映画通信シネマッシモ


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

ヴェルナー・ヘルツォーク

アラビアの女王 愛と宿命の日々

アラビアの女王 愛と宿命の日々 [DVD]
19世紀後半。イギリスの裕福な家庭に生まれ、オックスフォード大学を優秀な成績で卒業した貴族令嬢ガートルード・ベルは、イギリス上流社会の生活に息苦しさを感じ、テヘラン駐在大使である叔父がいるペルシャへと旅立つ。ガートルードはアラビアの砂漠に魅了され、探検家として、考古学者として、時に諜報活動も行うようになる。彼女は、2度の悲恋を経験しながらも、アラビアの和平を目指し活動を続ける。20世紀を迎え、時代の大きなうねりの中で、イラン建国を影で支えた彼女は、いつしか“砂漠の女王”と呼ばれるようになっていた…。

イラク建国の立役者となった英国人女性ガートルード・ベルの半生を描いた「アラビアの女王 愛と宿命の日々」。アラブの民を支援した英国人といえば“アラビアのロレンス”ことT.E.ロレンスが有名だが、彼よりも少し年上で、アラビアの地に情熱を注いだのが、英国人の貴族令嬢ガートルード・ベルだ。ロレンスに比べて知名度が低いこの女性は、自由な旅行者、探検家、冒険家、登山家、考古学者、詩人、作家、そしてアラビア語を解し部族や民族問題にも精通したアラビア通として諜報活動も行ったという、多面的な女性だ。劇中には若きロレンスも登場するが、本作はガートルードの政治的な側面は重視せず、砂漠に魅せられた女性の2度の悲恋が中心になっている。イラク建国の母と言われながらも、現在までも続く中東紛争の原点という解釈もある人物を描くに当たって、メロドラマのような描き方でいいのか?!という意見もあるだろう。だが、ヴェルナー・ヘルツォーク監督が見据えたのは、政治や恋愛ではなく、人間の力を超えた、砂漠という大自然そのものの魅力だったに違いない。思えばヘルツォーク監督は、南米の秘境や険しい山岳、オーストラリアの大自然など、決して人間に“飼いならされない”圧倒的な自然を背景に多くの映画を作ってきた人だ。ヴィクトリア朝時代、上流社会から飛び出した貴族の令嬢ガートルード・ベルの生き様は破天荒そのもので、まさに砂漠に魅入られた人生だった。ヘルツォーク監督の作品で初となる女性主人公を演じるニコール・キッドマンのたたずまいが気高く美しい。そして彼女の美貌を上回るほど官能的な美しさを見せる砂漠の映像が、何よりも心に残る。
【60点】
(原題「QUEEN OF THE DESERT」)
(アメリカ、モロッコ/ヴェルナー・ヘルツォーク監督/ニコール・キッドマン、ジェームズ・フランコ、ロバート・パティンソン、他)
(歴史秘話度:★★★★☆)
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コブラ・ヴェルデ 緑の蛇

コブラ・ヴェルデ 緑の蛇 Blu-rayコブラ・ヴェルデ 緑の蛇 Blu-ray [Blu-ray]山賊から奴隷商人、やがてアフリカ総督にまで成り上がる粗野な男の半生を描くドラマ「コブラ・ヴェルデ 緑の蛇」。

19世紀初頭のブラジル。極貧の暮らしの中で山賊になったフランシスコ・マヌエルは“コブラ・ヴェルデ(緑の蛇)”と呼ばれ恐れられていた。独特の人格を買われ、農園の奴隷監督に抜擢されるが、農園主の娘3人すべてに手を出し、やっかい払いのように奴隷商人としてアフリカのダオメーへ行くことを命じられる。便宜上、仕官の位を与えられたコブラ・ヴェルデは、そこで戦争資金の調達に追われる王タカバリ、その王を倒し革命を起こした甥カペン王子らとの攻防、共闘の末、アフリカ総督に任命される。だが、突如ブラジルが奴隷制度廃止を宣言。ブラジル、アフリカ双方にとって彼は邪魔な存在になってしまう。コブラ・ヴェルデはいつ果てるとも知れない逃亡を続けるが…。

タランティーノは「ジャンゴ 繋がれざる者」でアメリカの奴隷制度の暗部に新たなアプローチを試みたが、本作は旧西ドイツ時代に鬼才ヴェルナー・ヘルツィークが、得意の“西欧文明VS異文化”の枠組みの中で、奴隷貿易と奴隷商人、奴隷の供給元のアフリカを描いた怪作だ。ヘルツォークは、神話的、土俗的な生命力を追求してきた映画人で、手付かずの自然を好んで取り入れる。アマゾンの密林や荒れ狂う火山、荒れ果てた砂漠に、人類未踏の険しい山岳などが作品の風景として荒々しく広がっている。

どこか寓話のようなこの物語は、ブラジルの荒野や農園から一転、奴隷の供給地アフリカの王国が舞台。主人公コブラ・ヴェルデの数奇な運命は、「海には気をつけろ」との予言の通り、逃亡の果てに海にたどり着き、砂浜で力つきるというものだ。ヴェルナー・ヘルツォークの分身ともいえる怪優クラウス・キンスキーは、相変わらずのハイテンションの演技で物語の太い軸となり、その周辺にヘルツィーク十八番の演出法である、演技経験なしの現地の住民を大挙して配置して、異様な空気をかもし出している。

原作は英国の作家ブルース・チャトウィンの小説「The Viceroy of Ouidah」。善も悪も、不条理さえも飲み込んでしまう、圧倒的な自然の中、この奇怪な物語から何を読み取ればいいのか。文明から隔離された場所でもがくアンチ・ヒーローの美学だろうか。近年のヘルツィークは、どこか分かりやすい物語に帰属してしまった感があるが、80年代、ニュー・ジャーマン・シネマの最終盤の時代に作られたこの作品には、観客に迎合するどころか、見るものを唖然とさせてしまう迫力が残っている。

(出演:クラウス・キンスキー、ホセ・レーゴイ、キング・アンパウ、他)
(1987年/西ドイツ/ヴェルナー・ヘルツォーク監督/原題「COBRA VERDE」)


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世界最古の洞窟壁画3D 忘れられた夢の記憶

世界最古の洞窟壁画 忘れられた夢の記憶 [DVD]世界最古の洞窟壁画 忘れられた夢の記憶 [DVD]
ヴェルナー・ヘルツォーク監督がショーベ洞窟を3Dでとらえたドキュメンタリー「世界最古の洞窟壁画3D 忘れられた夢の記憶」。3万年以上前のアートと現代の最新技術3Dが融合するのはまるで奇跡のよう。

1994年南仏で発見されたショーヴェ洞窟。仏政府により、遺跡を守るために研究者や学者のみしか入場できなかったこの洞窟に初めてカメラが入った。ドイツの巨匠ヴェルナー・ヘルツォーク監督率いるスタッフは、洞窟の奥に残された古代人の手による絵画を3D映像で美しく立体的に表現していく。

恥ずかしながらこの作品を見るまでショーヴェ洞窟のことは何も知らなかった。文化財保護の観点から、私たち一般庶民は、決して入れないショーヴェ洞窟。その内部は、驚くべき芸術の宝庫だ。牛、馬、サイ、ライオンなどの多くの動物画はとても3万年前のものとは思えないほど上手い。しかも技巧に富んでいていて、岩の凹凸を利用して、見る位置によって絵が変化する“トリックアート”まであるのには驚いた。技法は、スタンプや吹き墨など。動物を描く画家にはシャガールやピロスマニがいるが、彼らの芸術の原点を見る思いがする。思えば個性的な作風で知られるヘルツォークの映画には、「アギーレ 神の怒り」や「フィッツカラルド」「彼方へ」など、原初的な自然と人との関係性をテーマにした作品が多い。本作は、3万年以上前の人間が残した芸術作品に、最先端の映像テクニックで挑む、現代と過去のコラボレーションだ。このモチーフがいかにもヘルツォークらしい。ショーヴェ洞窟と内部の壁画に関しては、現在も調査・研究が進行中。幻想的な音楽と共に、スクリーンで時空を超える体験ができたのは貴重だった。日本語版のナレーションは、ヘルツォークのファンであるオダギリジョーが担当。静かで深みのある声が作品を魅力的にしている。
【65点】
(原題「CAVE OF FORGOTTEN DREAMS」)
(アメリカ/ヴェルナー・ヘルツォーク監督/ヴェルナー・ヘルツォーク、日本語版ナレーション:オダギリジョー)
(アート度:★★★★☆)
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バッド・ルーテナント

バッド・ルーテナント [DVD]バッド・ルーテナント [DVD]
バイオレンスと宗教描写で問題になった同名映画のリメイクである本作は、悪徳と幻想が絡み合う異色のクライム・ムービーだ。ハリケーン襲撃直後のニューオリンズ。刑事のテレンスは、逃げ遅れた囚人を助けたことで表彰され昇進する。だがそんな華々しさとは別に、テレンスは、ドラッグに溺れ、ギャンブルに入れ込み、高級娼婦と関係するなど裏の顔を持っていた。不法移民一家の惨殺事件の担当になったテレンスは、捜査を続けていたが、愛人のフランキーが巻き込まれたトラブルから、ギャングから大金を要求され窮地に立たされる…。

アメリカ映画の問題作を旧西ドイツ出身のヘルツォークがわざわざリメイクするというのが何とも不思議なのだが、それはさておき。ヘルツォーク作品の特徴は、険しい山岳や未踏のジャングルなど、原始的な荒々しさを見せる自然への畏敬の念にある。本作はニューオリンズという都会が舞台だが、ワニの顔をアップで映したり、イグアナの幻覚を見たりと、随所に“らしさ”を感じさせた。腰を痛めていつもヨロヨロと歩いている主人公のテレンスは、警官として不道徳の極みのような男。だからといって刑事としての職務を怠るわけではなく、目星を付けた惨殺事件の犯人逮捕に執念をみせるなど、矛盾したキャラクターだ。そんな彼の内なるせめぎあいを、ニコラス・ケイジが異様な迫力ととぼけたユーモアで怪演している。公私ともに追いつめられ袋小路に入った主人公には、何の計画も切り札もないのだが、なぜかコトがうまい具合に転がる不思議。あっけにとられながら見ているうちに、不条理な暴力の世界と、呪術や異文化が混在する南部のニューオリンズの混沌が合致していく。ラストの奇妙な幸福感は、鎮まることを知らず踊り続ける魂を抱えたテレンスの精神そのものだ。紙一重の人生の吉凶を、寓話のような世界観で描くあたり、さすがは鬼才ヘルツォーク。この人には既存の映画文法など無縁で、主人公の狂気がいつしかヘルツォーク自身のそれに思えてくるから興味深い。ちなみにオリジナルの主役はハーヴェイ・カイテル。ニコラス・ケイジと見比べてみるのも面白い。
【60点】
(原題「THE BAD LIEUTENANT:PORT OF CALL NEW ORLEANS」)
(アメリカ/ヴェルナー・ヘルツォーク監督/ニコラス・ケイジ、エヴァ・メンデス、ヴァル・キルマー、他)
(不道徳度:★★★★☆)

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ヴェルナー・ヘルツォーク

Herzog on Herzog
ドイツ映画の異端児的存在。カルト的人気で一部に熱狂的ファンを持つ。超人や不具者など異常な人間を好んで描き、メキシコ、アフリカ、南米など世界を旅しながら映画を撮る。
お気に入りの俳優はクラウス・キンスキー。

代表作:アギーレ・神の怒り、カスパー・ハウザーの謎、ノスフェラトゥ、フィッツカラルドetc.

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