映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
毎日のレビューは分かりやすく簡潔な寸評で、週1本の長文映画レビューでは作品をディープに掘り下げます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる公開作品 ◎
「ファミリー・ツリー」「ダーク・シャドウ」「サニー」

レイチェル・ワイズ

アレクサンドリア

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現在まで連綿と続くさまざまな争いの本質である不寛容の精神を、古代を舞台に描く異色作だが、主人公に実在した女性天文学者をすえた点がユニークだ。紀元4世紀エジプト、ローマ帝国の支配下で栄える都アレクサンドリアは、その繁栄に落日が迫っていた。図書館長の娘で天文学者のヒュパティアは、豊かな知性と自由な精神で弟子たちに慕われている美貌の女性。生徒でもあり、後にアレクサンドリアの長官となるオレステスと、奴隷ダオスは、密かにヒュパティアに想いを寄せている。やがて科学を否定するキリスト教徒たちと、それに屈しない学者たちの間で激しい対立が勃発。キリスト教徒は、図書館を破壊し、民衆を宗教で支配するために邪魔な存在であるヒュパティアを攻撃するようになる…。

主人公のヒュパティアは、本作で初めて映画で描かれる人物だそうだ。アレクサンダー大王によって建設された学問の都が滅んでいく過程で、宇宙を見つめる女性の存在があったとは。この映画で描かれる対立と暴動は古代の出来事なのだが、現代に起こった“エジプト騒乱”を強く思い起こさせる。さらに、暴徒と化したキリスト教徒には、世界各地に存在する現代のイスラム原理主義者が重なるのは必然だ。不寛容と暴力への問題提起が本作のメッセージだが、これほど現代と強くリンクするとは、この映画の製作時は思いもよらなかっただろう。映画にはこういう“生(ナマ)もの”的な要素が多分にある。英知を極めた図書館を作ったのも人間なら、宗教による狂信によってそれらを一夜にして破壊してしまうのもまた人間。消滅したのは、古代世界の七不思議のひとつであるアレクサンドリアの図書館だ。本作はスペクタクルな歴史ものではあるが、CGによって再現された古代都市の姿より、通信衛星から撮影された俯瞰映像の方が印象に残る。つまり作り手のアレハンドロ・アメナーバルは、よりグローバルな視点から物語を見ているということだろう。ヒロインは悲劇の道をたどるが、この映画によって蘇ったことを思えば、信念は決して滅びないと信じたい。凛とした美貌のレイチェル・ワイズが好演だ。
【65点】
(原題「AGORA」)
(スペイン/アレハンドロ・アメナーバル監督/レイチェル・ワイズ、マックス・ミンゲラ、オスカー・アイザック、他)
(エキゾチック度:★★★★☆)


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ブラザーサンタ

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あくまで軽いコメディなのに、オスカー俳優が3人も出演するゴールデンなキャスティングに驚かされる。主人公は、聖人サンタクロースを弟に持つ、出来の悪い兄フレッドだ。兄弟それぞれの屈折ぶりと家族の和解を、クリスマス直前の北極を舞台に楽しく描く。サンタの仕事ぶりにも査定が入るなど、厳しい世相への皮肉もチラリ。父親の存在感の薄さが気になるが、“兄弟の葛藤を乗り越える会”のくだりが多いに笑える。
【55点】
(原題「FRED CLAUS」)
(アメリカ/デイビッド・ドブキン監督/ビンス・ボーン、ポール・ジアマッティー、レイチェル・ワイズ、他)
(季節感度:★★★★☆)

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ファウンテン 永遠に続く愛

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純愛路線の宣伝に惑わされるが、実は哲学的な死生観を語るファンタジーだ。愛する人のために永遠の命を捜し求める、3つの異なる時代のストーリーが平行する。アロノフスキーらしい渋さではなく、派手できらびやかな映像に違和感を覚えるが、命の木に触れた瞬間に起こる現象は驚愕だ。
【65点】
(原題「THE FOUNTAIN」)
(アメリカ/ダーレン・アロノフスキー監督/ヒュー・ジャックマン、レイチェル・ワイズ、エレン・バースティン、他)
(ファンタジー度:★★★☆☆)

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ナイロビの蜂

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◆プチレビュー◆
欧米の国家や企業の腐敗など、アフリカという土地が持つ問題性が描かれ、硬派な映画の本領。レイチェル・ワイズはアカデミー助演女優賞を受賞。しかし、出番の少ない彼女の存在を際立たせたのは、レイフ・ファインズの演技力だ。

穏やかな外交官のジャスティンは、情熱的な女性テッサと恋に落ち結婚。アフリカに赴任するが、テッサは救援活動に熱心なあまり何者かに命を狙われて命を落とす。妻の死には製薬会社の陰謀がからんでいるようだった。独自に調査をはじめるジャスティンだったが…。

まずキャスティングが素晴らしい。善悪両方を演じられるレイフ・ファインズと、ハリウッド大作でもインディペンデント映画でも柔軟にその演技力と魅力を発揮するレイチェル・ワイズ。二人に共通するのは演技に品があることだ。

物語は、妻の死の真相を残された夫が探る形で進行する。生前は互いの違いを認めて距離をおいていた彼ら。だが、逝ってしまった妻テッサのことを知るほどにジャスティンは彼女に近づいていく。製薬会社がアフリカの貧しい人々を使って新薬の実験を行っていたこと、妻がそれを阻止しようとしていたこと、さらにテッサは全力でジャスティンを守ろうとしていたこと。全てがスリリングで感動的だ。そして最後にジャスティンがとる行動に気高さと強い愛情が感じられて忘れ難い余韻が残る。

フェルナンド・メイレレスはブラジル出身。雑多な人々がひしめくスラム街や乾いた台地の映像センスが独特でこれが映画の大きな魅力だ。原作は冒険小説を得意とするジョン・ル・カレ。国家の腐敗を描くため発禁本扱いだった小説の映画化を許可したケニア政府の、意外な懐の深さも付け加えたい。

□2005年 イギリス映画 原題「The Constant Gardener」
□監督:フェルナンド・メイレレス
□出演:レイフ・ファインズ、レイチェル・ワイズ、ピート・ポスルスウェイト、他

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コンスタンティン

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◆プチレビュー◆
紅蓮の炎の地獄の風景に、被爆地の広島・長崎のイメージが重なってしまった。思わぬところで自分の“日本人”度を再確認してしまった。長〜いエンドロールのあとに大事なワンシーンがあるのでお見逃しなく。

子供の頃から悪魔の姿が見えたジョン・コンスタンティン。彼の仕事は悪魔祓い(エクソシスト)の探偵だ。超常能力を使ってこの世に紛れ込んだ悪魔を地獄に送り返している彼だが、ある日、天国と地獄のバランスが崩れはじめている気配を感じる…。

まるでマンガのような展開だ…と思ったら、やっぱり原作は漫画だった。アメリカンコミックの密かな人気シリーズは、キリスト教の精神を見事に踏襲。天国と地獄、天使と悪魔、神とサタンと、VS形式がすこぶるわかりやすい。微妙なポジションなのが、主人公の探偵コンスタンティンだ。

皮肉屋でなげやりな上に、自己中心的なアンチ・ヒーローのコンスタンティンだが、かつて2分間だけ自殺した“大罪”で地獄行きが決まっている。それを許してもらおうと、せっせとエクソシストをやっているというから、案外小心者で可愛いヤツだ。いや、一度うっかり見てしまった地獄を怖がるオーソドックスな男なのである。

そのコンスタンティンが天国と地獄のバランスの崩壊を感じはじめた頃、女性刑事アンジェラが双子の妹の自殺の真相を探り、彼の元にたどり着く。きわどいところで恋愛関係にならないのが、この映画の新しさだ。何しろ、異様な容貌の悪魔がひっきりなしに登場するので、ホレたハレたと浮かれるヒマがない。悪魔との対決や意外なところに潜む敵との対峙で、ヒーローになりたがらないヒーローは大忙しなのである。

キリスト教や聖書の知識があるとより楽しめる1本だが、判らなくても雰囲気はつかめるので心配は無用。いわく有り気な小道具が結構アナログなのが楽しめる要因か。デフォルメされたキャラクターや、手抜きナシの美術が功を奏して、アクション・ホラー・ファンタジーとして合格の出来栄えだ。演技うんぬんは問題外という気さえするが、そんな中、天使役のティルダ・スウィントンの中性的な魅力が際立っていた。

□2004年 アメリカ映画  原題「Constantine」
□監督:フランシス・ローレンス
□出演:キアヌ・リーブス、レイチェル・ワイズ、ティルダ・スウィントン、他

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ニューオーリンズ・トライアル

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◆プチレビュー◆
ハックマンとホフマンは実は無名時代からの親友同士で、今回が初共演。裁判所のトイレで、本音でやり合うシーンは迫力満点だが、二人がサシで言葉を交わす場面はこの1箇所のみ。もうちょっと名優同士の競演を見たかった。

銃を乱射し11人を殺害した男が自殺。2年後、犠牲者の妻が銃器メーカーを相手取って民事訴訟を起こす。原告側の弁護士、被告側に雇われた陪審コンサルタント、陪審員に選ばれた青年と、陪審員の票を売ると持ちかける謎の女がからみあい、裁判は評決の奪い合いへと発展していく…。

原作はリーガル(法廷)サスペンスの名手で、ベストセラー作家のジョン・グリシャム。もともとはタバコ訴訟の設定だが、現代にマッチする銃犯罪に置き換えられている。提案したのはD.ホフマンで、彼の銃犯罪への関心の高さが伺える。アメリカの陪審員制度の問題点を突き、骨太なサスペンスに仕上がった本作。日本でも導入が検討されている陪審員制度だけに、興味をかりたてられる。

陪審裁判は実際には数は少ないが、和解や示談とは無縁なだけに、いざ法廷に持ち込まれると徹底的な対決裁判となる。そこで重要になるのは、陪審コンサルタントの存在。彼らによって裁判の行方がどうにでも転ぶ様は驚かされた。市民の生活や個人の性格を、ハイテク技術を駆使して調べ上げ、裁判に有利な人選へと導く巧妙で緻密な手腕が凄い。裏でこんな組織的な暗躍が行われていては、裁判の公平性など信じられなくなってしまうじゃないか。法廷の駆引き以前に、勝負はついているのだ。

J.キューザック扮する青年が何かを企み陪審員にもぐりこんでいて、金で票を売ろうとするレイチェル・ワイズの謎の美女とも関係があるらしいことは早い段階から示される。何のために?この疑問が物語を引っ張るが、全ての謎が解けたときアメリカ社会の腐敗と犠牲者の悲しみが伝わってくる。金と権力の前で、正義の意味は変わってしまうのか。

G.ハックマンとD.ホフマンの2大俳優を含め、実力者が揃ったが、全員が善悪両方のキャラクターを演じられるタイプであるところがいい。先読みできないおもしろさが物語の行方をスリリングなものにしてくれた。一筋の希望とある種のカタルシスを持って映画は終わるが、裁判の行方や主人公たちのその後より、アメリカ社会の病んだ姿に考えさせられてしまう。かつて「12人の怒れる男」で描かれた“正義は必ず存在する”的な世界は、今のアメリカには期待できないのだろうか。

□2003年 アメリカ映画  原題「Runaway Jury」
□監督:ゲイリー・フレダー
□出演:ジョン・キューザック、ジーン・ハックマン、ダスティン・ホフマン、他

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アバウト・ア・ボーイ

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◆プチレビュー◆
子供嫌いを克服しようと思う人におすすめ。しかし、スタ・トレのMr.スポックみたいな、マーカス君の眉が気になってしょうがなかった。

親の遺産で自由気ままな生活を送る、38歳の独身男ウィル。あとくされのないシングル・マザーをナンパすべく毎日努力の日々だが、ある日、デート相手の友達の自殺未遂を阻止したことから、その息子のマーカスと知り合う。大人びた少年マーカスはぐうたら男ウィルを慕い、彼のアパートへ毎日通うようになる。最初は迷惑顔だったウィルだったが、いつしか自分がマーカスと過ごす時間を楽しんでいる事に気づく。そんな彼の変化は、新しい恋を呼び込むことになるのだが…。

この映画、「ハイ・フィデリティ」のニック・ホーンビィの世界的ベストセラーが原作。「ブリジット・ジョーンズの日記」の男性版と、各種メディアで紹介されているが、タイプは全然違う。ブリジットは人を騙してナンパしたりしないし、むしろ騙されるタイプ。こちらのウィルは女好きではあるけれど人との関わりを煩わしいものとしか思っていないから、女性との関係は別れが前提。だって彼のモットーは「人間は孤島だ。僕はイピサ島だ!」なのだもの。共演者と噂にならなかったのは本作が始めて!とマジメな顔して言っていたグラントが、まさにハマリ役だ。

12歳の少年と、38歳の独身男のモノローグのセリフには、本音と建前のギャップが満載で大いに笑える。同時に、さりげなく二人の過去や背景も説明するので展開もスムーズで、脚本の上手さを感じる。世の中をナナメに見ていて、他人と上手く関われないけど人恋しいなど、実は似ている部分がある二人。お互いに知り合うことで、自分の考えの間違いに次第に気付いていく。

軽妙な笑いの中に、ホロリとさせる仕掛けを隠し、ベタじゃない演出が巧みで、ウェイツ兄弟監督のセンスを感じさせる。あくまでウィルとマーカスの男二人に焦点を絞ってストーリーを展開させたのもいい。ラスト近くに二人が力を合わせて自らの自信を取り戻すイベントが用意されているけど、ここも普通だったら涙の盛り上がり場面になるところをサラりと流す。ブリジットのように抱き合って終わったりはしないけど、彼らの人生観や恋愛感が確実に変わったことが、観客にはちゃんと伝わるのだ。

財産あり、家庭なし、責任なしの気楽な暮らし。ウィルのような生活は都会ならば、ある程度可能だし、正直言うと世の男性の理想の形だったりするのかも。でも、人間関係の煩わしさと素晴らしさを計りにかけたとき、どちらが重い?他人との関わりを面倒に思う時はあっても、やっぱり人恋しいのが本音。イピサ島が魅力的なのは、無人島ではなく、皆が集まる楽しいリゾートだからだし、ウィルが責任ある大人に、マーカスが明るい少年に変わるのもお互いに補いあったから。他人と真剣に関わることが社会参加ができるパスポートなのかもしれない。

それにしても大人っていったい何?家庭を持つことイコール大人という安易な考えは、今の世の中では賛成できない。でも、他人との関わりを避け、無責任に生きることイコール大人失格というのは大賛成だ。主人公はヒーローにならず、少年の家庭環境も変わらないけど、友情を糧に一皮むける二人の男たちの周りには、楽しげで小さなコミュニティが生まれていた。単なるコメディや安易なハッピーエンドとして終わらせることなく、孤独や愛情、そして家族といった深いテーマをチラリと見せて、それをユーモアでくるんだ本作。絶妙なのは、大人になりきれないとコドモ大人と、世の中に背をむけたオトナ子供のコンビだった。

□2002年 アメリカ映画 原題「About A Boy」
□監督:ポール&クリス・ウェイツ兄弟
□出演:ヒュー・グラント、ニコラス・ホルト、トニ・コレット、他

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◆映画ライター、映画評論家
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新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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