映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「ラ・ラ・ランド」「トリプルX 再起動」「彼らが本気で編むときは、」etc.

園子温

園子温という生きもの

園子温という生きもの [DVD]
園子温(そのしおん)は、50歳近くまで食うや食わずの映画監督だったが、「冷たい熱帯魚」から「新宿スワン」までの5年の間に激変した。国際映画祭の常連監督となり、女優の神楽坂恵と結婚し、バンドや作家活動でも才能を発揮する。そんな彼の多彩な活動を、ゆかりの人物へのインタビューを交えて検証し、生きもの・園子温の姿に迫る。

音楽、絵画、路上パフォーマンスなど、さまざまな分野で精力的に活動し、才能を発揮している園子温監督の日常を追った長編ドキュメンタリー「園子温という生きもの」。2014年にテレビ番組「情熱大陸/映画監督・園子温」を演出した大島新監督が、テレビでは収まらない規格外の園の魅力を描きたいという思いで完成させたのが本作だ。今、日本で最も多作な監督である園監督の日常は、とにかく目まぐるしいほど忙しい。新作映画の企画会議、マスコミへの露出、アトリエでの自由奔放な絵画制作、ミュージシャンとしてライブを行うかと思えば、路上パフォーマンスで警察に事情徴収されたりもする。なんだか「生き急ぐ」という言葉を思い浮かべてしまうが、それほどまでに精力的に動くのは、やはり東日本大震災を経験したこの日本で生きる以上、やれることはすべてやる!という彼なりの決意表明に思えてならない。新作「ひそひそ星」の撮影で、福島の被災地をロケ地に選んだのも、「ヒミズ」「希望の国」でいち早く福島の現状を描いたものも、そのためだろう。インタビューで登場するのは、園作品に出演した染谷将太、二階堂ふみ、妻であり園映画のミューズである神楽坂恵、映画プロデューサーや雑誌編集長など、彼を知る多彩な人々だ。また、家族(妹で、この方がまたユニーク!)が登場するなど、まさにプライベートをさらけ出している。園監督自身が、まったく芽が出ず売れなかった時代を、悲壮感よりも面白がって話す姿が興味深い。この監督、自分をむきだしにして、まだまだ面白いことをやってくれそうだ。
【50点】
(原題「園子温という生きもの」)
(日本/大島新監督/園子温、染谷将太、二階堂ふみ、他)
(むきだし度:★★★★☆)
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ひそひそ星

ひそひそ星 [Blu-ray]
何度も大きな災害に見舞われ、戦争などの過ちを繰り返したために人類の数が激減した未来。宇宙は機械に支配され、絶滅危惧種となった人類は2割となり、人工知能を持つロボットの数が8割を占めていた。静寂に包まれた宇宙で、アンドロイトの鈴木洋子・マシンナンバー722は、レトロな宇宙船に乗って星々を回り、滅びゆく人間たちに日用品などの荷物を届けている。その荷物は人間にとって、かけがえのない物だったが…。

「冷たい熱帯魚」「ヒミズ」などの園子温監督が20代の時に書きためていたオリジナル・ストーリーを映像化したSFドラマ「ひそひそ星」。人類が滅びる寸前という時代設定、昭和レトロな宇宙船のヴィジュアル、モノクローム映像、人間は30デシベル以上の音で死ぬ恐れがあるので、常にひそひそ声で話しているという、さまざまな個性的な設定は、オリジナリティにあふれていて、これが園監督自ら立ち上げたプロダクションによる自主映画であることに深く納得する。だが決して独りよがりの物語ではない。劇中に福島の地と、住民の皆さまが多く出演していることからもわかるように、現代の日本の現実“福島”を見据えて、来たるべき人類滅亡の時へ、静かな警鐘を鳴らしているのだ。日本人女性型アンドロイドの主人公が宅配で届けるのは、モノの形を借りた記憶と時間。距離と時間に対する憧れは、人間の心臓のときめきのようなものであるという言葉が印象深い。木製の床、蛾が迷い込んだ電灯、ポタポタと水滴が落ちる蛇口。宇宙船はまるで昭和30年代の日本の台所のようにノスタルジックだが、その世界での人間は影絵のような存在だ。だがモノクロの映像の中でもとりわけ美しいのは、アンドロイドの洋子が荷物を持って長い長い廊下を進む時、そこに映る生き生きとした影絵の人間たちの生の営みなのである。これはSFの形を借りた、美しく残酷な社会派映画なのかもしれない。
【60点】
(原題「ひそひそ星」)
(日本/園子温監督/神楽坂恵、遠藤賢司、池田優斗、他)
(レトロ度:★★★★☆)
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ラブ&ピース

ラブ&ピース コレクターズ・エディション(Blu-ray初回限定版)
さえないサラリーマンが一匹のミドリガメと出会い運命を激変させていく異色作「ラブ&ピース」。園監督初の特撮もので、奇想天外な展開に唖然。

サラリーマンの良一はロックミュージシャンになる夢をあきらめ、ぱっとしない毎日を送っている。同僚の裕子に好意を持っているが話しかけることもできない。ある日、デパートの屋上で1匹のミドリガメと目が合い、運命的なものを感じて「ピカドン」と名付けて可愛がるが、会社でバカにされてしまい、ついトイレに流してしまう。良一は後悔するが、ピカドンは下水道を通って地下に住む謎の老人のもとにたどり着く。そこは不思議な地下世界だった…。

ちょっと働きすぎじゃね?!というくらい公開作が連続している園子温監督だが、本作は、久し振りの完全オリジナル作品だ。無名時代(25年前!)に書き下ろした脚本がついに形になったというのだが、これがなんと特撮怪獣モノなのである。うだつの上がらない主人公・良一は、不思議なミドリガメと出会ったことから、運命が転がり始め、ひょんなことからロックスターとしてスターダムに駆け昇り、自分を見失っていく。一方で、ミドリガメのピカドンがいる地下世界は、人間に見捨てられたおもちゃや人形たちが暮らす摩訶不思議な世界だ。巨大化するミドリガメ怪獣は良一の肥大した自我、ピカドンと良一の同僚・裕子は無償の愛。メタファーであることは明白なのだが、怪獣ものとして描写されるストーリーは、正直ノレなかった。むしろ、地下世界に住むおもちゃたちが、どこまでも人間を信じていて希望を失っていない姿こそ涙ものである。そんな中でも人間の冷淡さを知りながら仲間を応援する猫のスネ公にはジンとくる。笑えて泣けて最後に感動…と言いたいところだが、特撮怪獣モノのノリにのれなければ、最後まで置いてけぼりなので、要注意だ。
【50点】
(原題「ラブ&ピース」)
(日本/園子温監督/長谷川博己、麻生久美子、渋川清彦、他)
(ファンタジー度:★★★★☆)
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TOKYO TRIBE

TOKYO TRIBE/トーキョー・トライブ [Blu-ray]
若者たちの抗争をラップで綴る異色のバイオレンス・アクション「TOKYO TRIBE(トーキョー・トライブ)」。なんでもありの無国籍ワールドにひたることができれば楽しめる。

近未来のトーキョーでは、若者たちが様々なトライブ(族)を形成し、お互いの縄張りを暴力で支配しながら危うい均衡を保っていた。「ブクロWU-RONZ」のトップに君臨するメラは、「ムサシノSARU」に所属する海(カイ)を異常なまでに敵視。メラは、街を支配するブッバ家、謎の女スンミ、政治家らをも巻き込んで、ムサシノSARUに戦争を仕掛けるが、それはやがてトーキョー中に派生し、想像を絶するバトルとなっていく…。

原作は井上三太の同名人気コミック。90年代のストリート・カルチャーを牽引した伝説的コミックとのことだが、本作のベースになっているのは「TOKYO TRIBE」の続編「TOKYO TRIBE 2」である。暴力、犯罪、殺人、セックス、そして愛と友情が満載の原作の世界観を、鬼才・園子温監督は、全編をラップにのせて描くという奇策で演出した。「シェルブールの雨傘」もセリフはすべて音楽だったが、本作では、ラップという性質上、相手を挑発するバトルの色合いが濃くなるため、異様な雰囲気が漂っている。加えて、勢ぞろいした豪華個性派キャストが、あまりにも濃い。お色気要員の女性キャストや、一見しただけでは本人とはわからない特殊メイクの俳優もいるので目を凝らしてみたいところだが、全体が狂気の曼荼羅図と思えば、視覚的にも慣れてくるはずだ。エロ・グロの世界で、竹内力の怪演はやはり笑いどころだし、謎の女スンミを演じる清野菜名のパンツ丸出しのアクション、演技初挑戦ながら原作キャラになりきっているYOUNG DAISなどは、意外にも健闘している。話はB級映画以外の何者でもないのだが、血で血を洗う抗争の原因はきわめてくだらない。「戦争の原因なんて所詮くだらないものさ」というメッセージなのだろう。個人的には誰もがトライブ(族)に属して群れてばかりいるのが少々気になる。映画オリジナルの一匹狼がほしかったところだ。
【55点】
(原題「TOKYO TRIBE」)
(日本/園子温監督/鈴木亮平、YOUNG DAIS、清野菜名、他)
(無国籍度:★★★★☆)
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地獄でなぜ悪い

地獄でなぜ悪い コレクターズエディション [Blu-ray]
ヤクザの抗争を背景にトンデモない映画愛が炸裂する任侠娯楽作「地獄でなぜ悪い」。お約束の血みどろ描写はいつも以上に過激だ。

ヤクザの組長の武藤は、服役中の愛妻のため、娘のミツコを主演に映画を作ることを決意する。手下をスタッフにし、たまたまミツコの男と勘違いされた気弱な青年・公次と、うだつのあがらない自主映画の監督・平田を巻き込むことに。背景は、武藤組が、敵対するヤクザの池上組に殴りこみをかけるというものだが、池上はミツコに恋しているから事態はややこしい。本物のヤクザ同士の抗争を舞台に、史上最も命がけの映画がクランクインするが、やがてそれはトンデモない方向へと向かっていく…。

園子温監督といえば、性と暴力を過激に描くのが定番。近年は社会派映画に傾いていたが、本作は、彼が20年前に自らの体験を盛り込んで書いた脚本で、自身初のコミカルな痛快なエンタテインメントだ。中身はまるでごった煮状態で、任侠、恋愛、アクションとハチャメチャな内容に唖然とする。無駄にかっこいい國村隼と堤真一が、敵対するヤクザを演じるが、堤演じるヤクザの池上は、元少女アイドルのミツコを熱愛。さらにへたれ青年の公次もミツコに純愛を捧げているから、恋愛度数もかなり高い。だが最もテンションが高いのは“映画愛”だ。これが映画ファンの琴線に触れるのは間違いない。ヤクザ映画班は、俳優、照明、音響と大活躍だが、映画作りとヤクザの抗争が一体化する展開は、ついには、一大スプラッタ状態へ。最初は日本刀、次に銃、はたまたどこから用意したのかマシンガンまで飛び出して、スクリーンは鮮血に染まっていく。もとより、園作品は誰にでもすすめられる口当たりのいいものではないのだが、本作は娯楽作といいながら、しっかりマニアックな作りなのが素晴らしい。荒唐無稽と言ってしまえばそれまでなのだが、誰よりも濃い映画愛と、最後の最後で虚実をミックスするオチにはガツンとやられてしまった。映画への愛を形にできるのなら、そこが地獄でもかまわない。まさしく園ワールドである。…しかし、ハミガミのCMの歌が頭にこびりついて離れない。どーしてくれる!
【65点】
(原題「地獄でなぜ悪い」)
(日本/園子温監督/國村隼、長谷川博己、堤真一、他)
(スプラッタ度:★★★★★)
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地獄でなぜ悪い@ぴあ映画生活

映画レビュー「希望の国」

希望の国(Blu-ray)希望の国(Blu-ray)
◆プチレビュー◆
原発事故に直面した3組の男女を描く「希望の国」。美しい映像、美しい旋律、目に見えない恐怖の中にも希望がある。 【75点】

 20XX年、酪農と農業を営む小野泰彦は、認知症の妻・智恵子、息子の洋一とその妻いずみと共に平穏に暮らしていた。だが大地震によって原発事故が発生する。息子夫婦を自主避難させた泰彦だが、自分は愛着ある家を離れらずにいた。そんな時、いずみが妊娠。彼女は日に日に放射能への恐怖をつのらせる…。

 近未来の架空の県を舞台にするが、そこはまぎれもなく、あの3.11を経験した場所だ。再び起こった原発事故で半径20キロ圏内が警戒区域となり、小野家の庭に避難区域の境界線が設置される。「KEEP OUT」の黄色い帯こそが、この映画の象徴だ。仲が良かった隣人や親と子を隔てるその帯は、生と死、絶望と希望、過去と未来までも、冷酷に隔てている。

 物語に登場するのは、泰彦と智恵子の老夫婦、洋一といずみの若夫婦、そして小野家の向かいの鈴木家の長男のミツルとその恋人ヨーコの3組だ。誰もが地震と原発事故によって、傷つき、価値観を大きく変えていく中で、認知症を患う智恵子だけが、変わらない日常を生きている。智恵子の中には「KEEP OUT」の文字はなく、家に帰るという、望みだけが厳然とある。過去を忘れたものだけが素直に口にできるあまりに悲しい望みだ。

 実際、3.11から1年以上の時が過ぎても、原発事故の収束は未だ見えてこない。住みなれた家を決して離れようとしない泰彦や、放射能が子供に及ぼす影響を怖がるあまり、防護服で過ごすいずみ、警戒区域に強引に入ってまで行方不明の家族を探すヨーコを、責めることなどできない。泰彦が繰り返し口にする「国などあてになるものか」との思いは、上から目線で退避命令を下す職員ですら感じとっている。それこそ現実の被災者すべてが共有する不信感なのだ。

 やがて下される家畜の殺処分と、退避命令。小野家の老夫婦の最後の選択にはさまざまな意見があろう。だがじっくりと長回しで据えたカメラは、揺るぎない信念で彼らを映している。本作には、園作品には珍しい、幻想的なシーンも。がれきの中で“そこにない何か”を懸命に探す行為は、幻のような子供たちの姿とシンクロする。探し当てたのは希望か、あるいは絶望か。だが、黄色い帯で隔てられてもなお、それを越えようとする人々が確かにいる。怒りにも似たその生命力を、この映画を見て観客一人一人が感じ取ることだろう。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)リアル度:★★★★☆

□2012年 日・英・台湾合作映画 □原題「希望の国」
□監督:園子温
□出演:夏八木勲、大谷直子、村上淳、神楽坂恵、他

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希望の国@ぴあ映画生活

映画レビュー「ヒミズ」

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◆プチレビュー◆
ヒリヒリする痛みの後に、かすかな希望の灯が見える青春映画「ヒミズ」。主演の若手俳優二人が素晴らしい。 【75点】

 15歳の中学生、住田の願いは“普通の大人になること”。一方、住田に興味を持つクラスメートの少女・茶沢の夢は、愛する人と守り守られ生きること。だが、住田が、暴挙を繰り返す父親を衝動的に殺してしまったことから、住田の、そして茶沢の人生は大きく狂っていく…。

 日本映画界屈指の鬼才・園子温監督の新作は、またしてもスゴイ作品だ。だが本作は、今までの作風とは少し違う。これまでオリジナル脚本にこだわってきた園監督が初めて原作ものに挑んでいるのだ。原作は、多くの著名人から支持されている古谷実の同名漫画。さらに今回のハードな青春映画には、それまで過剰なまでにたたきつけられていた、性的な要素はほとんどない。共に両親の愛を持たない住田と茶沢は、純粋に人生について悩んでいる状態なのだ。

 例によって主人公を取り巻く環境は壮絶である。貸しボート屋を営む住田の家は、母親は男と逃げ、父は時々戻っては金を無心し暴力を振う。ボート小屋の周辺に住むホームレスらと共に何とか生きている住田はそれでも必死に叫ぶ。「こんな定番の不幸話じゃへこたれねーぞ!オレは立派な大人になるんだ!」。あまりにも悲しすぎる住田の心は、限界を超えていた。本来は子を愛すべき親が、子を憎む。その結果が、絶望と狂気の“オマケ人生”を生む。

 だが、そんな状態でも希望を忘れていないのが、今までの園作品とは、大きく異なる点だ。罪を犯し続ける住田を慕う茶沢の環境もまたすさまじいものだが、彼女は愛を決してあきらめない。過剰にエキセントリックな茶沢は、住田を救うために奔走する。ぶつかりながら繋がっていく二人を演じる、染谷将太と二階堂ふみのみずみずしい演技には、圧倒的な感動を覚える。

 ヒミズとは、モグラ科の哺乳類で“日不見”という字を当てるという。日を見ない動物になりたいとつぶやいた住田に、この物語は最後の最後で、救いを与えている。原作から変更されたのは、設定を東日本大震災後の日本にしたこと。終わらない平和な日常など、もはやない。私たちは終わりなき“非日常”を生きていかねばならない。だからこそ希望が必要なのだ。走り、叫び、全身で愛を求める住田と茶沢のように。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)衝撃度:★★★★★

□2011年 日本映画 原題「ヒミズ」
□監督:園子温
□出演:染谷将太、二階堂ふみ、窪塚洋介、他
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ヒミズ@ぴあ映画生活

恋の罪

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堕ちていく女の恍惚と狂気を描く「恋の罪」は、実在の殺人事件にインスパイアされた物語。鬼才・園子温監督は、徹底した女目線にこだわっている。

どしゃぶりの雨の日、渋谷区円山町にある廃アパートで女性の死体が発見される。それは、マネキンと接合された凄惨な変死体で、壁には「城」の血文字があった。この猟奇殺人事件を担当する刑事の和子は、調べるうちに、大学のエリート助教授・美津子と、人気小説家の妻いずみの二人が、売春行為を行っていた秘密を知る…。

登場する3人の女の共通点は、心と体の乾きを感じているということ。貞淑で清楚な人妻のいずみは、昼は大学助教授、夜はデリヘルで売春行為という二重生活を送る美津子に強烈に惹かれ、行動を共にする。「おまえはわたしのとこまで、キッチリ堕ちてこい!」と叫ぶ美津子。恐れおののきながらも自分を解放していくいずみ。そこに美津子と母親の異常な関係が浮かび上がり、さらに美津子の客としていずみの夫が現れてから、女たちの関係は激しくゆがんでいく。事件を捜査する和子もまた、幸せな家庭がありながら、愛人との関係を断ち切れずにいる屈折した女性だ。魂が狂っていくこの物語に、一般的な共感は難しい。それでも、繰り返される詩は、3人の女たちの愛は、言葉などでは表せない地獄のような激闘だと言わんばかりで、孤独と哀しみを感じずにはいられない。体当たりで役を演じる水野美紀、冨樫真、神楽坂恵の狂気すれすれの演技があまりにすさまじく、見終わればぐったりと疲労感が残るが、ここまで堕ちれば、後は這い上がるだけという居直りのような女の不敵な微笑が脳裏に焼き付けられる。女たちの業が、園監督らしい強烈な毒素の絵の具で、スクリーンにたたきつけられているかのような問題作だ。
【60点】
(原題「恋の罪」)
(日本/園子温監督/水野美紀、冨樫真、神楽坂恵、他)
(壮絶度:★★★★☆)
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恋の罪@ぴあ映画生活

映画レビュー「冷たい熱帯魚」

冷たい熱帯魚 [DVD]冷たい熱帯魚 [DVD]
◆プチレビュー◆
人間のグロテスクな狂気を冷徹なまなざしで描く問題作。名脇役でんでんが演じる猟奇的キャラが見もの。 【70点】

 小さな熱帯魚店を経営する社本と若い後妻の妙子は、ある日、万引きをした娘・美津子を助けてもらった縁で、同業者の村田と知り合う。最初は親切だったこの男こそ、実は人の命を平気で奪う異常者だった。社本は豹変した村田にひきずられ、殺人の共犯者にされてしまう…。

 1993年に埼玉で起きた愛犬家猟奇殺人事件は、ペットショップ経営者が、自分に不都合な人物を、妻や従業員と共謀して殺害、風呂場で死体を解体し焼却処分にするという極めて残酷な凶行で、世間を大いに騒がせたものだ。本作はその事件をベースに、いくつかの類似の事件と、園子温監督が体験した詐欺事件とをブレンドして作られている。園作品では、崩壊する人間関係が多く描かれるが、ここまで救われない家族の物語がかつてあっただろうか。

 大手熱帯魚店を経営し、人当たりが良く面倒見のいい村田という中年男が、本性を表すのに時間はかからない。夫婦生活は冷え切り、すべてに無気力な主人公の社本が、何の抵抗も出来ないまま、村田の一味の共犯者になっていくのも、あっという間だ。村田が繰り返し口にする「ボディを透明にしちまえばいいんだ!」の言葉が、血のラプソディーの序曲。これは、リアルな完全犯罪ではなく、狂気のファンタジーなのである。

 想像を絶するほど残酷なのに、もはや悲劇なのか喜劇なのかもわからない危うい世界は、日常のすぐそばにあった。村田夫妻にシゴかれて、アリバイ作りの口裏を合わせるレッスンには、黒い笑いがこみあげるし、村田と妻が行なう死体解体作業は、濁った血と肉片にまみれて壮絶なのに、カリカチュアライズされた夫婦は、すべてがテキパキと楽しげである。2人は完全に“彼岸”に行ってしまっているのだが、よくみるとこの物語はそんなヤツらであふれているのだ。世界は間違いなく“死”と“暴力”に満ちていて、人はそれらに恐れと同時に憧れも抱いている。終盤は、まさにエクストリームそのものと化し、村田の犯罪のパーツになり果てたかに見えた社本が、極限まで辱められたことによって、思いもよらぬ行動に出る。抑圧された人間の反撃にはある種のカタルシスが漂うが、そこに待っていたのはもうひとつの狂気のスパイラルだった。

 園監督が得意とするモチーフに宗教があるが、死体解体ハウスの屋根に十字架があり、室内にはマリア像が置かれている様子が、いかにも園ワールド。すべての蛮行をロウソクの火が冷徹に照らし出す異様な光景に、神の不在を見る思いがする。社本を演じる吹越満が難しい役を熱演するが、それ以上に強烈なのは、モンスターのような殺人鬼・村田を演じるでんでんその人。お人よしのおじさん的ルックスの彼が、過去の演技をすべて吹き飛ばすような怪演を見せて度肝を抜く。園作品では、意外性のあるキャスティングがいつも魅力のひとつなのだ。底知れない“悪”を描くのに、セオリーは必要ない。

 熱帯魚は英語でコールド・フイッシュ。冷淡な人という意味があるという。衝撃的な内容は、見る人を選ぶだろう。ただ、人間の中に確かにある、ダークな側面を、エロスとタナトス全開でたたきつけるこの映画、抗し難いどす黒い魅力がある。勇気があれば、悪意の極北とそのなれの果てを覗いてほしい。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)グロテスク度:★★★★★

□2010年 日本映画 原題「冷たい熱帯魚/COLDFISH」
□監督:園子温
□出演:吹越満、でんでん、黒沢あすか、他


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ちゃんと伝える

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鬼才・園子温監督らしからぬ静かな空気に包まれたヒューマン・ドラマだ。監督自身の亡き父への思いを投影した非常にパーソナルな内容のせいか、強く浮き彫りになっているのは、家族というテーマである。ガンで闘病中の父を毎日病院に見舞う史郎は平凡なサラリーマン。だがある日、史郎自身がガンに蝕まれ、父親よりも短い命だと知らされる。家族や恋人にもそのことを言えずに悩む史郎だったが、残された時間は僅かしかなかった。

いわゆる“余命もの”というカテゴリーでは、過剰に“泣き”が入るが、この物語は終始穏やかだ。唯一、主人公の爆発は、父が死に、火葬場へ向かう途中にやってくる。棺桶から遺体を出して一緒に釣りをするその場面は、物静かな史郎が起こす狂った行動だ。生前果たせなかった約束を断固として守るその姿には、彼自身の命の燃焼が重なって見える。毎日の食事や仕事、何気ないおしゃべり。自分の余命を知るとすべてがいとおしい。人間はいずれは誰もが死ぬ存在。本来は残り時間など関係なく、大切にしなければならないものが日常だということだろう。命はセミの抜け殻のようにはかないが、主人公は、自分の中の伝えるべきものを知ることで、生の道筋を納得できたのだと思う。
【60点】
(日本/園子温監督/AKIRA、奥田瑛二、高橋惠子、伊藤歩、他)
(家族愛度:★★★★☆)

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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