映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
毎日のレビューは分かりやすく簡潔な寸評で、週1本の長文映画レビューでは作品をディープに掘り下げます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる公開作品 ◎
「ファミリー・ツリー」「ダーク・シャドウ」「サニー」

佐藤浩市

最後の忠臣蔵

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忠臣蔵の後日談を描くことで、死ではなく生によって示す忠義を提示した、忠臣蔵異聞。ストイックな物語をハッとするほど美しい映像が彩り、すみずみまで丁寧な作りの作品だ。吉良邸討ち入りの後、大石内蔵助率いる赤穂浪士は主君に殉じ切腹する。世間では四十七士と伝えられたが、実は2人の男が生き残っていた。一人は、大石から「討ち入りの真実を後世に伝え、遺族の生活を助けよ」と命じられた寺坂吉右衛門。もう一人は、討ち入り前夜に逃亡した瀬尾孫左衛門だ。2人はかつての親友同士。吉右衛門には、誰よりも大石を慕い忠義のために喜んで死のうと誓い合った孫左衛門がなぜ逃亡したのか、16年後の今も解けない謎だった。吉右衛門は最後の遺族を訪ね使命を果たすが、その際、偶然にも孫左衛門と再会する…。

忠臣蔵は何度となく描かれた実話で、主君の仇討と殉死という題材が日本人の琴線に触れるせいか、美化されることが多い。だが時代を経ると単に美談としてだけではなく別の解釈も生まれてくる。松本俊夫が監督したATG作品「修羅」のように、忠義や仇討に異論を唱える異色作も存在するが、池宮彰一郎の同名小説を原作とする本作のスタンスは、忠臣蔵の物語を肯定しながら、死ぬことだけが忠義ではなく、時に死よりもつらい生をまっとうすることで忠義と武士道をとらえなおすものだ。孫左衛門が逃亡した理由は、実は大石内蔵助の隠し子・可音を育てるという大役のためだったことが、物語半ばで明かされる。仮にも討ち入りに参加し、その後生き残ることを命じられた吉右衛門はまだしも、孫左衛門にとってそれは誰にも思いを打ち明けられない孤独な道だったに違いない。その苦しい胸のうちを私たち観客は共有するため、赤穂浪士の遺族から孫左衛門がなじられる場面などはあまりにつらい。しかし、すべてを知った、吉右衛門や浪士たちが駆けつける可音の婚礼行列は、まるで孫左衛門の花道のようで、涙なしには見られない。己を捨て、武士を捨ててまで重い使命を背負い続けた主人公が報われる場面は、深い感動を呼び起こす。

ただ、個人的には孫左衛門の最後の選択は残念。武士として、最後の赤穂浪士としての孫左衛門の強い思いは伝わるし、このような選択をするほど彼の忠義心と16年間の孤独は深かったのは分かるが、それでもなお自分の幸福を得る道を知ってほしかった。劇中の要所に挿入される人形浄瑠璃が、登場人物の想いを代弁する役割を果たしている。静謐な竹林、紅葉の道、揺れるすすき、ふりしきる雪。男たちの過酷な運命と対比するように、劇中に映しだされる日本の四季はあまりにも美しい。何より、ストイックな演技を見せる主演の役所広司の名演が素晴らしい。
【70点】
(原題「最後の忠臣蔵」)
(日本/杉田成道監督/役所広司、佐藤浩市、安田成美、他)
(ストイック度:★★★★★)

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映画レビュー「少年メリケンサック」

少年メリケンサック スタンダード・エディション[DVD]少年メリケンサック スタンダード・エディション[DVD]
◆プチレビュー◆
ダメOLとおやじたちのパンク魂が吠える。炸裂系ハイ・テンション・ムービーの快作。 【65点】

 レコード会社のOLかんなは、動画サイトで美形のパンク・バンド“少年メリケンサック”を発見する。さっそく契約を取ろうと出かけてみると、そこには酒びたりの中年男が。ライブ映像は25年前のものだったのだ…。

 クドカンこと宮藤官九郎は、きっと心底パンク・ロックを愛しているのだろう。このテの音楽に特に思い入れのない私でも、この映画の“パンクぶり”が面白くて引き込まれる。汚物系ネタの連続にはうんざりしたが、それでも、その過激さやデタラメさまでもが可愛く思えてくるから不思議だ。これが情報過多で迫るクドカン・ワールドの威力なのか。

 かんなはお気楽なOLだが、彼氏のマサルの音楽的才能欠如に気付かない一方で、少年メリケンサックを発見する嗅覚もある不思議ちゃんだ。メンバーは実はボロボロ、ヨレヨレのわがまま中年男だったことを上司に言い出せないまま、なりゆきで全国ツアーに出てしまう度胸も併せ持つ。凶暴でキタなくてやる気がないくせに、プライドだけは高いオッサンたちと、彼らに振り回されてキレっぱなしのかんなの旅は、行く先々で騒動を巻き起こし、彼らにビミョーな変化をもたらしながら、とんでもない方向へと向かっていく。

 そんな旅路の果てに、おやじバンドは再び輝くことができるのか。かつて80年代の音楽シーンには、メジャーよりマイナーを良しとする風潮があった。田辺誠一演じる看板歌手を軽薄野郎に描くのは、そのためである。しかし、ネットで勝手に人気沸騰する少年メリケンサックを求めるファンには、もはやメジャーもマイナーも関係ない。そこにある音楽の力が周囲をグイグイ飲み込んでいく。その証拠に、パンクなんか大嫌いだったかんなも、最後には立派にパンク魂を身につけた。ついでに、レコード会社の上司も、彼氏のマサル君までも。

 普通、ロード・ムービーというのは、登場人物の人間的な成長が感動を呼ぶものだが、この映画は、そんなことはおかまいなし。ミもフタもないダメっぷりが、かえって潔い。特に過去のしがらみで反目する佐藤浩市と木村祐一の兄弟の関係性など、無茶苦茶にアナーキーだ。おそらく、イマドキの癒し系ムーブメントに、監督自身が「ノー!」と宣言しているに違いない。カッコ悪くて何が悪い?!ウェルメイドなんかクソくらえだ。それを体現するのが“篤姫”の品位をかなぐり捨てて熱演する宮崎あおいだから、最高にイケている。

 さて、パンクのスピリットとは? 監督曰く、分かってほしいのに、分かってたまるか!と吠えることだそう。言えている。何がしたいか分からなくても何かせずにはいられない。目的ではなく心の衝動だ。傍目にはバカらしいことに夢中になり激突しあうことで、新しいパワーが生まれてくる。この映画は、シャウトする情熱を正面きって描くのが気恥ずかしいのか、確信犯的にハズしながら攻めてくる。オッサンたちの1曲しかない持ち歌「ニューヨーク・マラソン」の本当の歌詞を聞けば、作り手が秘める“照れ”が伝わる…はずだ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)ハチャメチャ度:★★★★☆

□2008年 日本映画
□監督:宮藤官九郎
□出演:宮崎あおい、佐藤浩市、木村祐一、他

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誰も守ってくれない

誰も守ってくれない スタンダード・エディション [DVD]誰も守ってくれない スタンダード・エディション [DVD]
犯罪に係わる人間を描く秀作だが、何よりその視点がユニーク。殺人犯の妹の、15歳の少女・沙織を保護する刑事・勝浦は、彼女を世間やマスコミから守るためマニュアルに従い逃避行を続ける。警察が犯罪者の家族を保護するというあまり知られていない行為を通して、社会の矛盾をつきつけてくる。現代性を注入するのが悪意に満ちたネットの暴走だ。過去の事件で心に傷を負った刑事役の佐藤浩市はいつも通り芸達者だが、珍しく普通の脇役を演じる松田龍平もいい。被害者を守りきれなかった警察が、加害者の家族は守るのかとの問いも、重い問題提起だ。ラストに甘さはあるが、それは作品の魅力になっている。懸命に生きると決めた二人を応援したくなるはずだ。
【70点】
(日本/君塚良一監督/佐藤浩市、志田未来、松田龍平、他)
(メディア批判度:★★★★☆)

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次郎長三国志

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正統派だが裏を返せば古臭い時代劇。主演の中井貴一をはじめ役者陣は実力派揃いなのだが。清水の次郎長と妻のお蝶、頼りになる子分たちが織り成す、笑いと涙の人情物語だ。ベタなセリフも含めて、中身は完全に年配の時代劇ファン向け。叔父・マキノ雅弘監督の代表作のリメイクに挑んだマキノ雅彦(津川雅彦)監督の意欲は買うが、自分の娘のドアップを多用するなど、なれあいムードが恥ずかしい。シニア層がターゲットだそうだが、そういう人はオリジナルを見るのでは。宇崎竜童のエンディング・テーマはノリがよく、映画のかったるさをちょっぴり忘れさせてくれた。
【45点】
(日本/マキノ雅彦監督/中井貴一、鈴木京香、岸部一徳、他)
(豪華キャスト度:★★★★☆)

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ザ・マジックアワー

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三谷映画には、虚実の境界にこだわるものが多い。今回のドタバタ劇も、偽者がやがて本物になるいきさつを笑いたっぷりに活写するもの。暗黒街のボスから伝説の殺し屋を探せと命じられた男が、とっさに思いついたのが、三流俳優に演じさせること。ウソが感動を呼ぶというテーマは思えば映画そのもので、爆笑必須のコメディのフリをして、なかなか深い。わざとヘタに演じる佐藤浩市が笑わせるが、数々の名作映画へのオマージュが嬉しかった。
【75点】
(日本/三谷幸喜監督/佐藤浩市、妻夫木聡、深津絵里、他)
(映画愛度:★★★★☆)

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スターフィッシュホテル

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妻の謎の失踪を追う男が主人公のミステリアスなドラマは、日本の怪談と西欧のファンタジーをミックスさせた味わい。監督のジョン・ウィリアムスは日本在住の英国人だ。思わせぶりな映像とストーリー展開だが、イメージ先行でいまひとつ垢抜けない。
【20点】
(日本/ジョン・ウィリアムス監督/佐藤浩市、木村多江、KIKI、串田和美、柄本明、他)
(謎解き度:★★☆☆☆)

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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