戦闘シーンにつきるだろう。迫力の大俯瞰で見せる白い崖・ドーヴァーでのバトルには、目を見張った。何より、森のイメージのロビン・フッドを、海辺で戦わせるところがニクい。英国出身のスコットは、やがて世界の海を制するイングランドへの誇りを込めているのだろうか。それならば、黄金時代の象徴的君主エリザベスを演じたケイト・ブランシェットをキャスティングしたことも納得がいく。

 領主ロクスレーの息子の身代わりになるという設定はかなり突飛なのだが、ロビンがノッティンガムにやってきたのは、運命だったに違いない。自らの出自を知り、母国のために戦うと決めたとき、ロビンは、得意の弓だけでなく剣をも握る。主人公が戦うモチベーションを高めていくプロセスが、歴史に絶妙に重なった。伝説とフィクション、さらに重厚な史実を上手くブレンドさせた脚本は、娯楽性にあふれていて、手堅い出来栄えだ。何よりハリウッド大作ならではのスター共演で華やかさはバツグン。見る前は、手垢のついたヒーローものを何をいまさら…と思っていたが、見終われば、見事にスコット版ロビン・フッドを楽しめた。シャーウッドの森に住む義賊は最初から正義のヒーローだったわけではない。悪代官をこらしめて得意になる単純な暴れん坊でもない。ロビンは自らの意思で“ロビン・フッドになった”のだ。ヒーローとは、皆が望むその場所に誕生するものなのである。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)男気度:★★★★★

□2010年 米・英合作映画 原題「Robin Hood」
□監督:リドリー・スコット
□出演:ラッセル・クロウ、ケイト・ブランシェット、ウィリアム・ハート、他

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映画レビュー「アメリカン・ギャングスター」

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◆プチレビュー◆
実在の麻薬王と熱血刑事を描いた実録犯罪劇。ワシントンとクロウの骨太の演技は見応えたっぷりだ。 【75点】

 70年代のNYハーレム。フランクはベトナム戦争を利用して麻薬ビジネスを拡大、暗黒街の陰のボスとして君臨する。目立たず行動し、決して尻尾をつかませない彼に目を付けたのは、腐敗した警察組織で奮闘する刑事リッチーだった…。

 暗黒街でのし上がるキレ者と、不器用なやさぐれ刑事(デカ)。この構図で思い浮かぶのは「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」だ。マイケル・チミノが怒りと私怨の壮絶な暴力を描いてみせたのに対し、リドリー・スコットのこの実録映画は、派手な撃ち合いやアクションとは無縁。追う男と追われる男は、2時間37分の上映時間の終盤近くまで顔さえ合わせない。だが、時にその静けさが凄みとなる。

 物語の軸のフランクは、いわば暗黒街のニューカマーだ。まず黒人であること、次に、産地直送で麻薬を密輸し“良心的な値段”で売る新しいビジネスを築いたこと。私生活では表立つようなマネはせず、豊かだが地味な暮らしぶりだ。明らかに従来のマフィアとは価値観が異なる。一方、無骨な刑事リッチーは、正義感は強いものの生活はだらしがなく、家庭は壊滅、女癖も悪い。汚職が当たり前の警察組織に嫌気がさしており、弁護士を目指している。法曹界が清いわけではないが、米国の警察組織の桁違いの腐敗ぶりは「セルピコ」でも描かれている通りだ。ギャングと刑事。立場も性格も真逆だが、二人とも古い体制を壊し、現状打破を目指す点が共通している。

 コインの裏と表のような男二人の世界が、ゆっくりとひとつに交わる構成が緊張感を醸し出して、映画の世界に引き込まれてしまう。スコット監督得意のスタイリッシュな映像は封印されているが、おかげで登場人物の生き様が見事に際立った。特にフランクという男の強烈なカリスマ性は魅力的でさえある。それは、彼を演じるワシントンの上品なたたずまいが、悪の向こうに美しさをにじませるからに他ならない。本来は善人の役が似合う美形黒人スターは、どんな役でも観客の感情移入を誘ってしまうのだ。実在の人物を演じてそれは顕著になる。

 そんなワシントンが演じるフランク・ルーカスは、実はこの作品にアドバイザーとして名を連ねている。殺人を重ね、監獄にいるべき男が、映画制作に携わるとはどういうワケなのか? その答えは、ラストのテロップで明かされるので、映画を見て確かめてほしい。終盤、リッチーがフランクを追い詰め物語はクライマックスに。だが、この実話の高ぶりは二人のその後の行く末にこそあるのだ。遂に対決となるその時、スクリーンには賛美歌アメイジング・グレースがドラマチックに流れだす。この曲は葬儀で頻繁に使われる一方で、寿ぎの場でも歌われる、懺悔と許しの曲だ。アメリカの犯罪の系譜は、勧善懲悪で語れるほど単純ではない。フランクとリッチーはともに変革者で、清濁併せ持って生き抜く術を知っている。この人間像はそのまま国家の姿にも当てはまる。この国の矛盾は個の矛盾を映すものだ。正義と同様、悪のエッセンスも貪欲に利用して生きるアメリカのしたたかさを見る思いがする。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)男の美学度:★★★★☆

□2007年 アメリカ映画 原題「AMERICAN GANGSTER」
□監督:リドリー・スコット
□出演:デンゼル・ワシントン、ラッセル・クロウ、キューバ・グッディング・Jr、他

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プロヴァンスの贈りもの

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リドリー・スコット監督がラブロマンスとは珍しい。仕事人間の男性が真の人生に目覚める温かい物語のテーマは、ロハス。隠し味は伝説のワインだ。主人公の少年時代を演じるハイモア君は絶品だが、成長してクロウになるのが疑問。おまけに、なぜ彼が仕事と金儲けしか興味がない人間になったかを描き忘れている有様だ。物語的には欠点が目につくものの、スコット監督らしさは、シネスコープでとらえた美しいワイン畑の映像に垣間見える。
【65点】
(原題「A GOOD YEAR」)
(アメリカ/リドリー・スコット監督/ラッセル・クロウ、フレディ・ハイモア、マリオン・コティヤール、他)
(ミスキャスト度:★★★★☆)

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ブレードランナー

ブレードランナー 最終版 ― ディレクターズカット
ロボットが意思を持つというストーリーは数多くあるが、この「ブレードランナー」がベスト。今や古典と呼べる域に達しているが、公開当初は、難解で暗い作品としてカルト・ムービーと位置付けられ、一部の熱狂的なファンに支持された。

近未来のアメリカを舞台に、レプリカント(人造人間)とそれを狩るブレードランナーとの闘いを描く。キャストは、ハリソン・フォード、ルトガー・ハウワー、ショーン・ヤング、ダリル・ハンナと、80年代の華が揃う。原作はフィリップ・K・ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」。

常に酸性雨が降り続くLAの街の造形が奇妙にして絶妙。日本寄りの東洋系の映像はフィルム・ノワールの趣だ。主人公がレプリカントの美女に言う「愛してると言え」との命令口調が流行してしまうほど、もてはやされるSF映画だが、落ち着いて考えると、ニヒルな男が美女と恋に落ちるという、きわめて平凡な(?)恋愛映画だったりもする。それをディストピア(ユートピアの反語)的な近未来で展開して映画ファンを歓喜させた、センスの勝利だろう。

最初に作られた商業主義的なバージョンは、監督の意図に反して編集されたもの。これに納得がいかなかったスコットは、最終的に自分で心ゆくまで編集したディレクターズ・カット版(最終版)を作成した。これにはナレーションが付帯していない。

大友克洋の「AKIRA」はこの映画に影響を受けたと言われているが、はてして真相は? おそらく傑作は呼応しあうのだ。

(出演:ハリソン・フォード、ショーン・ヤング、ダリル・ハンナ、他)
(1982年/アメリカ/リドリー・スコット監督/原題「BLADE RUNNER」)


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プロフィール
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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