映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」「ベイビードライバー」etc.

映画

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?

映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』オリジナル・サウンドトラック
夏休みの登校日。海辺の町に住む中学生の少年たちは、花火大会を前に「打ち上げ花火は横からみたら丸いのか?平べったいのか?」で盛り上がり、それを確かめるために灯台から花火を見る計画を立てていた。そんな中、典道と祐介は、クラスのアイドル的存在の美少女・なずなに遭遇。なずなは母親の再婚で転校することになっていて、典道は彼女に誘われ「かけおち」しようとするが、なずなは母親からあえなく連れ戻されてしまう。それを見ているだけでどうすることもできない典道は、もどかしさから「もしもあの時、俺が…」との気持ちで、海でみつけた不思議な玉を投げると、なぜか連れ戻される前に時間が巻き戻っていた…。

岩井俊二監督の初期の傑作であるテレビドラマを長編アニメーション化した「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」。“もしも、あの時、自分がこうしていたら…”をテーマに、繰り返される夏の1日を描く、ラブ・ファンタジーだ。1993年のオムニバスドラマ「if もしも」は人生の選択の分岐点をテーマに2つのラストの物語を順番に見せていくというユニークな企画で、岩井作品はその1つだった。人生の選択とは、実写でも、アニメでも、非常に奥深いテーマだが、今回のアニメ化の大きな変更点は小学生を中学生に変え、より恋愛要素を強くしたことだろう。オリジナルを知らなくても、しっかりと内容が伝わる上に、不思議な玉によって1日を繰り返し、さまざまな“もしも…”を描くというファンタジーには、アニメという手法は、よりふさわしいように思う。

思えば、大人になればなるほど“if もしも”を考えることが増える。それは今を悔やむことではなく、もしかしたらあったかもしれない人生に、自分の可能性を見出すことを知ると前向きに考えたい。オリジナルの作者でもある岩井監督曰く、「銀河鉄道の夜」がこの物語のモチーフなのだそうだ。みずみずしい夏の1日に写り込む、切なさや残酷さ、諦念の思いが“電車の中”にいるなずなと典道によって伝えられる様は、なるほど銀河鉄道である。花火の刹那の美、青春の危うさときらめきを、アニメーションの世界で見事に再構築している。
【70点】
(原題「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」)
(日本/総監督:新房昭之/(声)広瀬すず、菅田将暉、宮野真守、他)
(ファンタジー度:★★★★☆)
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フェリシーと夢のトウシューズ

フェリシーと夢のトウシューズ
19世紀末のフランス。ブルターニュ地方の施設で暮らす、踊るのが大好きな少女・フェリシーは、バレエを習ったこともないのに、バレリーナを夢見ていた。ある日、親友のヴィクターと共に、施設を抜け出してパリを目指すことに。大都会パリでヴィクターとはぐれてしまったフェリシーだったが、偶然、憧れのオペラ座にもぐりこむ。元バレリーナの清掃員オデットやライバルのカミーユらに出会い、フェリシーは他人になりすましてバレエ学校に入学。厳しいオーディションを勝ち抜き、舞台に立つことを目指すのだが…。

バレリーナを夢見る少女が試練を乗り越えて才能を開花させ成長していく姿を描くアニメーション「フェリシーと夢のトウシューズ」。ヒロインのフェリシーは、踊りが大好きな女の子。バレエ初心者、家族も有力なコネも、もちろんお金もないフェリシーが、バレリーナとなってオペラ座で踊るというストーリーは、あまりにも非現実的。だが、子ども向け、ファミリー向けのアニメーションである本作では、リアリティには重きを置かない。

物語は単純だが、バレエシーンの振付をパリ・オペラ座バレエ団芸術監督であるオレリー・デュポンとジェレミー・ベランガールが担当するなど、バレエシーンのこだわりは本物志向である。さらに「マダガスカル」や「カンフーパンダ」シリーズを手がけたスタッフによるアニメーションは、きらびやかな19世紀のパリの街を再現するだけなく、フェリシーらの生き生きとした表情や、アクロバティックなダンスシーンを魅力たっぷりにスクリーンに登場させた。フェリシーは、夢に向かって人一倍努力し、決してあきらめない。元バレリーナのオデットがそんな彼女を助けるのは、フェリシーの夢を応援することで、もう一度バレエと関わり、失ってしまった人生の喜びを取り戻すためなのだ。オデットの存在は、夢を忘れかけた大人の心にも響くだろう。
【50点】
(原題「BALLERINA」)
(仏・カナダ/エリック・サマー、エリック・ヴァリン監督/(声)エル・ファニング、デイン・デハーン、カーリー・レイ・ジェプセン、他)
(リアリティ度:★☆☆☆☆)
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スパイダーマン:ホームカミング

「スパイダーマン:ホームカミング」オリジナル・サウンドトラック
スパイダーマンとして活動する15歳のピーター・パーカーは、部活動のノリでご近所の危機を救うヒーロー気取りの高校生。アイアンマンことトニー・スタークは、ピーターの才能を認めて新しいスーツを与え、本当のヒーローとして導こうとする。だが、ピーターはスタークに早く認めてもらいたくて、日々、NYの街を飛び回っては、スタークからの連絡を待っていた。そんなある日、巨大な翼を持った謎の怪物が出現。ピーターは自分の実力を示そうとするが、スタークから「アベンジャーズにまかせろ」と制止される。ピーターは忠告をきかずに怪物と闘おうとするが…。

史上最も若いスパイダーマンの新たな活躍と成長を描くヒーロー・アクション「スパイダーマン:ホームカミング」。スパイダーマンといえば、自らの強大な力と責任に悶々とする悩めるヒーローというイメージが定着していたが、新シリーズである本作の若きスパイダーマンは、イマドキで、ユーモラスで、軽快で、愛らしい。ヒーロー活動も、まるでアルバイトか部活動のような軽いノリ。しかも彼が頑張って活動するのは、憧れのトニー・スタークに認めてもらい、自分にも何か出来る!と証明したいからだ。そう、今回のスパイダーマンはまさに青春の真っただ中にいる。

副題のホームカミングとは、高校の同窓会イベントのこと。そしてリブートとして戻ってきたスパイダーマンの懐かしき“帰郷”でもある。全米学力コンテストに参加するグループで一緒の美少女への淡い恋心、オタク少年との友情、何気ないけれどかけがえのない学園生活などに多くの時間が割かれるが、それこそが、新スパイダーマンを身近に感じるための大切な下ごしらえだ。メインディッシュは、もちろんド派手なアクションシーン。NYの街を軽々と飛翔するおなじみのシーンの爽快さはもちろん、真っ二つに裂けたフェリーを繋ぎとめる場面では、見ているこちらの手にも力が入る。さらにマイケル・キートンが怪演する翼の怪物バルチャーとのバトルは大きな見所だ。スパイダーマンは、やっぱり愛すべき“ご近所のヒーロー”だ。まだ表情に幼さが残る若手俳優トム・ホランドのフレッシュな魅力が、スパイダーマンに新鮮な息吹を吹き込んでくれた。次回作にも大いに期待!である。
【80点】
(原題「SPIDER-MAN:HOMECOMING」)
(アメリカ/ジョン・ワッツ監督/トム・ホランド、マイケル・キートン、ジョン・ファヴロー、他)
(青春映画度:★★★★☆)
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ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣

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ウクライナで生まれ、史上最年少の19歳で名門・英国ロイヤル・バレエ団プリンシパルとなったセルゲイ・ポルーニン。だが2年後の2012年、人気絶頂にもかかわらずバレエ団を電撃退団し国内外のメディアやファンを騒然とさせる。様々な憶測が飛び交う中、ポルーニンは、ミュージックビデオ出演で再び脚光を浴びることになり、さらなる注目を集めていく。映画は、才能を持て余す異端のダンサーの素顔にせまっていく…。

ウクライナ出身で、ヌレエフの再来と謳われる天才バレエダンサー、セルゲイ・ポルーニンの素顔に迫るドキュメンタリー「ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣」。近年、バレエ団やダンサーを描くドキュメンタリー映画は人気だが、本作で取り扱うセルゲイ・ポルーニンは、かなり異色のダンサーだ。伝統を重んじるノーブルな印象があるバレエ界で、タトゥーだらけの肉体は、大胆すぎる。(というか、バレエダンサーでもタトゥーは許されるんだ…と初めて知った)さらに端正なルックスと鮮やかに対比するパワフルなそのダンス・パフォーマンスは、この人が野獣と形容されるのも納得できる。

本人や友人、関係者のインタビューから、浮かび上がるのは、貧しい幼少期、両親の離婚で苦しんだ生い立ちだ。とりわけ、自分のせいで家族が壊れたという罪悪感に苛まれる姿が痛々しい。だが踊ることでしか彼は解放されないという哀しい現実も。「夢は全て叶えた。今は普通の人生が欲しい」とは本人の言葉だが、セルゲイ・ポルーニンは“普通”というにはあまりにも圧倒的な才能があり、それは容易に封印できるものではないのだ。写真家で、映画「ライズ」の監督でもあるデヴィッド・ラシャペルが撮ったホージアのヒット曲「Take Me To Church」のミュージックビデオが有名で、そのパフォーマンスは一度見たら忘れられないものだ。この人はバレエダンサーという枠を超えたアーティストなのである。だがこのMVで、踊り終わった後のポルーニンの、苦悩と恍惚の入り混じったような表情がずっと気になっていた。ポルーニンが渇望していたのは家族の再生と愛だったのだ。バレエに興味がない人が見ても、思わず引き込まれる魅力を持っている映画である。
【60点】
(原題「DANCER」)
(英・米/スティーヴン・カンター監督/セルゲイ・ポルーニン、イーゴリ・ゼレンスキー、モニカ・メイソン、他)
(孤独度:★★★★☆)
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ヒトラーへの285枚の葉書



1940年6月、戦勝ムードに沸くベルリンで慎ましく暮らす労働者階級の夫婦、オットーとアンナのもとに、最愛の一人息子ハンスの戦死の報が届く。夫婦は悲しみのどん底に沈むが、ある日、オットーはペンを取り「総統は私の息子を殺した。あなたの息子も殺されるだろう」とヒトラーへの怒りのメッセージをポストカードに記し、それをそっと街中に置いた。街のあちこちにポストカードを置くささやかな活動は、二人の魂を少しずつ解放させていくが、やがて、ゲシュタポの捜査が二人に迫る…。

ペンと葉書でナチス政権に抗った平凡な夫婦の実話を描く「ヒトラーへの285枚の葉書」。原作はドイツ人作家ハンス・ファラダの小説「ベルリンに一人死す」だ。最愛の一人息子の戦死をきっかけに反ナチの運動を始めた夫婦の運動は、あまりにもささやかなものだ。だがオットーは、筆跡を変え、指紋も残らないようにするなど、かなり周到で、抗議文を書いて街に置く、地味だが危険な行為を長期に渡って続けていく。この間、夫妻が住む団地内での密告騒ぎや、夫妻を追い詰める捜査官の警部の心の揺れ、ナチス高官の理不尽な暴挙などが描かれる。やがて、思いがけない出来事から事態が急変していく。一種のサスペンスともいえる展開だが、物語の語り口はあくまでも淡々としたものだ。

監督のヴァンサン・ペレーズは、「インドシナ」や「王妃マルゴ」などに出演した俳優としても有名だ。スイス出身で、母はドイツ人。叔父がガス室で亡くなるなど過酷な体験をした親戚を多く持つという。本作は監督3作目だが、エマ・トンプソン、ブレンダン・グリーソンといった名優の渋い演技で、小市民の精一杯の正義を、静かに描き出した。ポストカードにヒトラーへの抗議文を書いて街に置くというのは、ネットやSNSを使いこなす現代から見れば、あまりに微弱だし、夫婦のそれは、志の高い抵抗運動というよりも、悲しみや不満の発露に近い。ダニエル・ブリュール演じる捜査官の最後の行動にも、少々疑問が残る。それでも、平凡な労働者階級の夫婦が、見て見ぬふりや、権力に迎合することを拒み、人間の尊厳を守ろうとする姿には心を打たれた。日本での原爆体験同様、ナチスに関わる歴史を知る人々の高齢化が進む今、一般市民の勇気ある行動を語り継ぐ意味でも、意義深い作品だ。
【65点】
(原題「JEDER STIRBT FUR SICH ALLEIN/ALONE IN BERLIN」)
(独・仏・英/ヴァンサン・ペレーズ監督/エマ・トンプソン、ブレンダン・グリーソン、ダニエル・ブリュール、他)
(勇気度:★★★★☆)
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スターシップ9



公害汚染によって地球が死にゆく近未来。エレナは代わりの星をみつけるため恒星間飛行の旅に出るが、一緒に旅立った両親は既におらず、たった一人で旅を続けていた。ある日、スペースシップが故障し、救援信号を送ると、その呼びかけに応じてエンジニアのアレックスがやってくる。二人は一目で恋に落ちるが、エレナはこの飛行が人類の未来を賭けた高度な実験であることを知らなかった…。

滅びゆく地球の代わりの惑星を探すヒロインと彼女が出会った青年の運命を描く異色のSF「スターシップ9」。少し不思議なテイストの作品が多いスペイン映画は、近年ではホラーやダークファンタジーなどの作品群で注目されている。スペイン発のSFというのは日本で目にする機会は非常に少ないが、本作には派手なアクションや奇抜なクリーチャーなどは登場しない。ヒロインの心の旅路を描く内容は、SFよりラブストーリーのテイストが色濃い。8割をコロンビアで撮影しているというのもユニークで、ネットフリックスの人気ドラマ「ナルコス」の制作チームが手掛けている。

出会った瞬間に一目で惹かれあったエレナとアレックスは運命の恋なのだが、エレナの飛行には謎めいた大きな仕掛けがある。宇宙空間でたった一人という設定は過去に何度か映画で描かれたが、女性という点は新鮮だ。ほぼ一人ぼっちで生きてきたエレナが、運命の人とはいえ、初めてリアルに出会う他者や新しい環境にあっさりなじむ様には苦笑してしまうし、ハリウッドのSFを見慣れた目には、本作のビジュアルはあまりにチープ。それでも人類の未来を、変化球ともいえる方法で手繰り寄せるラストはなかなか興味深い。
【50点】
(原題「ORBITA9」)
(スペイン・コロンビア/アテム・クライチェ監督/クララ・ラゴ、アレックス・ゴンザレス、ベレン・エルダ、他)
(ラブストーリー度:★★★★☆)
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夜明けの祈り

INNOCENTS
1945年12月のポーランド。若く聡明なフランス人女医マチルドは、負傷した兵士たちを治療し故国へ帰すため、赤十字の施設で医療活動を行っていた。ある日、マチルドは、悲痛な面持ちの見知らぬ修道女から助けを求められ、遠く離れた修道院へと向かう。そこでマチルドが目にしたのは、ソ連兵に凌辱され身籠った7人の修道女たちの姿だった。信仰と現実の狭間で苦しむ修道女たちを救うため、マチルドは、激務の合間を縫って修道院に通い、孤立し苦悩する修道女たちに寄り添うと心に決める…。

ソ連兵に暴行され身籠った修道女たちを救おうと、仏人女医が苦難に立ち向かう姿を描く人間ドラマ「夜明けの祈り」。第二次世界大戦末期にポーランドの修道院で実際に起こった衝撃的な事件がベースになっている。モデルとなったのは実在の医師、マドレーヌ・ポーリアックだ。修道女たちが、専門医を呼ぶべきとのマチルドの提案を拒むのは「これもまた神の意志」という悲痛な思いと、このことが世間に知られると修道院は閉鎖された上に、自分たちの恥をさらすことになる現実に怯えているからだ。秘密を知る唯一の存在となったマチルドは、過酷な状況を理解し、彼女たちに寄り添うと心に決める。医者という職業のためか頑固者で合理的、無神論者のようなマチルドが、修道女たちの希望になっていくという展開が興味深い。

見ていてつらいのは、修道女たちは被害者でありながら、強い信仰心ゆえに、これは自分自身の罪だと自らを責めることだ。信仰と妊娠は決して両立しないのに、出産後に我が子を抱いて芽生える母性が、さらなる葛藤を誘うのも、やるせない。立場の違いから起こった悲劇を経て、生まれてきた尊い命のため、また、共に困難を乗り越え固い絆で結ばれた修道女たちの未来のため、マチルドが提案したアイデアは、現実的かつ画期的な救いだ。美しく知的な女医マチルド役のルー・ドゥ・ラージュ、陶器のように白い肌の横顔が印象的なアガタ・ブゼクら、女優たちは皆好演。何より名撮影監督カロリーヌ・シャンプティエの手腕が大きい。シャンプティエが手掛け、同じく信仰をテーマにした「神々と男たち」にも通じる静謐で荘厳なカメラワークに、魅了された。この物語に登場する女性たちは、国籍や宗教の違いを超えて芽生えた固い絆で結ばれている。間違いなく、アンヌ・フォンテーヌ監督の代表作になるであろう秀作だ。
【80点】
(原題「LES INNOCENTES/THE INNOCENTS」)
(仏・ポーランド/アンヌ・フォンテーヌ監督/ルー・ドゥ・ラージュ、アガタ・ブゼク、アガタ・クレシャ、他)
(崇高度:★★★★★)
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ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章

映画「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章」オリジナル・サウンドトラック
海沿いの美しい町、杜王町で暮らす東方仗助(ひがしかたじょうすけ)、通称ジョジョは、見た目はリーゼント姿の不良だが、心優しい高校生。仗助は、警察官の祖父と美人の母と共に穏やかに暮らしていたが、杜王町では奇妙な連続変死事件が起きていた。ある日、仗助の前に現れた空条承太郎から、自分がジョースター家の血を引き、スタンドという超能力を操ること、さらに杜王町と仗助に危険が迫っていることを知らされる。事件が、凶悪な殺人犯アンジェロと、彼を影で操るスタンド保持者の謎の兄弟の犯行であることを知った仗助は、彼らとの戦いに巻き込まれていく…。

スタンドと呼ばれる特殊能力によって家族と町を守ろうと戦う高校生の活躍を描く「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章」。原作は海外でも高く評価されている荒木飛呂彦の大人気コミックだ。80年代から連載がスタートし、現在も続いている大河ドラマだが、本作で描かれるのは日本が舞台の第4部である。仗助のスタンドは、触れただけで壊れたものを修復し、他人のけがを治すことができる、最も優しいスタンド“クレイジー・ダイヤモンド”。仗助の出自や血縁関係、スタンドの意味など、説明部分が多くなってはいるが、とりあえず原作未読の観客にもわかりやすく作られている。仗助のクラスメイトで繊細な康一、凶悪犯アンジェロ、虹村兄弟など、原作でおなじみのキャラクターが登場し、仗助は、警察官として町を守ってきた亡き祖父の意志を継いで、杜王町を守るために立ち上がるというのが大筋だ。

例によって超がつく人気作の実写化に、原作ファンの手厳しい意見が待ち受けるだろうが、キャストの演技は概ね好演で、家族ドラマをしっかりと描いた点が好感が持てる。日本なのにスペインでロケされた、無国籍風の街並も、映画を見始めてしばらくするとすぐに馴染む。一番の問題は、人気キャラがざっくりとカットされている点で、ここにジョジョ・ファンの不満が集まると予想されるが、タイトルに第一章とあること、さらにラストのその後の、意味深なワンシーンを見れば、次回作には、あの人が登場し、この人が活躍していくれると期待が膨らむはずだ。続編がどういう形になるかは分からないし、物語としてはまだ半分程度を見ただけということになり、現時点では評価が難しい。とりあえず、今まで学園の王子様的な役が多かった山崎賢人が、リーゼント姿で感情むき出しにして戦う姿が新鮮で、彼にとっては新境地と言えるだろう。
【60点】
(原題「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章」)
(日本/三池崇史監督/山崎賢人、神木隆之介、小松菜奈、他)
(家族愛度:★★★★☆)
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トランスフォーマー/最後の騎士王

Transformers: The Last Knight (Music from the Motion Picture)
オートボットの指導者オプティマス・プライムが消息を絶ち、人類とトランスフォーマーの全面戦争が避けられなくなった中、人類は地球を救うためにトランスフォーマーの謎を探ることになる。発明家ケイド・イェーガー、オートボットの新リーダーとなったバンブルビー、謎めいた英国の老貴族バートン卿、オックスフォード大学の女教授ヴィヴィアンらが、チームを組むことに。トランスフォーマーの秘密には、神話のアーサー王伝説が鍵であることが判明する。だが全面戦争を目前に彼らの前に立ちふさがったのは、長年共闘してきたオプティマス・プライムだった…。

世界中で大ヒットを記録するSFアクション大作“トランスフォーマー・シリーズ”の最新作「トランスフォーマー/最後の騎士王」。地球滅亡が迫る中、人類とトランスフォーマーが共闘して危機に立ち向かう姿を描く。本作では、歴史の転換期に深くかかわってきたトランスフォーマーの謎の他、トランスフォーマーの故郷であるサイバトロン星の滅亡の危機や、金属生命体の創造主などが登場し、惑星まるごとの存亡がかかる大規模バトルは、今までの侵略戦争は、単なる前哨戦に過ぎなかったのだと思うほどだ。

オプティマス・プライムが敵になるという衝撃的な展開だが、それには深い事情が。詳細は映画を見て確かめてもらうとして、今回のウリは、トランスフォーマーと、アーサー王と円卓の騎士の伝説が密接にかかわっているという、突拍子もない設定だ。主な舞台が英国ということもあって、華麗な英国貴族の館や、ストーンヘンジなども登場し、派手なアクションもどこか優雅である。新キャストでは、名優アンソニー・ホプキンスが貫禄を見せる一方で、タフで負けん気が強い少女イザベラを演じるイザベラ・モナーが、いい味を出していた。物語そのものは、最初から最後まで、クライマックス状態の大騒ぎ。見終わった後は、見事に何も残らないのだが、この潔さこそがトランスフォーマーの持ち味だ。破壊王ことマイケル・ベイ監督らしいド派手なVFXの映像を楽しむためにも、できればIMAXでの鑑賞をお勧めしたい。
【60点】
(原題「TRANSFORMERS: THE LAST KNIGHT」)
(アメリカ/マイケル・ベイ監督/マーク・ウォールバーグ、ローラ・ハドック、アンソニー・ホプキンス、他)
(全面戦争度:★★★★★)
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ローサは密告された



フィリピン、マニラのスラム街。家族経営の小さなコンビニを夫婦で営みながら、4人の子供を育てるローサは、貧しい生活を支えるため、少量の麻薬を売って生計を立てていた。だがある日、突然警察の男たちがやってきて夫婦は逮捕されてしまう。何者かがローサを警察に売ったのだ。警察署では巡査や巡査部長らが「20万で手を打ってやる。金がないなら、麻薬の売人を売れ」と迫る。ローサは売人のジョマールの名前を挙げ彼は逮捕されるが、警察はジョマールにも金を要求。彼が払えない分の5万をローサ夫婦に支払えと迫った。ローサの子どもたちは、腐敗した警察から両親を取り戻すため、金策に走り回るが…。

フィリピンを蝕む麻薬と堕落した警察の実態、その中で懸命に生きる家族の絆を描く人間ドラマ「ローサは密告された」。国際的に評価が高いフィリピンの実力派ブリランテ・メンドーサ監督による本作は、まるでドキュメンタリーのようにリアルで生々しい。マニラのスラム街で生きるローサは、働き者でご近所でも人気者の肝っ玉母さんのような女性だ。小さなコンビニでは、雑貨や食料品と同じ感覚で麻薬が売られている。あまりにも生活に浸透した麻薬汚染問題は、フィリピンが抱える深刻な病巣だが、スラムで生きる貧しい人々はこの商売で生きているのだ。問題はかなり根深い。

根深いのは、警察の腐敗ぶりも同じだ。さまざまな国の警察組織の汚職や腐敗は繰り返し映画で描かれてきたが、本作の堕落ぶり、モラルのなさは群を抜く。誰かに密告させて逮捕した人間に、法外な口止め料(見逃し金)を払わせ、別の誰かの名前を聞き出し、また逮捕、金を要求。ローサもまた密告されたわけだが、それは繰り返される“おなじみの出来事”に過ぎないのだ。自分や家族を守るためには、誰かを密告するしかない。この負のスパイラルの元凶が警察組織なのだから、もはやため息さえ出ない。降り続く雨の中、両親のために金策に走る子どもたちが金をかき集めるシークエンスでは、マニラの貧困層の、麻薬とはまた別の素顔が浮かび上がる。本作が優れているのは、社会派のテーマを内包しながらも、家族の絆を描くドラマが秀逸で胸を打つからだ。何が何でも家族を守ると決めたローサの生命力と家族愛は、堕落しきった警察の姿と対をなして、鮮烈に記憶に残る。ローサを演じたジャクリン・ホセは存在感が圧倒的で、本作でカンヌ国際映画祭主演女優賞を受賞。ラスト、瞳にうっすらと涙をにじませるローサだが、それでもやっぱりお腹はすくし、明日もまた生きていかねばならないのだ。厳しい現実の中でもタフなローサに、一筋の希望の光が見えるようだった。
【80点】
(原題「MA'ROSA/Palit Ulo」)
(フィリピン/ブリランテ・メンドーサ監督/ジャクリン・ホセ、フリオ・ディアス、マリア・イサベル・ロペス、他)
(リアリティ度:★★★★★)
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プロフィール
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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