映画通信シネマッシモ


映画通信シネマッシモは、2018年4月をもって、終了しました。

ブログ終了にあたり、たくさんのあたたかいコメントをお寄せいただき、本当にありがとうございました。
皆さまの映画ライフに少しでもお役に立てたならこれほど嬉しいことはありません。
長い間のご愛顧に心より感謝いたします。

井浦新

光 (集英社文庫)
東京の離島・美浜島で暮らす中学生の信之は、付き合っている同級生の美花が森の中で男に乱暴されている姿を目撃し、彼女を守るために男を殺害する。一方、信之を慕う年下の輔は、父親から激しい虐待を受けているが、島の誰もが見て見ぬふりをしていた。そんな中、島を大災害が襲い、信之、美花、輔、数人の大人だけが生き残る。そして25年後。島を出てバラバラになっていた彼らは都会で再会を果たすことに。妻子と共に平穏に暮らす信之の前に輔が現れ、過去の秘密をバラすと脅す。封印していた罪が蘇る中、信之は、一切の過去を捨てて華やかな芸能界で貪欲に生きる美花を守ろうとするのだが…。

幼い頃の罪を共有する男女3人が再会し、運命に翻弄される人間ドラマ「光」。原作は直木賞作家・三浦しをんの小説で、監督の大森立嗣は、過去にも「まほろ駅前」シリーズで三浦しをん原作の物語を映画化している。そこでも理不尽な悲劇は描かれていたが、本作でのそれは、比較にならないほど暴力的だ。信之、輔、美花は島で閉塞感を抱えて生きているが、東日本大震災を思わせるような大災害は、彼らの思いや悩み、日々の営み、殺人という罪までも、圧倒的な力でなぎ倒す。25年後に秘密を握って現れた輔によって、3人の男女の中にうごめく暴力性は、歪んだ形で伸びる植物のように、苛烈に成長することになる。

罪を背負いながら生きる3人は、原生林と椿の花に覆われた島の呪縛から逃れることはできない。一つの犯罪がさらなる罪を生むのは容易に想像できるが、単なる犯罪ものではなく、大自然に飲み込まれてしまった人間を原初的な野生動物のように描写したところに、この作品の持ち味がある。俳優たちの名演も見所で、静かで冷酷な信之を演じる井浦新、穏やかな狂気を発散する輔役の瑛太の相性も抜群に良い。映画冒頭、ジェフ・ミルズによる不協和音のようなサウンドが大音量で流れ、度肝を抜かれるが、この不穏な音楽にひっぱられるように物語は突っ走る。そして最後には登場人物や観客もろとも、大地や建物を突き抜けて生い茂る運命の巨木に貫かれてしまうのだ。暴力と欺瞞を描く情け容赦ない映画だが、同時に力強い生命讃歌のようにも思える。
【70点】
(原題「光」)
(日本/大森立嗣監督/井浦新、瑛太、長谷川京子、他)
(不穏度:★★★★☆)
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かぞくのくに

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国家の不条理にさらされるある家族を描く「かぞくのくに」。北朝鮮への政治批判ではなく、家族愛を軸に描いて静かな感動を呼ぶ。

帰国事業で16歳で北朝鮮へ移住した兄ソンホが、25年ぶりに病気治療のため日本に帰国する。随行者の監視付きという待遇ながら、久しぶりの再会を喜ぶ両親と妹リエ。だが、北朝鮮で長く暮らすソンホと、生まれた時から自由に暮らすリエ、さらにソンホを移住させた後悔を抱える両親の家族団らんは、どこかぎこちないものだった。そんな中、ソンホは、検査の結果、3ヶ月では治療できないと告げらる。家族は、滞在期間延長を申請しようとしたが、突如、本国から「明日帰国せよ」との命令が下る…。

ヤン・ヨンヒ監督は在日コリアン2世で、自分の家族を被写体にドキュメンタリーを撮ってきたが、本作は、初のフィクションとなる。だが監督自身の体験をベースに作られたこの物語でも、家族をテーマとすることは変わりない。70年代初頭に兄ソンホが北朝鮮に移住した“帰国事業”とは、1959年から84年まで続けられた北朝鮮への集団移住のことを指す。今では考えられないが、当時は経済発展を遂げていた北朝鮮を“地上の楽園”とした啓蒙やマスコミ報道を信じて、日本社会で差別を受け貧困に苦しんでいた9万人以上の在日コリアンとその家族が北朝鮮に渡った。ヤン監督自身がその帰国事情で北朝鮮に渡った兄3人を見送っているという。本作の主人公リエは監督の分身なのだ。もう一人の主人公で、多くを語ろうとはしない兄ソンホに家族はとまどうが、次第にソンホが背負う苦しみや彼の諦念が浮き彫りになっていく。妹リエは監視員の存在にイラつき、同胞協会幹部の父は息子を北朝鮮に送ったことを後悔しながらもそれを口には出せない。叔父は精一杯の援助を申し出、優しい母は現在の状況で最善の方法で息子を愛する。映画は声高に政治批判はせず、理不尽な運命に翻弄されながらも精一杯生きる家族を、静かに、だが力強い筆致で描いている。治療のために日本にやってきたのに何の理由も告げず本国への帰国命令が発せられるなど、北朝鮮という国の思惑は理解しがたい。そんな不条理に“思考停止”で生き延びようと決めたソンホがあまりに悲しいが、それでも妹リエに希望を託す姿に胸がつまった。安藤サクラ、井浦新などの実力派俳優たちが、抑えた演技で熱演。たとえ離れ離れでも互いに思いあいながら生きる家族の姿が切ない。
【65点】
(原題「かぞくのくに」)
(日本/ヤン・ヨンヒ監督/安藤サクラ、井浦新、ヤン・イクチュン、他)
(家族愛度:★★★★☆)
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11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち

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文豪・三島由紀夫の衝撃的な自決とそれに至るまでを描く「11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち」。三島よりも時代にフォーカスしている。

1960年代、三島由紀夫は「仮面の告白」「金閣寺」「憂国」など、次々に話題作を発表し、ノーベル文学賞の候補にもなるなど、作家として絶頂期にあった。時は学生運動全盛期。三島は、文筆業の傍ら、民族派の若者たちを組織化し、民兵組織「楯の会」を結成し、有事の際には自衛隊とともに出動し命がけで決起するべく、訓練を行っていた。だが、暴動が起きても警察と機動隊がこれを治め、自衛隊の出る幕はない。三島と楯の会の若者たちの苛立ちは頂点に達し、ついに自ら行動を起こす決意を固める。向かったのは、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地だった…。

メッセージ性の強い作品を発表し続ける若松孝二監督の、「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」「キャタピラー」に続く“昭和3部作”の完結編だ。作家・三島由紀夫が、1970年11月25日に陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地に篭城し、バルコニーで演説、その後、割腹自殺した事件をテーマとするが、映画は三島の行動を否定も肯定もせず、また、作家としての三島論も登場しない異色の三島像となっている。若松監督らしいのは、ニュース映像をふんだんに用いて、時代の空気を再現していることだ。浅沼稲次郎社会党委員長刺殺事件、安田講堂事件、新宿騒乱、金嬉老事件、よど号ハイジャック事件と、まるでドキュメンタリーか実録もののように、モノクロの映像と新聞記事が登場する。三島自身も常に国を憂いてはいたが「楯の会」の若きメンバーの熾烈な祖国愛と三島信奉が、次第に三島を破滅へと追い詰めていく様が、痛々しい。本作は三島の美学や右翼的政治思想などには深く言及せず、あくまでも世界的な文豪が壮絶な最期を遂げるに至った経緯を、淡々と描くことで、当時の空気を読み解こうとしているのだ。だがいいようのない怒りをスクリーンにぶつけた前作「キャタピラー」に比べ、メッセージ性は薄い。時折、色彩がストンと落ちてモノクロに近い映像になるのは、やがて起こる悲劇を象徴しているのだろうか。「死は文化だ」と独自の美意識を説く三島を演じた井浦新の熱演、満島ひかりの弟の満島真之介が演じる森田必勝の一途な表情が印象的だ。
【65点】
(原題「11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち」)
(日本/若松孝二監督/井浦新(ARATA)、満島真之介、寺島しのぶ、他)
(壮絶度:★★★★☆)
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