映画通信シネマッシモ


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

吉田大八

羊の木

映画「羊の木」オリジナル・サウンドトラック
さびれた港町・魚深市。市役所職員の月末一(つきすえ はじめ)は、移住してきた6名の男女を受け入れるよう上司から命じられる。この6人は実は全員が元殺人犯で、移住は、受刑者を仮出所させ、過疎化が進む自治体で受け入れる国家の極秘プロジェクトだった。6人は、互いに接触しない、住民には素性は知られないようにする、最低10年は居住するなど、いくつかのルールの中で、町に馴染もうと努力していた。そんなある日、港で身元不明の死体が発見される。月末は不安にかられ、町と住民の日常が少しずつ狂い始める中、魚深市の奇祭“のろろ祭”の日が近づいていた…。

元殺人犯を受け入れた町を舞台に、異物が入り込んできたことで日常が歪んでいく様を描くヒューマン・サスペンス「羊の木」。原作は、山上たつひこといがらしみきおによる同名漫画だ。実写映画化された本作は、映画オリジナルの結末も含めて、原作からかなり離れているが、上手くまとまっている。元殺人犯の受刑者は、皆、挙動不審で、いつ爆発してもおかしくない人々ばかり。そんな緊張感の中心にいるのが、善良で凡庸な“普通の青年”月末というところが面白い。中心に平和を、周囲に波風を据える構図は、吉田大八監督の代表作の一つ「桐島、部活やめるってよ」にも通じる奇妙なテイストを感じさせる演出だ。

極端に臆病だったり、几帳面だったり、はたまた傲慢、迫力、過剰な色気、天真爛漫と、6人それぞれの個性はやがて衝突し連鎖していく。異物を排除する不寛容と、異質なものとの共生という寛容。その接点でせめぎあうこの物語には、奇祭の神・のろろが導く、思いがけない結末が待っている。それにしても、受刑者を受け入れることで刑務所の経費(税金)を削減しながら、同時に過疎化問題も解決してしまおうという突飛なアイデアは、架空なのに妙にリアルで生々しい。ユーモラスかつスリリングな演出、俳優たちの妙演のアンサンブル、そこに浮かび上がる人間の本性。なかなか奥深い群像劇だ。主人公・月末はいわば狂言回しなのだが、普通の青年役なのに群像劇に埋もれない錦戸亮の存在感が光っていた。
【70点】
(原題「羊の木」)
(日本/吉田大八監督/錦戸亮、木村文乃、松田龍平、他)
(オリジナリティー度:★★★★☆)


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美しい星

美しい星 Blu-ray豪華版(2枚組)
53歳の大杉重一郎は、予報が当たらないことで有名な気象予報士。ある夜、突如眩しい閃光に包まれ、空飛ぶ円盤(UFO)と遭遇する。その日を境に重一郎は、自分は火星人だと自覚し、人類を救う使命に目覚める。父・重一郎の覚醒と時を同じくして、大杉家の面々にも異変が。野心にあふれるフリーターの長男・一雄は水星人に、美人すぎて周囲から浮いている大学生の長女・暁子は金星人に覚醒。空虚な毎日を持て余す主婦の母・伊余子だけは覚醒せず地球人のままだったが、水を売るネットワークビジネスにのめりこんでいった。宇宙人として覚醒した大杉家の面々は、それぞれの方法で地球を救おうと奮闘するが…。

宇宙人として覚醒したある平凡な一家が地球を救うために奮闘する姿を描く異色SFドラマ「美しい星」。原作は、三島由紀夫が1962年に発表したSF小説で、故・大島渚監督をはじめ、内外の有名監督が映画化を望んでいた作品と言われている。小説の舞台は60年代で、東西冷戦や政治の季節が背景だが、本作では時代を21世紀の現代に置き換えて、地球温暖化や爆発的人口増加など、タイムリーな設定が施され、一種の終末映画として描いている。こう書くと、大仰なSFに思えるが、ヘラヘラとしたお天気キャスターの重一郎をはじめ、大杉家の面々がやる“地球を救う作戦”は、どこかユルくズレていて、笑いを誘うものだ。映画冒頭でのレストランでの食事シーンからこの家族が崩壊寸前であることが分かるが、そんな、バラバラだった家族が、宇宙人として覚醒することで、ひとつにまとまり、真の家族として再生していくという家族ドラマが裏テーマである。三島由紀夫自身が“へんてこりん”と形容したこの小説のテイストを壊さずに映画化したのが何よりも収穫だ。しかも、この突拍子もない物語の登場人物に、ひょうひょうとしたリリー・フランキーをはじめ、若手アイドルをちゃっかり組み込んで、スター映画に仕上げてしまった点を評価したい。円盤の閃光の先に何が見えるのか。平凡な一家が地球を救うことができるのか。それは映画を見て確かめてほしいが、ひとつだけ言えるのは、映画は、ちっぽけな人間と、その営みを全力で肯定しているということだ。正直、「?」や「!」が何度も頭に浮かぶ。だが、1960年代も21世紀も、共に不安な時代。わからないことだらけの中、私たちは希望を信じて生きているのである。
【65点】
(原題「美しい星」)
(日本/吉田大八監督/リリー・フランキー、亀梨和也、橋本愛、他)
(換骨奪胎度:★★★★☆)
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美しい星|映画情報のぴあ映画生活

紙の月

紙の月 Blu-ray通常版
平凡な主婦が起こした巨額横領事件の顛末をスリリングに描くドラマ「紙の月」。堕ちていくことによって自分を解放するヒロインを宮沢りえが好演。

1994年。銀行の契約社員の梨花は、丁寧な仕事ぶりと気配りで上司や顧客の信頼を得ていた。一方で、自分に感心が薄い夫との関係に虚しさを感じている。そんな時、顧客の独居老人の孫で大学生の光太と出会って惹かれ、逢瀬を重ねるようになる。ある時、顧客から預かった現金にふと手をつけた梨花は、次第に歯止めが効かなくなり、金銭感覚がマヒしたあげく横領に手を染めていく…。

原作は角田光代の同名小説。平凡な女性が、若い男性に貢いだあげくに堕ちていくというストーリーは、劇中のセリフじゃないが「ありがち」な話だ。さしたる新鮮味はないのだが、何しろ、地味なのに妖艶、堅実なのに脆いという二面性を見事に体現した宮沢りえが素晴らしい。もっとも、地味というにはどう隠しても美しいのは玉にキズだが。さらに、彼女が演じる梨花の分身ともいえる女性キャラを配したのが光った。要領がよくちょっとコずるい小悪魔女子を演じる大島優子には、意外にもコメディセンスがあるし、ヒロインの横領を見抜くベテラン行員を演じる小林聡美の堅い表情もいい。この物語は3人の女優が一人の女性の内面にあるさまざまな感情を演じ分けているともいえるのだ。物語はサスペンスでもあるので詳細は明かさないが、終盤に梨花が全力で走る姿に解放感を感じることができれば、共感できるだろう。ヒロインは知っているのだ。堕ちていくことも、その先に破滅が待つことも。モラルを突き抜けた先にしか自分が輝く場所はないということも。トラウマのもととなった中学時代のエピソードがあまり効果的でないのは気になるが、それでも最後にはしっかりと納得させる吉田大八監督の演出が力強かった。
【65点】
(原題「紙の月」)
(日本/監督/宮沢りえ、池松壮亮、小林聡美、他)
(転落度:★★★★☆)
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紙の月@ぴあ映画生活

桐島、部活やめるってよ

桐島、部活やめるってよ (本編BD+特典DVD 2枚組) [Blu-ray]桐島、部活やめるってよ (本編BD+特典DVD 2枚組) [Blu-ray]
高校生活に歴然と存在するヒエラルキーを正面から描く、勇気ある青春映画「桐島、部活やめるってよ」。若手俳優の競演に勢いを感じる。

とある高校の金曜日、校内のスター的存在でバレー部エースの桐島が部活を辞めるという噂が駆け巡る。バレー部だけでなく、学校中がこのニュースに浮き足だち、波紋が広がる。桐島の親友や彼女でさえも桐島と連絡がつかない。不穏な空気が流れる中、目立たない存在の映画部の前田は、ある行動に出るのだが…。

原作は、浅井リョウの同名ベストセラー小説。日本映画が意識的に言明を避けてきた、学校生活におけるヒエラルキー(階層制)を、はっきりと認めて描くところがこの作品の新しさだ。桐島は、スポーツ万能、成績優秀、ガールフレンドは校内ナンバーワンの美少女。女子に騒がれ、男子からは一目置かれる、学校のスターである。その桐島が部活を辞める。それが何だ?!と言いたいが、ピラミッド型の段階的組織構造の頂点に位置する桐島の変化は、同じバレー部員を動揺させるだけでなく、関係のない部活の者にまで多大な影響を及ぼすことに。ティーンエイジャーの不安定な力関係に着目するところが鋭い。同じ階層にいると思っていた者同士に亀裂が生じたり、最下層にいた生徒たちが逆襲に出たり。同じシーンを異なる視点から何度も繰り返して描き、個々にとってまったく別の意味を持つ時間と事実を突きつける。学校という閉塞的な社会は、穏やかで何気ない日常を繰りかえしているようで、実はとても危ういバランスの上に成り立っているのだ。渦中の桐島が最後まで登場しない演出が効いていて、桐島という存在はいったい何なのかとそれぞれの胸に問いかけ、同時に誰もが“桐島になり得る”と示唆する。アメリカ映画では当たり前の、学校内の格差を明言したことが起爆剤となり、物語は、屋上で繰り広げられるクライマックスのカタルシスとなって昇華される。神木隆之介、橋本愛、大後寿々花など、日本映画の将来を担う若手俳優たちがリアルな高校生に扮し、部活、友情、恋愛だけでなく、秘密や嫌悪、劣等感、孤独や不安まで見事に演じきった。高橋優の主題歌「陽はまた昇る」は“愛しき人よ、どうか君に幸あれ”と歌う。甘くて苦い青春を通過してきた私たち大人からの、精一杯のエールに聞こえた。
【80点】
(原題「桐島、部活やめるってよ」)
(日本/吉田大八監督/神木隆之介、橋本愛、大後寿々花、他)
(リアル度:★★★★☆)
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桐島、部活やめるってよ@ぴあ映画生活

パーマネント野ばら

パーマネント野ばら [DVD]パーマネント野ばら [DVD]
大人の女性たちの恋模様は、可笑しくて、たくましくて、そして悲しい。夫と離婚し幼い娘を連れて出戻ったなおこは、実家で母のまさ子が営む、町でたったひとつの美容室「パーマネント野ばら」を手伝っていた。そこは近所のおばちゃんたちが毎日集まっては男との思い出や恋愛、噂話に花を咲かせるにぎやかな場所である。なおこの友人のみっちゃんやともちゃんも、浮気男や暴力男など、ダメな夫に苦労しながらも明るく生きている。一方、なおこは、高校教師のカシマと静かな恋をしているのだが、そこにはある秘密があった…。

原作は、作品が続々と映画化されている人気漫画家・西原理恵子のベストセラー・コミック。登場する女性たちは皆、不器用だが心優しい。と同時に、傷ついてもかっこ悪くても正直に生きていくタフな女性たちだ。なおこの友人で、女や金にだらしない甲斐性なしの亭主を浮気相手ごと車でひこうとする激情型のみっちゃんが言うセリフ「どんな恋でもないよりマシやき」は、普通ならかなりイタい状況なのだが、それはつらい現実を笑い飛ばすための、エネルギー補給にも似た、生きていく知恵なのだ。ひと際強烈なキャラは、茶髪のパンチパーマが勇ましい夏木マリ演じる母・まさ子。苦労を自分の中で消化しながらも他者に優しい彼女の存在が、小さな町の中心となって女たちをしっかりと支えている。娘のことも心配でたまらないのだ。実は、なおこと、そっと彼女を包んでくれるカシマとの恋には切なくて哀しい秘密が。だが心に残るのはその秘密そのものではなく、それを周囲が皆で受け入れていることなのだ。自分につくささやかな嘘は、皆が共有するオープンな秘密。そんな設定が納得できる小さなコミュニティの揺るぎない優しさが心にしみるのである。菅野美穂の独特の浮遊感がいいが、原作者の出身地である高知県でロケしたという、港町の風情も魅力的だった。
【65点】
(原題「パーマネント野ばら」)
(日本/吉田大八監督/菅野美穂、夏木マリ、江口洋介、他)
(友情度:★★★★☆)

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クヒオ大佐

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詐欺というと華麗なテクニックが常だが、この映画の主人公のそれはまぬけすぎて逆に魅力に見えるから不思議だ。恋愛詐欺師・クヒオ大佐は実在の人物で、女性たちから約1億円を巻き上げたというから驚きである。名前こそクヒオだが正真正銘の日本人だ。90年代初頭、米軍特殊部隊のパイロットを名乗るクヒオは、デタラメな経歴で女性を騙して金を巻き上げていた。どう見ても怪しい彼に、弁当屋の主人のしのぶや自然博物館の学芸員の春は騙され、正体を見破ったホステスの未知子でさえも彼に惹かれていく。

実話に基づくこの話、戦後すぐの混乱期ならまだしも、なんと湾岸戦争が始まった90年代のお話。騙す方も騙す方なら、騙される方も騙される方とあきれてしまう。だが今も世間を騒がせるオレオレ詐欺だって、なぜこんな拙い手口に引っかかるのかと不思議なのに被害があとを絶たない。元来、性悪説の私でも、人間とは信じやすい“良き生き物”という気がしてきた。嘘がバレたクヒオが言う「騙したんじゃない。彼女たちが望んだんだ」というセリフ、案外当たっているのかもしれない。バレバレの嘘を平気でつく幼稚な発想や、夢と現実の区別がつかない体験談など個性あふれる見所に対し、クヒオの背景や心理描写が浅いのは残念だが、付け鼻とおかしな日本語で熱演する境雅人の曖昧な笑顔が抜群にハマッていて、大いに楽しめた。もっとも根底にあるのは、日本人の根深い欧米コンプレックスかと思うと苦笑は禁じえない。
【70点】
(日本/吉田大八監督/堺雅人、松雪泰子、満島ひかり、他)
(コンプレックス:★★★★☆)

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