映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「フィフティ・シェイズ・ダーカー」「ハクソー・リッジ」「結婚」「ありがとう、トニ・エルドマン」etc.

映画

結婚

結婚 (角川文庫)
結婚詐欺師の古海健児は、小説家、空間コーディネーターなど、さまざまな職業に成りすまし、その端正なルックスと知的で優しい話術で女性たちを翻弄していた。ある日、彼に騙された女性たちが偶然つながり、古海のことを調べて行方を探し始める。彼女たちは探偵を雇い、元々は古海の被害者の一人だったが、後日、彼の相棒となった女・るり子の存在にたどりつく。古海にはたいした儲けにはならない結婚詐欺を繰り返す理由があった…。

結婚詐欺師と彼に騙された女たちの姿を通して人間の業を描く「結婚」。原作は直木賞作家・井上荒野の長編小説だ。スラリとした長身に端正な顔立ち、知的で上品な話術、匂い立つような色気。これらは結婚詐欺師・古海の武器だ。彼の元被害者で、ほぼ強引に“ビジネスパートナー”になったるり子が、何のために結婚詐欺などしているのか尋ねると「女たちの嬉しそうな顔を見るのが好きなんだ」と真顔で答える。実際、古海にプロポーズされたときの女たちの顔は幸福感に満ちているし、騙されて金を奪われても、悔しさと同時に彼に対して執着心を見せる。古海はと言えば、自分は営業の仕事をしていると偽って妻の初音と幸せに暮らしているのだ。この物語には、実は大きな仕掛けがある。それは古海が大事に持っている古い写真や、彼の言動に微妙な違和感があることから、薄々察しがつくかもしれない。詳細は明かせないので言及できないが、この詐欺の描写そのものがツメが甘く、探偵を使って真実を探ったり、彼を意外な形でフォローする大富豪の女性の調査を待つまでもなく、やがては破綻する素人レベルの犯罪なのだ。物語の核心は、詐欺そのものではなく、詐欺行為を繰り返す主人公の背景と心情にあるということだろう。朝の連続ドラマでブレイクした、イケメン俳優のディーン・フジオカありきの映画だが、彼の新たな一面が発見できるので、ファンは見逃せない。
【50点】
(原題「結婚」)
(日本/西谷真一監督/ディーン・フジオカ、柊子、中村映里子、他)
(切なさ度:★★★☆☆)
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ハクソー・リッジ

Hacksaw Ridge [Blu-ray]
ヴァージニア州の田舎町で育ったデズモンド・ドスは、幼少期の苦い体験から「汝、殺すなかれ」の教えを守ると固く心に誓っていた。やがて第二次世界大戦が激化すると、デズモンドは、衛生兵ならば自分も国に尽くせるとして、恋人ドロシーや父親の反対を押し切って陸軍に志願する。1945年、沖縄に到着するが、ハクソー・リッジと呼ばれる激戦地での過酷な闘いにさらされる…。

武器を持たずに人命救助に徹した実在のアメリカ兵、デズモンド・ドスの困難な戦いを描く人間ドラマ「ハクソー・リッジ」。ハクソーはのこぎり、リッジは崖の意味で、沖縄の激戦地の前田高地を指す。衛生兵のデズモンドは、地獄のような戦場で、包帯とモルヒネだけを手に断崖付近を駆け回り、たった一人で75名もの命を救った男だ。彼がこの奇跡のような行動に至るまでのドラマが非常に丁寧で説得力がある。幼少期の両親の不仲、第一次世界大戦の惨状を見た父親の心の傷、初々しい恋などで、デズモンドの人柄を手際よく描いていく。新兵訓練キャンプでは、武器を持たないことを、静かに、でもきっぱりと主張したため、上官や兵士たちの執拗ないじめに遭うが、それでもデズモンドの信念は揺るがない。ここまでの演出が的確でエモーショナルなため、いざ戦場に放り出されたときには、誰もがデズモンドの目線で戦争の現実をみつめられるようになっている。それにしても接近戦の戦闘描写の、なんと壮絶なことか。手足が吹き飛び、頭を打ちぬかれ、爆風と砂塵で息もできない臨場感。肉片と血しぶきが舞う地獄絵図は、監督メル・ギブソンの本領発揮といったところだ。戦闘シーンが生々しく残虐だからこそ、デズモンドが、このような場でも「殺さずに、救いたい」との信念を貫いた並外れた強さが際立つのだ。彼の勇気ある行動は、信仰心のためというのが本作のスタンスだが、仲間たちは、どんな困難に遭遇しても決して自らの信念を曲げないデズモンドの姿に、信仰以前の、人としての強さを見たに違いない。ただ、この舞台が日本であること、今、日本もアメリカも先行きが見えない岐路に立っていることを思うと、複雑な思いを禁じ得ない。デズモンドの立ち位置は、軍隊用語でいう良心的兵役拒否だが、自らを良心的協力者と呼んでいたそう。繊細さと大胆さを兼ね備えた男を、アンドリュー・ガーフィールドが真摯に演じて好演だ。近年、お騒がせのゴシップばかりが目立ったメル・ギブソンだったが、監督として「ブレイブハート」以来の秀作に仕上げて鮮やかな復活劇となった。圧倒的な暴力の中に、確かに存在した奇跡のような実話は、今までにないタイプの戦争映画に仕上がっている。
【80点】
(原題「HACKSAW RIDGE」)
(豪・米/メル・ギブソン監督/アンドリュー・ガーフィールド、サム・ワーシントン、テリーサ・パーマー、他)
(信念度:★★★★★)
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フィフティ・シェイズ・ダーカー

Fifty Shades Darker - Unrated Edition (Blu-ray + DVD + Digital HD)
恋愛未経験で純粋な女子大生だったアナは、大企業の若きCEOで大富豪のクリスチャン・グレイと出会い、互いに強く惹かれあうが、アナはクリスチャンの歪んだ愛を受け入れられず、別れを告げる。卒業して出版社に勤務するアナは新生活を始めるが、彼女の前にクリスチャンが現れ関係の修復を望む。密かにクリスチャンを想い続けていたアナは喜びをかみしめながらも、ある条件を要求する。再び刺激的な日々が始まるが、二人の前に、その恋を邪魔する人物が現れる…。

官能ラブ・ストーリー「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」の続編「フィフティ・シェイズ・ダーカー」では、再会したアナとクリスチャンは、新たなルールでの恋愛をスタートする。二人の恋の障害となる男女といえば、クリスチャンの過去の“服従者”の女性はまるで幽霊のようだし、アナに執拗に接近する上司はストーカー状態と、かなり戯画化されている。そこに「ナインハーフ」で官能的な役を魅力的に演じたキム・ベイシンガーが登場。クリスチャンをSMの世界へと誘った年上の美女役で、時代の流れを感じさせる。それにしても問題はアナのキャラクターだ。「今度は私のルールで恋愛を進める!」と要求を出しておきながら、あまりにも受動的。公私ともに問題山積だが、それをすべて解決してくれるのは、クリスチャンの財力なのだから、失笑してしまう。クリスチャン・グレイがアナのどこに惹かれたのかをもっとしっかり描くべきなのではないのか? ただ、ダコタ・ジョンソン、ジェイミー・ドーナンの二人は相変わらずビジュアル的に完璧だ。特にドン・ジョンソンとメラニー・グリフィスの間の娘であるダコタ・ジョンソンは、いつもは少女のようにあどけないのに、黒やシルバーのドレスでドレスアップすると、目を見張るほどゴージャスに変身。スレンダーなボディは、大胆できわどいシーンを演じてもちっとも下品にならず、美しいからさすがだ。どうやら、次回作もあるようなのでファンには喜ばしいことだろう。“ハンサムでリッチ、心に傷を抱えたイケメン男性の運命の女性はこの私”。今さら感が漂うこの妄想ストーリーは、それでもハリウッドが作れば、薄っぺらいお話もゴージャスな雰囲気に仕上がるという好例だ。
【50点】
(原題「FIFTY SHADES DARKER」)
(アメリカ/ジェームズ・フォーリー監督/ダコタ・ジョンソン、ジェイミー・ドーナン、キム・ベイシンガー、他)
(障害度:★★★★☆)
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ある決闘 セントヘレナの掟



1886年、メキシコとの国境リオ・グランデ川に何十という死体が流れ着いた。この不可解な事件を捜査することになった、テキサス・レンジャーのデヴィッドは、妻と共に川の上流にあるマウント・ハーモンという町へ向かう。そこで彼は、人々に奇跡を見せて、町を掌握している“説教師”エイブラハムと出会う。身分を隠して町に住むことになったデヴィッドだが、エイブラハムは、決闘でデヴィッドの父を殺した男で、因縁の再会だった。町とその周辺を密かに調査したデヴィッドは、やがて驚愕の事実を知ることになる…。

メキシコ国境の町を牛耳る説教師の男と、彼に父親を殺されたテキサス・レンジャーの因縁を描くウェスタン・ノワール「ある決闘 セントヘレナの掟」。ヘレナ流の決闘とは、互いの左手を布で繋ぎ合わせ、右手に持ったナイフでどちらかが死ぬまで闘う男の掟だ。主人公のデヴィッドは、幼い頃、このヘレナ流決闘でエイブラハムに父を殺された過去がある。成長したデヴィッドはテキサス・レンジャーとなって、不可解な事件を調査し、そこで因縁の再会を果たすというわけだ。復讐は西部劇でしばしば描かれる主要なテーマのひとつだが、本作では実は主人公は復讐に対してはさほど思い入れはない。物語は、川に流れ着いた死体とその理由、怪しげな宗教的儀式で人心を掌握する男の謎を探るミステリー仕立てで、過去の復讐よりも現代の事件に重きを置いている、異色のヴァイオレンス映画という趣だ。ただ、この映画のストーリーは、西部劇というクラシックなスタイルで描かれるが、現代アメリカの闇を鋭く照射するもの。メキシコ国境での不条理な不審死事件の真相は映画を見て確かめてもらうとして、フィクションとはいえ、その人間性を欠いた暴挙に戦慄が走る。激しいガン・アクションやサバイバル、壮絶な暴力が全面に出ているが、戦争、宗教、人種差別といった今もアメリカを蝕む病巣を見る思いだ。謎のカリスマ説教師エイブラハムを演じるウディ・ハレルソンが怪演に近い熱演。エイブラハムが自らを正当化するかのように常に白い服に身を包んでいるのが不気味である。西部劇は今は映画界の主流ではないが、このジャンルを偏愛する映画人は間違いなく存在する。地味な小品だが、アメリカの伝統的スタイルで、現代の問題を浮き彫りにした意欲作といえよう。
【65点】
(原題「THE DUEL」)
(アメリカ/キーラン・ダーシー=スミス監督/ウディ・ハレルソン、リアム・ヘムズワース、アリシー・ブラガ、他)
(バイオレンス度:★★★★☆)
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ドッグ・イート・ドッグ

ドッグ・イート・ドッグ (ハヤカワ文庫NV)
服役を終えて出所したトロイは、刑務所で知り合った仲間で、薬物中毒のマット・ドッグ、巨漢のディーゼルと再会する。先が見えない未来を変えるため、仲間思いのトロイは、地元ギャングのボスに相談し新たな仕事を請け負うことに。それはボスへの借金を返済しない男の息子を誘拐し身代金を要求するというもの。簡単な仕事に思われたが、予想外の展開へと発展し、3人は追われる身となってしまう…。

誘拐を請け負った前科者の男たちが追い詰められていく様を描くクライム・サスペンス「ドッグ・イート・ドッグ」。タイトルは“喰うか喰われるか”の意味で、原作は、自らも服役経験があり、獄中で書いた小説で作家になったエドワード・バンカーの犯罪小説だ。バンカーは11歳で少年院に入ってから20数年、ほとんどを刑務所の囚人として過ごしたというから、かなり異色の小説家である。暴力や犯罪、刑務所の描写は、経験を踏まえているだけあって、リアルだと評判で、本作でも情け容赦ないバイオレンス描写やムショ仲間特有の腐れ縁などが詳細に描かれている。主人公のトロイは仲間思いで恩義に厚く“比較的”まともな男だが、マッド・ドッグはコカイン中毒で誰もが手を焼くキレやすい性格。家庭持ちで取り立て屋のディーゼルは、普段は温和だがキレたら怖い巨漢の男だ。こんなアブナイ3人組の仕事が無事に済むわけがなく、人生の一発逆転を狙った大仕事は、偶然や必然、悪運に疑心暗鬼が重なって、堕ちるところまで堕ちていく。まぁ、ダメ男の負け犬たちがたどる運命は最初から予想がつくのだが、それにしてもウィレム・デフォーの狂犬ぶりはすさまじい。本作の通奏低音は、暗い色調の映像と運命にからめとられてがんじがらめになる男たちのハードボイルドな転落ぶりだ。手あたり次第に役を引き受けている感がある、近年のニコラス・ケイジの仕事ぶりを見ていると、彼が出演するならB級映画と安易に思われがち。あながちハズレではないが、むしろ本作はカルト映画の部類で、バイオレンス描写の合間にシレッと挿入される乾いた笑いに独特の味がある。クールなモノクロ映像で始まる冒頭、トロイが、先に出所していたマッド・ドッグからプレゼントされたスーツに対して礼を言う。「スーツをありがとう」。直後にカラー映像になり、それが「誰が着るのか、こんなモン?」状態の鮮やかな青緑色のスーツだと分かり、思わず吹き出して笑った。
【55点】
(原題「DOG EAT DOG」)
(アメリカ/ポール・シュレイダー監督/ニコラス・ケイジ、ウィレム・デフォー、クリストファー・マシュー・クック、他)
(ハードボイルド度:★★★★★)
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こどもつかい

「こどもつかい」オリジナル・サウンドトラック
とある郊外の街で、子どもたちが次々に姿を消し、戻ってきた子どもに遭遇した大人は3日後に謎の死を遂げるという連続不審死事件が発生する。新人の新聞記者・駿也は、事件の調査を始めるが、そこで“子どもの呪い”の噂を耳にする。一方で、駿也の恋人で保育所勤務の尚美は、母親が迎えに来なかった男の子をあずかるが、不用意な言葉で男の子の心を傷つけて恨みをかってしまう。二人の前に謎の男“こどもつかい”が現れ、男に操られるように子どもの霊が出現。駿也は尚美を守るため、呪いのルーツの核心に近づこうとするが…。

謎めいた“こどもつかい”による怪事件の恐怖を描く「こどもつかい」。「呪怨」シリーズなど、ジャパニーズホラーの名手・清水崇監督がオリジナルストーリーで描くホラー映画だ。新聞記者の駿也が調べる都市伝説のような呪いの噂は、調べていくうちに、貧困家庭の児童虐待の実態へとたどりつく。駿也の恋人の尚美はかつて自分が母親から虐待されていた過去を持っていて、そのことが、二人を謎めいた呪いへと導いていく。子どもが、謎めいた人物に操られて行方不明になるという設定は、どこか“ハーメルンの笛吹男”に似ているが、ここでは行方不明になる子どもが大人に恨みを持っているというのがミソだ。古い伝承に、児童虐待という現代的な病巣を組み合わせ、恐怖を演出したところが興味深い。こどもつかいの呪いの源は、ちょっと意外だが、こどもつかいのいでたちを見れば、勘がいい映画ファンなら、なんとなく予想がつくだろう。しかし、問題はホラー映画なのにさっぱり怖くないということだ。こどもつかいは映画初主演の滝沢秀明が演じているが、ジャニーズのアイドルの哀しさか、特殊メイクも衣装もなんだかステージ衣装に見えてしまって困った。子どもたちの怨霊は、それでもどこかで優しい親を求めている。門脇麦演じる尚美が母親に抱く屈折した愛情が悲しかった。
【50点】
(原題「こどもつかい」)
(日本/清水崇監督/滝沢秀明、有岡大貴、門脇麦、他)
(恐さ度:★★☆☆☆)
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キング・アーサー

King Arthur: Legend Of The Sword
中世のイングランド。両親を殺され孤児になった青年アーサーは、スラム街の売春宿で育ち、たくましく生き抜いてきた。彼の両親の命を奪った暴君ヴォーティガンは、やがて自分を殺すであろう青年を探していたが、アーサーは、まだ、自分がかつてのイングランド王の一人息子であることを知らなかった。やがて聖剣エクスカリバーを手に入れたアーサーは、自らの過去と、亡き父王の代わりに王座を奪還する運命を知り、仲間の力を借りて立ち上がる…。

アーサー王伝説を新感覚で描いたソード・アクション「キング・アーサー」。中世の伝説の英雄アーサー王は、元祖ヒーローと言われ、小説、オペラ、舞台、コミック、アニメ、ゲームとさまざまな形で描かれてきた。映画でも数えきれないほどの作品があるが、本作は、いわばアーサー王の誕生秘話。物語の背景は、人間と魔術師が共存する混沌とした世界だが、主人公のアーサーは、格闘はカンフー仕込み、タフで仲間思いの心優しいストリート系ヒーローである。ガイ・リッチー監督は、手垢がついたストーリーを、主人公のキャラをイマドキ感満載にした上で、格調高さや文学的な趣をバッサリと切り捨てて、スピード感あふれるアクション・エンターテインメントとして描き切った。CGIも気合が入っていて、冒頭の巨大な象が登場するバトルは大迫力だし、セイレーンや湖の乙女の描写は幻想的で恐ろしくも美しい。もっとも“スラムのガキから王になれ”の下剋上的なキャッチコピーは、もともと王位継承者だった主人公の出自を思えばさほど響かず、なるべき人が王になる英国はやっぱり階級社会か…との思いがよぎった。聖剣エクスカリバーを岩から引き抜く重要なシーンで、特殊メイクのベッカムをカメオ出演させた後は、誰もが知っているカタルシスに向かって一直線に突き進む。魔術と権力に取りつかれた暴君ヴォーティガンが「今、ここにいるのもお前が原因だ。お前が俺を創った」と語るが、それがそのままアーサーの口を通して語り直されるとき、伝説や物語特有の因果応報がくっきりと浮かび上がる。華やかでスピーディー、時にコミカルでアクション満載の若きアーサー王の物語は、歴史ものはちょっと苦手な映画ファンにもおすすめの活劇に仕上がっている。
【60点】
(原題「KING ARTHUR: LEGEND OF THE SWORD」)
(アメリカ/ガイ・リッチー監督/チャーリー・ハナム、ジュード・ロウ、アストリッド・ベルジュ=フリスベ、他)
(下剋上度:★★★☆☆)
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ローマ法王になる日まで

chiamatemi francesco - il papa della gente DVD Italian Import by rodrigo de la serna
2013年。アルゼンチン出身のホルヘ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿は、法王選挙(コンクラーベ)を前に自らの波乱に満ちた人生を振り返る。1936年にイタリア移民の子として生まれたベルゴリオがイエズス会に入会したのは20歳の時。神の道を歩むことを決めた彼は、やがて35歳の若さでアルゼンチン管区長に任命される。だがアルゼンチンは、軍が国を制圧し、1976年に誕生した軍事独裁政権によって暗く過酷な時代を迎える。ベルゴリオは大きな試練にさらされながら、弱い立場の民衆に寄り添って活動を続けるが…。

現ローマ法王フランシスコの知られざる激動の半生を描くドラマ「ローマ法王になる日まで」。サッカーやタンゴを愛する庶民的な人柄と、ローリングストーン誌の表紙を飾って、ロックスター法王と呼ばれるなど、民衆を熱狂させるフランシスコが、いかにして法王になったのかをできるだけ史実に沿って描いている。宗教界のトップの人生を描くというと、コ難しく、説教くさい映画を想像するかもしれないが、本作は、現法王がブエノスアイレスで活動した若き日のエピソードを通して、ビデラ軍事独裁政権という暗黒時代を耐えたアルゼンチンの近代史を描く、骨太の社会派ドラマに仕上がっている。多くの市民がいわれのない嫌疑をかけられ、捕らえられて拷問されたあげく“行方不明”となって命を奪われた恐ろしい時代は、カトリックにとっても苦難の時代だ。ベルゴリオは軍部と教会の2つの勢力の狭間に立って、どうすれば信仰を守り、人々を救えるかを模索しながら、同時に自分自身が生き延びていくため奔走した。貧しい人に寄り添い続けた彼は、確かに偉大な人物だが、映画はベルゴリオを単なる英雄としては描いていない。恐怖や圧迫におびえ、悩み、弱ささえさらす彼は、時には間違いもおかすのだが、過ちを認める強さを持っている。苦悩し続けたからこそ、ドイツで出会った“結び目を解く聖母”の教えに救われたときの涙は、感動的だ。新法王になってからは、古い慣習を打ち破り、自分に関係する教会の慣例を質素にし、貧しい人々への奉仕活動や、環境問題、人種差別、時には政治や経済にも言及し、世界中の注目を浴びている。ダニエーレ・ルケッティ監督は、そんな宗教界のカリスマを、自分よりもはるかに大きなものにぶつかっていった勇気ある一人の人間として描いた。そのことが、激動の時代を生き抜いた彼の人生に陰影を生み、深い感銘を与えてくれている。
【60点】
(原題「CHIAMATEMI FRANCESCO - IL PAPA DELLA GENTE」)
(イタリア/ダニエーレ・ルケッティ監督/ロドリゴ・デ・ラ・セルナ、ロドリゴ・デ・ラ・セルナ、ムリエル・サンタ・アナ、他)
(波乱万丈度:★★★★☆)
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ローマ法王になる日まで|映画情報のぴあ映画生活

残像



1945年。スターリンが侵略の手を伸ばすポーランドで、アヴァンギャルドなスタイルで有名なポーランド人画家ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキは、情熱的に創作活動を続けていた。だが彼の作品は社会的リアリズムに反するとして当局から迫害を受け、大学教授の職を追われた上、美術館からも作品を破棄されてしまう。ストゥシェミンスキは彼を崇拝する数名の学生たちの援助で懸命に活動を続けレジスタンスのシンボルとなっていくが、食糧配給も受けられずに困窮する生活は次第に彼を追い詰めていく…。

スターリン体制に反抗し自らの信念を貫いた実在の画家ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキを描く伝記映画「残像」。ポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ監督は、一貫して理不尽な権力への反骨精神を描いたが、本作もまさにその系譜で、レジスタンスの塊のような主人公の生き様は、まるでワイダ自身の肖像画のようだ。先駆的画家・マレービチの弟子になった画家ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキは、カンディンスキーやシャガールらとも交流があった前衛画家。祖国を愛してやまないが、その思いは報われない。当局による熾烈な迫害の中で、食べるものもなく、食糧よりも熱望する画材さえ入手できない生活は、主人公にとっては死に等しい。それでも彼は祖国を捨てないし、体制側に迎合もしない。象徴的なのは、娘との関係性だ。まだ幼い娘のニカは、母ではない別の若い女性と親密な父親に、愛憎入り混じる複雑な思いを抱いてる。祖国を愛しながら、芸術を政治に利用しようとする当局に断固として抵抗するストゥシェミンスキの生き方と、この父娘の関係性が重なって見えた。ストゥシェミンスキが非業の死を遂げたのは歴史の事実だが、そのラストは、ワイダの初期の傑作「灰とダイヤモンド」の主人公がゴミ捨て場でぼろきれのようになって死んでいく場面を連想させ、戦慄する。左手と右足のない松葉杖のストゥシェミンスキが、冒頭で、なだらかな草原の丘の斜面を、笑いながら転がり落ちて、目的地に到着する場面がある。それは難しい時代にポーランドで生きる芸術家が幸せを謳歌する幻想のように、はかなく幸福な場面だ。「残像はものを見た時に目の中に残る色だ。人は認識したものしか見ていない」とは、主人公が劇中に学生に語る言葉。アートの表現の自由を決してあきらめなかった不屈の精神が、威厳を持って響いてくる、ワイダ渾身の遺作だ。
【70点】
(原題「POWIDOKI/AFTER IMAGE」)
(ポーランド/アンジェイ・ワイダ監督/ボグスワフ・リンダ、ゾフィア・ヴィフラチュ、ブロニスワヴァ・ザマホフスカ、他)
(反骨精神度:★★★★★)
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残像|映画情報のぴあ映画生活

22年目の告白 私が殺人犯です

22年目の告白-私が殺人犯です-
1995年、5人の命が奪われる凄惨な連続殺人事件が発生。新米刑事の牧村は、あと一歩のところまで犯人を追い詰めながら取り逃がし、敬愛する上司まで殺されてしまう。それから22年後。突如、事件の犯人を名乗る男・曾根崎雅人が告白本を手にし、盛大な記者会見を開いて、自分こそが犯人だと名乗り出る。不敵な笑みを浮かべる彼は、時効が成立し法では裁けないことを知って、世間やマスコミの前に姿を現したのだった。この美しくも大胆な犯人に、ネットは熱狂し、賛否両論を巻き起こす。マスコミを引き連れて被害者遺族に謝罪するかと思えば、事件を執念深く追う牧村刑事を挑発する曽根崎。だが彼の行動は、日本中を巻き込む新たな事件の始まりだった…。

未解決のまま時効を迎えた連続殺人事件の犯人が世間に現れたことで新たな事件が巻き起こる「22年目の告白 私が殺人犯です」。オリジナルは韓国映画の秀作サスペンス「殺人の告白」だ。オリジナル既見のファンには、前半の、犯人である曾根崎の言動の真意については察しがつくだろうが、この日本版リメイクは、その先にもうひとつのどんでん返しを用意している。1995年といえば、阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件が発生した年。ギラギラした怒りや恨みが際立った韓国版に対し、日本版には深い哀しみと嘆きが漂うのは、国民性もさることながら、理不尽な大惨事が続発した1995年を背景にしたことと無縁ではないだろう。謎解きの詳細は映画を見て確かめてもらうとして、なかなか意欲的なリメイクであることは認めるが、終盤の展開は、どうも納得できない。自分への罰、あるいは歪んだ虚栄心、はたまた心の奥底のトラウマが判断を狂わせたと考えるべきなのか。ともあれ、時効への法制度の変化の意味や、天災、人災、戦争、テロなどが人間の心をいかに深く蝕むかを改めて考えさせられた。藤原竜也、伊藤英明、両名の抑制のきいた熱演には、思わず感服したが、個人的には韓国映画の衝撃に軍配をあげたい。
【60点】
(原題「22年目の告白 私が殺人犯です」)
(日本/入江悠監督/藤原竜也、伊藤英明、野村周平、他)
(どんでん返し度:★★★★★)
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22年目の告白−私が殺人犯です−|映画情報のぴあ映画生活
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プロフィール
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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