声をかくす人 [DVD]声をかくす人 [DVD] [DVD]
アメリカで初めて死刑になった女性の知られざる真実を描く「声をかくす人」。正義の在り方を改めて問う意義は大きい。

1865年、多くの犠牲者を出した南北戦争終結後、これから新しい国を導くはずだったリンカーン大統領が暗殺される。すぐに8人の犯人グループが逮捕されるが、その中に南部出身の未亡人メアリー・サラットがいた。彼女が営む下宿屋を犯人たちのアジトとして提供したという暗殺幇助の罪だが、裁判になるとメアリーは「私は無実です」とだけ述べ、それ以外のことは口にしなかった。メアリーの担当弁護士を引き受けることになったフレデリックは、北軍出身ということもあり、最初は弁護に抵抗を感じるが、メアリーの毅然とした態度と、最初から彼女の有罪を決めつける裁判そのものに疑問を感じ、やがてメアリーは無実ではないかと思い始める…。

監督業でも高い評価を得るロバート・レッドフォードがメガホンを取る本作は、リンカーン暗殺事件の裁判の顛末を通して、法の公正、正義の在り方を問い直すものだ。それは、現代アメリカの国家権力への痛烈な批判にもつながり、レッドフォードがかつて出演した社会派映画の傑作「大統領の陰謀」と同じ香りを漂わせる。メアリー・サラットはアメリカで初めて死刑になった女性。フレデリック・エイキンは、北軍の英雄、弁護士、そして「ワシントン・ポスト」初代社会部部長を務めた人物だ。アメリカの十八番に“敵を作ってしっかり団結”があるが、敵は外国にいるとは限らず、悲劇を乗り越えるための犠牲者であってもかまわないようだ。大統領暗殺はもちろん大罪で許されないことだが、いかなる時も、法は感情に流されるべきではない。大統領暗殺の復讐と憎悪からメアリーを最初から有罪と決めてかかる裁判は、茶番そのもので、結論はすでに出ているのだ。しかもメアリーは民間人なのに軍事法廷で裁かれる。この状況に、フレデリックは弁護士としての本来の責務に目覚める。たとえ被告が誰であれ、どんな罪であれ、公正な裁判を受ける権利があり、それこそリンカーンが目指した基本的人権を尊重する法治国家なのだとの訴えは、正当で高潔なメッセージとして響いてくる。ただ、メアリーがひた隠す秘密は、さほどミステリアスなものではなく、母としての彼女の姿を見れば容易に想像できる。本作はその謎に迫ることより、理不尽な裁判を目の当たりした一人の若き弁護士の闘いと、心の成長のドラマに重きを置いて見るべきだ。強い意志を持つ女性メアリーを演じるロビン・ライトのストイックな熱演が素晴らしい。映画全体を覆うセピア色の映像も心にしみる。
【65点】
(原題「THE CONSPIRATOR」)
(アメリカ/ロバート・レッドフォード監督/ジェームズ・マカヴォイ、ロビン・ライト、ケヴィン・クライン、他)
(社会派度:★★★★☆)
チケットぴあ

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