映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「美しい星」「光をくれた人」「家族はつらいよ2」「光」etc.

映画

光をくれた人

LIGHT BETWEEN OCEANS
1918年、トムは戦争の英雄として帰還するものの、心に深い傷を負っていた。彼は俗世から逃げるように、オーストラリアの絶海に浮かぶ孤島ヤヌス島の灯台守の仕事に就く。3ヶ月間一人で暮らした後、正式採用になったトムは契約のために町に戻るが、その時に出会った土地の名士の娘イザベルと恋に落ちて、結婚することに。孤島で二人きりで暮らす夫婦は幸福な時を過ごすが、イザベルが流産を繰り返し、深い悲しみに見舞われる。そんな時、島に一隻のボートが流れ着いた。中には生まれたばかりの赤ん坊と男性の遺体。赤ん坊と一晩を過ごしたイザベルは、その子を自分たちの子として育てたいと懇願する。トムはそれがいけないことだと分かっていながら、イザベルの希望を承諾してしまう。ルーシーと名付けた赤ん坊はすくすくと成長するが、4年後に生みの母ハナと偶然出会うことになる…。

漂着した赤ん坊を育てる灯台守の夫婦の愛と葛藤を描くヒューマン・ドラマ「光をくれた人」。原作は、M・L・ステッドマンによる世界的ベストセラー「海を照らす光」だ。戦争で深く傷ついたトムと同じく戦争で兄を亡くしたイザベルは、共に善良な人間で、愛する者を失うつらさを経験している。孤島で二人きりの幸福な時間から一転、流産という大きな悲劇が、二人の判断を狂わせたのだろう。男性の遺体と赤ん坊の漂着を本土に報告しなければいけないことは理性では分かっていても、本能で抗えない。だが真実と罪への恐れが、やがて彼らを悲劇的な運命へと導いていく。生みの親と育ての親というテーマは、過去にも何度も映画で描かれたが、本作では、トムとイザベル夫妻が、海と人を安全に導く灯台を守る仕事をしていることが象徴的だ。命を守るべき人間が犯す罪に、私たち観客は夫婦同様、引き裂かれる思いを味わう。なぜなら、彼らは悪人ではなく、悲しいほど愛を求めていることを知っているからだ。本当の母親ハナの深い嘆きと、彼女がたどってきた運命はサブストーリー的に語られるが、これもまた切ない。トム、イザベル、そしてハナは、それぞれに大きな決断を下すことになる。ボートの遺体はハナの夫で赤ん坊の父親なのだが、彼が生前、命がけで教えてくれたのは“赦し”だった。このことが、ラストに灯台の光のような希望を与えてくれる。善悪の境界線があいまいな登場人物たちは、演じるのが非常に難しいキャラクターだ。ファスベンダー、ヴィキャンデル、ワイズといった、国際的に活躍する演技派が揃ったことで、母性、夫婦、家族、贖罪を描く物語が奥深いものになっている。人は時に間違った選択をしてしまう。だが、どんなに暗い海の中にいても、きっと光を見出すことができる。愛と人間を肯定する静かな良作だ。
【70点】
(原題「THE LIGHT BETWEEN OCEANS」)
(米・豪・ニュージーランド/デレク・シアンフランス監督/マイケル・ファスベンダー、アリシア・ヴィキャンデル、レイチェル・ワイズ、他)
(切なさ度:★★★★★)
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美しい星

映画『美しい星』オリジナル・サウンドトラック
53歳の大杉重一郎は、予報が当たらないことで有名な気象予報士。ある夜、突如眩しい閃光に包まれ、空飛ぶ円盤(UFO)と遭遇する。その日を境に重一郎は、自分は火星人だと自覚し、人類を救う使命に目覚める。父・重一郎の覚醒と時を同じくして、大杉家の面々にも異変が。野心にあふれるフリーターの長男・一雄は水星人に、美人すぎて周囲から浮いている大学生の長女・暁子は金星人に覚醒。空虚な毎日を持て余す主婦の母・伊余子だけは覚醒せず地球人のままだったが、水を売るネットワークビジネスにのめりこんでいった。宇宙人として覚醒した大杉家の面々は、それぞれの方法で地球を救おうと奮闘するが…。

宇宙人として覚醒したある平凡な一家が地球を救うために奮闘する姿を描く異色SFドラマ「美しい星」。原作は、三島由紀夫が1962年に発表したSF小説で、故・大島渚監督をはじめ、内外の有名監督が映画化を望んでいた作品と言われている。小説の舞台は60年代で、東西冷戦や政治の季節が背景だが、本作では時代を21世紀の現代に置き換えて、地球温暖化や爆発的人口増加など、タイムリーな設定が施され、一種の終末映画として描いている。こう書くと、大仰なSFに思えるが、ヘラヘラとしたお天気キャスターの重一郎をはじめ、大杉家の面々がやる“地球を救う作戦”は、どこかユルくズレていて、笑いを誘うものだ。映画冒頭でのレストランでの食事シーンからこの家族が崩壊寸前であることが分かるが、そんな、バラバラだった家族が、宇宙人として覚醒することで、ひとつにまとまり、真の家族として再生していくという家族ドラマが裏テーマである。三島由紀夫自身が“へんてこりん”と形容したこの小説のテイストを壊さずに映画化したのが何よりも収穫だ。しかも、この突拍子もない物語の登場人物に、ひょうひょうとしたリリー・フランキーをはじめ、若手アイドルをちゃっかり組み込んで、スター映画に仕上げてしまった点を評価したい。円盤の閃光の先に何が見えるのか。平凡な一家が地球を救うことができるのか。それは映画を見て確かめてほしいが、ひとつだけ言えるのは、映画は、ちっぽけな人間と、その営みを全力で肯定しているということだ。正直、「?」や「!」が何度も頭に浮かぶ。だが、1960年代も21世紀も、共に不安な時代。わからないことだらけの中、私たちは希望を信じて生きているのである。
【65点】
(原題「美しい星」)
(日本/吉田大八監督/リリー・フランキー、亀梨和也、橋本愛、他)
(換骨奪胎度:★★★★☆)
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バッド・バディ! 私と彼の暗殺デート

Mr. Right (Blu-ray + Digital HD)
なぜかダメ男とばかりつきあい失恋を繰り返す少し変わった女の子・マーサは、ある日、理想の男性フランシスと出会い、互いに運命的な恋に落ちる。だが彼の正体は、伝説の殺し屋で、しかも人殺しが許せず、依頼主を殺すという一風変わったヒットマン。おかげで彼は世界中の殺し屋やFBIから命を狙われていた。そんなフランシスと一緒にいるうちに、マーサの中で眠っていた暗殺能力が覚醒し、最強の殺し屋としての素質に目覚めていく…。

風変わりな女の子が伝説のヒットマンと恋に落ちたことから暗殺能力に目覚めていくアクション・ラブコメディ「バッド・バディ! 私と彼の暗殺デート」。うだつのあがらない主人公が実は凄腕で…というラブコメはどこかで見たような…と思ったら、快作「エージェント・ウルトラ」と同じ脚本家だった。どうりでまるで姉妹編のようなノリである。どこにでもいる、でもちょっぴり変わった女の子のマーサが凄腕の殺し屋として覚醒するという、ありえないドタバタ劇なのだが、これが予想外に楽しいのだ。笑わせるのは、フランシスがダンス好きの“踊る殺し屋”という点で、なるほど、相手の力を利用する格闘能力は、ダンスのよう。そんな彼を理想の男性と思ってしまうヒロインは、中身はピュアだが暴走気味の失恋女子で、ある意味、殺し屋よりアブナイ性格である。割れ鍋に綴じ蓋といったところだが、このカップルが実にキュートなのだ。そう見えるのは、演じるアナ・ケンドリックとサム・ロックウェルの好演があるからこそ。特に猫耳をつけたケンドリックの笑顔が可愛すぎる。ガール・ミーツ・ボーイならぬ、失恋女子・ミーツ・ヒットマン。ティム・ロスの怪演もひそかな見所だし、マーサの能力をフランシスが引き出すナイフのシークエンスは、痛快だ。クレイジーなのに笑えるというギャップが楽しい、憎めない1本である。
【60点】
(原題「MR.RIGHT」)
(アメリカ/パコ・カベサス監督/サム・ロックウェル、アナ・ケンドリック、ティム・ロス、他)
(クレイジー度:★★★★☆)
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猫忍

猫忍写真集
時は泰平。霧生家の若手忍者・久世陽炎太は、ある日、忍び込んだ屋敷で、ふっくらとした茶白の猫と遭遇する。その猫は、幼い頃に生き別れた父の剣山と同じ赤鼻だった。秘伝“変化の術”によって父は猫に化けたと確信した陽炎太は、父を人間に戻すため抜忍となり、父(猫)を連れて秘伝の巻物を探す旅に出る。しかし陽炎太を追う、霧生忍者の追手が迫っていて…。

父の面影を宿す猫と旅をする孤独な忍者の活躍を描くエンタメ時代劇「猫忍」。猫と時代劇という異色の組み合わせでスマッシュヒットとなった「猫侍」の製作チームによる、新たな癒し系猫型プロジェクトだ。空前の猫ブームの中、今回、猫の“父上”を演じるのは堂々とした体格の茶白猫の金時くん。陽炎太と共に旅をしながら。時に癒し、時に戦い、時に思慮深い表情をみせる名優ぶりだ。幼い頃に生き別れた父を探すこじらせ忍者と、おやじ系ツンデレ猫の組み合わせは、見ているだけで微笑ましい。さらに陽炎太と父上を狙う追手たちも、気がつけば猫の父上に癒されている。他に三毛猫の“まごころ”も登場し、猫好きの心をどこまでもくすぐる内容だ。ストーリーは他愛ないものだが、変化の術にも通じる、人はいつでも変わることができるという、案外真面目なメッセージがしれっと込められている。日光江戸村の全面協力で実現した、忍者アクションにも注目してほしい。自他ともに認める大の猫好きの私としては、問答無用で本作を応援することに決めている。
【50点】
(原題「猫忍」)
(日本/監督/大野拓朗、佐藤江梨子、船越英一郎、他)
(猫好き必見度:★★★★☆)
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たたら侍

たたら侍 (朝日文庫)
戦国時代末期の奥出雲。たたら村では、古来より、熟練の製鉄技術であるたたら吹きが伝えられていた。その技術を受け継ぎ、たたら吹きを取り仕切る村下(むらげ)の長男として生まれた伍介は、父の技術を継承するはずだったが、鋼目当ての山賊に村を襲われて以来、強くなって村を守りたいとの思いを抱く。商人から、農民でも侍になれる時代だと聞いた伍介は、村の掟に背いて、侍になるために旅に出る。しかしそこには、戦場の惨状と厳しい現実だけが待っていた…。

歴史ある出雲(現在の島根県)の地で製鉄技術・たたら吹きを継承することを宿命付けられた青年の成長を描く時代劇「たたら侍」。題材は、1000年錆びないとされる純度の高い玉鋼を生み出す、たたら吹き。それを受け継ぐ主人公はまだ若く未熟で、伝統の素晴らしさは肌で知っていても、あまりにも世間知らずだ。乱世の戦国の世で、力を得たいと願い、侍になりたいと切望しても、過酷な戦場の現実の前で身動きもできず、老獪な商人たちにいいように利用されてしまう。おかげで伍介が行くところ、次から次へとトラブルが起こり、それでも彼をいつも見守っている周囲のおかげで何とか生き延びている始末だ。こんなにもへたれで役にたたない映画の主人公はちょっと珍しい。伍介さえ動かなければ、すべての惨事は回避できたのではなかろうか…と思うと、共感するのは難しくなってしまう。およそヒーローらしくないが、これが庶民(農民、百姓)のリアルなのだ。なるほど、伍介は、侍でもなければ剣の達人でもない。殺し合いを前に足がすくみ、誠実だが弱さや愚かさを持つ、欠点だらけの青年だ。本作は、何者でもなかった青年が、故郷の美しさ、素晴らしい伝統を守る意義、命の価値と生きる意味を知る、オーソドックスな成長物語である。武士が戦いで使う刀の材料・鋼を作る者たちが、その鋼で守る価値のあるものとは何か、本当の強さとは何かを学ぶという設定は、なかなか示唆に富んでいる。たたら吹きというものを初めて知ったので、その製法をじっくり描くシーンが、実に興味深い。EXILEプロデュースの映画だが、驚くほど硬派な内容だ。映画とは少し離れるが、本作のポスターのうち3種類は、映画の舞台である島根県の障碍者によるアート作品。力強く印象的なポスターにも注目してほしい。
【60点】
(原題「たたら侍」)
(日本/錦織良成監督/青柳翔、小林直己、AKIRA、他)
(成長物語度:★★★★☆)
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ピーチガール

「ピーチガール」オリジナル・サウンドトラック
心は純真なのに派手な外見から遊んでいると誤解されやすい女子高生・ももは、ある勘違いから、学校一のモテ男のカイリとキスをしたという噂を流される。しかも、その後にカイリに本当に一方的にキスされてしまい困惑する。ももは、中学時代からの同級生で硬派な男子・とーじのことを一途に思い続けていたのだ。おまけに、男受けのいい美少女だが中身は性悪の沙絵は、ももの好きなものを何でも欲しがり、何とかとーじを横取りしようと様々な罠をしかけてくる始末。そんなももの絶対絶命のピンチを救ったのは、一見チャラそうだが実は真面目な性格のカイリだった…。

見かけとは真逆の性格の高校生の男女の恋模様を描く青春ラブストーリー「ピーチガール」。原作は第23回講談社漫画賞を受賞した上田美和の人気コミックだ。主人公のももは、水泳部に所属していたため、日焼けした肌に塩素で色が抜けた赤い髪で、外見は遊んでいるギャル風だが、中身は同級生とーじを想い続ける一途でピュアな性格。学校一のモテ男のカイリは、チャラくて軽い性格に見えて、中身は真面目で、複雑な家庭環境に悩みながらも懸命に夢を追っている。ももの友人の美少女・沙絵は、可愛らしい外見とは裏腹に小悪魔系の性悪で、ももが好きなものは何でも欲しがる。とーじだけは真面目で硬派でさわやかな外見と中身にギャップは少ないが、どこまでも不器用な男子だ。人をみかけで判断してはいけない。そんな真面目なメッセージが透けて見えるが、話の中心は、とーじとカイリという、正反対のタイプの二人の男子の間で揺れ動くももの恋模様で、ももが果たしてどちらを選ぶのかが、なかなか読めないので思いがけず楽しめてしまう。だが、問題は演技。山本美月、伊野尾慧共に、あまりに芝居がつたない上に、高校生役をやるには年齢的に無理がありすぎて、ファン以外には響かないだろう。原作コミックのキャラのビジュアルは、実写版とかなり違うようだが、もう少し現実的なキャスティングがあったのではないか。小悪魔の沙絵を演じる永野芽郁が、珍しく憎まれ役なのが目新しいが、沙絵が仕掛ける罠や策略がこれまた稚拙で、苦笑しかでてこない。監督はこれが長編映画初監督。あまりキビしいことを言ってもいけないが、ティーン向けの胸キュンラブストーリーでも、もう少しリアルな演出が見たかった。何でも原作には続編があって、10年後(27歳)の物語があるのだそう。やっぱりこのお話は、実写ではなくコミックの世界が向いているようだ。
【45点】
(原題「ピーチガール」)
(日本/神徳幸治監督/山本美月、伊野尾慧、永野芽郁、他)
(ファンサービス度:★★★★★)
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夜明け告げるルーのうた



中学生のカイは、両親が離婚したため、父母の故郷である漁港の町・日無町に引っ越してくる。東京で暮らしていたカイは、寂れた田舎町になじめず、両親への複雑な思いを抱えて心を閉ざしていた。唯一の心の拠り所は、作曲した音楽をネット上にアップすること。ある日、クラスメイトの国男と遊歩に彼らのバンド・セイレーンに強引に勧誘され、彼らが練習場所にしている、立ち入り禁止の人魚島にしぶしぶ向かったところ、人魚の少女・ルーと出会う。音楽が大好きで楽しそうに歌い踊るルーと一緒に過ごすうちに、カイは少しずつ周囲に心を開き始める。だがルーを町興しに利用しようとする大人や、人魚は災いをもたらすと信じる人々によって不穏な動きが起こり、ルーとルーを守ろうとするカイは大事件に巻き込まれていく…。

孤独な少年が人魚と出会い自我に目覚めて成長していく様を独特のテイストで描くアニメーション「夜明け告げるルーのうた」。湯浅政明監督は、「夜は短し歩けよ乙女」が公開されたばかりなのに、もう次の作品が見られるのか?!とファンを驚かせてくれた。だが真の驚きは、その内容である。湯浅作品の持ち味は、見る人を選ぶ、いい意味でのブッ飛んだ作風だ。そんな異能の映像作家の新作が、内向的な少年の成長物語というテッパンの青春ファンタジーで“万人に優しい”作品に仕上がっていることにビックリした。湯浅アニメを偏愛し、その独創性を大切に思ってきたコアなファンにとっては、このオーソドックスが何とも物足りなく感じるはず。何を隠そう、私も最初はそんな思いをいだいたのだが、落ち着いて考えると本作は湯浅監督の長編映画として初の劇場オリジナル作品だ。より多くの人にアニメーションの楽しさをストレートに感じてほしいという強い思いがあふれている。天真爛漫な人魚のルーというキャラや、人間社会との溝によって起こる大騒動という展開に、ジブリ作品を連想する人も多いだろう。そんな類似性は承知の上で、他者との違いを受け入れ、自分が心から好きなものを好きという勇気や、自分で未来を決める決断を、前向きに描くストーリーは、素直に好ましいと感じるものだった。無論、ポップでシュールな絵柄やカラフルな色彩は健在で、音楽やダンスでストーリーそのもののテンションをグッと上げる演出は、心憎いほどハマッている。国内外での高評価と受賞歴、尖がった作風、時に難解なストーリーなどで、湯浅作品のハードルを無意識に上げてしまっていた。人魚のルーと少年カイを結び付ける名曲「歌うたいのバラッド」でも“唄うことは難しいことじゃない”と言っている。映画を難しく見る必要など、ないのだ。ボーイ・ミーツ・マーメイドの本作は、鬼才・湯浅政明の新境地に見えて、原点なのかもしれない。
【70点】
(原題「夜明け告げるルーのうた」)
(日本/湯浅政明監督/(声)谷花音、下田翔大、篠原信一、他)
(成長物語度:★★★★★)
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メッセージ

Arrival [BD/Digital HD Combo ] [Blu-ray]
突如、地球上の各地に謎の巨大球体型飛行物体が現れる。彼らがどこから来たのか、目的は何なのか、何もかもが不明だった。言語学者のルイーズは、彼らの言語を解読し、その意図を探るように軍から要請される。黒い煙状の表意文字を解読するうちに、ルイーズは、彼らが人類とはまったく異なる時間の観念を持っていることに気付く。物理学者のイアンと共に、彼らと友好的に交信しようとするルイーズだが、各国は彼らを敵とみなし攻撃の準備を始める。ルイーズは、地球を救い、彼女自身の思いを伝えるため、思い切った行動に出るが…。

未知なる飛行物体のメッセージを読み解くことで、人間の存在意義を問う異色SF「メッセージ」。原作は、テッド・チャンの短編小説「あなたの人生の物語」だ。人間に対して友好的にせよ、攻撃的にせよ、人類が宇宙人と遭遇するSF映画は、過去にも多く作られた。だが本作は、ビジュアル、ストーリー、観念的かつ崇高な志という点で、今までのどの映画ともテイストが異なる。言語学者のルイーズは、幼い娘ハンナを病で失ってから深い喪失感の中にいる。そんなルイーズの母性にも似た寛容が、未知のエイリアンに対し、根気強くコンタクトを求め、攻撃ではなく別の可能性を見出すという設定は非常に興味深い。この物語の主人公がヒーローではなく、ヒロインであることに大きな意味があるのだ。縦型のアーモンドのような宇宙船の造形や、7本脚(ヘプタポッド)のエイリアンのビジュアルは独創的で、黒い煙状のサークル型の表意文字は、美しいアートのようである。ルイーズが感じ取る、時間を逆行するような感覚と、やがて知る驚きの真実は、少々複雑で分かりにくいのだが、悲しみの中でも彼女が生きてきた意味が解明され、深い感動を味わえるだろう。ルイーズは人生や宇宙、時間という概念の真実を知り、混乱しながらも、未知なるものを受け入れ、愛することを止めないと決意する。このことが、本作を、宇宙人との遭遇という平凡なSF映画から、深淵な人間ドラマへと昇華していった。派手なバトルやヒロイックな戦闘などは登場しない。だが、各国が一触即発の非常事態に陥る愚かさと、パーソナルな悲しみや迷い、それでも保ち続ける理性と愛をも描くことで、現実を巧みに照射している。エイミー・アダムスをはじめ、実力派俳優たちの丁寧な演技が、深い人間ドラマを紡ぎ、生きることの意味を問う壮大な物語を作り上げた。またしても俊英ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の才能に驚かされた1本だった。
【85点】
(原題「ARRIVAL」)
(アメリカ/ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督/エイミー・アダムス、ジェレミー・レナー、フォレスト・ウィテカー、他)
(独創的度:★★★★☆)
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サクラダ リセット 後篇



特殊能力を持つ人々が住むサクラダ(咲良田)の街では、過去のすべての出来事を記憶する浅井ケイらが暮らしていた。ケイは、自らの記憶保持の能力と、時間をリセットする春埼の能力とを組み合わせて、死んだ同級生・菫を蘇らせようと奮闘する。一方で、サクラダでは、いたるところで能力の暴発事件が発生していた。強大な権力を持つ管理局が、サクラダの能力を一掃するという重大な計画をひそかに進めていることを知ったケイは、仲間の能力を組み合わせて、何とかそれを阻止しようとする…。

特殊能力を持つ者たちが暮らす街で繰り広げられる攻防を描く青春ミステリー2部作の完結篇「サクラダ リセット 後篇」。命を救えなかった菫を蘇らせようと奔走するケイは、仲間が持つ、ものを消す能力や、声を届ける能力、記憶操作、さらに、過去に体験したすべての記憶を保持する自らの能力と、リセットで世界を最大3日分巻き戻せる春埼の能力を使って、サクラダの能力を一掃しようとする管理局の計画の阻止を図る。この計画が複雑すぎて、混乱するのだが、そこは能力者である少年少女たちの奮闘として理解しておこう。ケイを巡っての菫と春埼のマイルドな三角関係や、ケイと母親との関係性など、この後篇では、心理描写もそこそこ描かれる。だが問題は、後篇こそは、彼らの特殊能力のパワーがさく裂するのかと思いきや、管理局の室長や彼の補佐であるキーパーソンとのバトルが、実際はバトルでもなんでもなく、話し合い…というより説得…というより会話になってしまっていることだ。無論、ハリウッド大作などに匹敵する迫力など期待してはいないが、単なる言葉のやりとりでは、特殊能力者である必要性も薄くなる。ストーリーとは関係ないが、前篇の不評からか、後篇の公開日を変更する劇場まであったと聞くと、そもそも、2部作という公開スタイルが間違っていたのでは…と思ってしまう。物語の性質上、かなりややこしい展開なので、一気に見る方がスッキリするはずだ。「泣いている人を見たらリセットしてしまう」という優しさの本質の是非と、悲しみや後悔があるのが人生だということを、彼らが本当に学んでいくのは、年齢を重ねてから。サクラダで生きると決めた主人公ケイに、静かな覚悟を感じた後篇だった。
【50点】
(原題「サクラダ リセット 後篇」)
(日本/深川栄洋監督/野村周平、黒島結菜、平祐奈、他)
(複雑度:★★★★★)
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トンネル 闇に鎖された男



自動車ディーラーのジョンスは、大きな契約を無事に済ませ、妻セヒョンと娘が待つ家へ帰るために、車を走らせていた。山中のトンネルに差し掛かった時、突如トンネルが崩落し、ジョンスは車ごと生き埋めになってしまう。目覚めると、周囲はコンクリートの瓦礫の山。車中には水のペットボトルと娘への誕生日ケーキ、そしてバッテリー残量78パーセントの携帯電話だけ。やがてトンネル崩落のニュースが国内を駆け巡り、救助隊のキムらが現場にかけつける。だが惨状は予想をはるかに超えるもので、次々に問題が発生する…。

崩落したトンネルに生き埋めになった男を描く異色のサバイバル劇「トンネル 闇に鎖(とざ)された男」。トンネルや坑道に閉じ込められる映画は過去にもあるが、本作は、主人公がヒロイックな英雄ではなく、マスコミや政府も救助活動に対して微妙な立ち位置であることだ。主人公ジョンスは孤独な闘いを強いられるが、実はトンネルの中では予想外の展開が待っている。彼の実質的な味方は、救助隊の隊長キムだけだ。何とか生還しようと必死のジョンスと、彼を助けようとベストを尽くすキムだったが、マスコミはいたずらに騒ぎ、政府の対応も後手な上に弱腰だ。手抜き工事の実態や、責任感のない女性政治家などの言動には苦笑してしまうが、あまりに韓国の現実に似ていて、笑えないほどリアルなのである。恐ろしいのは、たった一人を救うために税金を無駄使いするな!と救助活動そのものを非難をする大衆のヒステリックな声に政府をはじめ周囲が迎合してしまうことである。これは単なるパニック映画やサバイバル劇ではなく、非常事態に際しての人間の本質を問うドラマなのだ。「お嬢さん」で詐欺師を演じたハ・ジョンウが弱さを併せ持つ普通の男性を誠実に演じ、相変わらずコミカルとシリアスのブレンド具合が絶妙な名脇役の演技派オ・ダルスもいい。ちょっと残念なのは、妻役のペ・ドゥナの印象が薄いことか。トンネルに閉じ込められたジョンスと救助隊のキムの、互いに相手の声だけで育む友情物語としても見応えがある。トンネル崩壊の恐怖、トンネル内外での予想外の展開と、先読み不能のサスペンスの行方に意外なほどハラハラする。経済優先、大衆への迎合、人命軽視、そして生命力。なかなか見応えがある佳作だった。
【70点】
(原題「TUNNEL」)
(韓国/キム・ソンフン監督/ハ・ジョンウ、ペ・ドゥナ、オ・ダルス、他)
(サバイバル度:★★★★★)
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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