映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
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◎ 今週末の公開映画から オススメの1本! ◎
チリ他合作映画「ナチュラルウーマン」

ワン・ビン

苦い銭



中国・東海岸に近い浙江省湖州。縫製工場が建ち並ぶこの町は、住民の8割を出稼ぎ労働者が占めている。人々は過酷な労働条件の下、お金を稼ぐためにがむしゃらに働いていた。雲南省出身の15歳の少女シャオミンもまた、縫製工場で働くため、長距離列車に乗ってやってきた。金が稼げず妻に暴力をふるう夫や酒に逃げる男もいれば、仕事になじめず1週間で故郷に帰るものもいる。カメラは朝から晩まで懸命に働く人々の日常を通して、急激な経済成長を遂げて変貌する現代中国の今を切り取っていく…。

中国の出稼ぎ労働者たちの人生を捉えたドキュメンタリー「苦い銭」。「鉄西区」「三姉妹 雲南の子」「収容病棟」などで世界的に高く評価される中国の名匠ワン・ビン監督の作品だ。いつも通り、唯一無二の被写体にじっくりと寄り添い、個人を丁寧に追うことで社会や国家を浮かび上がらせる手腕は健在である。だが本作で特筆すべきは、ヴェネチア映画祭オリゾンティ部門で脚本賞を獲ったこと。ドキュメンタリーであるにも関わらず脚本賞、である。加えて、人間の権利の重要性を問う秀作に与えられるヒューマンライツ賞も同時受賞しているのだ。只事ではない。

実際、映画を見てみると、現代中国の縮図を見るかのようなドラマチックな“群像劇”に仕上がっている。構成も巧みだ。登場する人々の共通の願いは“とにかく金を稼ぎたい”ということ。「1人騙せば1500元の儲けだ」「社長の気前のよさは2元ね」「200元やるからまずは落ち着け」。ちなみに1元は約17円。どうすればこんなリアルで滑稽なセリフが撮れるのか。ワン・ビン監督とカメラが彼らの暮らしにあまりに自然に溶け込んでいるからなのだが、基本は作り手が相手を尊重しているからだと思う。過酷な毎日の中にも小さな喜びを見出し、激しい夫婦喧嘩のあとにふと寂しそうな表情を見せるたくましくも心優しい労働者たち。大量の服や日本の百円ショップの商品の向こう側に、すべて彼らの姿があるのだ。「苦い銭を稼ぎに行くんだ」とつぶやく出稼ぎ労働者の青年の横顔が、いつまでも心に残る。
【75点】
(原題「KU QIAN/BITTER MONEY」)
(仏・香港/ワン・ビン監督/小敏、元珍、小孫、他)
(リアル度:★★★★★)


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無言歌

無言歌(むごんか) Blu-ray無言歌(むごんか) Blu-ray
中国の近過去を静かなまなざしで見つめるワン・ビン監督が初めて挑戦した劇映画「無言歌」は、フィクションではあるが、実際に起こった出来事とその証言に基づいて作られている。タブー視された国家による弾圧を正面から扱うため、未だに厳しい言論統制下にある中国では上映禁止で、製作も、中国映画としてではなく、外国資本で作られている。

1949年、毛沢東による革命が起こり、1956年に中国共産党は言論の自由と党への批判を歓迎する“百花斉放・百家争鳴”を提唱した。しかしその1年後、政策を転換し、党を批判した者を“右派”と呼んで弾圧する“反右派闘争”が始まる。捕えられた多くの知識人は、中国西部、ゴビ砂漠の荒野の収容所に入れられ、過酷で無益な重労働を強いられた。乏しい食料と強制労働の中、一人、また一人と命を落とす。そんな中、上海から夫に会いに一人の女性が訪ねてくる。劣悪な環境で息耐え、荒野に野ざらしにされた夫の遺体にすがって慟哭する妻の姿は、生きる意欲を失っていた男たちに命の尊さを思い出させるのだ。

文化大革命を前に歴史から消された悲劇である。辺境の地の労働教育農場は、まさに生地獄。寒さと飢えに耐えきれずに人肉まで食らうものも。右派のレッテルを張られた男たちが寝起きするのは、砂漠に掘った穴蔵“”だ。壕とは本来、敵を防ぐために掘って作る溝や穴で、塹壕や防空壕などがその代表。地下のその穴に、土の上に直接、布団を置いて寝起きする。暗い室内には灯りもほとんどなく、非衛生的なそこには、絶望の他に何もない。

歴史の影で辛酸をなめた人々の叫びが聞こえてくるかのような衝撃的な映画だが、同時に圧倒的な映像美で魅せる作品でもある。砂嵐と青く澄んだ空の鮮やかな対比、暗い壕の闇と入り口に射し込む光の精緻な描写、吹きすさぶ風の音。国家権力の不条理とそれをもしのぐ苛烈な自然の中に、どんなに踏みにじられても決して奪えない人間の尊厳が浮かび上がる。原作は、ヤン・シエンホイの小説「告別夾辺溝」。政府の弾圧をかいくぐって作品を世に出したワン・ビン監督の渾身の作で、べネチア国際映画祭をはじめ世界各国の映画祭で絶賛された力作だ。

(出演:ルウ・イエ、リャン・レンジュン、シュー・ツェンツー、他)
(2010年/香港・仏・ベルギー/ワン・ビン監督/原題「THE DITCH」)


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無言歌@ぴあ映画生活
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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