映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「パッセンジャー」「キングコング 髑髏島の巨神」etc.

加瀬亮

劇場版 SPEC 結(クローズ) 爻(コウ)ノ篇

劇場版 SPEC 〜結〜 爻ノ篇 プレミアム・エディション [Blu-ray]
人気シリーズの完結編2部作の後編「劇場版 SPEC 結(クローズ) 爻(コウ)ノ篇」。今回は笑いの要素はほとんどない。

“SPEC(スペック)”と呼ばれる特殊な力を持った犯罪者と対峙する捜査官・当麻紗綾と瀬文焚流。宿敵ニノマエとの死闘を終え瀕死の状態で病院に運び込まれるが、新たな危機が迫っていた。SPECホルダーと人類たちの間で始まろうとしている最終戦争。ある人物によって滅亡へと向かっている世界。ファティマ第3の予言。ソロモンの鍵。全ての謎が紐解かれるその時、当麻の中に眠っていたスペックが目覚める…。

TV版、スペシャル版、劇場版ときて、人気シリーズもついに完結する。過去に登場したSPECホルダーたちが大挙して登場すること、謎めいた白い服の男女の正体、そして最終戦争。その謎解きと結末は映画を見て確かめてもらうとして、刑事魂を共有する当麻と瀬文には、過酷過ぎる運命とあまりにも大きな犠牲が待っている。クライマックスの舞台は、警視庁の屋上だ。スケールの大きな話の割りには舞台設定はこじんまりとしていて、一箇所に集まっての謎解きはTVの2時間ドラマのサスペンスのようで苦笑する。だが、その狭い場所から、東京中を見渡す空が黒い鳥に覆われるシーンは圧巻だ。物語の通奏低音は、スペックという異形をどう扱うかとの問いである。スペックを持つものはもとより、国家権力、謎の男セカイなど、それぞれが独自の解釈によってスペックを操ろうとする中、死んだスペックホルダーを蘇らせる力を持つ最強のスペックホルダーである当麻は、命がけの勝負に出る。登場人物が多く、それぞれがデフォルメされたキャラな上、堤監督の十八番である小ネタも満載で実ににぎやかだ。名残を惜しむファンへのサービスが感じられ、これでは結(クローズ)が2部作の大作になるのも無理はないが、物語そのものは、この爻(コウ)ノ篇だけで十分。ただ、この完結編には凸凹コンビの笑いのかけあいはほとんどない。荒唐無稽でユーモラスな話に見えて多くの命が犠牲になる本作は、佐野元春の名曲「彼女」をほぼフルコーラスで流して終わる。“引き潮のようにすべてが遠のいていく” という歌詞が、ファンが愛した長いシリーズの終焉を静かに飾っていた。
【50点】
(原題「劇場版 SPEC 結(クローズ) 爻(コウ)ノ篇」)
(日本/堤幸彦監督/戸田恵梨香、加瀬亮、北村一輝、他)
(ユーモア度:★☆☆☆☆)
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劇場版 SPEC〜結(クローズ)〜 爻ノ篇@ぴあ映画生活

劇場版 SPEC 結(クローズ) 漸(ゼン)ノ篇

劇場版 SPEC 〜結〜 漸ノ篇 プレミアム・エディション(ポストカードなし) [Blu-ray]
ドラマ、映画ともに人気シリーズの完結編の前編「劇場版 SPEC 結(クローズ) 漸(ゼン)ノ篇」。話はほとんど進まないが何やらシリアスな気配。

SPECホルダーの中でも、時を止めるという最強の能力を持つニノマエとの死闘を終えて、瀕死の状態で病院に担ぎ込まれた当麻紗綾と瀬文焚流。戦い抜いた二人は焦燥しきっていたが、距離は縮まり絆は深まっていた。だがそんな二人の結束をよそに、ある人物によって、世界は破滅へと進んでいた。そこにいるのは白い服に身を包んだ男セカイと、彼と行動を共にしている謎の女。SPECホルダーたちによって人類の歴史に終止符が打たれようとするその時、世界と人類を救うため当麻の秘められたSPECが目覚める…。

“SPEC”と呼ばれる特殊な力を持った者たち“SPECホルダー”と特殊な事件を専門に扱う「警視庁公安部公安第五課未詳事件特別対策係」(通称ミショウ)の特別捜査官たちとの戦いを描くSF仕立ての刑事ドラマも、ついに完結編「結(クローズ)」を迎える。といっても、漸(ゼン)ノ篇は全2作の前編なので、これだけではほとんど話は進んでおらず、終わり方もまた「えっ、そこで終わるワケ?!」といいたくなるほど。ちなみに本作はエンドクレジットもないのだから「結(クローズ)」はあくまでも2作で1本という扱いだ。前作のラストで登場した白い服の男セカイが頻繁に登場するが、彼が何をしようとしているのかは本作では謎のまま。大島優子や香椎由宇など、新キャラは登場するものの肝心なことは伏せられている。さらに互いに愛情を秘めながら刑事魂で結ばれる当麻と瀬文の関係性にも、相変わらずやきもきさせられる。すべてが消化不良で困った作品なのだが、あえて言うならば見所は、当麻の父親を知る人物が登場し、彼女の父のエピソードが語られるところだろうか。それから、ゆるーい上司の野々村係長(待遇)には壮絶な運命が。いずれにしても、半分見せられただけの漸(ゼン)ノ篇では、何も解決しない。本当の決着は、後編である爻(コウ)ノ篇までおあずけだ。
【50点】
(原題「劇場版 SPEC 結(クローズ) 漸(ゼン)ノ篇」)
(日本/堤幸彦監督/戸田恵梨香、加瀬亮、北村一輝、他)
(中途半端度:★★★★★)
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劇場版 SPEC〜結(クローズ)〜 漸ノ篇@ぴあ映画生活

はじまりのみち

はじまりのみち 【3,000個 初回限定特典付き】 [Blu-ray]
名匠・木下惠介監督生誕100年の記念映画「はじまりのみち」。映画愛と親子愛で手堅い作りの良作。

戦時下、政府から戦意高揚の国策映画作りが要求された時代。木下惠介の作品「陸軍」はその目的を果たしていないとして当局から睨まれ、次回作も製作中止に。嫌気がさした木下は辞表を提出し、脳溢血で倒れた母が療養する浜松に戻る。戦局が悪化し、浜松も安全ではなくなったことから、木下は兄と便利屋とともに、母をリヤカーに乗せて山間の疎開先に向かうことになるのだが…。

この物語は木下の実体験に基づく実話だ。伝記映画というには小品ではあるが、ごく短い時間の物語をさらりと描きながらも、映画監督・木下の人となり、さらには彼の作品に共通する、人間を見つめるまなざしを的確に切り取っている。母親への愛情から、無謀とも思える山越えを、一途にやり遂げる木下は、同じ一途さで自分の映画にも1本筋を通そうと悩んでいる。教養があり育ちの良さがにじむ木下兄弟、とりわけ柔(やわ)な風貌の惠介が常にシリアスなのとは対照的に、お調子者の便利屋は、いつだって明るくたくましい。この便利屋はいわば狂言回しの役割だが、彼の言動の向こう側に木下自身の葛藤や不安が透けて見える演出なのが上手い。木下が一時松竹を離れるきっかけとなった「陸軍」は、田中絹代演じる母親が戦地へと向かう息子を延々と追う姿が女々しいとされ、当局に睨まれたいわく付きの作品。親子の情愛や静かな反戦の思いを込めたこの作品のメッセージを、誰よりも明確に理解してくれているのもまたこの便利屋なのだ。名もない市井の人々のあたたかさ、したたかさを描き続けた木下作品を彷彿とさせるキャラクターである。生誕100年の記念映画というだけあり、映画終盤に木下作品の名場面がふんだんに流れる。どれも日本映画の宝物のような作品だが、ちょっと使いすぎのような気も。とはいえ、初の実写映画にチャレンジしたアニメーションの俊英・原恵一の演出は堅実で、戦争の荒波の中での親子愛、映画作りへの情熱を丁寧に描いた良作に仕上がった。
【60点】
(原題「はじまりのみち」)
(日本/原恵一監督/加瀬亮、田中裕子、ユースケ・サンタマリア、濱田岳、他)
(映画愛度:★★★★☆)

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はじまりのみち@ぴあ映画生活

ライク・サムワン・イン・ラブ

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始まりも終わりもない、人生の一部を切り取ったような異色作「ライク・サムワン・イン・ラブ」。全体に冗漫だが、先読みできないスリルがある。

元大学教授で84歳のタカシは、デートクラブを通じて、亡き妻に面影が似た女子大生の明子を家に招く。手料理で丁寧にもてなすタカシだが、祖母を駅におきざりにしたことが気になっていた明子は料理は食べず、勝手に寝入ってしまう。翌朝、タカシに大学まで送ってもらった明子は恋人のノリアキから待ち伏せされ、連絡が取れなかったことを非難される。ノリアキはタカシを明子の祖父と勘違いし、彼女への結婚願望を告げる。嘘と勘違いで出会った3人の関係は、もつれていくのだが…。

イランの巨匠アッバス・キアロスタミは尊敬する小津安二郎を生んだ国・日本に対し特別な感情を持っているようだ。時代劇やヤクザ、アニメやITといった海外でステレオタイプに語られる日本の意匠ではなく、今の日本のどこにでもあるリアルな空気を切り取っている。とはいえ、物語がどこかおかしな方向にねじれ、嘘と真実の狭間の危うさを淡々と描く作風は、キアロスタミ作品の見慣れたテイストだ。デートクラブのバイトをしている明子は、自分が何を求めているのか分からず、漂うように生きている。粗暴な性格のノリアキが口にする愛情は、はなから支離滅裂。老境のタカシが体現するのは“老いのロマンティシズム”とも言えるが、タカシにしても、優しげな口調で悪びれることもなく嘘を重ねる。そこにあるのは、独りよがりな愛と身勝手なエゴなのだ。監督は俳優に台本を渡さず、即興的な演技を求め、それでいて細かい指示で、明確に作品を作り上げたのだそう。半日余りのわずかな時間を描くストーリーだが、登場人物の誰ひとりとしてささやかな幸せさえつかめないのは、人生の皮肉と言えようか。車の中での会話やガラス越しの映像など、印象的なシーンもあるが、冗漫な時間の果てに放り出されたかのような気分を味わい、脱力感が漂う映画だ。物語は、大きな破壊音で唐突に終わる。起承転結ではなく“途中”のみを描くことで、出発点や終着点を連想させるのが狙いなのだろう。いずれにしても「そして、人生はつづく」のだ。
【50点】
(原題「LIKE SOMEONE IN LOVE」)
(日本・仏/アッバス・キアロスタミ監督/奥野匡、加瀬亮、高梨臨、他)
(まったり度:★★★★☆)
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ライク・サムワン・イン・ラブ@ぴあ映画生活

劇場版SPEC〜天〜

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特殊能力を持つSPECのバトルを描く大人気TVドラマの劇場版「劇場版SPEC〜天〜」。ユルいギャグとダジャレの連打がいかにも堤監督らしい。

通常の捜査では解決できない特殊な事件を専門に扱う「警視庁公安部公安第五課未詳事件特別対策係」通称「未詳(ミショウ)」の特別捜査官、当麻紗綾(とうま・さや)と瀬文焚流(せぶみ・たける)。型破りな捜査と過激な性格の二人の元に、海上のクルーザーから大量のミイラ死体が発見されたという不可解な知らせが届く。これは特殊能力(SPEC)を持った犯人“スペックホルダー”の犯行なのか?このミイラ死体殺人事件は、やがて国家をも揺るがす大事件となっていく…。

対等の2人のコンビが活躍するバディ・ムービーだが、何しろ主人公の捜査官コンビは異常なまでにハイテンションで型破りだ。当麻はIQ201の変人、瀬文は警察特殊部隊ことSIT出身の肉体派である。清楚なイメージの戸田恵梨香も、ナイーブなキャラが十八番の加瀬亮も、共に今までにない役柄なのだが、これが不思議とハマッたようで、TV版は大人気になり、スペシャルドラマを経て、ファン待望の劇場版となった。熱狂的でコアなファンが多いだけあって、お約束のギャグや小道具がてんこもり。本作では、日本の国家基盤にまで言及する大風呂敷と、瀬文の過去の恋が描かれるのがメインだろう。だが、こうユルい内容ではドラマファン以外の映画好きは完全に蚊帳の外だ。スペックは並はずれた能力なのだが、ギャグそのもののCGで描かれる特殊能力には、苦笑を禁じ得ない。「トリック」の堤監督らしい笑いも、個人的にはスベリまくりだ。次へと続く伏線を張るのはある意味お約束。だがそれにしても問題が未解決すぎやしないか。スペック独自の世界観を、まずはドラマ未見のファンにも体験してもらおうという主旨なのかもしれない。何やらスゴい能力を秘めた、瀬文の子(らしき)潤ちゃんの大爆発も含めて、次回「欠」に期待するしかない。
【50点】
(原題「劇場版SPEC〜天〜」)
(日本/堤幸彦監督/戸田恵梨香、加瀬亮、伊藤淳史、他)
(ファン向け度:★★★★☆)
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永遠の僕たち

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みずみずしい感性が光る異色の青春映画「永遠の僕たち」。死がテーマの物語だが最後には生きる希望へと至る。

両親を交通事故で失い、自らも臨死体験をした青年イーノックの趣味は、まるでゲームのように、見知らぬ人の葬式に参加すること。そんな彼は、とある葬式でアナベルという少女と知り合う。自分と同類と思ったが、アナベルは実は病で余命3ヶ月と宣告されていた。イーノックは、彼女との出会いや奇妙なデートを、唯一の友人であるヒロシと語り合う。実はヒロシとは、イーノックにしか姿が見えない、死者なのだ。ヒロシがそっと見守る中、イーノックとアナベルは惹かれあい、心の距離を近付けていくが…。

若さと死は、ガス・ヴァン・サントの得意とするテーマだが、この作品もその二つが際立つ物語である。主人公イーノックは臨死体験により死の世界を覗き、アナベルは難病で余命僅か、ヒロシは特攻隊員として戦死した幽霊なのだ。死に囚われているキャラクターばかりだが、ガス・ヴァン・サントは、切ないメルヘンとして、彼らの“生”を物語る。イーラックは時に不条理でもある死を理解できていない。ヒロシの霊としか友情を育めないのはそのためだ。そんなイーラックの前に現れたアナベルは、死にゆく自分のことよりも残されるイーラックを心配してしまうような女の子。イーラックとアナベルの恋は、切ないほど、ロマンチックだ。残された時間は少ないが、アナベルは生きることと自分の人生に深い愛情を注いでいることを、全身全霊でイーラックに教えることになる。難病ものにありがちな過剰な演出など皆無なところがとてもいい。故デニス・ホッパーの息子のヘンリー・ホッパーと、「キッズ・オールライト」のミア・ワシコウスカの二人が共に素晴らしい。また、重要にして奇妙な登場人物・ヒロシを演じる加瀬亮も好演だ。ずっと戦闘服だったヒロシが、ラストに正装し、アナベルの“長い旅”の供をすると申し出たとき、イーラックにも生の輝きが理解できたはず。青年の成長物語でもある繊細なラブ・ストーリーで、感動が心に染み入る。
【70点】
(原題「RESTLESS」)
(アメリカ/ガス・ヴァン・サント監督/ヘンリー・ホッパー、ミア・ワシコウスカ、加瀬亮、他)
(繊細度:★★★★☆)
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東京オアシス

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東京を舞台にスケッチするいくつかの出会いと別れ。この作品のどこに、渇きを癒す“オアシス”があるのだろう??

撮影現場から逃げ出した女優トウコ。深夜の国道でナガノという男性と出会い彼のトラックに便乗する。話をするうちに共通点に気付く二人はやがて海岸へとたどり着く。別の日、トウコは、小さな映画館へ。そこでは元シナリオ・ライターのキクチと再会し、語り合う。また別の日、ひと気のない動物園では、アルバイトの面接に来たというヤスコに声をかける。ふとした出会いと会話によって、トウコはやがて迷いから解き放たれていく…。

一人の女優の心のさすらい。これがテーマだとプレス資料にはある。「めがね」「マザーウォーター」にも共通する、その場所で自然体で生きる人々を描いた物語だが、心が癒されるというより、睡魔が襲ってきたというのが正直な感想だ。不器用だが、きちんと生きている登場人物たちは、みな平凡で穏やかな人たち。都会で希薄になった人間関係の中を、トウコという風のような女性が吹き抜ける。夜明けの海へのドライブ、映画館での思い出話。からっぽのツチブタの柵。会話にはほとんど意味はなく、人との距離も縮まらない。この淡々とした感じが都市生活らしいとは思う。相手をみつめて、きちんと係わっていくことを改めて問い直すということだろうが、見終わって何も残らない。毒にも薬にもならないその空気感を、オアシスだと思うしかない。
【40点】
(原題「東京オアシス」)
(日本/松本佳奈、中村佳代監督/小林聡美、加瀬亮、黒木華、原田知世、他)
(癒し度:★★☆☆☆)
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海炭市叙景

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静かな佳作「海炭市叙景」は、暗くやるせないのに、不思議なほど穏やかな余韻が残る。

北国の小さな町・海炭市の冬。造船所では大規模なリストラが行なわれ、職を失った颯太は妹の帆波を誘って初日の出を見に山に登る。開発地域の古い家に住むトキは立ち退きを拒み、プラネタリウムで働く隆三は妻の裏切りに気付いた。家業のガス店を継いだ春夫は仕事が上手くいかず苛立つが、再婚した妻が息子に暴力を振るっていることを知る…。

海炭市は架空の都市だが、北海道の函館市をモデルにしている。函館山や路面電車など、見覚えのある風景が登場するが、それは観光名所として美化されたものではなく、あくまでもそこに暮らす人々の生活の場としての情景だ。疲弊した地方都市は日本中いたるところにあるが、そこで生まれた人々には故郷というかけがえのない場所であり、否定することなどできない。函館出身の作家・佐藤泰志の未完の短編小説を基に、同じ北海道出身の熊切和嘉監督が、18の短編の中から5編を選び、さまざまな思いを抱えながら暮らす人々の人生の一場面を淡々とした筆致でスケッチする。それぞれのエピソードはほとんど交錯しないが、ふとすれ違う彼らを観客である私たちだけが目撃することで、登場人物の悲哀を共有することができるのだ。地味な作品だが確かな力を感じるのは、実力あるキャストが集まり、抑えた演技で作品をしっかりと支えているからだろう。特に、帰らぬ兄を待ちながら、懸命に寂しさに耐える少女を演じる谷村美月が印象深い。モザイク模様のように紡がれる物語のほとんどがやるせないもので、苦い喪失感が漂うが、ラストに描かれる老婆と猫のエピソードが優しい余韻を残してくれる。冷え冷えとした冬の風景の中、そこだけが陽だまりのように温かい。叙景とは、風景を文章に書き写すこと。本作は、映像での“叙景”に成功している。物語に寄り添うジム・オルークのサウンドも忘れがたい。
【70点】
(原題「海炭市叙景」)
(日本/熊切和嘉監督/竹原ピストル、谷村美月、加瀬亮、他)
(やるせなさ度:★★★★☆)


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海炭市叙景@ぴあ映画生活

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アウトレイジ

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ヤクザ社会の下剋上をすさまじい暴力描写で描く、温故知新のキタノ映画だ。関東一円で勢力を張る巨大暴力団組織・山王会組長が、直参である池本組の組長・池本に直系でない村瀬組を締め付けるように命令する。池本にとって村瀬は兄弟分。池本はその厄介な仕事を配下である大友組の組長・大友に押し付ける。そのことが、非情なヤクザ社会で、裏切りと駆け引きの壮絶な権力闘争の幕を切って落とすことになる…。

ヤクザ世界を描くことや暴力描写は北野武監督の原点である。だがここにはかつてのキタノ映画に見られた静謐なムードは微塵もない。大量のセリフと怒号が飛び交うこの群像劇には、キタノ映画に初参加の俳優の顔触れが功を奏して、新鮮な“男の映画”の趣がある。全員が極悪非道(アウトレイジ)という設定だが、監督自身が演じる大友のキャラクター造形が面白い。弱小組織の組長・大友は、サラリーマンでいう中間管理職のようなのだ。上からは無理難題を押し付けられ、下に対しては何かと面倒を見て気を配らねばならない。なんともやるせない立場で、ため息ものだ。もちろん、エゴイズム丸出しのヤクザ社会の中に、キタノ節である、とぼけた笑いも。キャラクターは皆、見事に立っているが、中でも加瀬亮が突出している。今までのナイーブで草食系のイメージを払拭する、知性の中に狂気を秘めた凶暴な役柄を見事なキレッぷりで演じている。最後の最後に見せる表情は、なんとも気味が悪い怖さを漂わせていた。残酷描写の連打に目をそむけたくなることも多かったが、それでも北野監督が暴力の世界をリロードして臨む、ニュー・バイオレンス映画には、圧倒的な迫力がある。
【65点】
(原題「アウトレイジ」)
(日本/北野武監督/ビートたけし、椎名桔平、加瀬亮、他)
(バイオレンス度:★★★★★)


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アウトレイジ@ぴあ映画生活

プール

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気持ちはいいが中身がない。それって映画としてどうなのか?!と問いかけたくなる作品だ。大学生のさよは、タイの古都チェンマイのゲストハウスで働く母の京子を訪ねる。自分や家族を置いてタイに渡った母は、ゲストハウスのオーナーやタイ人の少年、ハウスを手伝う青年らと楽しそうに暮らしている。そんな母の姿を複雑な思いでみつめるさよ。物語は、それぞれに事情を抱えた5人の男女の6日間を、さらりとした空気の中で描いていく。

暑い国なのに温度を感じない世界、草食系の俳優たち、表面をなぞるだけの人間描写。リアリティ以前に、生きている実感がない。それを象徴するのが、ゲストハウスにあるプール。波風ひとつたたず、ひたすら静かな水面は、極端に清潔でゴミひとつ浮いていない。これが海ならどうだろう。波もあれば、生物だっている。時には危険もあるが、泳いでどこかへ行く目的も生まれる。プールの周辺に集う人々は、互いに傷付けない代わりに真の絆も求めていない。登場人物たちは、人が踏み込まない、バリアをはった自分の世界が快適なようだ。「好きなことをする方がいいと思う」とのセリフがあるが、好きなことをすることと、嫌いなことをしないことは別問題で、生活や人間関係から逃げた先に“好きなこと”があるのだろうか。おしゃれなゲストハウスやおいしそうな食べ物、ゆったりとした歌声などに気分は癒されるが、根底に漂うのは、希薄な人間関係で充足する薄ら寒い空気。この映画、かなり病んでいる。
【30点】
(日本/大森美香監督/小林聡美、もたいまさこ、加瀬亮、他)
(タイ観光映画度:★★★★☆)

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プロフィール
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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