映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
毎日のレビューは分かりやすく簡潔な寸評で、週1本の長文映画レビューでは作品をディープに掘り下げます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる公開作品 ◎
「ファミリー・ツリー」「ダーク・シャドウ」「サニー」

北乃きい

犬とあなたの物語 いぬのえいが

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犬をテーマにしたハートウォーミングなオムニバス「いぬのえいが」の第2弾。6つのエピソードはそれぞれに工夫があるが、全体の構成がちょっと不自然だ。翻訳家の一郎は子供の頃に可愛がっていた柴犬ジローの死のショックで犬嫌いに。それなのに、妻の美里は、ある日、半ば強引にラブラドールレトリバーのラッキーを引きとって飼うと宣言する。在宅で仕事をする一郎を静かに見守るラッキー。一人と一匹はやがて心を通わせるが…。

6つの短編は、コメディタッチのものもあれば、皮肉めいたものや、感動の物語まで切り口はさまざま。中心になるのは、大森南朋と松嶋菜々子共演の「犬の名前」という物語で、若くして記憶障害になってしまう主人公を、もの言わぬ犬が静かに支えるストーリーには、子供の頃のエピソードも含めて泣かされる。ペットには人を癒す力があるが、ラブラドールレトリバーは特にその力が強いらしい。この物語のラストは楽観的すぎるのかもしれないが、ボロボロになった妻をもう一度笑顔にしたのは、飼い主に無償の愛を捧げる犬の存在。ラッキーは夫の一郎に寄り添った以上に、妻の美里を支えていたのだ。実際にセラピー・ドッグとして活躍する犬種だけに、説得力がある。その他のエピソードは、犬と同じ名前の“あきら”に降りかかる災難や、自宅に残した室内犬のことを過剰に心配する母親、誘拐した犬に情が移ってしまう誘拐犯の顛末、など。ただTVのペット紹介番組の面白エピソードを取材する「愛犬家をたずねて。」の扱いがマズい。短い4話で構成されているためか、全6話のエピソードの途中に挿入されるのだが、これがオムニバスのテンポを崩している。また、6話の長さがバラバラなのも気になった。奇をてらわず、1話それぞれを正攻法で見せる方が、観客は素直に感動を味わえるのではないか。ホロリとするのは、最後のエピソード「バニラのかけら」で、いわゆるペットロスの悲しみを描いている。ペットを飼ったことがある人ならグッとくる話だ。逝ってしまった愛するペットを忘れる必要などない、犬との楽しかった日々をずっと覚えていてあげたい。そんな物語で締めくくってくれたのは嬉しかった。登場する“主役”の犬たちは、全部で69犬種107頭。どのコも皆愛らしくてたまらない。
【50点】
(原題「犬とあなたの物語 いぬのえいが」)
(日本/長崎俊一、石井聡一、江藤尚志、川西純、中西尚人、水落豊監督/大森南朋、松嶋菜々子、堀内敬子、篠田麻里子、生瀬勝久、小倉智昭、中尾彬、内野聖陽、高畑淳子、北乃きい、他)
(犬好き必見度:★★★★☆)

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ラブコメ

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強気な女子と気弱な男子。今では特に珍しくもない組合せのラブ・ストーリーで、まるでTVドラマのようなユルさに脱力する。下町の生花店を切り盛りする真紀恵は、美人なのに豪快で勝気な性格のため、彼氏いない歴1年11ヶ月。恋するヒマもないほど忙しい。そんな真紀恵のことを初恋の相手としてずっと引きずって生きている草食系男子で、アニメ脚本家の美晴は、再会した彼女に再び一目ぼれ。ついに真紀恵に告白しようと決意するが、真紀恵はその前日に元カレとヨリを戻してしまう…。

美女に振り回される心優しい男子というと、すぐに韓国映画「猟奇的な彼女」が思い浮かぶが、韓国映画ほどハジケることも泣くこともできないのがこのドラマだ。そもそも本作のヒロインのやることはかなり残酷で、元カレと付き合い始めたのに、自分を好きだと告白した美晴を平気で呼び出しては遊ぶ。何となく彼女に付き合う美晴の心情には、友情と愛情の両方の思いがせめぎあっているはずだが、美晴のこの心の揺れがなかなか伝わってこない。まるで高校生のデートのような場面が延々と続くので、映画としても完全に中だるみ状態だ。自分の本当の気持ちに気付かない真紀恵と、はっきりとした態度がとれない美晴。もどかしい二人を応援するのが、真紀恵の店で働くキャバクラ嬢・涼子と、美晴の書いたアニメに声優として出演する、お調子者のバツいちタレント・西島だ。終盤、真紀恵の父や姉が美晴の子供時代のある行動を思い出すことで、二人の距離が近くなり、強引なハッピーエンドへ。設定の何もかもがご都合主義で、じっくりとスクリーンに向き合う映画というより、何かの片手間に見るTVドラマそのものだ。タイトルの「ラブコメ」とは、美晴が書いているアニメの題名。美晴の恋をそのまま投影しているとの設定なのに、劇中のこのアニメをなぜもっと活かさないのだろうか。現実と、時に平行し、時に交差し、まだ出来上がっていないラストに向かって進んでいけば説得力があっただろうに。ちなみにこの作品は、某携帯電話会社のキャンペーンの一環として製作、映画と携帯ドラマがコラボするという新しい試みで展開していることが注目だ。じっくりとしたドラマより、軽さを重視しているのは、携帯というツールを意識してのことかもしれない。
【30点】
(原題「ラブコメ」)
(日本/平川雄一朗監督/香里奈、北乃きい、田中圭、渡部篤郎、他)
(純愛度:★★★☆☆)

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武士道シックスティーン

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女の子だってやるときはやる!剣道を通して友情や人生を学んでいく二人の少女の青春物語は、若手実力派女優二人の演技合戦が魅力だ。剣道の中学チャンピオンの磯山香織は、大会で無名選手の甲本早苗にリズムを崩され敗戦を喫してしまう。甲本を倒すため同じ高校に進学するが、その選手は両親の離婚で名前は西荻に変わっていた。しかも彼女は“剣道は楽しむため”がモットーのお気楽少女で、強引に試合を申し込んでも逃げてばかり。拍子抜けしながらも悔しさが忘れられない香織は、早苗を鍛え直そうとするのだが…。

成海璃子と北乃きい。10代女優のエース的存在の二人はまったく個性が異なる。本作で演じる役も同様で、剣道一筋の香織は勝つことだけを目標にし、言葉は男言葉、弱い選手を見下し、昼休みには宮本武蔵の「五輪書」を読みふける。硬派というより女子高生として浮いた存在だ。一方、早苗は、無心で竹刀を握るものの、勝ちたいというより負けたくない気持ちが高じて逃げ足だけは絶妙で、フットワークが軽い。そんな二人が互いの影響で化学反応を起こし、変わっていくプロセスがいい。早苗の提案で剣道からしばし離れ、ケーキバイキングやゲーセン、プリクラを体験。可愛いサンダルをおそろいで履く二人のコミカルなシークエンスは、まるでデートのようで見ていて微笑ましい。香織は、武道は勝負だけではないことを悟り、早苗は真剣勝負の醍醐味に目覚めていく。剣道部の顧問が言う「折れる心」は香織だけが学ぶことではなく、早苗にも必要な生きるための極意だ。10代のまっすぐな少女たちが、剣道を通して、家庭の問題や友情に向き合い、剛と柔を学びながら成長する姿は、好感度大。何より、武士道という古風なスピリットをミニスカートの制服を着た美少女たちが体現するギャップが面白い。剣道については私は素人だが、すさまじい大声と一瞬の静の動作の美しさに驚いた。女の子の友情を“男らしく”描いたこの映画、女子高生なのに恋愛度が低いのはちょっぴり物足りないが、メン!ドウ!という掛け声もすがすがしいさわやかな作品になった。
【65点】
(原題「武士道シックスティーン」)
(日本/古厩智之監督/成海璃子、北乃きい、石黒英雄、他)
(闘魂度:★★★★☆)


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BANDAGE バンデイジ

BANDAGE バンデイジ 通常版DVD (本編DVDのみ)BANDAGE バンデイジ 通常版DVD (本編DVDのみ)
どうせアイドルものだろうとバカにしていたら、思いがけず繊細な味わいの青春映画だった。これだから映画は見てみないとわからない。90年代、空前のバンドブームが吹き荒れる中、友人に誘われてLANDSというバンドのライブに行った女子高生アサコは、ボーカルのナツに気に入られ、偶然からバンドのマネージャーになる。音楽に情熱を注ぐ若いメンバー、彼らに夢を託す大人、そしてアサコは、共に歩んでいくが…。

青春映画の演出に非凡な才能を見せる岩井俊二が脚本、音楽プロデューサーとして活躍する小林武史が初監督の本作は「スワロウテイル」のコンビの変形コラボだ。90年代のバンドブームの光と陰を、切ない恋物語の形を借りて振り返っている。物語はアサコとナツの不器用な恋と、バンドを構成するメンバーの友情や確執が中心。才能やコンプレックスからバンドに亀裂が生じるのはお決まりの描写だし、素人があっさりマネージャー業のプロになるなど、ご都合主義の部分はあるものの、アサコとナツの感情の揺れはリリカルで丁寧である。LANDSの音楽は大好きだがナツのことを好きかどうかわからないアサコのとまどいと、恋も音楽も真面目に向き合っているくせに、テレ隠しでわざと軽くふるまうナツの屈折。共に描写は、リアルで繊細だ。ふと視線を落とすなど、セリフ以外で感情を豊かに表す北乃きいがとてもいい。タイトルのバンデイジは、バンド世代と傷を包む包帯の二つの意味を兼ねる。ライトな青春群像だが、その軽さが欠点になっておらず、近過去独特の淡いノスタルジーにマッチしている。
【65点】
(日本/小林武史監督/赤西仁、北乃きい、高良健吾、他)
(みずみずしさ度:★★★★☆)

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ハルフウェイ

シンプルでみずみずしい作品だ。受験を控えて恋愛にとまどう高校生の男女のラブ・ストーリーは、大人たちに“あの頃”を思い出させて胸がキュンとなるだろう。ヒロは彼氏のシュウが北海道を離れて東京の大学へ行くと知り激しく動揺、わがままで矛盾した言動を繰り返してシュウを困らせる。淡い光を多用した色彩設計や微妙な距離感を保つ構図は、プロデューサーの岩井俊二の影響を強く感じさせるものだが、北川監督らしさは、コロコロと変わる女の子の気持ちを自然なセリフで見事にすくいとったこと。自分でももてあますほどの恋心を胸に、精一杯前を向く二人がまぶしい。
ハルフウェイ (幻冬舎文庫)【70点】
(日本/北川悦吏子監督/北乃きい、岡田将生、溝端淳平、他)
(切なさ度:★★★★☆)


ハルフウェイ (幻冬舎文庫)


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ラブファイト

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幼馴染の男女が、お互いを好きな気持ちに気付くツールがボクシングという設定がユニーク。いじめられっ子でヘタレ男子の稔はケンカが得意の美少女・亜紀に助けられてばかり。亜紀より強くなろうと内緒でボクシング・ジムに通うが、それを知った亜紀もまたボクシングの魅力に目覚めていく。スポ根としての迫力は希薄だが、その分、素直になれないティーンエイジャーの男女の初恋を、コメディタッチで描いて楽しい佳作となった。終盤、稔を好きな少女の意外な素顔が唐突で大爆笑。並行して描かれる大人の恋が、ややテンポを削いだが、それでも二人を見守る大沢たかおは好演だ。
【65点】
(日本/成島出監督/林遣都、北乃きい、大沢たかお、他)
(ガチンコ勝負度:★★★★☆)

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ポストマン

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民営化した郵政CM映画?との思いもよぎるが、人と人との交流の大切さは伝わってくる。頑固で実直な主人公の性格を、バタンコ(配達用の赤い自転車)での集配にこだわることで表したのが上手い。ただ、主人公がアナログ人間であることと、投函してない手紙を勝手に届ける設定は別問題。微妙に納得できなかった。体力勝負の長嶋一茂の、ありえない長距離配達に苦笑するが、ベタな物語にはこれもOKか。房総半島の自然が眩しい。
【50点】
(日本/今井和久監督/長嶋一茂、北乃きい、竹中直人、野際陽子、他)
(愚直度:★★★★☆)

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幸福な食卓

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瀬尾まいこの同名小説の映画化。中学生の佐和子を中心に、父親役を放棄した父、家を出た母、大学を辞め農業をやる兄と、崩壊寸前の家族のドラマをつづる。一人で悩みを背負い込む主人公の前に現れた転校生の少年役の勝地涼が好演。人に負担をかけない優しさがしみる。
【40点】
(日本/小松隆志監督/北乃きい、勝地涼、石田ゆり子、他)
(切なさ度:★★★☆☆)

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◆映画ライター、映画評論家
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◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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