映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
毎日のレビューは分かりやすく簡潔な寸評で、週1本の長文映画レビューでは作品をディープに掘り下げます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる公開作品 ◎
「ファミリー・ツリー」「ダーク・シャドウ」「サニー」

妻夫木聡

スマグラー おまえの未来を運べ

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死と隣り合わせになって初めて知る、真剣に生きる瞬間の快感を描く「スマグラー おまえの未来を運べ」。抜群に立ったキャラとエキセントリックなストーリーでラストまでテンションが落ちない。

25歳のフリーターの砧涼介は、役者の夢も敗れ毎日を無為に過ごしていた。儲け話にひっかかり多額の借金を背負った彼は、ワケありの荷物を運ぶ危険な運送屋(スマグラー)の仕事をするハメに。仕事を仕切るジョーと相棒のジジイと共に初仕事に取りかかった砧だったが、運ぶ荷物はなんとヤクザの組長の死体だった。やがて、伝説の2人組の殺し屋「背骨と内臓」、ヤクザたちとの争いに巻き込まれた砧は、たった一度のミスが命取りになる、危険な闇の世界に足を踏み入れたことを知る…。

原作は、真鍋昌平の同名コミック。稀代の映像クリエイターの石井克人が映画化した本作は、刺激的なアクションとコメディの要素を盛り込んだ、スタイリッシュなエンターテインメントに仕上がった。すさまじい暴力に、残酷な拷問シーンまであるのだが、それがどこかファンタジーのように見えてしまうのは、ハイスピード・カメラとCGを駆使したぶっ飛んだ映像のおかげ。登場人物は、チャイニーズ・マフィアの伝説の殺し屋、何事にも動じない組長の若妻、ゴスロリ・ファッションの便利屋に、キレやすい上に変態趣味のヤクザなど、誰もが強烈な個性の持ち主だ。裏社会のプロフェッショナルに囲まれて、ヘタレの主人公は、生まれて初めて真剣に生きることを知る。これは何者でもなかった青年が、試練を経て、一世一代の“役柄を演じる”成長物語なのだ。血や汗がゆっくりと飛び散り、顔が歪むデフォルメされたアクションとキレのあるセリフは、閉塞的な現代社会にケリを入れるかのような爽快さ。クライマックスに凄まじい形相を見せる妻夫木聡がいいのは言うまでもないが、寡黙なスマグラーのジョーを演じる永瀬正敏の存在感が際立っていた。
【65点】
(原題「スマグラー おまえの未来を運べ」)
(日本/石井克人監督/妻夫木聡、永瀬正敏、松雪泰子、満島ひかり、他)
(エキセントリック度:★★★★★)
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スマグラー おまえの未来を運べ@ぴあ映画生活

映画レビュー「マイ・バック・ページ」

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◆プチレビュー◆
現実と理想の狭間で揺れる若者たちの苦い挫折の物語。妻夫木聡vs松山ケンイチの演技合戦は見応えがある。 【70点】

 1969年。大手新聞社の週刊誌編集記者・沢田は、全共闘や新左翼運動で社会全体が大きくうねる中、熱い理想を抱いて働いていた。それから2年後、梅山と名乗る男から接触を受け、武装決起の計画を知らされる。沢田は梅山の言葉に疑いを持ちながらも、不思議と彼に親近感を覚えていく…。

 この映画を作った山下敦弘監督は76年生まれ。60〜70年代の熱い政治の季節の夢と挫折を知らない世代だ。そのことが、作品に客観性を持たせている。結果的に、非常に政治的な題材ながら、時代と関わることで苦みを知る主人公の心情を描くエモーショナルな青春映画になった。

 沢田にはジャーナリストとしての潔癖さと若さゆえの甘さがある。梅山は、マスコミさえ利用する、うさんくさい男だ。そんな2人が善悪を超えた部分で共鳴しあったきっかけが、文学や音楽、映画だったりするのが、実にセンチメンタルだ。「真夜中のカーボーイ」のダスティン・ホフマンが好きだという梅山を信じてしまう沢田は、なるほど梅山が言うように“優しすぎる”。

 革命と権力とジャーナリズム。そのすべての背景にベトナム戦争があった時代の熱気は、経験してないものには、正直よくわからない。ただ、自分たちの手で社会を変えようという気概と暴力を短絡的に結びつける“イノセンス”は、革命の熱とは無縁の現代からは、一途に夢を追う青春そのものに見える。脆くも挫折していく結果まで知っているからなおのことだ。2人の運命は「駐屯地で自衛官殺害」というショッキングな事件で激しく交錯し、沢田は梅山に問う。「君らが目指したものって何だったんだ?!」。答えは永遠に出ない。

 原作は、評論家の川本三郎氏の同名ノンフィクションだ。薄気味の悪い活動家役の松山ケンイチが、終始、作品をリードしているかに見えるが、最後の最後に、妻夫木聡が涙を流す入魂の演技で一気に形勢が逆転する。苦い後悔と青春の終焉、人と距離を置いて生きる今の孤独な自分。それらすべてがないまぜになった、この泣くシーンは見事だ。劇中に沢田がデートするモデルの少女が「ファイブ・イージー・ピーセス」のジャック・ニコルソンが泣くところが好きだと言った。自分はきちんと泣ける男の人が好き、とも。この映画の主人公が“きちんと泣いてくれた”のが救いに思えた。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)青春映画度:★★★★★

□2011年 日本映画 原題「マイ・バック・ページ」
□監督:山下敦弘
□出演:妻夫木聡、松山ケンイチ、忽那汐里、他
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映画レビュー「悪人」

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◆プチレビュー◆
ひとつの殺人事件が重層的にあぶりだす人間の心の闇を描いた「悪人」。愛を渇望する男女の逃避行が胸を打つ。 【75点】

 長崎在住の土木作業員の祐一と、佐賀に住む紳士服量販店店員の光代は、携帯の出会い系サイトで知り合い、強く惹かれ合う。だが祐一は、今世間を騒がせている女性保険外交員殺害事件の犯人が自分であることを告白する…。

 芥川賞作家・吉田修一の原作小説は、多くの人物のモノローグで構成されているが、李相日監督と原作者との共同脚本による映画は、登場人物とエピソードを絞り込み、孤独な男女の刹那的なラブストーリーを中心に据えている。また被害者と加害者の肉親の思いを丁寧にすくい取ることで、主人公のバックグラウンドを巧みに描き、見るものを物語の奥深い場所へと連れて行く。

 殺人事件の犯人で、金髪の寡黙な青年・祐一は、きっと心根は優しい。だが、爆弾を抱えているような得体の知れない危うさをも内包している。そんな彼の望みは、ただ誰かに愛されることだ。祐一の願いは、光代によって叶えられるが、内向的な彼女もまた情念とエゴを心に秘めた女性だ。事件に関与する人物は、誰もが悲しいほど脆い。殺された佳乃が祐一を虫けらのように扱ったり、金持ちの大学生・増尾が佳乃を夜の峠に置き去りにするのは、彼らが人を見下すことでしかプライドを保てない弱い人間だからだ。自分に欠けた善のパーツを補う方法が分からない若者が事件の中心にいるのに対し、周囲の大人たちは、人を愛することの大切さを知りながら、それを次世代に伝える力がない。となれば、異なる世代のコミュニケーションの欠如が殺人の遠因にも思えてくる。

 やるせないほどの愛情で結びつく男女を体当たりで熱演する妻夫木聡と深津絵里が素晴らしいが、加えて、祐一の祖母を演じる樹木希林が抜群に光った。純朴な老人を狡猾に騙す悪徳業者や、執拗にカメラを向けるマスコミに狙われる祖母は、最も弱い人間に思えるが、孫の祐一を心から慈しむ気持ちが、最後には彼女を強くする。娘を奪われ打ちひしがれた佳乃の父親の手にスパナが握られるのも同じ理由だ。どれほど身勝手な娘でも無条件に我が子を愛する父もまた、くじけなかった。地方都市の閉塞感の中、善悪の根源を探るこの物語は、誰かを大切に思う気持ちを持つ人間を、決して見捨てはしない。

 物語後半は、恋人たちの逃避行というロードムービーへ。「もっと早く光代と出会いたかった」と声を震わせ、自首するという祐一を思わず引き止める光代。彼女もまた、誰かとの出会いを真剣に待っていた。「私と一緒に逃げて」。つかの間の幸せにすがりつく2人が向かうのは海を見下ろす灯台だ。

 悪人とは誰なのか。それ以前に悪とは何だろう。原作には「両方が被害者にはなれない」という言葉がある。追いつめられた祐一がとる行動は、映画には出てこないこの言葉を思い出させた。愛する人を“被害者”として守るために自らの手に罪を招き入れる祐一を、簡単に悪人とは呼びたくない。映画を見終わった後には、よどんだ澱(おり)のような暗い感動が残る。それでいて小さな希望を感じるのは、祐一が祖母にプレゼントしたスカーフが、殺人現場に結ばれていたから。それとも悲しい眼をした祐一が最後に泣いたような笑顔を見せるからか。殺人という絶対的な悪とその周囲の相対的な悪をえぐった物語は、現代社会を生きる私たちに「大切な人はいるか」と激しく問いかける。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)閉塞感度:★★★★★

□2010年 日本映画 原題「悪人」
□監督:李相日
□出演:妻夫木聡、深津絵里、岡田将生、満島ひかり、他


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悪人@ぴあ映画生活

ノーボーイズ、ノークライ

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孤独、絶望、怒り。何もかもがグチャグチャに混ざって出口さえ見えない。だが、どうしようもない状況の中にも必ず希望はあると、この不思議な手触りのドラマは教えてくれる。韓国人ヒョングは古いボートで海を渡る違法の運び屋。ヤバそうな荷物を海岸で受け取る日本人青年の亨はいつも無愛想で何を考えているのか分からない。ある日、いつもと違い、少女を運ぶ依頼を受けた二人は、彼女の父親探しに巻き込まれてしまう。

裏社会の下っ端同士の二人の青年が共有するのは、捨てたくても捨てきれない家族への思いだ。亨は自堕落な妹や病気の甥、痴呆の祖母を抱えて身動きがとれず、いっそ家族などいなければ…と願うことも。一方、ヒョングは親から捨てられ家族の意味さえ知らずにいるが、それでも僅かに残る母の記憶を心にしまっている。そんな彼らが互いの孤独を知り、分かり合っていくプロセスは、悲痛なのにどこかユーモラスな青春物語の風を感じさせ、脚本家渡辺あやの鮮やかな手腕を印象付けた。見終わってさわやかな余韻を残してくれるのは、心優しい“人魚”が最後に現れるため。膨大な韓国語のセリフをこなした妻夫木聡の表情がとてもいい。
【70点】
(原題「THE BOAT」)
(日本・韓国/キム・ヨンナム監督/妻夫木聡、ハ・ジョンウ、チャ・スヨン、他)
(切なさ度:★★★★☆)

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感染列島

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数ある災害の中でも、台風や怪獣より怖そうなのがパンデミック。物語は、未知のウィルスによってパニックに陥った日本で戦う人々の姿を描くものだ。風評被害やワクチン不在の中で心と身体が蝕まれていく過程は現実感があるが、画面から緊張感がさっぱり感じられない。全国に広がったはずの恐怖は伝わらず、院内の二次感染やワクチン開発の過程も安直で生ぬるい。登場人物は、戦場と化したはずの病院で、完璧に化粧して、無精ヒゲもはえず、髪の毛1本乱れていない。これのどこが未曾有の危機なのか。何よりも二人の恋愛パートや過去のいきさつなど不必要だ。物語はダレまくりなのだが、ウィルス災害の問題提起と、疑似体験映画としてサラリと見ておこう。
【40点】
(日本/瀬々敬久監督/妻夫木聡、檀れい、国仲涼子、他)
(緊張感度:★☆☆☆☆)

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ブタがいた教室

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この映画最大の魅力は、6年2組の子供たちと星先生の懸命な思いだ。1年間大切に飼育したブタを食べるかどうかで大論争が巻き起こる。命の大切さ、食べ物と人間の関係など、本やTVで大反響を呼んだ実践教育は実話がもとだ。映画でも、白紙の脚本から導かれた子供たちの本気のディベートが熱い感動を呼ぶ。Pちゃんと名付けた子ブタをどうするべきか。いつのまにか子供たちと一緒に真剣に考えてしまう自分がいるはずだ。この問題には無論答えはない。先生も生徒も親たちも悩みながら成長し、映画はいつのまにか教室になる。先生役の妻夫木聡が好演だ。
【70点】
(日本/前田哲監督/妻夫木聡、原田美枝子、6年2組の生徒たち、他)
(一緒に考えよう度:★★★★★)

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ザ・マジックアワー

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三谷映画には、虚実の境界にこだわるものが多い。今回のドタバタ劇も、偽者がやがて本物になるいきさつを笑いたっぷりに活写するもの。暗黒街のボスから伝説の殺し屋を探せと命じられた男が、とっさに思いついたのが、三流俳優に演じさせること。ウソが感動を呼ぶというテーマは思えば映画そのもので、爆笑必須のコメディのフリをして、なかなか深い。わざとヘタに演じる佐藤浩市が笑わせるが、数々の名作映画へのオマージュが嬉しかった。
【75点】
(日本/三谷幸喜監督/佐藤浩市、妻夫木聡、深津絵里、他)
(映画愛度:★★★★☆)

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歌謡曲だよ、人生は

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オムニバス映画の難しさが出てしまった作品。全12話の出来は激しくバラつきがある。昭和を彩った歌謡曲の名曲をモチーフにしているが、創意工夫が足りないと古臭いだけの内容になっている。古代と現代を結びつけた「ラブユー東京」は、センスを感じた。綺麗にまとまったのは矢口史靖監督の1本。
【30点】
(日本/磯村一路、七字幸久、タナカ・T、片岡英子、三原光尋、水谷俊之、蛭子能収、宮島竜治、矢口史靖、おさだたつや、山口晃二、監督/妻夫木聡、伊藤歩、武田真治、他)
(古臭い度:★★★★☆)

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憑神

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日本は鍋、釜にまで神様がいるらしいが、貧乏神、疫病神、死神という不幸系の神様を通して、人間の身勝手と正しい生き様を描くヒューマン時代劇。主人公がとことん善人なのが綺麗事すぎるが、幕末という混乱の時代を上手く使っている。原作の浅田次郎本人が最後に登場し、現代へとつなぐ趣向だ。
【70点】
(日本/降旗康男監督/妻夫木聡、夏木マリ、佐々木蔵之介、他)
(イイ話度:★★★★☆)

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どろろ

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どろろって少年じゃなかったっけ?それはさておき、中国武侠映画風のアクションが浮いているのが悲しい。どろろと百鬼丸の因縁と冒険の旅は、続編が出来そうな終わり方だ。次は恋愛パートか?!妻夫木聡って美形だったんだと初めて(!)気付いた。
【20点】
(日本/塩田明彦監督/妻夫木聡、柴咲コウ、原田美枝子、中井貴一、他)
(アクション度:★★☆☆☆)

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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