君と歩く世界 [Blu-ray]
肉体のぶつかりあいを介し不思議な絆で結ばれる愛の物語「君と歩く世界」。肉食系の男女の再生物語に感動する秀作だ。

南仏アンティーブの観光名所マリンランドのシャチ調教師ステファニーは、ショーの最中の事故で両足を失ってしまう。失意の彼女の心を開かせたのは、ナイトクラブの元用心棒で夜警の仕事をしているアリ。ぶっきらぼうなシングルファーザーのアリは、同情心を向けるのではなく、ストレートにステファニーに接し、そのことが彼女の心をやわらげる。賭け格闘技の試合に本能的な喜びを見出すアリとの触れ合いを重ねるうちに、やがて生きる意欲を取り戻すステファニーだったが…。

両足がない女と強靭な肉体を武器に戦う男。これは風変わりな“肉体派ラブストーリー”である。ラブストーリーといっても、純愛や献身とは違う、もっと本能的でストレートな関係だ。足がないステファニーを海に誘うアリは、一見、非常識に見えるが、海中で体を開放した彼女は「気分、最高」と言う。だが欠損した肉体へのコンプレックスからセックスへの不安を口にすると、アリはさらりと「ヤルか?」と聞く。この直情的な会話から二人の肉体関係が始まるが、そこには動物的な本能を恥じない人間の強さが感じられた。事故は悲劇だが、物語はお涙頂戴ではない。障害を扱うが社会問題にも傾かない。無論、出会って惹かれあって…の普通のラブストーリーとも違う。この物語、どう転がるのだろうと、一種のスリルさえ感じたが、「預言者」で国内外で高い評価を受けたジャック・オディアール監督は、肉体のぶつかりあいから人間愛へと至るヒューマン・ドラマへと導いてくれた。両足に義足をつけて、荒くれ男たちがいる賭け格闘技場へも出入りするステファニーのたくましい変貌に目を見張るが、愛情を表現する術を知らない粗野なアリにも変化が。息子や姉、ステファニーまでも傷付けてしまい、一人姿を消した後、彼にはさらなる試練が待つが、そこには愛情を素直に欲するアリの姿があった。ステファニーとアリの絆が意外なほど強い理由は、理屈ではなく原初的な本能で結びついたからに違いない。オスカー獲得後、ハリウッドでも大活躍のマリオン・コティヤールだが、本作ではほぼすっぴんでハンディキャップを持つヒロインという難役を好演している。南仏の輝く海の陽光や空気感もまた大きな魅力だ。
【70点】
(原題「RUST AND BONE」)
(仏・ベルギー/ジャック・オディアール監督/マリオン・コティヤール、マティアス・スーナールツ、アルマン・ヴェルデュール、他)
(パワフル度:★★★★☆)
チケットぴあ

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