映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
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◎ 今週の気になる映画 ◎
「ジャッキー」「ムーンライト」「はじまりへの旅」etc.

小日向文世

サバイバルファミリー

映画公式ガイド『サバイバルファミリー』の歩き方: 絵コンテ・制作秘話・オフショットで辿る鈴木一家と矢口組のサバイバルな日々
東京のある朝、突如、すべての電気が止まる。さえないお父さん、天然のお母さん、無口な息子につけまつげ命の娘の4人家族の鈴木家は、電車も車もガスも水道も、ATMもスマホまで使えずに途方に暮れる。一週間たっても電気が回復しない状況に、一家は、母の実家がある鹿児島を目指し、東京を脱出することを決意。そこから鈴木家の生き残りをかけた決死のサバイバルライフが始まった…。

電気が消滅した日本を舞台に、サバイバルを繰り広げる家族の姿を描く異色のコメディー「サバイバルファミリー」。「ウォーターボーイズ」などで知られる矢口史靖監督の作品の多くがオリジナル脚本で、テーマの目の付け所が本当に面白い。しかも上から目線や説教臭さは皆無で、エンタテインメントとしてしっかり成り立っているのに、あとからじんわりと社会的メッセージが浮かび上がってくるという巧みな内容だ。矢口作品の主人公(時には主要キャラ)の多くが、日本でとても多い名前として知られる“鈴木”という姓だが、この設定からも、特別な能力を持つ人ではなく、あくまでも市井の人々の視線で描いた物語であることが分かる。本作の主人公もまた鈴木家。突如、電気が失われるという、都会で暮らす現代人にとっての超ド級の非常事態に見舞われ、さぁ、どうする?!というストーリーだが、亭主関白を気取っているが頼りない父親を筆頭に、鈴木家は間違った行動ばかりしている。右往左往する都会人の姿が情けなくもリアルだ。高速道路を自転車で走り、物々交換で食料を手に入れる。のほほんとした母親や不愛想な息子が、時に意外な能力を発揮したりもするが、鈴木家はちょっとズルしたり他人から助けられたりしながら、少しずつ変化・成長していく。映画のキャッチコピーに“すべてがOFFになると、人間がONになる”とあるが、心から納得するはずだ。あって当たり前だと思っていたものを失くしてはじめて、自分で考えて行動し、本当に大切なことを知る。ダメダメな両親と身勝手な子どもたちが最後はどう変化するか。映画を見てぜひ確かめてほしい。災害シミュレーションとして笑わせながら、最後はしっかりと考えさせられる。必見の家族ドラマだ。
【75点】
(原題「サバイバルファミリー」)
(日本/矢口史靖監督/小日向文世、深津絵里、泉澤祐希、他)
(サバイバル能力度:★★☆☆☆)
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サイドウェイズ

サイドウェイズ (小日向文世、生瀬勝彦 出演) [DVD]サイドウェイズ (小日向文世、生瀬勝彦 出演) [DVD]
ハリウッド映画の日本版リメイクという珍しいパターンで、オリジナルはアレクサンダー・ペイン監督の「サイドウェイ」だ。物語の舞台は同じカリフォルニア、登場人物を日本人の男女4人に置換え、さえない40代の男二人が人生を見つめなおしていく様子を描く。俳優は日本人だが、監督やスタッフは海外という点は作り手のこだわりなのだろう。売れない脚本家の道雄は、米国留学時代の親友でアメリカ在住の大介の結婚式に出席するため、LAを訪れる。式を前に、二人はワインの産地ナパ・バレーへドライブ旅行に出かけるが、そこで道雄はかつての片思いの相手・麻有子と出会い心ときめく。一方、大介は麻有子の友人のミナに惹かれる。

オリジナルの「サイドウェイ」は、小品ながら、オスカーにもノミネートされた秀作だ。物語の骨格は同じだが、登場人物の背景を日本人向けに変えるなど細かい変更がなされている。本作は例えるならば、“お箸で食べる西洋料理”という感じだ。アラフォー男性が結婚や仕事に対し、ジタバタする様は可愛いやら可笑しいやら。ユーモアとペーソスを巧みに取り入れ、大人になりきれない大人の成長物語としてよく出来ている。道雄は麻有子の元・家庭教師という設定だが、離婚を経験し、外国でキバッて生きている麻有子の方がずっと大人びている。だがそんな彼女も肩の力を抜きたい瞬間があって…という描写がリアルだ。オリジナルが大好きだった私としては、手放しで褒める気にはなれないのだが、人生を前向きに進もうとするあたたかい物語や、みずみずしいナパ・バレーの美しい映像はオリジナル同様に悪くない。ジェイク・シマブクロの音楽も耳に心地よく、後味さわやかな一杯のワインのような作品になった。
【65点】
(日本/チェリン・グラック監督/小日向文世、生瀬勝久、菊地凛子、鈴木京香、他)
(前向き度:★★★★☆)

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
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新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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