映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
毎日のレビューは分かりやすく簡潔な寸評で、週1本の長文映画レビューでは作品をディープに掘り下げます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる公開作品 ◎
「ファミリー・ツリー」「ダーク・シャドウ」「サニー」

大沢たかお

桜田門外ノ変

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幕末を背景にした正統派歴史劇。井伊直弼暗殺をクライマックスにせず、その事件が個人をどう変えていったかを描くことで、歴史を俯瞰している点が意義深い。黒船来航により開国か攘夷かで揺れる日本。開国派の大老・井伊を暗殺することで日本を諸外国から守ろうと決意した水戸藩士らは、大雪が降りしきる3月3日、壮絶な斬り合いの果てに井伊を討ちとる。だが水戸藩士たちと合流して京都を制圧する約束だった薩摩藩から、挙兵慎重論が持ち上がり計画が瓦解。幕府からも水戸藩からも追われる立場になってしまう。襲撃の指揮をとった関鉄之介は、潜伏・逃亡しながら事件に至る経緯を思い返していく…。

桜田門外ノ変は一大クーデターで、この事件が後に幕末の志士たちに衝撃を与え徳川幕府の終焉と明治維新への道筋を開くことは、歴史の教科書にも載っている。だが映画は、襲撃をクライマックスにしないことで、事件を美化せず、大きくうねった時代の流れの中で先を見据えることの難しさを丁寧に描いた。物語序盤で早々と訪れる桜田門外ノ変の場面が、個よりも集団を意識した混沌としたバトルになっているのがリアルだ。白い雪に鮮血が散る様子は壮絶な美しさだが、その赤も降り積もる雪の白に覆われていく。井伊の命を奪ってもそれがやがて激動の時代に飲み込まれ、無名の個人の存在など歴史がすぐに覆い隠す運命を象徴するような悲壮な場面だ。権力へ反旗を翻す政治闘争のモチベーションは、ほとんどが“憂国”という思想。その志は高くとも、代償はあまりにも大きい。主人公・鉄之介が「我らは、井伊一人の命を奪うのに、いったい何人の命を犠牲にしたことか」と遠い目でつぶやくのが印象的だ。

かつて岡本喜八監督は、桜田門外ノ変を、映画「侍」で豪快なアクションと出生の秘密というフィクションを織り交ぜて描いた。一方この映画は、非常に真面目て堅い印象なのだが、昨今のTV局主導の作品ではなく、茨城県民が立ち上げた、地方創世の映画だということが特筆である。地域振興や観光誘致という目的もあろうが、水戸藩の下級武士たちの真摯な思いを残したいとの願いがあったに違いない。さらに映画は、彼らが目指した先にあった理想と現代日本との差異に無言で言及している。だからこそ、最後に映しだされるのは他でもない国会議事堂。国政というのは苦難と失意の積み重ねなのだと感じさせるショットだった。
【60点】
(原題「桜田門外ノ変」)
(日本/佐藤純彌監督/大沢たかお、北大路欣也、長谷川京子、他)
(硬派度:★★★★☆)

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GOEMON

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すべてが過剰でけれん味たっぷり。独特の世界が広がる歴史異聞だ。秀吉が天下人として君臨する時代、世間を騒がせた義賊・石川五右衛門の壮絶な戦いを、驚きの設定で描く。秀吉、三成、霧隠才蔵に服部半蔵が追うのは南蛮製の箱に入った信長暗殺の秘密。徹底的にデジタルにこだわった映像はCGの申し子・紀里谷和明の得意とする世界だ。豪奢で異国風の文化が花開いた安土桃山時代の狂乱の表現に全力を注いでいる。現実離れした映像と懲りすぎの人物像は、リアリティを失ってなんぼだが、濃いキャラの中で広末涼子だけが映像に負けている。石川五右衛門がいいキャラすぎるのはつまらないが、一種のパラレル・ワールドと思ってしまえば楽しめよう。
【55点】
(日本/紀里谷和明監督/江口洋介、広末涼子、大沢たかお、他)
(リアリティ度:★☆☆☆☆)

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ICHI

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座頭市という有名なダークヒーローを大胆にも性別を女に設定し、いわば外伝の趣である。物語は盲目で“離れ瞽女(ごぜ)”の市の孤独で過酷な運命を描くアクション時代劇だ。逆手居合斬は瞬間の速さが勝負なのにスローの多用でスピードを削ぎ、とぼけた味が可愛い綾瀬が虚無的で無表情、現代劇そのままの芝居の窪塚、芸達者な大沢もこの役では技量が活きない。何もかもがちぐはくなのが理解できなかった。最先端のVFXを操る曽利監督ならではの殺陣は迫力よりも美しさを重視しているので、座頭市という枕詞をはずし綾瀬はるかのコスプレ映画として楽しむしかなさそうだ。
【45点】
(日本/曽利文彦監督/綾瀬はるか、大沢たかお、中村獅童、他)
(迫力度:★☆☆☆☆)

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築地魚河岸三代目

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シリーズ化が決定しているだけあって、脇役までキャラが非常に立っている。恋人の窮地を救うため魚河岸に飛び込んだ主人公が、悪戦苦闘しながらもたくましく成長する姿を描く。会社組織を悪、魚河岸を善として対比するのは少々安直だが、人間同士の嘘のないつきあいは、現代人なら誰もがあこがれるはずだ。大沢たかおと田中麗奈は共にさわやかな好演。主人公の特別な舌の活躍や、魚のうんちくがもっと知りたかったが、次回に期待だ。
【60点】
(日本/松原信吾監督/大沢たかお、田中麗奈、伊原剛志、他)
(人情度:★★★★☆)

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ミッドナイト イーグル

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軍事ものと山岳ものは、日本映画では資金も技術も発展途上。二つを併せ持つこの作品は邦画としては何とか合格点だろう。北アルプス山中に墜落したステルス戦闘機により日本滅亡の危機が迫る。物語的には、運命を託された大沢、玉木の二人が雪山のエキスパートであることをもっと強調するべきなのだが、その分、人間愛の描写に時間を割いている。撮影困難な雪山での、俳優やスタッフの苦労をねぎらいたい。
【65点】
(恋愛度:★☆☆☆☆)
(日本/成島出監督/大沢たかお、竹内結子、玉木宏、他)

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Life 天国で君に逢えたら

Life天国で君に逢えたら スタンダード・エディションLife天国で君に逢えたら スタンダード・エディション
世界的なプロ・ウィンドサーファーというと華やかだが、下積み時代は本当に大変なのだとしみじみ。若くしてガンで逝った飯島夏樹の半生を、彼を支えた家族の視点で描く物語だ。飯島氏の生き方が感動的だが、何より妻の寛子さんが素晴らしい。なのに、なぜに彼女を演じるのが大根女優の伊東美咲なのだろう?この役は美しさより、芯の強さが重要。演技派の女優にやってほしかった。ハワイのさわやかな風景とレース場面は見所。
【50点】
(日本/新城毅彦監督/大沢たかお、伊東美咲、真矢みき、他)
(妻の鏡度:★★★★☆)

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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