映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
毎日のレビューは分かりやすく簡潔な寸評で、週1本の長文映画レビューでは作品をディープに掘り下げます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる公開作品 ◎
「ファミリー・ツリー」「ダーク・シャドウ」「サニー」

レオナルド・ディカプリオ

映画レビュー「J・エドガー」

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◆プチレビュー◆
ディカプリオがフーバーの青年期から老年期までを怪演。伝説の男が信じた正義は現代アメリカの闇を照射する。 【75点】

 FBI初代長官のジョン・エドガー・フーバーは、70代になり回顧録を執筆する。それは、20代で後にFBIとなる組織の長に就任し、50年近く強大な権力を保ちながら、アメリカの“正義”を偏執的に信じた孤独な人生だった…。

 監督イーストウッドと俳優ディカプリオの初タッグで描くのは、権力者の功罪の物語だ。今も賛否が分かれる人物ジョン・エドガー・フーバー。FBI初代長官だった彼は、近代的な科学捜査や膨大なデータベースを構築する一方で、大統領をはじめとする要人の秘密を掌握してファイル化することで、権力を維持した。フーバーが信じた正義や公安は、時に法を曲げることさえ厭わない狂信的なもの。この複雑な人物を、ディカプリオが徹底した役作りで、不気味なほどに熱演する。時代を前後させ、老年のフーバーと、若き日のフーバーを交互に見せる演出は、謎多き人物に、深く、冷徹に切り込む手法として興味深い。

 実際、フーバーにはミステリアスな部分が多く、資料や証言でも真実は容易には見えてこない。イーストウッドは、そのことを逆手に取り、謎を残しながら描くことで、観客それぞれの解釈に委ねた。

 フーバーとはどういう人物なのか。鍵を握るのは、過保護な母親アニー・フーバー、長年の個人秘書ヘレン、腹心の部下で私生活でも“パートナー”だったクライド・トルソンの3人だ。同性愛や女装癖など、さまざまな噂があったフーバーだが、映画は、彼のスキャンダラスな秘密には焦点を当てず、絶大な権力を手にした男の強いコンプレックスと、権力者ゆえの孤独をリンクさせた。イーストウッド映画の特徴である、人物を黒々とした闇に置く撮影が、そのことをより強調し、深い渋みを与えている。

 イーストウッドの狙いは、フーバーが向き合った、禁酒法時代のギャングとの攻防や、リンドバーグ愛児誘拐事件、赤狩りなどの20世紀の事件を通して、米国近代史の光と闇を浮かび上がらせること。それが奇しくも、現代における正義の意味を検証することにつながる。

 フーバーが断行した正義とは、法を越えてまで自分を優位に置き、他者を抑圧する強引なものだった。それはかつて「許されざる者」でジーン・ハックマンが演じた、自分の正義を信じて町を牛耳る保安官の姿にピタリと重なる。そして、現代アメリカの強迫観念にも似た政治とも。市長の経験もあり、政治を知るイーストウッドは、国家の中枢にいた人物の複雑な輪郭をあぶり出すことで、米国が同じ過ちを繰り返してはならないとのメッセージを込めている。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)ミステリアス度:★★★★☆

□2011年 アメリカ映画 原題「J.EDGAR」
□監督:クリント・イーストウッド
□出演:レオナルド・ディカプリオ、ナオミ・ワッツ、ジョシュ・ルーカス、他
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J・エドガー@ぴあ映画生活

映画レビュー「インセプション」

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◆プチレビュー◆
物語は複雑だがスタイリッシュなアクションで一気に魅せるSF娯楽作。夢と現実を結ぶのは願いだった。 【70点】

 コブは、人が最も無防備になる夢の中で、他人のアイデアを盗む犯罪分野のスペシャリスト。国際指名手配中でアメリカに戻れない彼に、大実業家・サイトーが半ば強引に仕事を依頼する。それは他人の潜在意識に入り込み、ある考えを植えつける“インセプション”という最高難易度の犯罪だった…。

 身体を動かさずに物語を見る映画は、夢を見る行為によく似ている。スクリーンの仮想空間の中、私たちは作り手から与えられた物語で、笑い、泣き、悩み、感動する。違いは現実と非現実の境界を知覚しているかどうかだ。そんな極めて映画的な題材“夢”に挑んだクリストファー・ノーランは、作家性と商業性を兼ね備えた稀有な監督である。デビュー作「フォロウィング」では、他人の家に無断で入り込んだが、本作では夢に侵入。しかも都合のいい夢を用意してそこに誘導し、潜在意識を操る。近未来では、夢とは、共有でき、潜入でき、創作できるものだ。ビジネスと犯罪の恰好のフィールドというわけである。

 主人公コブが、命懸けの仕事を引き受けるのは、成功と引き換えに愛する家族のもとへ帰るため。依頼主のサイトーが彼に課した仕事は、ライバル企業のオーナーの跡取り・ロバートに、自分で自分の会社を潰す考えを植えつけるというインセプションだ。成功すれば究極の完全犯罪である。物語は、日本、フランス、モロッコなど6ヶ国を舞台に壮大なスケールで展開する。コブは一流のチームを結成し、周到な計画を立て、現実そっくりの夢の中へロバートを誘いこむが、夢を守る訓練を受けたロバートの抵抗にあった上、最愛の妻モルがたびたび彼の前に立ち塞がった。通常、夢の中で死ぬと目覚めるが、強烈な薬で誘導された夢では、死ぬと潜在意識の虚無に落ちて廃人になる。コブたちは危険な夢の中で敵と激闘になり、事態は思わぬ方向へと発展してしまう。

 入り組んだ物語にはアクションとセンチメンタリズムが同居するが、主戦場となる夢の世界が多重構造というのが面白い。もともと偽造の夢の中、そこでの夢の中で見る夢となると、もはや壮大なだまし絵の世界に近い。瞬時に頭で理解しようとしても、混乱してしまうが、それぞれの世界でド派手なアクションが用意されているので、不思議とストレスは感じない。何しろビジュアルが驚異的なのだ。街が折れ曲がり、無重力で格闘すれば、空間が歪む。階層になった夢のルールで、数分が数年になれば時間が歪む。迷宮の中、コブ自身のトラウマと、意識の深層にある願いがあまりにも切ない。

 夢という無形で無限の素材を使い、犯罪、アクション、ラブストーリーまで組み合わせた前代未聞のこの映画、“邯鄲の夢”にも似た物語はなるほど複雑だが、思わず唸る面白さだ。コブの急所である妻との関係性が、物語を衝撃的なラストへと導いていく。チームの一人で夢の設計師の名前はアリアドネ。ギリシャ神話で、迷宮からの脱出に糸玉を使うことを教える女性の名だ。難問を解決する鍵“アリアドネの糸”は、本作では、現実に戻るために自分だけが感覚を知る小さな独楽(こま)。独楽は回り続けるのか、それとも止まるのか。見る人に解釈を委ねるラストが、いつまでも余韻となって残る。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)スタイリッシュ度:★★★★☆

□2010年 アメリカ映画 原題「Inception」
□監督:クリストファー・ノーラン
□出演:レオナルド・ディカプリオ、渡辺謙、マリオン・コティヤール、他

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映画レビュー「シャッター アイランド」

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◆プチレビュー◆
孤島が舞台の謎解きミステリーの秀作。幻想的な心象風景が美しく、映像センスに鋭さがある。 【70点】

 1954年のアメリカ。連邦保安官のテディは、精神を患った犯罪者の収容施設があるシャッターアイランドにやってくる。鍵のかかった部屋から忽然と姿を消した女性患者を探す捜査だが、次々に不可解な謎が浮かび上がる…。

 このタイプの映画はネタバレ厳禁なので、物語の核心を語れないのがもどかしい。正気と狂気、現実と妄想、被害者と加害者。すべて境界線は曖昧だが、物語には多くの伏線があるので、映像の細部まで目を配っておきたい。やがてそれらがパズルのピースのようにつなぎあわされ、驚きの真実へと導かれる。原作者は「ミスティック・リバー」のデニス・ルヘイン。これだけで、本好き、映画好きには、物語がただのミステリーに終わらないことは想像できるだろう。

 主人公テディには、戦争と妻の死という二重のトラウマによる、深刻なPTSD(心的外傷後ストレス障害)がある。特に焼死した妻の残像は、今も彼の心から離れない。繰り返し登場するフラッシュバックの映像と、失踪事件の謎が同時進行する構成は、複雑だが見るものを引きつける。舞台は暗く澱んだ海に囲まれた絶海の孤島という密室。逃げ場のない場所で主人公は精神的に追いつめられるが、彼の心象風景を表す幻想的な映像が素晴らしい。戦争で目撃した大量殺戮、焼け崩れる妻ドロレスの姿、溺死する子供たち。テディにからみつくようにリフレインするこれらのイメージは、美しく悲痛だ。

 実はテディには、収監されている、妻を殺した放火魔レティスを探して復讐するという隠れた目的があった。失踪した患者レイチェルが残した謎のメッセージ「4の法則」を探ろうとするが、何かを隠すような医師の言葉や食い違う証言に、捜査は混迷、さらについに見つけたレティスの言葉が謎を深めていく。やがて崖の洞窟に隠れていたレイチェルと出会うが、彼女はテディにこう言った。「あなたは決して島から出られない。分かっているでしょう?」。

 テディを演じるレオナルド・ディカプリオの苦悩と焦燥の演技は、本作の大きな見所だ。ディカプリオはマーティン・スコセッシの最近のお気に入りの俳優で、本作で4度目のタッグとなる。かつてのスコセッシ映画の顔であるハーヴェイ・カイテルやロバート・デニーロに比べ、よりナイーヴな面が立ちあがってくるのが彼の個性だ。スコセッシ映画にはしばしば内面に善と悪を混在する人物が登場するが、それは本作でも継承されている。癒えない傷痕が人間の心を蝕んでいき、ついにむき出しの暴力へと至る。カトリック信仰を常に意識するスコセッシには、罪と許しは生涯をかけて取り組むべきテーマなのだ。

 事件の真相は、厳重警備の廃灯台で解き明かされることになるが、物語の重要なファクターとして、ロボトミー手術が登場する。秀作「カッコーの巣の上で」で印象的に描かれていたこの施術は、精神疾患の治療に有効と信じられていた脳の外科的手術だ。この映画の終盤に「どちらがいいかな?いい人間のまま死ぬのと、悪い人間のまま生きるのと」というセリフがある。ロボトミー手術とは精神の死を意味する。孤島での想像を絶する事件によって、自らの心の闇を見てしまうテディ。矛盾に満ちた現実の中で、善良な人間であろうともがいた彼を待つ結末は、やるせなく重い。根底にあるのは底知れない悲しみ。そこにこの作品の暗い感動がある。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)ミステリアス度:★★★★☆

□2009年 アメリカ映画 原題「Shutter Island」
□監督:マーティン・スコセッシ
□出演:レオナルド・ディカプリオ、マーク・ラファロ、ベン・キンズレー、他

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映画レビュー「レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで」

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◆プチレビュー◆
幸せを求めてもがく夫婦の姿が哀しい。タイタニックのロマンスの対極にある辛らつな家庭劇。 【75点】

 1950年代のアメリカ。郊外の新興住宅街に住むフランクとエイプリルは、二人の子供と静かに暮らしている。はためには理想の夫婦に見える彼らは、覇気のない毎日に漠然とした不満を抱き、憧れのパリで暮らすことを思いつくが…。

 レボリューショナリー・ロードとは、主人公たちの瀟洒な家がある通りの名前である。幸せを具現化したその場所は、柔らかい真綿で包まれたディストピアだ。妻はかつて女優を夢見たが挫折。夫は退屈な仕事を義務的にこなすだけ。こんなはずではなかった、自分たちは特別だとの妄想にも似た思いを口に出したときから、喪失感はまるでウィルスのように二人を蝕んでいく。夫が軍隊時代に訪れたパリは、現実逃避の象徴だ。ここではないどこかに行けば幸せになれると信じる彼らは、その決心が人生の修羅場を呼び込むことを知らなかった。

 メガヒット作「タイタニック」で運命の恋を演じたウィンスレットとディカプリオ。彼らが倦怠感をかかえた夫婦の焦燥を体現するようになった成熟に目を見張る。特に、失われた夢を漠然と追う妻を演じるウィンスレットの演技は壮絶だ。不安と焦りが官能に変わる表情には凄みがある。虚ろな日々の不幸に気付いたのは夫も妻も同じだが、それでも夫のフランクは地に足を付けた現実の充足感をも知っていた。だが妻エイプリルの立つゾーンはまるで砂で作られた城のよう。ゆっくりと、でも確実に崩れていく。夫や子供を愛しているのかさえ見失い、内的に壊れ始めた罰なのか、彼女は3番目の子供を身ごもった。そのときから、夫婦の運命は決定的な悲劇へ向かって転がり始める。

 そもそも彼ら自身の夢に具体的なプランは何もない。幸せの意味やその土台を理解していないのだから当然だ。そんな夫婦の真実を見抜くのがジョンという青年だが、彼が精神を病んでいるという設定が秀逸だ。平穏で退屈な日々の虚しさと、それを払拭するパリ移住を語る二人を冷めた目で見つめ、周囲と別の意見を述べるジョン。隣人や同僚が彼らの計画を非常識と思うのが嫉妬心からだということも見抜いている。だが郊外の“理想郷”にいる人間たちは、そこがからっぽな場所だと看破し、抜け出そうとする裏切り者を決して許さない。自分たちの領域を守るためには規格外の人間を否定するしかないのだ。この物語は、実態のない夢をつかもうともがく夫婦が主人公だが、物質的な満足と見せかけの繁栄を謳歌した時代の米国の、歪んだ幸福感がにじんでいる。

 「あの人たち、やっぱり変わっていたわ」。フランクとエイプリルを理想の夫婦と称賛していた不動産屋のヘレンは、すべてが終わった後に彼らの欠点を並べ立てる。諦観の中で生きるヘレンの夫は静かに耳をふさぐ。若夫婦は、夢に押しつぶされ、世間に追い詰められ、愛にとどめを刺された。エイプリルが最後に行うおぞましい行為は、満たされない心の果てに生まれた狂気だ。監督のサム・メンデスは「アメリカン・ビューティー」で残したかすかな希望を、この美しいカップルに与えることを拒んだ。米国が輝いていたはずの時代、心のブラックホールはすでに絶望の扉を開けていた事実を突きつけるかのように。深海に沈む豪華客船より、この家庭が崩壊する轟音は心に響く。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)衝撃度:★★★★☆

□2008年 アメリカ・イギリス合作映画 原題「Revolutionary Road」
□監督:サム・メンデス
□出演:レオナルド・ディカプリオ、ケイト・ウィンスレット、キャシー・ベイツ、他

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ワールド・オブ・ライズ

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ヒゲ面のレオとメタボのクロウ共演のスパイものだが、米国と中東の価値観の違いが面白い。死と隣り合わせのCIA工作員フェリスと、安全な場所から指令を下す上司のエド。彼らの潜入捜査を描く。中東のテロという素材は目新しくないが、敵はおろか味方さえ信じられない状態での緊迫感は最後まで途切れない。最先端のCIA捜査に対して中東のそれは人から人への秘密作戦だ。彼らの考え方の差異が最後の最後でモノを言う展開は考えさせられる。砂漠で人工的に砂嵐を起こし衛星の目をくらます映像が素晴らしい。レオが好演だが、いけ好かない上司役のクロウも上手かった。
【75点】
(原題「Body of Lies」)
(アメリカ/リドリー・スコット監督/レオナルド・ディカプリオ、ラッセル・クロウ、マーク・ストロング、他)
(緊張感度:★★★★★)

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映画レビュー「ブラッド・ダイヤモンド」

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◆プチレビュー◆
紛争ダイヤをめぐる国際的なからくりがサスペンスフルに描かれる社会派ドラマ。ディカプリオが上手さを見せる。 【80点】

内戦が続く90年代のアフリカ・シエラレオネ共和国。反政府軍RUFによって強制的にダイヤモンド採掘場に連れてこられた漁師のソロモンは、そこで偶然に巨大なピンク・ダイヤモンドを発見する。息子を奪われたソロモン、密売人ダニー、女性ジャーナリストのマディーの3人は、それぞれの思惑でダイヤを追う旅に出ることに。やがて極限状態の中、彼らの内面に変化が現れる…。

ブラッド・ダイヤモンドとは、別名“紛争ダイヤモンド”の意味だ。アフリカで採掘されたその宝石は、反政府軍によって闇ルートを通り、欧米各国に渡った末、高値で取引される。その資金で反政府軍は武器を買うことになるが、欧米諸国は金になれば、政府側にも平気で武器を売る。ダイヤの輝きは美しいが人間によって紛争の資金源という醜いカットを施されるのだ。映画はこのからくりを巧みに見せながら、ダイヤによって、自由、家族、真実を求める3人を軸にして、テンポ良く展開する。

映画を使って社会問題を問いかけるのが目的なら、世界中で映画がヒットすればそれだけ効果は絶大になる。ならば、スターを使ってアクション満載、娯楽たっぷりに見せるのは、非常に賢い方法だ。その役割を担うのが、レオナルド・ディカプリオという大スター。どこかアイドルの香りが抜けないこの童顔俳優は、いつのまにか骨太の名演を見せる役者になっていた。彼が演じるのは、元傭兵にしてダイヤ密売人というダークなキャラだが、劇中で淡々と語る自身の過去は凄惨なもの。複雑で陰があり、それでも希望を求めてもがく男を、ディカプリオが熱演。“レオ様”はいつのまにかこんなに成長なさったのだ!

巨大なピンク・ダイヤの隠し場所へたどり着くまでの命がけの行程は、物語を引っ張る魅力に満ちている。ダイヤによって生じるさまざまな利権と、それに伴う綺麗事ではすまないかけひき。さらに、反政府軍によって洗脳された少年兵の問題も上手く織り込んだ。ピンク・ダイヤははたして3人に何をもたらすのか。ダニーとマディーの恋を成就させるには、あまりにも非人間的な状況だが、そんな中で、終盤、ソロモンがダニーに手を差し伸べる場面が感動的。娯楽作としても社会派ドラマとしても見る価値のある、したたかな1本だ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)社会派度:★★★★☆

□2006年 アメリカ映画 原題「BLOOD DIAMOND」
□監督:エドワード・ズウィック
□出演:レオナルド・ディカプリオ、ジェニファー・コネリー、ジャイモン・フンスー、他

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ディパーテッド

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非常に出来がいいリメイクでオリジナルの香港映画「インファナル・アフェア」と比べても遜色がない。最も違うのは、マフィアのボス役のニコルソンのド迫力。ブチ切れ演技が地に見えるからスゴい。M.デイモンとM.ウォルバーグは何だか顔が似ている。
【90点】
(原題「The Departed」)
(アメリカ/マーティン・スコセッシ監督/レオナルド・ディカプリオ、マット・デイモン、ジャック・ニコルソン、他)
(上質リメイク度:★★★★★)

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アビエイター

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◆プチレビュー◆
実物のハワード・ヒューズはコリン・ファレルとエリック・バナを足して2で割ったような男っぽい顔。晩年の奇人ぶりは相当すごかったらしいが、実際のところは全て謎だ。ヒューズを描いた映画として「メルビンとハワード」がある。

わずか18歳で巨万の富を相続したハワード・ヒューズは、24歳で映画製作に進出。30年代のハリウッド黄金期を背景に、映画作りで成功を収めた。彼が追うもうひとつの夢は、世界最速の飛行機を作ることだったが…。

映画と飛行機。20世紀最大の発明という人も多い。人々の暮らしを精神的かつ実質的に豊かにしてくれたこの2つに人生を賭けた大富豪ハワード・ヒューズは、夢追い人で、その夢を実現できる財力を持った人物だ。同時に稀代の変人として伝説化されている。映画は数ある彼のエピソードの中から夢と挫折の分岐点を抽出している。

まず、映画作り。様々な映画女優と浮名を流したヒューズだが、唯一真剣な相手だったのは、キャサリン・ヘプバーン。つかず離れずの存在としてエヴァ・ガードナーも登場する。「地獄の天使」や「ならず者」など彼が作った映画が劇中に登場する。映画界での華やかな恋模様とともに、検閲で権力と戦う骨太な部分も描かれるので、そちらにも注目してほしい。映画はいつも政治とは不可分なのだ。

一方、飛行機作りの方はというと、こちらも多くの伝説を持つ。生死を彷徨う大事故やパンナムとの争い等、どれもスケールが大きい。映画と同様に彼の前に立ちはだかるのは巨大な権力。ヒューズの精神が少しずつ蝕まれるのは、子供時代のトラウマもあるが、飛行機作りの夢と現実との折り合いがつかなかったことが大きい。映画は彼の最晩年は描かないが、未来を夢想する彼が辿った孤独な運命を、後の人々は皆知っている。

名女優ヘプバーンを素晴らしい演技で再現したケイト・ブランシェットがオスカーを受賞した。残念なのは、またしても監督賞を逃した名匠スコセッシ。NY派のスコセッシらしさが薄かったのが災いしたのか。気の毒でならないが、彼の実力は皆が認めるところだ。たとえ賞を逃しても、堂々とした大作で風格を感じる本作の価値は、何ら下がるものではない。

□2004年 アメリカ映画  原題「The Aviator」
□監督:マーティン・スコセッシ
□出演:レオナルド・ディカプリオ、ケイト・ブランシェット、ケイト・ベッキンセール、他

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キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン

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◆プチレビュー◆
30歳に近いディカプリオが28歳のふりをした高校生を演じるというから、ややこしい。でも、ちゃんと16歳に見えるから不思議。実在のアバグネイル本人もフランスでの場面に警官役でカメオ出演している。

1960年代のアメリカ。両親の離婚にショックを受け、家出したフランク・アバグネイルは、まだ高校生だが偽造小切手詐欺を思いつき、パイロットや医者、弁護士に巧みになりすまして大金を手に入れていた。彼を追うFBI捜査官カール・ハンラティはなかなかフランクの手がかりをつかめずにいたが、ふとしたことから、犯人はまだ子供なのではないかと思いつく…。

高校生がパイロットや医者になりすまして、世界中を渡り歩き、小切手詐欺で大金をせしめる。本当か?!と疑いたくなるが、実話だと言われては納得するしかない。60年代初頭というのどかな時代には、人を無条件に信じる空気が満ちていたのだろう。ここには、黒人差別やヒッピー、ベトナム戦争の影も見えない。

若き天才詐欺師と敏腕捜査官の追いかけっこの形をとっているが、実はこの映画、心に傷を負った息子と父の物語が裏テーマだ。フランクが詐欺を繰り返すのは、金の力で、両親の仲が元通りになり家庭の幸せが戻ると信じているから。一方、追う側のカールも離婚した身。フランクを追ううちに、二人は擬似親子的感情を持つようになり奇妙な友情が芽生える。家庭が崩壊し、親から捨てられる子供というのは、スピルバーグの実体験から生まれる毎度十八番の設定なのだ。

レオは19世紀のNYの荒々しさを描いた「ギャング・オブ・ニューヨーク」で、ハンクスは大恐慌時代の殺し屋役「ロード・トゥ・パーディション」で、スピルバーグは暗い近未来SF「マイノリティ・リポート」で、それぞれ深刻な映画をこなした後の本作。肩の力が抜けた、いい意味で軽い作風に仕上がっている。もちろん、M.シーンやN.バイといった脇役の上手さも忘れちゃいけない。特に、息子に詐欺心を植え付けた父親役のC.ウォーケンは、登場するたびに落ちぶれていくが、それでも子供を愛する気持ちと頑張るオヤジの姿を見せる所が泣けてくる。欲を言えば、フランクの詐欺の腕が研ぎ澄まされていく過程の描写が、もっと丁寧であってほしかった。

詐欺の映画の名作といえばすぐに思い浮かぶのは「スティング」。しかし、本作は詐欺の手口や逮捕の捕物帖的要素は二の次だ。その証拠に、本当のクライマックスはフランクが捕らえられた後に用意されていた。逮捕され一度は自由になったフランクの前には2つの選択肢が。自由きままな詐欺師稼業と、堅気の社会人への道。さぁ、どうする。実話だから結果は判っているのに、やっぱりドキドキさせられるのだから、スピルバーグの演出はやっぱりスミにおけない。

ファッションや音楽も明るくノーテンキ。全てのものが、幸せさえもお金で買えると錯覚してしまうような時代には、こんな痛快な犯罪も起こってしまうのか。しかし、憎めない悪党が主人公の映画は実に楽しい。冒頭のタイトルバックのアニメの完成度が、これまた極めて高いのでお見逃しなく。

□2002年 アメリカ映画  原題「Catch me if you can」
□監督:スティーブン・スピルバーグ
□出演:レオナルド・ディカプリオ、トム・ハンクス、クリストファー・ウォーケン、他

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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