映画通信シネマッシモ


映画通信シネマッシモは、2018年4月をもって、終了しました。

ブログ終了にあたり、たくさんのあたたかいコメントをお寄せいただき、本当にありがとうございました。
皆さまの映画ライフに少しでもお役に立てたならこれほど嬉しいことはありません。
長い間のご愛顧に心より感謝いたします。

入野自由

さよならの朝に約束の花をかざろう

映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』オリジナルサウンドトラック
人里離れた土地に住み、ヒビオルと呼ばれる布に日々の出来事を織り込みながら静かに暮らすイオルフの民。10代半ばで外見の成長が止まり、数百年の寿命を持つ彼らは“別れの一族”と呼ばれている。イオルフの少女マキアは仲間といても孤独を感じながら暮らしていた。そんなある日、イオルフの長寿の血を求めてメザーテ軍が攻め込んでくる。イオルフ一番の美女レイリアは連れ去られ、マキアがひそかに想いを寄せていた少年クリムも行方不明になる。何とか逃げ出したマキアは虚ろな心で森を彷徨ううちに、親を亡くした赤ん坊のエリアルを助けることに。少年から大人へと成長するエリアル、少女のままのマキア。流れる時の中で、二人の絆は変化していくが…。

外見が10代のままの少女と年老いていく少年の深い絆を描くアニメーション「さよならの朝に約束の花をかざろう」。「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」シリーズや「心が叫びたがってるんだ。」で脚本を担当した岡田麿里が初監督に挑んだファンタジーアニメだ。数百年の寿命を持つ一族、彼らの血を狙っての闘い、主人公の長い長い旅路、周囲の人々の人生模様。物語は想像以上の広がりを持っていて、連続ドラマで詳細に描いた方がいいのでは…とさえ思う内容だ。裏を返せば、劇場映画では語りきれず駆け足になってしまっている印象を受ける。

他者が歳をとるのに自分はそのまま、あるいは歳をとるスピードが異なるという不思議な設定は、過去にも「アデライン、100年目の恋」や「ベンジャミン・バトン」で描かれているが、それらの実写作品が異なる時間軸の中での出会いを意識しているのに対し、本作は、別れをテーマにしている。だがその別れの本当の意味は、芳醇な時間を共に過ごした、素晴らしい記憶なのだ。流れゆく時間の中で刻まれた永遠の一瞬。複雑で深淵なテーマながら全体的に柔らかい印象を受けるのは、アニメーションという手法ならではだろう。加えて、本作の透明感のある色彩と美しい光の描写のおかげだ。細部まで作り込まれた丁寧なビジュアルが心に残る美しいアニメーションだ。
【60点】
(原題「さよならの朝に約束の花をかざろう」)
(日本/岡田麿里監督/(声)石見舞菜香、入野自由、茅野愛衣、他)
(透明感度:★★★★★)


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映画「聲の形」

映画『聲の形』Blu-ray 初回限定版
ガキ大将だった小学生の石田将也は、聴覚障害を持つ西宮硝子が転校してきたことで退屈な日々から解放される。硝子に対して心無いイジメを繰り返した将也は、ある時を境に自分がイジメの対象になって孤立する。硝子は転校し、将也は自らの殻に閉じこもったまま5年が経ち、二人はそれぞれの場所で高校生になった。将也は伝えたい思いを胸に、硝子のもとを訪れるが…。

元ガキ大将だった少年と聴覚障害を持つ少女を軸に、少年少女たちの切ない青春を描くアニメーション「映画「聲の形」」。「けいおん」を手掛けた京都アニメーションが作画、「たまこラブストーリー」の山田尚子が監督を務める。ふんわりとしたビジュアルはハートフルなラブストーリーを連想させるが、この作品は予想外の重さと深みがある秀作だ。映画冒頭、小学生の将也が聴覚障害を持つ硝子をイジメ抜くシークエンスは、嫌悪感を感じる。さらに将也のイジメに加担していたはずの級友が、手のひらを返したように将也をイジメて将也が孤立する展開には、さらなる嫌悪感。いきなりのヘビーな物語に驚いてしまったが、本当の驚きはその後にやってくる。過去に硝子をイジメたことを悔いた将也は硝子と友達になろうと奮闘する。当然、ラブストーリーに傾くのだが、この物語はそれだけでは終わらず、将也、硝子、彼らの旧友たちと新しくできた友人たち、それぞれの感情と心理を丹念に救い取る群像劇へと変化していくのだ。友情、恋愛、わだかまり、嫉妬、自己嫌悪に鬱屈。思春期の彼らは、混乱しながらも自分の居場所を探している。物語のテーマはコミュニケーション。耳が不自由な硝子は、懸命に思いを伝えようと奮闘する。だが音や声が聞こえるはずの将也や周囲のものたちもまた、誰かに自分の思いを伝えることの難しさを身をもって知ることになる。「友達になって」「好きです」。これらの言葉を伝える手話、表情、声にならない叫びが、もどかしくも切ない。長い原作を129分の映画にまとめた脚本、京都アニメーションの安定した作画、声優たちの感情表現と、すべてのクオリティが高い。わかりやすいハッピーなラブストーリーを期待すると大きく裏切られるが、アニメーションにして、これほどリアルに青春の陰影を描く作品にはめったにお目にかかれない。この物語の登場人物たちが、自分と他者を受け入れようともがく姿に、生きる決意が屹然と立ち上ってくる。
【85点】
(原題「映画「聲の形」」)
(日本/山田尚子監督/(声)入野自由、早見沙織、悠木碧、他)
(心理描写度:★★★★☆)
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