映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」「ユダヤ人を救った動物園」etc.

リリー・フランキー

パーフェクト・レボリューション



幼い頃に患った脳性麻痺から手足が思うように動かず車椅子生活を送るクマは、不自由な身体だがセックスが大好きで、身体障害者の性への理解を広げようと活動している。ある日、クマは、人格障害の病を抱えた風俗嬢ミツと出会う。積極的にアプローチしてくるミツに最初はとまどうが、次第にクマもまっすぐな彼女に惹かれていった。だが、二人の前には、周囲の偏見や差別、無理解など、多くの壁が立ちふさがっていた…。

脳性麻痺で車椅子の活動家と、人格障害を抱える風俗嬢の恋愛を描く「パーフェクト・レボリューション」。脳性麻痺を抱えつつ、障害者の性への理解を訴え続ける活動家・熊篠慶彦氏の実体験をベースにした作品だ。タイトルのパーフェクト・レボリューション(完全な革命)とは、ミツが言う“自分たちの本当の幸せを世界に証明すること”。抱える障害も違えば、職業や能力、年齢も違う二人には、さまざまな困難が待ち受けるが、クマとミツの、特異だがピュアな恋愛は、とびきりエネルギッシュで、悲壮感はほとんど感じない。

このテの題材は、日本映画だと腫れ物に触るかのような遠慮した描写や、感動、美談といった内容にまとまりがち。題材が複雑かつナイーブなために、製作する側も演じる側も相当に気を使ったはずだ。結果、赤裸々な性を描くというにはほど遠い内容となっている。ただ同じ障害者でも抱える悩みや心の闇の度合いはかなり異なるし、周囲の無理解の種類もまた多様なのだということはしっかり描かれていた。だからこそ、障害者自身が本当に何を望んでいるのかという心情にもっと踏み込んでほしかった気もする。ラストは一種のファンタジーで、二人の幸せを願う側としては、これはこれでありだろう。悩みながらもひょうひょうと生きるクマの役がぴったりフィットするリリー・フランキーの好演が心に残る。余談だが、同じく障害者の性や周囲の無理解を描いた作品に韓国映画の秀作「オアシス」がある。視点の鋭さ、リアルとファンタジーのブレンド、国民性の差異などを確認できるので、ぜひ比較してみてほしい。
【65点】」。
(原題「パーフェクト・レボリューション」)
(日本/松本准平監督/リリー・フランキー、清野菜名、小池栄子、他)
(純愛映画度:★★★★★)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)

お父さんと伊藤さん

お父さんと伊藤さん Blu-ray
書店でアルバイトをしながら気ままに生きる彩は34歳。アルバイト先のコンビニで出会ったバツイチ・54歳の伊藤さんと付き合っている。二人は、いつのまにか同棲し、特に将来のことを話し合うことはないが、古いアパートで穏やかに暮らしていたが、ある日、彩のお父さんが、兄夫婦の家を追い出され、彩のアパートに転がり込んでくる。伊藤さんの存在に対して驚くお父さんだったが、この家に住むといって譲らない。こうして彩、お父さん、伊藤さんの奇妙な共同生活が始まり、お父さんと伊藤さんの間に不思議な友情が芽生える。だがある日、お父さんが突然行方不明になってしまう…。

ヒロインと歳の離れた同棲相手、ヒロインの父親との奇妙な共同生活を描く「お父さんと伊藤さん」。原作は中澤日菜子の同名小説だ。34歳のヒロイン・彩は、正社員や結婚などに価値観を見出さず、自由きままに平凡に、でも穏やかに毎日を暮らしている。この肩の力が抜けた感じがとてもいい。同性相手の伊藤さんもまた、給食センターでアルバイトをしながら、これまた淡々と日々を送っている。バツイチであることや、子どもがいること、彩のお父さんが行方不明になる大ピンチには、どこからともなく情報を得て、タダモノじゃない感じを醸し出すが、そのことは本作の重要事項ではない。お父さんと伊藤さんのとぼけた友情が微笑ましいが、爆弾のように激しい性格のお父さんが行方不明になってからは、それぞれが家族の在り方について真剣に考えるようになる。お父さんが大事に抱えている箱の中身は何だろう。お父さんはいったい誰と暮らすのが望みなのか。彩と伊藤さんの関係は新たな展開を迎えるのか。答えを観客が追い求めても、映画ははっきりとした結論を提示しない。この演出がリアルだ。年老いた(少しボケ気味)親への接し方や、アラサー女性の生き方に、もともと正解などないし、何をもって成功、あるいは幸せとするかなど、個人差があって当然である。無理に頑張る必要はないが、日常を大切に生きていくことは忘れてはいけない。この映画、ボンヤリとユルい話に見えて、なかなか鋭い佳作だ。ヒロインを自然体で演じる上野樹里、ひょうひょうとした伊藤さん役のリリー・フランキー、すっとぼけているのに哀愁があるお父さん役の藤竜也のアンサンブルがいい味を出している。
【70点】
(原題「お父さんと伊藤さん」)
(日本/タナダユキ監督/上野樹里、リリー・フランキー、藤竜也、他)
(自然体度:★★★★☆)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
お父さんと伊藤さん|映画情報のぴあ映画生活

SCOOP!

SCOOP! 豪華版Blu-ray/DVDコンボ
かつて写真週刊誌「SCOOP!」に所属し、数々の伝説的なスクープ写真を撮ってきた凄腕カメラマンの都城静は、ある出来事をきっかけに報道写真への情熱を失い、今ではフリーの芸能スキャンダル専門パパラッチに転身。何年も、借金まみれの自堕落な日々を送っていた。そんな静が「SCOOP!」に配属されてきた新人記者・行川野火とタッグを組むことになる。まったくかみ合わない静と野火はケンカばかりだったが、情報屋のチャラ源からのネタと、場数を踏んできた静のカン、そしてド新人の野火の度胸を武器に、やがて次々にスクープをものにするようになる。そんな中、二人は、日本中が注目する大事件に遭遇するが…。

写真週刊誌の編集部を舞台に、落ち目の中年パパラッチと新人記者のコンビの活躍を描く「SCOOP!」。原作は、1985年製作で幻の作品と呼ばれる原田眞人監督・脚本作品「盗写 1/250秒」だ。福山雅治の初の汚れ役ということで話題だが、ダーディーでエロくて、だらしないのに、それでもカッコイイ男に見えるのが、福山の強みである。物語前半は、凸凹コンビの軽妙なやり取りから、次々にスクープをものにしながら共に成長していく姿を、中盤はまさかの奇策で大スクープをものにするカメラマンと記者、そして編集部の仕事ぶりを描く。終盤には、衝撃的な展開が待っているのだが、何しろこの映画、配給会社よりかん口令(ネタバレ禁止)が出ているので、詳細は明かせない。思わず「!」のラストとだけ言っておこう。芸能人のスキャンダルを追うパパラッチは、一般的に好印象を与えない仕事だが、本作では、そんな写真週刊誌を作る人々の意地や本音、低俗なスキャンダルを欲する大衆心理をも垣間見ることができる。静はカメラマンとしての誇りや情熱を心のすみに隠しながら、あえてワルぶっていて、彼を愛する女たちはそのことを知るからこそ、惹かれていくのだ。ミュージシャン、俳優以外にも写真家としての顔を持つ福山雅治には、願ったりの役だったのかもしれない。若手演技派の二階堂ふみは、エキセントリックな演技で持ち味を発揮するが、今回は素直さが魅力の女の子の役で、上手さと新鮮さを見せている。一番印象に残るのはチャラ源を演じるリリー・フランキーの怪演。チャラ源と静の、少しいびつな友情に哀愁が漂っていた。
【60点】
(原題「SCOOP!」)
(日本/大根仁監督/福山雅治、二階堂ふみ、リリー・フランキー、他)
(ダーティー度:★★★★☆)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
SCOOP!|映画情報のぴあ映画生活

シェル・コレクター

シェル・コレクター [Blu-ray]
貝類学の権威である盲目の学者は、家族と離れひとり沖縄の孤島で貝を兎集する厭世的生活を送っていた。ある日、島に流れ着いた女流画家・いずみの奇病を、偶然にも貝の毒で治してしまったことから、静かな日々が一変。人々が貝毒による奇跡的な治療法を求めて次々と島に押し寄せるようになる。そこには、学者の息子・光や、同じく奇病を患う娘・嶌子を助けようとする地元の有力者・弓場の姿もあった。同じ頃、島の近くの火山が静かに噴火のきざしをみせていたが…。

盲目の貝類学者が、生きる意味を探る異色ドラマ「シェル・コレクター」。原作は、アメリカの作家アンソニー・ドーアの短編で、本作では、舞台をケニア沖の孤島から沖縄の離島へと移し、沖縄特有の基地問題もさりげなく反映している。また震災後の日本の不穏な空気や、自然に対する畏敬と恐れ、怒りや不条理など、さまざまな感情を盛り込んでいる。ストーリーはどこか寓話のようで、主人公の学者の心象風景は、貝の美しい螺旋や、女流画家が描く抽象的な絵、また水中撮影でとらえられた海の映像で表現。雄大な自然と小さな人間との対比、蔓延する奇病やそれを治す不思議な貝、学者と画家とのエロスなども、すべては映像で語る趣向だ。説明はほとんどない。だからこそ、学者が盲目という設定が効いてくる。目で見るのではなく、触って感じて物事を見極める、体感する作品ということだ。決してわかりやすくはないが、時にはこんな映画で感性をきたえてみるのもいいだろう。久しぶりの単独主演となるリリー・フランキーは、イラストレーター、作家、ミュージシャンなど、俳優以外にも多くの顔を持つ才人。いい意味でのボーダーレスな雰囲気を醸し出していた。
【60点】
(原題「シェル・コレクター」)
(日本/坪田義史監督/リリー・フランキー、池松壮亮、橋本愛、他)
(カルト度:★★★★☆)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
シェル・コレクター@ぴあ映画生活

恋人たち

恋人たち [Blu-ray]
橋梁点検の仕事をしているアツシは、数年前、愛する妻を通り魔殺人事件で失い、今では極貧生活を送っている。自分に関心を持たない夫とソリが合わない義母と暮らしながら、パート仲間と皇室のおっかけをしている主婦・瞳子は、パート先の取引先の男と親しくなる。完璧主義のエリート弁護士・四ノ宮は、同性愛者で高級マンションで恋人と暮らしているが、学生時代からの親友・聡のことを秘かに想い続けていた…。

「ハッシュ!」「ぐるりのこと」の橋口亮輔監督の、実に7年ぶりの新作が「恋人たち」。フランス映画で同名のタイトルの映画があるが、本作は、甘い恋模様とは無縁。それぞれに事情を抱える男女三人が、社会の理不尽や偏見、厳しい現実に容赦なくさらされる人間ドラマだ。アツシ、瞳子、四ノ宮の3人は、心の中にどす黒い闇を抱えていて、時折見せる、虚無的な表情が印象的。驚くのは、この主要キャラクターを演じているのが、素人に近いほとんど無名の俳優たちだということだ。橋口監督は、ワークショップで即興演技を指導して、演技の訓練をしたとのことだが、この実験的ともいえる演出が、功を奏している。3つの物語は重なる部分もあるが、どれも絶望的なまでに孤独感が漂う。現実社会の冷たさを、犯罪被害者へ冷たい司法制度や同性愛者への偏見で表す一方で、主要キャラ3人の弱さやエゴも容赦なくあぶりだした。橋梁点検に象徴されるように、内部から腐食している社会は、明らかに病んでいる。それでも人は生きていかねばならず、ささやかな希望を感じとって前を向くしかないのだ。好みとしては断然「ぐるりのこと」が好きだが、「ぐるりのこと」が完璧に計算された作品だとしたら、本作は原石のような面白さがある。
【60点】
(原題「恋人たち」)
(日本/橋口亮輔監督/篠原篤、成嶋瞳子、池田良、他)
(再生度:★★★★☆)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
恋人たち@ぴあ映画生活

野火

野火 [Blu-ray]
日本軍の敗戦が濃厚な第2次世界大戦末期。フィリピン戦線・レイテ島で、一等兵の田村は結核のため野戦病院へと送られるが、食糧難のため早々に追い出される。だが部隊からも拒否され、行くあてもなくジャングルを彷徨うことに。飢えと暑さと孤独の中、撤退中の部隊と合流した田村は徐々に正気を失っていく…。

国際的にも評価が高い塚本晋也監督が私財をなげうって作った、自主製作映画「野火」の原作は、戦争文学の代表作である大岡昇平の同名小説。かつて名匠・市川崑監督が1952年に映画化しているが、本作はリメイクという感じではない。市川版が正攻法のドラマとすれば、塚本版は作家性が強いシュールなインディーズ映画だ。主人公・田村一等兵は監督自身が演じていて、ごく平凡な男が、戦争という極限状態に放り込まれ、少しずつ人間性を失っていくプロセスが冷徹なまでに描写される。特に映像は鮮烈だ。原色の自然の中に黒々とした人間がいるかと思えば、スプラッタ・ホラーに近い衝撃的な人体破壊も。有名な“猿の肉”についてもしっかりと描かれる。もはや主人公が戦うのは敵兵ではなく、自分を“肉”と見る同胞という狂気。これこそ、戦争とは人間が人間でなくなる蛮行なのだと思い知る。低予算の自主映画とは思えない強烈なインパクトを残す本作、戦後70年という節目の年だからこそ、この映画の底知れない恐ろしさ、戦争の狂気が胸に迫る。
【70点】
(原題「野火/FIRES ON THE PLAIN」)
(日本/塚本晋也監督/塚本晋也、リリー・フランキー、中村達也、他)
(シュール度:★★★★☆)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
野火@ぴあ映画生活

凶悪

凶悪 [Blu-ray]
死刑囚の告発で明かされる、おぞましい人間の本質を描く衝撃的な社会派サスペンス「凶悪」。出演俳優たちの張りつめた演技合戦が見所。

ジャーナリストの藤井は死刑囚・須藤から一通の手紙を受け取る。取材を兼ねて面会に行くと、須藤は、自らの余罪を告白。さらに、仲間内で“先生”と呼ばれていた、全ての事件の首謀者で、不動産ブローカーの木村の罪を告発し、まだ明るみに出ていない殺人について衝撃的な事実を語った。上司の反対を押し切って、半信半疑のまま須藤の証言を裏づけるため取材を始めた藤井だったが、次第に事件にのめり込んでいく…。

原作は、宮本太一氏のベストセラーノンフィクション「凶悪 ある死刑囚の告発」。実際に1人のジャーナリストが死刑囚の告発から闇に埋もれた事件を掘り起こし、犯人逮捕へとつながったというから、ジャーナリズムの勝利ともいえる内容だ。映画は、“先生”こと木村が罪を犯しながらのうのうと娑婆で生き延びているのが我慢ならないと感じたヤクザの須藤が、雑誌記者の藤井に事件の全貌を語る形で進んでいく。自分の余罪を増やすこの告発は、果たして本当なのか? 須藤の真の目的とは? というサスペンスも同時進行。さらに、雑誌としてこの事件が“売れないネタ”であるにもかかわらず、事件にのめり込み、人間の奥底に潜む、真の凶暴性にからめとられていく藤井の深層心理に迫る人間ドラマでもあるのだ。事件は暗く、暴力的で、血生臭い場面も多数ある。高齢者を食い物にし、金銭への飽くなき欲望をたぎらせる様は、現代社会の病巣そのものだ。だがこの映画の見所は、結果が分かっているストーリーより、むしろ俳優の演技の凄みにある。主演の山田孝之は若手では屈指の演技派だが、ここでは、本来、俳優は本職ではないピエール瀧とリリー・フランキーに存在感が圧倒的なのだ。本職はミュージシャンであるピエール瀧が演じるヤクザの須藤は、極悪の権化ともいえる先生と悪事の限りを尽くすが獄中で激変する。狙ったものかそうでないかは別として、結果として藤井を利用し尽すキャラクターはすさまじいの一言。一方、先生役のリリー・フランキーは近年俳優として高く評価されているが、本職はイラストや文筆業。倫理観が決定的に欠如する男を、あえて軽く演じたことが逆に事件のおぞましさを増した。この異業種俳優二人が演じる、日常的な狂気が、背筋を凍らせる。監督は故・若松孝二監督に師事してきた新鋭、白石和彌。地味で暗い内容ながら力強い作品に仕上がった。ラストの藤井のエピソードにかすかな希望が込められていて、救いの光が見える。
【70点】
(原題「凶悪」)
(日本/白石和彌監督/山田孝之、ピエール瀧、池脇千鶴、リリー・フランキー、他)
(バイオレンス度:★★★★★)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!
人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
凶悪@ぴあ映画生活

40歳問題

40歳問題 [DVD]40歳問題 [DVD]
アラフォー世代の思いを、音楽を作るプロセスで追ったスタイルが面白い。80年代のバンドブームでデビューし、今や40代になった浜崎貴司、大沢伸一、桜井秀俊の3人に対して“テーマソングを作る”という難題を強引に押し付ける。性格も生活も音楽もまったく違うスタンスの3人が向き合ったのは、40代としての悩みと音楽に対するこだわりだ。特に大沢伸一のとんがった感覚の要求がすさまじく、他の2人を圧倒する。落ち着いてしまうか、まだまだ挑戦するか。微妙な立ち位置なのが40代のリアルな姿。沖縄から離れた映画を初めて作った中江監督のチャレンジ精神が見える作品で、親が死に、自由に生き死にできる身分になったとの監督の言葉が感慨深かった。
【60点】
(日本/中江裕司監督/浜崎貴司、大沢伸一、桜井秀俊、他)
(クリエイティブ度:★★★☆☆)

人気ブログランキング用バナー

←この記事が気に入ったら、ポチッとクリックしてもらえると嬉しいです\(^o^)/

映画レビュー「ぐるりのこと。」

ぐるりのこと。 [DVD]ぐるりのこと。 [DVD]
◆プチレビュー◆
個人と社会の両方が壊れていく時代の中、決して離れない一組の夫婦。丁寧な人間描写が光る。 【90点】

 画家のカナオは定職さえないがのんびりした性格。一方、妻で出版社勤めの翔子は几帳面なしっかり者だ。対照的な二人は、それでも幸せに暮らしていたが、初めての子供を亡くしたことから翔子の精神はバランスを失っていく…。

 現代の人間関係は、希薄で実態がつかめない。そんな時代に、人ときちんと係わることは面倒に思える。だが同時に、愛おしい側面も確かにある。この映画は、煩わしいと感じるとすぐに人間関係を断ち切ってしまう価値観に、それでいいのか?と静かに問いかけているようだ。私たちの周辺(ぐるり)では、個人的な風も吹けば社会全体を破壊する嵐も起こる。ミクロとマクロは直接的に繋がらなくても不可分にブレンドされ、そこにある。

 そのことを表すのが、この作品の語り口だ。夫婦の歩みを縦軸に、犯罪から見る世相を横軸に描いていく。法廷画家の仕事を始めたカナオが目撃するのは、90年代に起こった連続幼女殺害事件や地下鉄サリン事件など。心を病んで苦しむ妻と、理解不能な悪意で日本中が“うつ状態”の時代は、不思議なほど重なって見える。だが映画は、狂った社会を糾弾するものではない。

 物語の中心にあるのは、どんな時も切れることがない夫婦の絆だ。彼らは決して完璧な人間ではない。思い詰める性格の翔子は、女としての幸せの象徴の子供を亡くした時から心が壊れてしまう。カナオはと言えば、生活力に欠けるだらしない男だ。だが、妻の精神が修羅場に直面した時、なんだか頼りなげに思えた夫が、実は強風になぎ倒されてもしなやかに起き上がる葦(あし)のような人間だと分かる。自分の無力を知るカナオは、翔子を決して責めず、ただそっと寄り添った。この優しさが、まるで空気のようにナチュラルなのだ。過去に家族の不幸を経験したカナオは、悲しみとのつきあい方を知ったのだろう。それは愛する人を見捨てないという彼の生き方のランドマークにもなっている。

 そんなカナオを自然体で演じるリリー・フランキーが実にいい。見る前は、なぜ本職の俳優ではなく彼なのか?と疑問に思ったが、見終われば、彼しかいないと心から感じていた。翔子を演じる木村多江の鬼気迫る演技との対比も鮮やかだ。このキャスティングを実現させた橋口監督自身、うつ病を患った経験がある。そのせいか、心理描写のディテールが実にリアルで、うそがない。

 平凡な一組の夫婦が望んだのは、ささやかな希望の灯(ともしび)だ。「なぜ私といるの?」と病んだ翔子が尋ねる。ヒョウヒョウとしたカナオは「好きだから。一緒にいたいと思ってるよ」とサラリと答えた。この言葉が、翔子の心に再生へ向かう風を吹き込んでいく。心惹かれたのは、夫の仕事にも通じる、絵を描く事だ。翔子が手がけた茶庵の天井画が完成し、夫婦二人が寝転がってそれを見上げる。お互いに突つきあいながら小さく笑った。理解してくれる人がそばにいる。ただそれだけだが、幸せの意味がじんわりと分かった気がする。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)慈愛度:★★★★★

□2008年 日本映画
□監督: 橋口亮輔
□出演: 木村多江、リリー・フランキー、倍賞美津子、他

人気ブログランキング用バナー

←この記事が気に入ったら、ポチッとクリックしてもらえると嬉しいです\(^o^)/

東京タワー オカンとボクと、時々、オトン

東京タワー オカンとボクと、時々、オトン(2枚組) [DVD]東京タワー オカンとボクと、時々、オトン(2枚組) [DVD]
リリー・フランキーの自伝的小説でベストセラーの映画化。ダメなボクとオトンを大きな包容力と愛情で包むオカンを演じる樹木希林が抜群に上手い。落ち着いて考えると、マザコン気味の青年の平凡な話だが「普通」が大切な今の世の中にマッチした。脚本は松尾スズキ。
【50点】
(日本/松岡錠司監督/オダギリジョー、樹木希林、内田也哉子、他)
(母は偉大だ!度:★★★★☆)

人気ブログランキング用バナー

←この記事が気に入ったら、ポチッとクリックしてもらえると嬉しいです\(^o^)/

シネマッシモにようこそ
◇ シネマッシモについて ◇

このブログが気に入ったら、ポチッとクリックお願いします♪
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

映画レビュー用BRバナー
インフォメーション


映画ライター渡まち子が運営するセカンド・ブログ「映画の中に猫がいる」もよろしく!【猫目線】で語る映画評で、のんびり、まったり運営中です(笑)。 猫好きの方、映画好きの方、ぜひ遊びにきてください。相互リンクも募集中!
こちらからどうぞ!
おすすめ情報
作品検索はこちら
Google
WWW を検索
このブログ内を検索
コメント(承認済)
映画レビュー(長文)索引

    
    
    
    
    
    
    
  
    

A−Z
0−9
カテゴリ
お仕事受注
映画評やコラムの執筆、講演など、映画に関する仕事を承ります。連絡はメールでお気軽にどうぞ。

 メールはこちらから↓
cinemassimo555★jcom.home.ne.jp
(★を@に変更して下さい)

執筆やラジオ出演など、メールと電話で対応可能な場合は、全国から仕事を受注していますので、まずはお問合せください。
プロフィール
プロフィール more
◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
おすすめ情報
おすすめ情報

おすすめ情報

楽天市場
おすすめ情報

Archives
相互リンクについて
相互リンクについて

  ↑ 必ずお読みください。
タグクラウド
  • ライブドアブログ