最後の忠臣蔵 [DVD]
忠臣蔵の後日談を描くことで、死ではなく生によって示す忠義を提示した、忠臣蔵異聞。ストイックな物語をハッとするほど美しい映像が彩り、すみずみまで丁寧な作りの作品だ。吉良邸討ち入りの後、大石内蔵助率いる赤穂浪士は主君に殉じ切腹する。世間では四十七士と伝えられたが、実は2人の男が生き残っていた。一人は、大石から「討ち入りの真実を後世に伝え、遺族の生活を助けよ」と命じられた寺坂吉右衛門。もう一人は、討ち入り前夜に逃亡した瀬尾孫左衛門だ。2人はかつての親友同士。吉右衛門には、誰よりも大石を慕い忠義のために喜んで死のうと誓い合った孫左衛門がなぜ逃亡したのか、16年後の今も解けない謎だった。吉右衛門は最後の遺族を訪ね使命を果たすが、その際、偶然にも孫左衛門と再会する…。
忠臣蔵は何度となく描かれた実話で、主君の仇討と殉死という題材が日本人の琴線に触れるせいか、美化されることが多い。だが時代を経ると単に美談としてだけではなく別の解釈も生まれてくる。松本俊夫が監督したATG作品「修羅」のように、忠義や仇討に異論を唱える異色作も存在するが、池宮彰一郎の同名小説を原作とする本作のスタンスは、忠臣蔵の物語を肯定しながら、死ぬことだけが忠義ではなく、時に死よりもつらい生をまっとうすることで忠義と武士道をとらえなおすものだ。孫左衛門が逃亡した理由は、実は大石内蔵助の隠し子・可音を育てるという大役のためだったことが、物語半ばで明かされる。仮にも討ち入りに参加し、その後生き残ることを命じられた吉右衛門はまだしも、孫左衛門にとってそれは誰にも思いを打ち明けられない孤独な道だったに違いない。その苦しい胸のうちを私たち観客は共有するため、赤穂浪士の遺族から孫左衛門がなじられる場面などはあまりにつらい。しかし、すべてを知った、吉右衛門や浪士たちが駆けつける可音の婚礼行列は、まるで孫左衛門の花道のようで、涙なしには見られない。己を捨て、武士を捨ててまで重い使命を背負い続けた主人公が報われる場面は、深い感動を呼び起こす。
ただ、個人的には孫左衛門の最後の選択は残念。武士として、最後の赤穂浪士としての孫左衛門の強い思いは伝わるし、このような選択をするほど彼の忠義心と16年間の孤独は深かったのは分かるが、それでもなお自分の幸福を得る道を知ってほしかった。劇中の要所に挿入される人形浄瑠璃が、登場人物の想いを代弁する役割を果たしている。静謐な竹林、紅葉の道、揺れるすすき、ふりしきる雪。男たちの過酷な運命と対比するように、劇中に映しだされる日本の四季はあまりにも美しい。何より、ストイックな演技を見せる主演の役所広司の名演が素晴らしい。
【70点】
(原題「最後の忠臣蔵」)
(日本/杉田成道監督/役所広司、佐藤浩市、安田成美、他)
(ストイック度:★★★★★)
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