映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「カフェ・ソサエティ」「ノーエスケイプ」「追憶」「赤毛のアン」etc.

山田孝之

闇金ウシジマくん ザ・ファイナル



10日で5割(トゴ)という違法な高金利で金を貸し、返せない客を徹底的に追い詰める金融屋・カウカウファイナンスの丑嶋馨。そのウシジマのもとに、中学時代の同級生の竹本が金を借りに訪れる。かつての親友の出現に驚くウシジマは「他を当たれ」と竹本を追い返す。一方、美容業界のカリスマ女社長は、弁護士の都陰を利用してウシジマからの借金を踏み倒そうと画策。宿敵のライバル・鰐戸三兄弟ら、過去の因縁がからみ、ウシジマは、封印した過去に直面することになる…。

違法な高金利で金を貸す闇金業のウシジマと彼のもとを訪れる欲に目がくらんだ人間たちのドラマを描く人気シリーズの最終章「闇金ウシジマくん ザ・ファイナル」。真鍋昌平の人気コミックの「ヤミ金くん編」をベースにしている。何といっても見所は、ウシジマの知られざる過去が明らかになることだ。中学時代のウシジマの生活はなかなか悲惨なのだが、そこには若くして人生の悲哀を悟ってしまったウシジマのルーツがある。ウシジマはもちろん、右腕である柄崎との出会いや、盟友で情報屋の戌亥、宿敵の鰐戸三兄弟、女闇金の犀原茜らも含めて、若手キャストが中学時代を熱演。中でも14歳のウシジマを演じる狩野見恭兵が素晴らしい。冷めているのに熱い心を持つ若きウシジマは柄崎と共に命を懸けたケンカに挑むが、その前に柄崎の母親手作りの食事を囲むシーンでみせる笑顔にはグッときた。情け容赦ない貧困ビジネスに放り込まれた心優しい竹本の運命と、ウシジマの過去の因縁、心の底に隠したウシジマの優しさが交錯するドラマは見応えたっぷりだ。いっそ女社長のエピソードを抜きにして、ウシジマの過去のドラマだけで構成してほしかったと思ったほどだ。ともあれ、闇金という裏社会で生きる非情な男のドラマは、どこまでもハードボイルドなファイナルを迎える。ラスト、さまざまな思いが入り混じる、山田孝之の複雑な表情が見事だった。
【75点】
(原題「闇金ウシジマくん ザ・ファイナル」)
(日本/山口雅俊監督/山田孝之、綾野剛、永山絢斗、他)
(非情度:★★★★☆)
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闇金ウシジマくん Part3



派遣の仕事で食いつなぐフリーターの沢村真司は、ひと目ぼれしたモデルのりなが求める理想の男になりたくて“ネットで秒速1億円を稼ぐ”というネット長者の天生翔の広告につられ、人生の一発逆転を狙って無料セミナーに参加するが、情報商材ビジネスの泥沼にハマっていく。一方、大企業のサラリーマンの加茂守は、妻帯者でありながら、不倫とキャバクラ通いを繰り返し、目下の目標は美人のキャバ嬢・花蓮を落とすこと。欲にまみれて闇金を訪れた挙句、転落していく人々の前に、法外な金利で金を貸す闇金、カウカウファイナンスの社長・ウシジマが立ちはだかる…。

非合法な金利で金を貸し付ける金融屋・ウシジマが、金に踊らされる人々の転落を冷酷な目で見つめる人気シリーズの劇場版第3弾「闇金ウシジマくん Part3」は、真鍋昌平による原作コミックの「フリーエージェントくん編」「中年会社員くん編」がベースになっている。うさんくさい情報商材ビジネスに金をつぎ込む若者と、遊ぶ金欲しさに借金を重ねるサラリーマンの2つの物語だ。10日で5割(トゴ)という法外な金利で金を貸す闇金業者・ウシジマくんこと丑嶋馨は、冷酷でありながら、常に1本筋が通っており、彼が追い詰めていく金欲にまみれた人々の転落を通して、現代の日本社会の病巣が浮かび上がる。過去、映画化されたエピソードでは、ウシジマに金を借りた人々はとことん堕ちていくが、今回、ネットビジネスのマネーゲームに巻き込まれた若者・真司のエピソードは、予想外の展開をみせるのが興味深い。負け犬人生からの脱却を目指し、怪しげなビジネスにのめり込むのは確かに浅はかだ。家族や友人、罪のない人までも踏みつけにし、人をだましてつかんだ一時的な成功は、いかにも危うく、真司の転落は容易に予想できる。だが映画は、夢を見るのが難しい時代に生きる若者の目を、最後に開かせ、ささやかだが意味のある希望を与えているのだ。遊ぶ金欲しさに愚行を繰り返す中年サラリーマンの加茂のみじめな運命と対照的なのは、未来の日本を担う若者への期待を込めているのだろう。より深読みするとしたら、ネットやSNSが当たり前のデジタル社会を生きるイマドキの若者が、金に踊らされながらも、どこか他人事のように自分をみつめる、冷めた客観性を持っているからこそ、最後の最後に自分を見失わずにすんだとも考えられる。主人公を演じる山田孝之、情報屋の綾野剛ら、レギュラーメンバーが続投。主人公であるウシジマの登場が少ないのは残念だが、続けて公開されるThe Finalへのウォーミングアップというところだ。
【60点】
(原題「闇金ウシジマくん Part3」)
(日本/山口雅俊監督/山田孝之、綾野剛、本郷奏多、他)
(転落度:★★☆☆☆)
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MONSTERZ モンスターズ

MONSTERZ モンスターズ [Blu-ray]
特殊能力を持つ者同士のバトルを描くサイキックアクション「MONSTERZ モンスターズ」。罪のない人がこうまで死んでいいものか?!

見るだけで他人を意のままに操れる男。彼はその能力ゆえに父を殺した過去があり、今では必要な時にだけ力を発揮するだけで、孤独の中で息をひそめて生きていた。だがある時、唯一その力が通用しない男・田中終一と出会う。終一もまた、どんな大怪我でも数日で回復する驚異的な治癒能力と強靭な肉体を持つ特殊能力の持ち主だった。男は自分の思い通りにならい終一に怒りを燃やし、終一の大切な人を死に追いやったことから、2人は激しく対立する…。

韓国映画「超能力者」を「リング」の中田秀夫監督がリメイクした本作は、特殊能力を持つ主人公たちを、他者とは違う哀しみを抱えたアウトサイダーとして描く…と言いたいところだが、オリジナル同様、つっこみどころが満載で、葛藤や哀愁は極めて薄味だ。そもそも、お互いに関わらなければいいものを、本作では男が執拗に終一を追い回すため、罪のない人たちの死体の山が築かれていくという、はた迷惑な展開なのだ。終一は終一で、自分に対して理不尽なマネばかりする男にどこかで共感を抱いているのだから、お話にならない。特殊能力を持つ者同士なら、別の解決法があるはずで、X-MENを見習いなさい!と言いたくなるのは私だけではないだろう。遺伝子工学に精通している捜査官や男の母親の存在など、脇役を活かしきれてないのも何とも惜しい。脚本も映像も全体的に大雑把な作りの中で、見どころは、ホラーの旗手・中田監督ならではの、ゾンビ映画風モブ・シーンの迫力だ。これが初共演となる藤原、山田の演技バトルもかなり濃密で見ものだった。
【50点】
(原題「MONSTERZ モンスターズ」)
(日本/中田秀夫監督/藤原竜也、山田孝之、石原さとみ、他)
(演技合戦度:★★★★☆)
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闇金ウシジマくん Part2

映画「闇金ウシジマくんPart2」Blu-ray 豪華版
伝説の闇金・ウシジマと、債権者たちの壮絶なドラマを描く人気シリーズ第2弾「闇金ウシジマくん Part2」。情け容赦ない女闇金役の高橋メアリージュンの怪演は見もの。

10日で5割という法外な金利で金を貸す闇金、カウカウファイナンスの社長・ウシジマのもとに、ヤンキーのマサルが連れてこられる。暴走族のヘッド、愛沢のバイクを盗み、慰謝料として200万円をウシジマに借りるように脅されたのだ。マサルは、カウカウファイナンスで見習いとして働くことで一命をとりとめるが、当てがはずれた愛沢は莫大な借金があり、ウシジマのライバルで女闇金の茜からの追い込みに脅えていた。一方、ホストの麗は彩香という金づるをつかもうとし、彩香は麗に貢ぐためカウカウファイナンスを訪れる…。

原作は真鍋昌平による人気コミック。本作は、原作のエピソード「ヤンキーくん」編と「ホストくん」編をミックスさせた物語だ。例によって例のごとく、金に踊らされ、金に振り回される人間の浅はかさが、容赦なく描かれる。ヤンキー、暴走族、ホスト、風俗嬢、女闇金にヤクザと、激しくキャラ立ちした面々が、主人公ウシジマに襲いかかり、カウカウファイナンスのメンバーとウシジマ、最大のピンチ!という展開だが、本作には助っ人がいるのだ。それは綾野剛演じる、ウシジマの幼馴染で情報屋の戌亥。無軌道でモラルのないキャラの中で、クールなたたずまいのこの情報屋の存在はちょっと面白い。それにしても「10日で5割(トゴ)」「1日3割(ヒサン)」というバカ高い金利で金を貸し、債務者を徹底的に追い込むウシジマが、良心的なダークヒーローに思えるのは、ウシジマから金を借りるヤツらがあまりに愚かしいからだろうか。前作は大島優子というトップアイドルを据えてラストには小さな希望が描かれた。だが本作は徹底的にシビアな結末で、見終わるとグッタリと疲れてしまう。凶暴で品がなく、非情な女闇金を演じるモデル出身の高橋メアリージュンは、今後も話題作への出演が控えているので、要チェックだ。
【55点】
(原題「闇金ウシジマくん Part2」)
(日本/山口雅俊監督/山田孝之、綾野剛、菅田将暉、他)
(愚かしさ度:★★★★☆)
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凶悪

凶悪 [Blu-ray]
死刑囚の告発で明かされる、おぞましい人間の本質を描く衝撃的な社会派サスペンス「凶悪」。出演俳優たちの張りつめた演技合戦が見所。

ジャーナリストの藤井は死刑囚・須藤から一通の手紙を受け取る。取材を兼ねて面会に行くと、須藤は、自らの余罪を告白。さらに、仲間内で“先生”と呼ばれていた、全ての事件の首謀者で、不動産ブローカーの木村の罪を告発し、まだ明るみに出ていない殺人について衝撃的な事実を語った。上司の反対を押し切って、半信半疑のまま須藤の証言を裏づけるため取材を始めた藤井だったが、次第に事件にのめり込んでいく…。

原作は、宮本太一氏のベストセラーノンフィクション「凶悪 ある死刑囚の告発」。実際に1人のジャーナリストが死刑囚の告発から闇に埋もれた事件を掘り起こし、犯人逮捕へとつながったというから、ジャーナリズムの勝利ともいえる内容だ。映画は、“先生”こと木村が罪を犯しながらのうのうと娑婆で生き延びているのが我慢ならないと感じたヤクザの須藤が、雑誌記者の藤井に事件の全貌を語る形で進んでいく。自分の余罪を増やすこの告発は、果たして本当なのか? 須藤の真の目的とは? というサスペンスも同時進行。さらに、雑誌としてこの事件が“売れないネタ”であるにもかかわらず、事件にのめり込み、人間の奥底に潜む、真の凶暴性にからめとられていく藤井の深層心理に迫る人間ドラマでもあるのだ。事件は暗く、暴力的で、血生臭い場面も多数ある。高齢者を食い物にし、金銭への飽くなき欲望をたぎらせる様は、現代社会の病巣そのものだ。だがこの映画の見所は、結果が分かっているストーリーより、むしろ俳優の演技の凄みにある。主演の山田孝之は若手では屈指の演技派だが、ここでは、本来、俳優は本職ではないピエール瀧とリリー・フランキーに存在感が圧倒的なのだ。本職はミュージシャンであるピエール瀧が演じるヤクザの須藤は、極悪の権化ともいえる先生と悪事の限りを尽くすが獄中で激変する。狙ったものかそうでないかは別として、結果として藤井を利用し尽すキャラクターはすさまじいの一言。一方、先生役のリリー・フランキーは近年俳優として高く評価されているが、本職はイラストや文筆業。倫理観が決定的に欠如する男を、あえて軽く演じたことが逆に事件のおぞましさを増した。この異業種俳優二人が演じる、日常的な狂気が、背筋を凍らせる。監督は故・若松孝二監督に師事してきた新鋭、白石和彌。地味で暗い内容ながら力強い作品に仕上がった。ラストの藤井のエピソードにかすかな希望が込められていて、救いの光が見える。
【70点】
(原題「凶悪」)
(日本/白石和彌監督/山田孝之、ピエール瀧、池脇千鶴、リリー・フランキー、他)
(バイオレンス度:★★★★★)
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俺はまだ本気出してないだけ

俺はまだ本気出してないだけ 豪華版 [Blu-ray]
ダメすぎてそれが個性という中年男が漫画家になろうと奮闘する「俺はまだ本気出してないだけ」。彼のいいかげんさが周囲のやる気を引き起こす構図が面白い。

42歳でバツイチの大黒シズオは、父親と高校生の娘・鈴子と3人暮らし。「本当の自分を探す」と突然会社を辞めてみたものの、朝からゲーム三昧、バイト先や父親から叱られ、娘に借金までする始末だ。ある日、本屋で立ち読みをしているとき、ひらめいたシズオは宣言する。「俺、漫画家になるワ」。根拠のない自信と原稿を持って出版社に足を運ぶが、担当編集者は彼を励ましつつも原稿はすべてボツ。やる気のない新人バイトの市野沢や幼馴染でサラリーマンの宮田らと飲みにいく日々が過ぎていく。マンガは本気か、趣味か。悩むシズオに、はたしてデビューの日は訪れるのか…?!

原作は青野春秋による同名人気漫画。原作の主人公のヴィジュアルは小太りのさえない中年男だが、スラリとした堤真一が、精一杯壊れたルックスを作り上げて怪演し、原作とは違うおかし味を漂わせている。主人公シズオのいいかげんさは、大人として、いや、人間として、あまりにもダメダメ。毎日怒鳴っている父親が「娘の鈴子がグレないのは父親をあきらめているからだ」と断言するのだから、そのダメっぷりはマックスに達している。だが物語はそれを決して責めない。“本当の自分探し”“運がないだけ”“今、自分には勢いがある”と、根拠がないだけに、無駄に強気なシズオの生き方が、いつしか周囲にやる気という影響を及ぼすから不思議だ。この物語はダメ人間の存在意義をじんわりと後ろから肯定しているのである。突如思い立ってマンガ家やパン屋を目指してしまう登場人物たちは、あまりに安易なのだが、大切なのは、チャレンジ精神と最初の一歩を踏み出す勇気なのだ。パンツ一丁で腹をボリボリ掻きながら寝転び、勢いで歌って踊る。17歳、22歳、32歳、そして神様と、自分自身の過去を演じ分ける堤真一の芸達者ぶりが見事。はっきりとした結論や明確な是非、華々しい成功が描かれるわけではない。それでも「俺の時代」が来ないなら、シレッと自分で作ってしまう。そんなユルい生き様に、微苦笑と共に励まされた。42歳で新しいことへチャレンジする。それだけで彼はすでに冒険家なのだ。
【60点】
(原題「俺はまだ本気出してないだけ」)
(日本/福田雄一監督/堤真一、橋本愛、山田孝之、他)
(グダグダ度:★★★★☆)
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その夜の侍

その夜の侍(初回限定生産版) [Blu-ray]その夜の侍(初回限定生産版) [Blu-ray] [Blu-ray]
狂気と日常の狭間で葛藤する男を描く異色の人間ドラマ「その夜の侍」。堺雅人が今までにないしょぼくれた役を怪演している。

小さな鉄工所を営む中村は、5年前に最愛の妻をひき逃げで亡くして以来、抜け殻のように生きている。周囲はそんな中村に対し、ハレモノに触るように接するしかない。一方、ひき逃げ犯の木島は、2年間の服役後、友人の家に転がり込み、無為な日々を送っていた。そんな木島のもとに「お前を殺して俺も死ぬ。決行まで後○日」という無記名の脅迫状が届くようになる。送り主は中村に違いないと、周りの者はその復讐を思いとどまらせようとするが、ついに決行の日が来てしまう…。

タイトルからは、時代劇の仇討ちのような気配がするが、この物語は、そんな格好良い復讐劇とはかなり違う。まず堺雅人が演じる主人公・中村はとことん冴えない男だ。分厚いめがね、ぼさぼさの髪、汚れた作業服といういでたち。薄暗く散らかった部屋ではいつも好物の甘いプリンを黙々と食べている。清廉な侍のたたずまいとはかけ離れた生活臭の中、殺気だけがみなぎっているのだ。一方、犯人の木島はといえば、これほど自己中心的な男はそういない。命を狙われておびえながらも、どこまでも粗暴な生き方を変えようとしない。こんなアブノーマルな状況なのに、彼らの周りには下世話な日常が淡々と流れている。中村は、見合いをしたり、キャッチボールをしたり、ホテトル嬢と過ごしてみたり。木島にとっての日常はもとから他人を傷つける暴力行為で成り立っている。復讐と日常の対比が異様すぎて、今まで感じたことがない手触りの不安を覚えた。その不安感がマックスに達したそのとき、クライマックスの土砂降りの雨の中での対峙となる演出が見事。中村の意外な言葉から、二人の男の、これ以上ないほど無様なアクションシーンへとなだれこんでいくのだ。監督の赤堀雅秋は、もともとは自分が作・演出した舞台劇を映画化した。その目的は、映画の特権であるクローズアップで、中村や木島の顔にじっとりとにじむ汗を撮ることだったのではないか。何かをしようとしても何の結果も出せない人間の焦燥感。その愚かさ、可笑しさ、情けなさ。“たわいのない”日常とは、こんなにも汗だくになるほど大変なことなのだ。
【65点】
(原題「その夜の侍」)
(日本/赤堀雅秋監督/堺雅人、山田孝之、新井浩文、他)
(無様度:★★★★☆)
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BUNGO 〜ささやかな欲望 告白する紳士たち

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日本が世界に誇る文豪たちが残した短編小説を映画化したオムニバス「BUNGO 〜ささやかな欲望 告白する紳士たち」。“淑女”よりこちらの方が断然が面白い。

寿司屋の看板娘ともよは、無口な常連客の湊に好意を寄せている。ある日、店の外で偶然ともよと出会った湊は、亡き母との鮨にまつわる思い出を語り始める…。(「鮨」)。内気な大学生の松夫は、映画館で衝動的に隣に座った綾子の手を握り、その手を握り返される。付き合いはじめた綾子を想う一方で、同級生の由子のことも気になる松夫は、由子の手をもいきなり握るという“革命”を起こすのだが…(「握った手」)。戦場で片目を失った男・信一と見合い結婚した絹子。優しい信一と幸せに暮らすが、ある日信一から「僕には子供がいるんだ」と告白される。動揺する絹子だったが、二人で子供に会いに行くことにする…。(「幸福の彼方」)。

文豪が残した短編小説を映画化した「BUNGO」。“告白する紳士たち”は、男性が女性に思い出や心の内、秘密を告白する。“淑女”に比べてこちらの“紳士”の方が、総じてレベルが高いと感じるのは、物語に時間・空間的な広がりがあるからだろう。「鮨」は芸術家・岡本太郎の実母の岡本かの子の隠れた名作が原作。中年男が語る子供時代の思い出は、食べ物を不浄なものとして受け付けなかった自分が、母親が作った鮨によって食べることを克服した切ないストーリーで、母の絶対的な愛に裏打ちされた信頼が伺え不思議な感動が味わえる。「握った手」は二人の女性の間で揺れ動く一人の男の悲喜劇を描いた坂口安吾の異色の“ラブ・コメ”。手は握ることが出来ても、心は簡単には掌握できないという、なかなか味がある一篇で、オムニバスの中で最も現代的要素が強い。“淑女”“紳士”全6作の中で、一番凝った作りで感動的なのが、林芙美子原作の「幸福の彼方」。夫には子供がいたという事実に衝撃を受けながらも、子供を思う気持ちや自分に対する優しさを感じ取る妻。さらに妻自身にも暗く不遇の過去があり、それを夫に話すことによってぎこちなかった男女が本物の夫婦になっていく。物語の鍵となる、行商一家のたくましくも微笑ましい描写とアコーディオンの音色が印象的だ。短い時間で、夫婦や家族の本質と幸福の意味を問いかけるこの物語には、確かな感動がある。執筆時は映画化など念頭にあるはずがないのに、見事に“映画的”な物語を見ると、短編とはいえ、さすがは日本を代表する文豪たちの作品だと感心する。
【60点】
(原題「BUNGO 〜ささやかな欲望 告白する紳士たち」)
(日本/関根光才、山下敦弘、谷口正晃監督/橋本愛、リリー・フランキー、山田孝之、成海璃子、波瑠、三浦貴大、他)
(切なさ度:★★★★☆)
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闇金ウシジマくん

映画 闇金ウシジマくん [Blu-ray]映画 闇金ウシジマくん [Blu-ray]
闇金という非合法の世界をハードに描く人気漫画の実写映画化「闇金ウシジマくん」。暴力シーンの中にとぼけたユーモアがにじんでいる。

違法な金利で金を貸し付ける“カウカウ・ファイナンス”社長のウシジマは、容赦ない取立てで知られる伝説の闇金業者だ。ギャンブルに狂った母親の借金を背負わされ、出会いカフェのバイトにハマッていくフリーターのミコや、イベント系サークルで一儲けし、のし上がろうとする青年ジュンは、ウシジマと知り合い、それぞれの運命を狂わせていくのだが…。。

原作は、週刊「ビックコミックスピリッツ」で連載されている真鍋昌平の人気コミックで、深夜枠のTVドラマ化されて人気を博した。映画化にあたっては、原作中でも人気の「出会いカフェくん」編と「ギャル汚くん」編をベースにして、社会の底辺で金や欲望にまみれて生きる人々の実態をリアルに描きだす。闇金そのものが違法であることに加え、暴力やエロスなど、かなりキワどい内容だが、終盤のアクションも含め、映画版らしい娯楽エンタテインメントになっている。ドラマでも主役を務めた山田孝之の怪演と存在感が何より大きい。ただ、短髪、アゴヒゲ、ピアス、メタルフレームの丸めがねと、ヴィジュアルは原作マンガのキャラに肉薄しているのだが、何しろ山田本来の端正な顔つきのため、巨体にコワモテのルックスのウシジマには若干迫力不足。だが、それを補うのが、感情を表に出さない無表情の熱演だ。冷徹なウシジマに出会い、借金地獄に陥る債務者を大島優子と林遣都がそれぞれ演じるが、人生のどん底まで追い詰められることで、思いがけない活力を発揮していくところが面白い。悲惨な結果になるのか、それとも地獄の中で人生の大切なものをみつけるのかは、作品を見て確かめてほしい。終盤、肉蝮と呼ばれる狂気の男との対決のアクションは、内面に向かいがちで、心理的にキツいこの物語を、外に向かってハジケさせてくれる。楽に稼ぎたい、セレブになって認められたいといった安易な欲望や夢想を完膚なきまでに叩き潰す闇金という世界は、反面教師のようなもの。「金は奪うか奪われるかだ」と言い放つウシジマは主人公だが、実際は彼と係わる債務者の人生の顛末こそが物語の主役なのだ。
【60点】
(原題「闇金ウシジマくん」)
(日本/山口雅俊監督/山田孝之、大島優子、林遣都、他)
(救い度:★★★☆☆)
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指輪をはめたい

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記憶を失くした独身男の恋愛騒動を描くラブ・ファンタジー「指輪をはめたい」。レトロポップな映像が楽しい。

製薬会社に勤める営業マンの輝彦は、ある日、スケートリンクで転んで頭を打ち、一過性の健忘症に。かばんの中から出てきた婚約指輪に驚く彼の前に、3人の女性が現れる。会社の先輩でクールな美女の智恵、風俗店勤務のセクシーでサバサバとした性格のめぐみ、人形劇屋台をしている清楚で家庭的な和歌子と、まったくタイプの異なる女性は、3人とも輝彦と付き合っていると主張する。コトの発端のリンクで出会った、スケートが上手い美少女エミのアドバイスで、自分が指輪を渡そうとしていたのは誰かを探るため、日替わりでデートを繰り返すが、記憶はまったく戻らない。そんな時、ついに3人の恋人が一同に会する事件が起こってしまう…。

原作は、芥川賞作家の伊藤たかみの同名小説。タイトルが意味深で興味をそそる。二股どころか三股をかけていた事実や、恋人に関する記憶だけが抜け落ちるという都合のいい記憶喪失の症状はさておき、主人公の輝彦は、遊び人ではなく、いたって真面目な男性だ。ただ、人間というのは欲張りなもので、クール、セクシー、癒し系と、ほとんどすべての願望を同時に満たすとなると、1人の恋人ではまかなえない。つまりこれは、大人になりきれない独身男性の本音の恋愛観を具現化した設定なのだ。同時に、自分に都合のいいように物事を解釈する女性の結婚願望をちょっぴり皮肉ってもいる。そこにからむのは、謎のスケート少女の存在だ。失くした記憶は、主人公がいったい誰と結婚しようと思っていたのかという謎解きから始まるが、終盤になるにつれて、輝彦の過去の恋へと推移する。ドタバタ喜劇のような前半と違って、後半はガラリと変わってしめっぽくなっていくのが残念。指輪と記憶の“謎”も、案外あっけない。ただ、豪華女優3人が殴りあいのバトルを繰り広げる修羅場のシーンはなかなかの見もの。全編をカラフルな映像で活写するので、見終わって軽やかな印象が残るのもいいところだ。ヘタレ男子と、芯が強い女性たちの恋愛騒動という、昨今よくあるパターンのこの映画、デートムービーには不向きだが、同性同士で見ると、話が弾むかもしれない。
【50点】
(原題「指輪をはめたい」)
(日本/岩田ユキ監督/山田孝之、小西真奈美、真木よう子、池脇千鶴、他)
(モテまくり度:★★★★☆)
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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