映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「ドリーム」「亜人」「僕のワンダフルライフ」etc.

岡田准一

関ヶ原

関ヶ原
天下人・豊臣秀吉の死後、豊臣家に忠誠心を持つ石田三成は、天下取りの野望を抱く徳川家康と対立する。互いに腹を探り合い、幾度かの対立の後、三成率いる西軍と、家康の東軍は、ついに1600年10月21日、天下分け目の合戦・関ヶ原の戦いで激突することになる…。

日本史上の歴史的な合戦を描く大作時代劇「関ヶ原」。原作は司馬遼太郎による大ベストセラーだ。映画の中で何度も描かれている関ケ原の戦いを、正面から描くのは、意外なことに本作が初めてなのだそう。この、わずか6時間の戦いで家康が勝利し、長きにわたった戦国時代に終止符を打って徳川の世となるのは周知の事実なので、結果に驚きはない。だが本作は、敗者側の石田三成を主人公に据えての物語。伊賀の忍びの初芽との秘めた恋や、家臣の島左近との友情などに重きが置かれ、三成の正義と家康の野望という対立の構図で描かれている。石田三成は、一般的には、傲慢、戦下手などのマイナスのイメージが強いのだが、原作者の司馬遼太郎は、彼を、近代人の始めの一人と高評価している。実際、歴史上の多くの人物には正反対の評価が残されているもので、その点も含め、史実や原作とは異なる部分は、エンターテインメントとして割り切るべきだろう。

映画そのものは、敗者や弱い者の側に肩入れしてしまう判官びいきの日本人気質に、石田三成のシンボルマーク“大一大万大吉(万民が一人のため、一人が万民のために尽くせば太平の世が訪れる)”を、強引に重ねた感がなくもない。三成と初芽の秘めた恋は、ヴィジュアルは華やかになるが、正直、必要ないとも思う。登場人物があまりに多く、セリフも膨大なので、歴史によほど詳しくないと、混乱してしまうのは、致し方ないところか。だが石田三成が敵である家康の館に逃げ込んだことや、関ケ原の命運を握っていたのが意外な人物たちだったことなど、一般的には有名でない史実も多いので、興味深く見ることはできるはずだ。演技派の岡田准一の石田三成は、正義感と愛にあふれる忠義の男として非常に魅力的で、映画の軸になっているし、大挙して登場する実力派俳優たちの演技合戦を存分に楽しむと良いだろう。あくまでもエンタメ作品として。
【55点】
(原題「関ヶ原」)
(日本/原田眞人監督/岡田准一、有村架純、役所広司、他)
(歴史秘話度:★★★★☆)
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追憶

追憶 オリジナル・サウンドトラック
富山県警捜査一課の四方篤は、漁港で、刺死体となって発見された旧友の川端悟と再会する。捜査が進むにつれ、かつて、篤と悟とともに幼少時代を過ごした田所啓太が容疑者として浮かび上がる。1992年、親に捨てられた境遇の3人は、能登半島の軽食喫茶「ゆきわりそう」を営む仁科涼子、山形光男を慕い、家族のような日々を送っていた。だがある事件をきっかけに二度と会わないと誓い、離れ離れになったのだ。刑事、被害者、容疑者という形で25年ぶりに再会した彼らは、心の奥底に封印してきた過去と向き合うことになるが…。

過去のある秘密を共有し封印してきた幼馴染3人の男たちの運命を描く人間ドラマ「追憶」。1990年代の過去と25年後の現代を交錯させながら、殺人事件の被害者、容疑者、刑事が再会するという展開は「ミスティック・リバー」を思い起こさせる。美しく寒々とした北陸の風景、忌まわしい事件のトラウマ、捜査によって次第に明かされる悲劇的な過去。ドラマそのものは堅実なミステリー仕立てだ。だが、しかし。この何とも古臭いテイストはいかがなものか。スマホ(携帯電話)がなかったら、昭和30年代の話と言っても納得してしまう。いや、むしろ昭和を背景にした方が良かったのでは?とさえ思ってしまう、古色蒼然とした演出で、物語も、音楽も、映画そのものも、あまりに大時代的なので驚いてしまった。ミステリーなので詳細は明かせないが、殺人事件の真犯人とその動機が、唐突すぎて、これまた驚く。犯人を知った登場人物の一人が「なんだ、それ?」と言うが、それはこっちのせりふだ。99分という短さは、何かしばりがあったのかもしれないが、それにしても事件の真相に深みがなさすぎる。役者はいいのだ。主要キャストに若手実力派が揃い、脇役も含めて丁寧な演技をみせてくれているだけに、なおさら惜しい。本作を日本映画の良心的な原点回帰とみるか、時代錯誤とみるかで、評価が分かれるだろう。「俺たちはもっと早く会うべきだった」。この言葉が心に残っている。
【50点】
(原題「追憶」)
(日本/降旗康男監督/岡田准一、小栗旬、柄本佑、他)
(古色蒼然度:★★★★★)
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海賊とよばれた男

海賊とよばれた男 単行本 上下セット [単行本] [Jan 01, 2012] 百田 尚樹
1945年、東京。敗戦の焼け跡の絶望の中、石油会社・国岡商店を率いる国岡鐵造(くにおかてつぞう)は、日本人としての誇りを胸に前進しようと社員を激励する。戦後の混乱期にもかかわらず、誰も解雇せず、独自の経営哲学と破天荒な行動力で数々の苦境を乗り切る国岡は、事業を拡大していった。やがて欧米の石油メジャーも国岡を警戒し、その強大な包囲網によって国岡の石油輸入ルートはすべて封鎖されてしまう。ついに、国岡は、会社の至宝である日承丸をイランに送ろうと決意するが…。

明治から昭和にかけて石油事業に尽力した男の生き様を描く、骨太な人間ドラマ「海賊とよばれた男」。原作は百田尚樹の同名ベストセラー小説で、モデルとなったのは、出光興産創業者の出光佐三氏だ。まだ石炭が主流の時代にいち早く石油の可能性を信じた主人公の国岡は、常に未来を向いて行動する人物である。彼の前には、日本の敗戦、国内石油販売への理不尽な妨害、欧米石油メジャーからの輸入ルート封鎖と、桁外れの困難が立ちはだかる。それでも国岡がくじけないのは“士魂商才”の志があったからだ。劇中に会社内に掲げられているこの言葉は、武士の精神と商人の才能を併せ持つことを意味する。現実的な商売はするが侍魂とも呼べる誇りを失わないという志なのだ。確かに国岡の生き方を表す言葉だが、それならなぜ海賊なのか。それは、若き日の国岡が海上で石油を売った型破りな商売のやり方に起因する。自由で勇敢で誰にも支配されない“海賊”の国岡には、かけがえのない沢山の仲間がいたのだ。若き国岡を支援した実業家から、国岡を慕って集まった社員たち、英米を敵にまわす命がけの日承丸の船長まで、すべてが、国岡に惚れていて、その熱が見ている観客にも伝わってくる。物語の中心になるのは60代の国岡鐵造。主演の岡田准一は、青年期から90代までを一人で演じ切って、見事だ。個人的には、最初の妻・ユキをはじめとする女性の描き方が浅いのが少し残念なところである。「永遠の0」の作者、監督、主演が再び集結しているが、VFXの使い手の山崎貴監督がロケ撮影を駆使しているところに注目したい。特に海のシーンがいい。どんな苦境にもチャレンジ精神を忘れず立ち向かった主人公には、潮風が香る大海原が良く似合う。
【70点】
(原題「海賊とよばれた男」)
(日本/山崎貴監督/岡田准一、吉岡秀隆、染谷将太、他)
(チャレンジ度:★★★★☆)
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エヴェレスト 神々の山嶺

エヴェレスト 神々の山嶺 豪華版 [Blu-ray]
カメラマンの深町誠は、ネパールのカトマンズで古いカメラを発見する。それは、イギリスの登山家ジョージ・マロリーは1924年にエヴェレスト初登頂に成功したのかという、登攀(とうはん)史上最大の謎を解く可能性を秘めたものだった。カメラの行方を追う深町は、やがて孤高の天才クライマー、羽生丈二にたどり着く。羽生の過去を調べていくうちに、彼の壮絶にして崇高な生き様にのみ込まれていく。やがて深町は、羽生がかつてだれも成し遂げたことのない過酷な登攀に挑もうとしていることを知ることになるが…。

夢枕獏のベストセラー小説を実写化した「エヴェレスト 神々の山嶺」。主要キャストである岡田准一、阿部寛らが、世界最高峰の地エヴェレストに実際に登り、邦画初となる標高2500m級での撮影に命がけで挑んだということで話題の力作だ。阿部寛演じる羽生丈二は、伝説的な天才クライマーだが、同僚のクライマーや愛する女性、自分自身をも傷つけながら、命を削って山に挑んできた男。「山をやらないなら死んだも同じだ」と言い切り、他人を寄せ付けない。是非はとにかく、一点もブレない生き方を貫く羽生に深町が惹かれていったのは、彼自身が人生に悩んでいたからだろう。男2人の熱い演技、とりわけ体力の限界に挑んだという阿部寛が終盤に見せる壮絶な姿には圧倒される。一方、演技派女優の尾野真千子は、彼女の実力を考えると、ただ待つだけ、耐えるだけという女性役では、なんだか物足りない気がした。ハリウッドのハイ・クオリティなCGを見慣れていると、邦画のCGのレベルに文句をつけたくなるだろうが、そこはこれが現状の日本映画だと納得するしかない。山に魅せられた男たちの熱い想いを描くドラマを感じ取ってほしい。
【65点】
(原題「エヴェレスト 神々の山嶺」)
(日本/平山秀幸監督/岡田准一、阿部寛、尾野真千子、他)
(過酷度:★★★★☆)
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エヴェレスト 神々の山嶺@ぴあ映画生活

図書館戦争 THE LAST MISSION

図書館戦争 THE LAST MISSION プレミアムBOX [Blu-ray]
近未来の日本。本を検閲する「メディア良化隊」と本を守る自衛組織「図書隊」の戦いが激しさを増す中、関東図書隊の特殊部隊タスクフォースに、この世に1冊しかない、自由の象徴である本「図書館法規要覧」を展示する会場の護衛警備の指令が下る。笠原郁は、上官の堂上、同僚の手塚らと共に、この警備にあたるが、ここには図書隊を解散させ社会を正そうとする、ある歪んだ陰謀が隠されていた…。

有川浩の人気小説が原作で、武力による検閲から本を守る防衛組織「図書隊」の活躍を描き、大ヒットとなった「図書館戦争 LIBRARY WARS」の続編である「図書館戦争 THE LAST MISSION」。本作では図書隊壊滅を図る陰謀に立ち向かう、特殊部隊タスクフォースの決死の闘いが描かれる。本作は、あきらめるものと戦うもの、理想へのアプローチの違いと、社会派アクションにジャンル分けされる作品。今回は、郁の同期の手塚の兄による、ある罠によって図書隊が危機に陥る…というミステリーがあるが、これは正直、あまり感心しない。特に最初に郁を罠に落とすのは、必然性を感じないし、その結果も中途半端だ。こうなると、ファンはやはり郁と堂上の、やきもきする恋愛にフォーカスすることだろう。郁は前作同様、頭で考えるより行動してしまうタイプだが、「図書館法規要覧」を守るための命がけの戦いの中でついに想いがあふれ出す場面は見どころだ。少しユルいミステリーをカバーするのは、激しいアクションシーン。本を守るために戦うという異色の世界観の裏には、自由を守る大切な意義がある。郁と堂上の凸凹コンビの不器用な恋愛と同じように、図書隊は、無骨にひたむきに自由を守る。副題は「THE LAST MISSION」だが、ラストにしてほしくないファンも多いはずだ。
【60点】
(原題「図書館戦争 THE LAST MISSION」)
(日本/佐藤信介監督/岡田准一、榮倉奈々、福士蒼汰、他)
(ひたむき度:★★★★☆)

蜩ノ記

蜩ノ記(ひぐらしのき) Blu-ray(特典DVD付き2枚組)
武士の誇り、家族愛、師弟愛を描く時代劇「蜩ノ記(ひぐらしのき)」。美しい四季の風景が死にゆく主人公の気高さを際立たせる。

城内で刃傷沙汰を起こした若き藩士、庄三郎は、7年前に前代未聞の事件を起こして3年後に切腹を命じられている武士・秋谷の見張りを命じられる。逃亡しないよう監視するため秋谷一家と共に生活することになるが、秋谷は幽閉先で妻子とともに穏やかに毎日を過ごしていた。秋谷の誠実な人柄に感銘を受けた庄三郎は、7年前の事件を独自に調べ始めると、そこには、藩政を大きく揺るがしかねない秘密が隠されていた…。

原作は直木賞を受賞した葉室麟の時代小説。派手な立ち回りなどはないこの映画は、端正という形容がふさわしい静かな人間ドラマだ。藩主の側室と不義密通の罪を犯したされる秋谷は、3年後に切腹する運命だが、藩の歴史をつづった「家譜」を完成させるよう命じられている。その傍らで残された日々を日記につづるが、その日記の名前がタイトルにもなっている“蜩ノ記”だ。その日暮らしの身を、1日の終わりを哀しむように鳴く蜩(ひぐらし)に重ねている。秋谷は人徳がある立派な武士で、7年前の事件は無実の罪との予測は容易につくだろう。お家騒動とも重なるある秘密を守るために誰もが真相を知っていながら秋谷一人に罪をかぶせ、彼もまた大切な人を守るためその罪を甘んじて受けるというストイックすぎる生き方は、現代の価値観とは、かけ離れている。だがそのことを理屈ではなく感覚で納得させるのが繊細な心理描写に定評がある小泉堯史監督の演出だ。部屋に差し込む柔らかい光、村人に寄り添った素朴な暮らし、若い2人の瑞々しい恋心。どれも決して主張しすぎることはない。庄三郎が過去の事件の真相を調べるプロセスはちょっとしたミステリー仕立てだが、本作はあくまでも師弟愛や家族愛、夫婦の愛といった人間ドラマ。秋谷の凛とした生き様が庄三郎を成長させ、その庄三郎が秋谷の幼い息子の心の成長を助ける。人間同士の崇高な絆だけが生きた証なのだ。キャストは皆、実力派揃いだが、岩手県でロケされた美しい四季の映像もまた主人公ようだった。
【65点】
(原題「蜩ノ記」)
(日本/小泉堯史監督/役所広司、岡田准一、堀北真希、他)
(端正度:★★★★☆)
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蜩ノ記〈ひぐらしのき〉@ぴあ映画生活

永遠の0

永遠の0 豪華版(Blu-ray2枚組) 初回生産限定仕様
特攻で亡くなった祖父の真実を描く「永遠の0」。生真面目な映画だが零戦を美化していないところがいい。

2004年。自らの進路に迷う青年・佐伯健太郎は、実の祖父で太平洋戦争の零戦搭乗員として亡くなった宮部久蔵のことを調べ始める。宮部のかつての戦友たちを訪ねるが、その評判は「海軍一の臆病者」と「誰よりも勇気ある素晴らしい人」という両極端なものだった。天才的な飛行技術を持ちながら、生きることに強く執着した宮部の実像に迫るにつれ、祖父・宮部の思いもよらない真実を知ることになる…。

原作は百田尚樹の同名小説。天才パイロットである祖父・宮部久蔵は、臆病者だったのか、それとも勇気ある軍人だったのか。また、誰よりも生に執着した宮部が、なぜ死を意味する特攻隊を志願したのか。物語は、それらの謎を、現代に生きる青年・健太郎が少しずつ解き明かしていくミステリー仕立てで進んでいく。0(ゼロ)とは零戦のことだが、宮部は自分の卓越した飛行技術を、戦うためではなく戦闘を避けるために最大限利用し、部下にも生きることをあきらめるなと諭す。「生きたい」との願いはそれだけで蔑視された時代に「死ぬのが怖い、生きて家族のもとへ帰りたい」と明言し続けた宮部がいかに勇気ある人間なのかは、現代人ならば簡単に理解できるが、それほど生に執着した彼が特攻を志願したその理由は、戦争の悲劇そのもので見ていてつらくなる。そして彼が命を落とした本当の理由を知ればなおさらだ。戦争の記憶がなくなりつつある今、この物語の最大のメッセージは、語り継ぐこと。真珠湾、ミッドウェー海戦、ラバウル、ガダルカナルと激戦地をめぐる展開が駆け足なのがちょっと惜しい。演技力に定評がある岡田准一は、本作では得意のアクションは封印しているが、裏表のない真摯な人間を静かに熱演している。見所のひとつである空中戦や戦闘シーンは、やはりハリウッドのそれを見慣れた目には物足りないが、今の日本映画では最高レベルで、ダイナミックだ。ラストに流れる主題歌「蛍」が胸にしみる。
【65点】
(原題「永遠の0」)
(日本/山崎貴監督/岡田准一、三浦春馬、井上真央、他)
(家族愛度:★★★★☆)
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永遠の0@ぴあ映画生活

図書館戦争

図書館戦争 プレミアムBOX [Blu-ray]
本を守る図書隊の戦いを、アクション、恋愛を交えて描く「図書館戦争」。アニメ版と見比べてみるのも面白い。

メディアを取り締まる法律“メディア良化法”が施行された近未来の日本。武力行使も厭わず検閲を行うそんな時代でも、本を読む自由を守るため自衛組織・図書隊が結成されていた。昔、図書隊員に助けてもらった笠原郁は、名前も判らない彼を“王子様”と呼び憧れて、ついに念願の図書隊員になる。郁の担当教官・堂上篤は彼女を助けた隊員を愚かだと非難するが、堂上の厳しい指導の下、成長した郁は女性で初めて図書特殊部隊に配属される。そんなある日、閉館する情報歴史図書館が所有する機密資料を巡って、図書隊とメディア良化委員会の全面対決が決定的になる。過去最大の戦闘が始まろうとする中、図書基地司令の護衛についていた郁は、思いもよらない事件に巻き込まれる…。

原作は、次々に作品が映画化される人気作家・有川浩の代表作で大ベストセラー。過去にアニメ映画化されたが、本作は初の実写映画化となる。多くのファンを持つ作品というだけあって、映画化前に理想の仮想キャスティングを選ぶアンケートが行われ、そこで1位になったのが本作で主役を務める岡田准一と榮倉奈々だ。公序良俗、人権、検閲と、ぶっそうな言葉が飛び交い、命がけの激しい戦闘やアクションも登場するが、物語の基本は、鬼教官・堂上と、まっすぐな性格の新人図書隊員・郁の純愛映画といっていい。教官と女性部下の組み合わせという手垢がついた設定ではあるが、主役二人のツンデレ・ラブコメは、見ていてなかなか楽しい。顔も名前もわからない憧れの人を“王子様”と呼ぶ郁は、体育会系の性格と純情な乙女の性格がブレンドした天然キャラ。対する堂上は、厳しくも心優しく、有能な正義漢。この抜群にキャラが立った二人の“職場恋愛”の行方に胸をときめかせるのが主に女性ファンなら、激しい銃撃戦、予想外の人質事件と、終盤のアクションに手に汗握るのは男性ファン。自由を守るという硬派な設定ながら、ロマンスやユーモア、確信犯的ご都合主義の安心感で、男女共に満足できるはずだ。このほどよい軽さ、ソツのない作りは、デートムービーとして最適といえよう。格闘技や武術のインストラクター資格も持つ岡田准一が見せる切れ味鋭い演技も見所だ。
【65点】
(原題「図書館戦争」)
(日本/佐藤信介監督/岡田准一、榮倉奈々、田中圭、他)
(ツンデレ度:★★★★☆)
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天地明察

天地明察 ブルーレイ豪華版 [Blu-ray]天地明察 ブルーレイ豪華版 [Blu-ray]
改暦という大事業に挑んだ星オタクのまっすぐな生き方を描く「天地明察」。学術的な素材をエンタテインメントとして面白く描いている。

太平の世が続く江戸時代。碁で徳川家に仕える碁打ちの家に生まれた、会津藩士の安井算哲は、囲碁以外にも、算術や天文学などの学問に通じていた。算哲は、藩主の命令で日本全国をめぐって北極星を観測し、暦にズレがあることを報告する。算哲は改暦という一大事業を命じられるが、それは暦を司ることで利権を握っていた朝廷への挑戦を意味していた。算哲は、妻のえんや、彼の良き理解者である水戸光圀、さらに算術や天文学を愛する多くの仲間たちに支えられ、時に朝廷からの理不尽な仕打ちに耐えながら、暦を正すという一大事業に生涯を賭けて挑んでいく…。

原作は冲方丁の同名ベストセラー小説。算術や天文学というと難しく聞こえるが、この物語の基本は、天文学者・安井算哲、後の渋川春海が挑んだ“プロジェクトX”なのだ。今では正しくて当たり前の暦だが、江戸時代の暦はズレまくっていた上に、それを指摘するのさえはばかられるというから、困ったものである。だが、改暦は朝廷への挑戦という以前に、実に困難を極めることだったのだ。日本全国を回って星を観測するのも、日本や中国の過去の暦を検証するのも、膨大なデータから自らの研究をまとめ結論を導き出すその過程も、何もかもが、気が遠くなるような時間と労力を必要とする難事業。だが、算哲という男は、星を見るのが大好きで、夢中になると周りが見えなくなる一本気な性格だ。この“好きなことに熱中する”オタク精神と、ずば抜けた集中力こそが、改暦を成功に導いた原動力と言っていい。加えて新しいことに挑戦しようという気風は、本職の囲碁の上にもにじみ出ていた。そんな算哲の資質を見抜いた会津藩主の保科正之の卓見もまた、改暦成功の鍵だったことは言うまでもない。劇中には、江戸時代の天文観測や算術に使う道具が再現されているのが大変珍しく、興味をそそるが、物語に、算哲と朝廷側の“試合”を盛り込んだのが上手かった。度々起きる日蝕・月蝕の予想合戦は、庶民にとっては格好のエンタテインメント。その興奮は、クライマックスに頂点に達することに。主人公を演じる岡田准一が、仕事は几帳面、性格はまっすぐで律儀、ライバルや仲間が思わず助けたくなるような好人物・算哲を、さわやかに演じている。何度も何度も失敗を繰り返しながら、決してあきらめない主人公の情熱は、現代を生きる私たちにも勇気を与えるものだ。何より、太平の世に、武士でも公家でもない、一介の碁打ちが、大好きな星を研究することで、ついに歴史を変えてみせたというのが痛快ではないか。「おくりびと」の滝田洋二郎監督の、けれん味のない演出に品格があり、夜空に輝く星の輝きにも似て、壮大で美しい物語に仕上がっている。
【70点】
(原題「天地明察」)
(日本/滝田洋二郎監督/岡田准一、宮崎あおい、佐藤隆太、他)
(スケール度:★★★★☆)
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映画レビュー「コクリコ坂から」

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◆プチレビュー◆
ファンタジックな要素を排したストーリーは、ジブリとしては新機軸。ビビッドな色彩が目を引く。 【60点】

 1963年、横浜。高校2年生の少女・海(通称・メル)は、海で行方不明になった父の無事を祈りながら、祖母の下宿屋を切り盛りしていた。由緒ある校舎取り壊し反対運動の中、海は高3で新聞部部長の俊と出会い、惹かれていく…。

 原作は高橋千鶴(作画)と佐山哲郎(原作)による知る人ぞ知る少女漫画だ。時代は1963年。価値観が激変した戦後を抜け、新しいものだけがもてはやされる高度成長期の扉が開かれようとしている。そんな中で出会った若く一途な男女の物語は、往年の日活青春映画のよう。海と俊の淡い恋、建物の取り壊しを巡る紛争、異母兄妹かもしれない海と俊の出生の秘密という試練が描かれる。

 本作が、ジブリ作品の中で特異なのは、ファンタジーや大冒険がないことだ。魔法もなければ、飛ぶシーンもない。現実的なストーリーは、明らかに大人向けなのだが、すべてが淡々とテンポよく進んでいく展開には物足りなさも感じるだろう。とはいえ、日常のディテールは丁寧だ。女性中心で暮らす古い洋館・コクリコ荘の風情やおいしそうな食事には目を奪われる。一方、男の巣窟である文化部部室、通称カルチェラタンのごちゃごちゃした感じもまた楽しい。取り壊しを阻止するため、女子たちによる大掃除でみるみる古い建物が美しくなるくだりは、すこぶる爽快。これが宮崎吾朗流の“魔法”なのだ。

 一方で「ゲド戦記」でもカンに障った説教臭いセリフには苦笑する。だが今回は、プチ学園紛争を背景に「古いものを壊すのは過去の記憶を捨てること」「人が生きて死んでいった記憶をないがしろにするな」という熱い言葉を、討論会という形で処理したのは、上手かった。若者が自分たちの力で何かを変えることが出来ると信じたのが60年代だ。それはやがて、カルチェラタンの存続を理事長に直談判し、出生の真実を確かめる“冒険”へとつながっていく。

 コクリコとは仏語でヒナゲシの意味。花言葉のひとつに“思いやり”がある。戦争に翻弄された両親の時代と、変化の中で生きる子供の時代がつながり、思いを受け継ぐ。その役目を担うのが、互いを思い合う海と俊だ。彼らは現代の大人たちの若き姿である。物語は、懸命に生きた人々に支えられた“今”を見据えているのだ。海は毎日信号旗をあげる。旗の意味は「安全な航海を祈る」。彼女の立つ位置からは見えないが、旗に答える俊がいた。海と俊がコクリコ坂を自転車で走り抜ける躍動感が、そのまま二人が信じた未来の輝きだ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)ノスタルジック度:★★★★★

□2011年 日本映画 原題「コクリコ坂から」
□監督:宮崎吾朗
□出演:(声)岡田准一、長澤まさみ、風間俊介、他
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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