映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」「ユダヤ人を救った動物園」etc.

佐藤浩市

続・深夜食堂

映画 続・深夜食堂 Blu-ray特別版
路地裏にひっそりとたたずむ、カウンターだけの小さな店“めしや”には、マスターの作る味と居心地の良さを求めて、毎晩、客が集まっている。ストレス発散のために喪服を着る趣味がある範子は、実際に葬式で出会った男に惹かれる。老舗のそば屋の息子の清太は、母が子離れしてくれないため、年上の恋人を紹介できずにいた。そして九州から出てきた初老の夕起子は、金に困った息子のため、息子の知人だという男に大金を渡してしまう。春夏秋冬、ワケありの客がめしやを訪れ、それぞれの人生が交錯するが…。

安倍夜郎の人気コミックを基にしたドラマを映画化しヒットを記録した劇場版の続編「続・深夜食堂」。寡黙だが、あたたかい人柄のマスター同様に、今回もまた、ほっこりとしたドラマが紡がれる。だが単なる人情話だけではない。喪服を着るのが趣味のキャリアウーマンの範子は仕事でかかえるストレスに悩んでいるし、老舗そば屋は後継者問題と子離れ、結婚と問題山積み。オレオレ詐欺というのっぴきならない問題も描かれ、きちんと現代社会を照射している。エピソードは前作同様に、人と人との、とりわけ親子の情愛があって、めしやの常連客がそれぞれの役割を果たしながら、問題解決に導いていくというスタイルだ。前作でマスターから救われたみちるが、今度は、息子への複雑な愛情を胸に秘める初老の女性・夕起子を親身になって助ける姿には、このシリーズを象徴する温かさがにじんでいる。みちるはその優しさを「自分はマスターに助けられたから、今度はそのおすそ分けなんです」と表現するのだ。路地裏で暮らすお巡りさんや刑事たち、ヤクザの常連客までもが、めしやに来れば皆“いい顔”になる。ここでは決して豪華な料理は登場しないが、焼肉定食、焼きうどん、豚汁定食などには、涙を隠し味に、人の心を癒す特別な味付けがなされているのだ。それにしてもマスター自身の恋は今回もまた、もどかしい。次回作を期待したくなる映画だ。
【70点】
(原題「続・深夜食堂」)
(日本/松岡錠司監督/小林薫、佐藤浩市、池松壮亮、他)
(ほっこり度:★★★★☆)
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続・深夜食堂|映画情報のぴあ映画生活

64 ロクヨン 後編

64-ロクヨン-後編 通常版Blu-ray
わずか7日間で終わった昭和64年に起こった未解決少女誘拐殺人事件を模した新たな事件が発生し、警察内部に動揺が走る。県警の広報官・三上は、上司の命令で、かつての被害者の父親・雨宮を訪ねるが、同じ父親として複雑な思いを抱く。警察組織内部の摩擦、警察と記者クラブとの対立、警察上層部の画策…。それぞれの思惑がからみあう中、三上は、警察内部の隠ぺいの事実を知ることに。ロクヨンを模した事件は思いがけない展開となっていく…。

横山秀夫の原作を基にしたサスペンス大作の2部作の後編「64 ロクヨン 後編」。事件はいよいよ佳境に入り、過去のロクヨンと現在のロクヨン(模した事件)が複雑にからみあっていく。サスペンスなので、詳細を明かすわけにはいかないが、正直に言うと、前編の方が出来は上。というより、前後編に分けてまで描く必要があったのか?!との疑問がわいた。この物語の個性は、主人公が、刑事ではなく、広報官だという点にある。警察と外部を結ぶこの役目に、スポットライトを当てた功績は大きい。だが、前編でさんざんやった記者クラブとの対立に割く時間が長すぎて、サスペンスとして盛り上がらないのだ。原作との差異は、映画化するに当たって、どうしてもついてまわる問題なので、原作ファンには申し訳ないが、映画化する以上、致し方ないだろう。ただ、この物語は、TVドラマ化もされていて、そちらでは約2時間できっちり収めているのだから、映画版が冗長に感じるファンは多いのではなかろうか。出演者のほとんどが主役級という超豪華キャストは、さすがに見応えがある。元刑事で現広報官という複雑な立場の主人公の熱意と葛藤を、丁寧に演じる佐藤浩市はさすがだし、被害者の父を演じる永瀬正敏の狂気を秘めた執念の演技も見事。見終われば、これは父親たちのドラマだったのだと納得するはずだ。
【65点】
(原題「64ロクヨン後編」)
(日本/瀬々敬久監督/佐藤浩市、綾野剛、榮倉奈々、他)
(対立構造度:★★★★☆)
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64−ロクヨン− 後編@ぴあ映画生活

64 ロクヨン 前編

64-ロクヨン-前編 通常版Blu-ray
わずか7日で終わった昭和64年。その年に起きた少女誘拐殺人事件は、少女が死亡、事件は未解決に終わり、県警の汚点となる。通称“ロクヨン”と呼ばれたその事件から14年が過ぎようとしていたが、当時、事件に当たった元刑事で、今は警務部広報室の広報官となった三上は、時効が迫ったロクヨン解決のために動き出す。しかし、記者クラブとの不和、刑事部と警務部のあつれきに直面し、苦悩することに。さらには、ロクヨンを模倣したような誘拐事件が新たに発生する…。

7日間の昭和64年という、かき消された時間に起こった未解決事件の謎を2部作で描く重厚なサスペンス「64 ロクヨン 前編」。原作は「半落ち」などの横山秀夫による同名小説だ。前後編の2部作で描くだけあって、超豪華キャストによるそれぞれのドラマが複雑にからみあいながら展開する。前編は、どうしても登場人物紹介の色合いが強くなるが、佐藤浩市演じる主人公が、刑事ではなく警務部広報室の広報官というところが、個性的だ。警察内部とメディア、とりわけ記者クラブとの接点である難しいポジションは、決して主人公が望んだものではないが、そこで彼がどう変化し成長していくかが、サスペンスの謎解きとはまた別の、物語の大きな見所となっている。もちろん未解決事件“ロクヨン”の全貌やその裏側にある警察の内部事情、組織と個人のひずみから生じる悲劇は、後編に向けて加速していく仕掛けだ。前編は多くの謎を残して終わり、後編へとつながるので、ストーリーの詳細は明かせないが、昭和天皇崩御という“大事件”の影で忘れ去られた未解決事件は、熱しやすく冷めやすい日本人気質を暗に批判するかのよう。だが決して忘れてはいない人々がいて、彼らの苦悩と執念を、私たちは、後編で見ることになる。
【65点】
(原題「64 ロクヨン 前編」)
(日本/瀬々敬久監督/佐藤浩市、綾野剛、榮倉奈々、他)
(豪華キャスト度:★★★★★)
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64−ロクヨン− 前編@ぴあ映画生活

起終点駅 ターミナル

起終点駅 ターミナル [DVD]
北海道・旭川の地方裁判所判事だった鷲田完治は、妻子ある身でありながら、愛した恋人を失ってしまう。それから25年、完治は自らを罰するかのように、判事の職も家族も捨てて、釧路の地で国選弁護人しか引き受けない弁護士として、孤独の中に生きてきた。そんなある日、弁護を担当した25歳の椎名敦子が完治のもとを訪ね、ある人を探してほしいと頼み込む。家族に見放され一人で生きてきた敦子との出会いにより完治の止まっていた時間が動き始め、敦子もまた完治に心を開いていく…。

直木賞作家・桜木紫乃の短編小説を映画化したヒューマン・ドラマ「起終点駅 ターミナル」は、過去にとらわれ、孤独に生きてきた男の再生の物語だ。愛した女性が自分の重荷になるのを嫌い、目の前で命を絶つという衝撃は、完治を打ちのめし、その後の25年間はずっと、贖罪の日々を送っている。死んだも同然の完治の前に現われ、複雑な事情を抱えた敦子もまた、誰からも見捨てられ死んだような目をして孤独に生きてきた。55歳の初老の男性と25歳の若い女性の関係は、淡い恋愛感情があったとしても、むしろ互いをいたわる親愛の関係だ。北海道・釧路の荒涼とした景色の中、ふとしたきっかけで敦子に料理を振る舞うことになった完治が作る“北国の御馳走”がいい。人間関係を避け孤独に生きる主人公もまた、一緒に食事をする相手がいることによって心がほぐれていくと雄弁に物語っていた。佐藤浩市はベテランらしく表情だけで背負った哀しみを表し、さすがの演技力なだけに、相手役の本田翼の力量不足がかえって目立ってしまったのは残念。これはいったいいつの時代?と思わず首をかしげたくなるほど、古色蒼然としたドラマだが、時の流れに取り残された男の再生の物語には、その方がむしろしっくりくるかもしれない。
【60点】
(原題「起終点駅 ターミナル」)
(日本/篠原哲雄監督/佐藤浩市、本田翼、尾野真千子、他)
(寒々しさ度:★★★★☆)
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起終点駅 ターミナル@ぴあ映画生活

愛を積むひと

愛を積むひと Blu-ray スペシャル・エディション(特典DVD付)
不器用な夫と彼を支えた亡き妻の愛の軌跡を描く「愛を積むひと」。美しい風景の中で綴られる温かいストーリーが心にしみる。

第二の人生を自然豊かな北海道で過ごそうと、東京から北海道に移り住んだ篤史と良子の夫婦。仕事一筋だった篤史がヒマを持て余しているのをみかねた良子は、かねてからの夢だった石塀作りを篤史に依頼する。だが良子は長年患っていた心臓の病を悪化させ他界。悲しみにくれる篤史に、良子からの手紙が届く。夫を心配して良子はたくさんの手紙を残していたのだ。石塀作りを手伝う青年・徹との交流や、ずっと疎遠になっていた娘の聡子との再会。閉ざしていた心を少しずつ開きながら、亡き妻を思いつつ石を積み上げていく篤史だった…。

原作は、エドワード・ムーニー・Jr.の小説「石を積む人」。第二の人生、パートナーを失う悲しみ、そして再生と希望。明らかにシニア向けの作品だが、語り口がとても丁寧で、娘や若者世代の視点もあるので、親子揃っての鑑賞も良さそうだ。妻の良子は明るいしっかり者で何事にも前向き。一方、夫の篤史は不器用で女房依存症。こういう差異もあって、良子を亡くしてからの篤史の悲嘆が際立ってくる。人は一人では生きられないことを、良子は何より手紙で伝えたかったのだろう。石塀作りを手伝う徹のあやまちを許し自分から手を差し伸べ、不毛な恋愛によって断絶状態だった娘の聡子の生き方も肯定する気持ちになった篤史は「石塀は大きくて立派な石だけで出来ているんじゃない。小さくて不恰好な石もちゃんと役割を果たしている」という示唆に富んだ言葉を口にする。その時こそ亡き妻が言った「古い石がそのうえに積まれる新しい石を支えるように、私たちが毎日を精一杯積み上げていくことが、次の世代の生きる支えとなる」という言葉が感動的に響くのだ。タフでハードボイルドな役が多かった佐藤浩市が、珍しく弱さを露呈する普通の夫を好演。「日本で最も美しい村」連合第1号に認定された美瑛町でロケされた映像の美しさにも目を見張る。
【65点】
(原題「愛を積むひと」)
(日本/朝原雄三監督/佐藤浩市、樋口可南子、北川景子、他)
(夫婦愛度:★★★★☆)
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愛を積むひと@ぴあ映画生活

人類資金

人類資金 [Blu-ray]
M資金をめぐる陰謀を描く骨太の社会派金融サスペンス「人類資金」。セリフのほとんどが説明調なのはいかがなものか。

旧日本軍の隠し資産で、戦後ひそかに運用されてきたとされる“M資金”。存在の真偽さえはっきりしないこのM資金をネタに詐欺を繰り返す真舟は、ある日、石という名の青年に導かれて、“M”と名乗る男から、日米の極秘機関が管理しているM資金の強奪を依頼される。盗み出す金額は十兆円。報酬は五十億。とまどう真舟だったが、M資金への興味から依頼を引き受け、やがて世界規模で展開する、命がけのマネーゲームに巻き込まれていく…。

原作者の福井晴敏が脚本を務め、かつて福井の「亡国のイージス」を手掛けた阪本順治が監督する経済サスペンスだ。M資金とは、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)が占領下の日本で接収した財産などを基に、現在も極秘に運用されていると噂される秘密資金のこと。徳川埋蔵金同様、本当にあるのか?!と疑念を持ちつつも、人を“その気にさせる”巨資を使った詐欺が今も後をたたないのは、皆どこかでその存在を信じている証拠だ。本作はM資金は実在するという仮定のもと、詐欺師をコマにして、M資金を「世界を救う」ために使おうという、何とも麗しい話なのだ。何しろ話が大きい。日本、アメリカ、ロシア、さらには架空の発展途上国を舞台に、世界規模のマネーゲームが展開。出演俳優も主演の佐藤浩市をはじめ、日本映画界の豪華キャストが揃った。海外からは、韓国のユ・ジテ、アメリカからヴィンセント・ギャロと、これまた豪華である。ストーリーは、現代の金融資本主義の危うさや虚構の繁栄、真の豊かさなどを人間の良心に訴える形で語っていくものだが、何しろ、セリフのほとんど説明調なのでどうにもテンションが上がらない。クライマックス、森山未來が、長台詞の演説を熱演するのだが、これがまたテンポを削ぐ形になってしまうのがやるせない。これでは映画を見ているというより資料を読んでいるような気持ちになってしまう。いずれにしてもスケールの大きな物語だ。グローバル・キャピタリズムに、善意の楔を打ち込む心意気を買うべきなのだろう。
【55点】
(原題「人類資金」)
(日本/阪本順治監督/佐藤浩市、香取慎吾、森山未來、他)
(説明調度:★★★★☆)
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人類資金@ぴあ映画生活

許されざる者

許されざる者 ブルーレイ&DVDセット 豪華版(初回限定生産) [Blu-ray]
許されざる者 ブルーレイ&DVDセット 豪華版(初回限定生産) [Blu-ray] [Blu-ray]
クリント・イーストウッド監督による傑作西部劇を日本の時代的に置き換えた「許されざる者」。伝説的名作のリメイクの成功例で骨太な秀作。

1880年、開拓が進む江戸幕府崩壊後の北海道。幕府軍の残党でかつて“人斬り十兵衛”と呼ばれて恐れられた釜田十兵衛は、アイヌ人の妻と出会い、刀を捨てて、人里離れた僻地でひっそりと暮らしていた。最愛の妻に先立たれ、ろくに作物も育たない土地を耕す極貧の暮らしを送る十兵衛のもとに、かつての仲間の金吾が賞金首の話を持ってやってくる。無残に切り刻まれた女郎の仲間が賞金を作って敵をうってほしいと懇願しているという。二度と刀を持たないと誓っていた十兵衛だったが、経済的に困窮する日々から抜け出すために再び刀を手にする決心をする。だが彼らが向かうその町には、絶対的な権力を振るう支配者の大石が立ちはだかっていた…。

オリジナルは第65回アカデミー賞で作品賞など4部門に輝いたクリント・イーストウッド監督による西部劇。この傑作を日本という“ローカルな”場所でリメイクできたのは、やはりイーストウッド作品にも出演した国際派俳優の渡辺謙の存在があってこそだろう。時代背景はオリジナルと同じ19世紀。新しい時代へと移り変わり、古いタイプの人間が消え去っていこうとする転換期だ。場所は、乾いた西部から、雪深い未開の蝦夷地へ。冒頭、森で壮絶に戦う十兵衛と、彼が姿を消すその後を、白い雪が覆い隠すビジュアルは、印象深い。オリジナルと同じ設定、違う設定を巧みに使い分けるテクニックは、リメイクが成功する鍵なのだ。ストーリーの骨格は概ね同じで、女郎の敵討ちという、他人のための戦いが、いつしか理不尽に殺された友への弔い合戦へとスライドする。オリジナル同様に、ここにははっきりとした善悪の境界線はなく、主人公も決して正義の側にはいない。ただ彼には罪を背負って生きていくと決めた暗い覚悟がある。町を牛耳る支配者との対峙がクライマックスとなるが、残念なのは、ジーン・ハックマン演じる“巨悪”に比べて佐藤浩市では役不足に感じることだ。無論、佐藤浩市はいい役者だが、ここはもっと年齢が上の大物俳優を使うべきだったのでは。それでも渡辺謙の圧倒的な存在感は文句のつけようがないし、少数民族であるアイヌの存在をストーリーに生かして、物語に深みを増した点は高く評価したい。女性キャラのはかなさと強さ、ラストの主人公の行く末などは、日本の精神風土にフィットさせたものだろう。美しいマジカル・アワーの映像をしっかりと盛り込んだのはオリジナルへの最大級のリスペクトだ。偉大な傑作の名を汚すことなく、骨太な日本映画の秀作に仕上がっている。
【80点】
(原題「許されざる者」)
(日本/李相日監督/渡辺謙、柄本明、佐藤浩市、他)
(重厚度:★★★★★)
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許されざる者@ぴあ映画生活

草原の椅子

草原の椅子 [Blu-ray]
不器用な大人たちが傷ついた少年との出会いで新たな人生に踏み出す「草原の椅子」。桃源郷・フンザの映像が素晴らしい。

カメラメーカーに務めるバツイチの遠間は、取引先の社長・富樫との間に友情が芽生える。また、骨董店オーナーの貴志子と出会い、淡い想いを寄せる。50歳を過ぎて、そんな新しい出会いを経験した遠間は、親の虐待により心を閉ざした4歳の圭輔の面倒を見ることに。遠間、富樫、貴志子の3人は同じ時間を過ごし心を通わせるうちに、圭輔の将来を案じ始める。やがて偶然見た写真に深く感動した3人は、圭輔を連れて、世界最後の桃源郷と呼ばれるパキスタンのフンザを訪れることを決めるのだが…。

原作は宮本輝の同名小説。主人公の遠間や彼の友人の富樫は、不況やリストラなど現実社会の厳しさにさらされて生活している。また貴志子はつらい過去によって心の傷を抱えていた。この物語は、年齢も性別も異なる3人の大人が、自分たちよりもっと弱い存在である圭輔という少年と出会うことによって、よりよい人間になろうとし、もう一度人生を見つめ直して、変わっていく物語だ。タイトルは、身体が不自由な人のために作った左右不対象の椅子を写した写真で、この、見た目は不格好だがその人の体に快適にフィットする世界でひとつだけの椅子の存在がとても効いている。登場人物たちの誰もがその椅子を必要としているし、写真では広大な草原に見えるその場所は実は身近にある小さな場所だったと気付くことも重要だ。写真集に感激し、いきなりパキスタンのフンザへ旅立つというのは少々唐突に思える。だが、人は年齢を重ねると変化に対応する力が弱るもの。懸命に変わろうとする彼らは、そのエネルギーを得るためにフンザという大自然と対峙する必要があったのだろう。物語前半の日本の“世知辛さ”とは対象的に、フンザの解放的な映像には圧倒される。仙人のような老人の深い皺、汚れない砂漠の砂、美しく素朴な大自然。この作品最大の魅力と言えるフンザで、主人公は「怖い」とつぶやく。それは50歳の大人が変化に対して抱く正直な感想だろう。だからこそ、その桃源郷は、新たなスタート地点となるのである。主要キャスト3人が善人なのに対し、ぶっ飛んだ愚母役の小池栄子、穏やかだが心根が病んでいる義父役の中村靖日は、損な役回りだが好演していた。
【60点】
(原題「草原の椅子」)
(日本/成島出監督/佐藤浩市、西村雅彦、吉瀬美智子、他)
(映像美度:★★★★☆)
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草原の椅子@ぴあ映画生活

最後の忠臣蔵

最後の忠臣蔵 [DVD]最後の忠臣蔵 [DVD]
忠臣蔵の後日談を描くことで、死ではなく生によって示す忠義を提示した、忠臣蔵異聞。ストイックな物語をハッとするほど美しい映像が彩り、すみずみまで丁寧な作りの作品だ。吉良邸討ち入りの後、大石内蔵助率いる赤穂浪士は主君に殉じ切腹する。世間では四十七士と伝えられたが、実は2人の男が生き残っていた。一人は、大石から「討ち入りの真実を後世に伝え、遺族の生活を助けよ」と命じられた寺坂吉右衛門。もう一人は、討ち入り前夜に逃亡した瀬尾孫左衛門だ。2人はかつての親友同士。吉右衛門には、誰よりも大石を慕い忠義のために喜んで死のうと誓い合った孫左衛門がなぜ逃亡したのか、16年後の今も解けない謎だった。吉右衛門は最後の遺族を訪ね使命を果たすが、その際、偶然にも孫左衛門と再会する…。

忠臣蔵は何度となく描かれた実話で、主君の仇討と殉死という題材が日本人の琴線に触れるせいか、美化されることが多い。だが時代を経ると単に美談としてだけではなく別の解釈も生まれてくる。松本俊夫が監督したATG作品「修羅」のように、忠義や仇討に異論を唱える異色作も存在するが、池宮彰一郎の同名小説を原作とする本作のスタンスは、忠臣蔵の物語を肯定しながら、死ぬことだけが忠義ではなく、時に死よりもつらい生をまっとうすることで忠義と武士道をとらえなおすものだ。孫左衛門が逃亡した理由は、実は大石内蔵助の隠し子・可音を育てるという大役のためだったことが、物語半ばで明かされる。仮にも討ち入りに参加し、その後生き残ることを命じられた吉右衛門はまだしも、孫左衛門にとってそれは誰にも思いを打ち明けられない孤独な道だったに違いない。その苦しい胸のうちを私たち観客は共有するため、赤穂浪士の遺族から孫左衛門がなじられる場面などはあまりにつらい。しかし、すべてを知った、吉右衛門や浪士たちが駆けつける可音の婚礼行列は、まるで孫左衛門の花道のようで、涙なしには見られない。己を捨て、武士を捨ててまで重い使命を背負い続けた主人公が報われる場面は、深い感動を呼び起こす。

ただ、個人的には孫左衛門の最後の選択は残念。武士として、最後の赤穂浪士としての孫左衛門の強い思いは伝わるし、このような選択をするほど彼の忠義心と16年間の孤独は深かったのは分かるが、それでもなお自分の幸福を得る道を知ってほしかった。劇中の要所に挿入される人形浄瑠璃が、登場人物の想いを代弁する役割を果たしている。静謐な竹林、紅葉の道、揺れるすすき、ふりしきる雪。男たちの過酷な運命と対比するように、劇中に映しだされる日本の四季はあまりにも美しい。何より、ストイックな演技を見せる主演の役所広司の名演が素晴らしい。
【70点】
(原題「最後の忠臣蔵」)
(日本/杉田成道監督/役所広司、佐藤浩市、安田成美、他)
(ストイック度:★★★★★)

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映画レビュー「少年メリケンサック」

少年メリケンサック スタンダード・エディション[DVD]少年メリケンサック スタンダード・エディション[DVD]
◆プチレビュー◆
ダメOLとおやじたちのパンク魂が吠える。炸裂系ハイ・テンション・ムービーの快作。 【65点】

 レコード会社のOLかんなは、動画サイトで美形のパンク・バンド“少年メリケンサック”を発見する。さっそく契約を取ろうと出かけてみると、そこには酒びたりの中年男が。ライブ映像は25年前のものだったのだ…。

 クドカンこと宮藤官九郎は、きっと心底パンク・ロックを愛しているのだろう。このテの音楽に特に思い入れのない私でも、この映画の“パンクぶり”が面白くて引き込まれる。汚物系ネタの連続にはうんざりしたが、それでも、その過激さやデタラメさまでもが可愛く思えてくるから不思議だ。これが情報過多で迫るクドカン・ワールドの威力なのか。

 かんなはお気楽なOLだが、彼氏のマサルの音楽的才能欠如に気付かない一方で、少年メリケンサックを発見する嗅覚もある不思議ちゃんだ。メンバーは実はボロボロ、ヨレヨレのわがまま中年男だったことを上司に言い出せないまま、なりゆきで全国ツアーに出てしまう度胸も併せ持つ。凶暴でキタなくてやる気がないくせに、プライドだけは高いオッサンたちと、彼らに振り回されてキレっぱなしのかんなの旅は、行く先々で騒動を巻き起こし、彼らにビミョーな変化をもたらしながら、とんでもない方向へと向かっていく。

 そんな旅路の果てに、おやじバンドは再び輝くことができるのか。かつて80年代の音楽シーンには、メジャーよりマイナーを良しとする風潮があった。田辺誠一演じる看板歌手を軽薄野郎に描くのは、そのためである。しかし、ネットで勝手に人気沸騰する少年メリケンサックを求めるファンには、もはやメジャーもマイナーも関係ない。そこにある音楽の力が周囲をグイグイ飲み込んでいく。その証拠に、パンクなんか大嫌いだったかんなも、最後には立派にパンク魂を身につけた。ついでに、レコード会社の上司も、彼氏のマサル君までも。

 普通、ロード・ムービーというのは、登場人物の人間的な成長が感動を呼ぶものだが、この映画は、そんなことはおかまいなし。ミもフタもないダメっぷりが、かえって潔い。特に過去のしがらみで反目する佐藤浩市と木村祐一の兄弟の関係性など、無茶苦茶にアナーキーだ。おそらく、イマドキの癒し系ムーブメントに、監督自身が「ノー!」と宣言しているに違いない。カッコ悪くて何が悪い?!ウェルメイドなんかクソくらえだ。それを体現するのが“篤姫”の品位をかなぐり捨てて熱演する宮崎あおいだから、最高にイケている。

 さて、パンクのスピリットとは? 監督曰く、分かってほしいのに、分かってたまるか!と吠えることだそう。言えている。何がしたいか分からなくても何かせずにはいられない。目的ではなく心の衝動だ。傍目にはバカらしいことに夢中になり激突しあうことで、新しいパワーが生まれてくる。この映画は、シャウトする情熱を正面きって描くのが気恥ずかしいのか、確信犯的にハズしながら攻めてくる。オッサンたちの1曲しかない持ち歌「ニューヨーク・マラソン」の本当の歌詞を聞けば、作り手が秘める“照れ”が伝わる…はずだ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)ハチャメチャ度:★★★★☆

□2008年 日本映画
□監督:宮藤官九郎
□出演:宮崎あおい、佐藤浩市、木村祐一、他

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プロフィール
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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