映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週末の公開映画から オススメの1本! ◎
英・仏合作映画「パディントン2」

映画

5パーセントの奇跡 嘘から始まる素敵な人生

Mein Blind Date mit dem Leben: Als Blinder unter Sehenden. Eine wahre Geschichte
ドイツ人の母とスリランカ人の父の間に生まれたサリヤ、通称サリーは、学校を卒業後、立派なホテルマンになることを夢見ていた。だが突然、先天性の視力を失う病気に襲われる。手術後に何とか保てたのは、健常者の5パーセントほどの視力だった。周囲からは障害者の学校への転入を勧められるが、夢をあきらめたくないサリーは、何とか学校を卒業。視覚に障害がある事実を隠してホテルに願書を提出したサリーは、ミュンヘンの5つ星一流ホテルから研修生としてチャンスを得る。母、姉、友人のマックスら、周囲に助けられながら、サリーの、ありえない挑戦と想像を超えた困難の日々が始まった…。

視力の95パーセントを失った青年が、一流ホテルで働く夢を実現させるために大芝居を打って奮闘する姿を描く「5パーセントの奇跡 嘘から始まる素敵な人生」。いくらなんでもありえない!と思ってしまうが、なんとこのお話は実話だ。モデルになったのはベーチェット病を患ったサリヤ・カハヴァッテ。絶望的に困難な状況でも、失わなかった超ポジティブで圧倒的な意志の強さに、ただただ驚いてしまう。見えてないのに見えるふりをするのは確かに“嘘”かもしれないが、サリーのそれは、夢をあきらめないための“武器”になった。

見えるもののほとんどがぼやけた光の集合体という状況で、いったいどうやってホテルマンのスキルを磨くのか? 接客やテーブルセッティング、厨房や客室業務など、山ほどの疑問に、物語は驚きの方法で答えてくれる。上手くいきすぎ? もちろんそれはそうなのだが、懸命に頑張るサリーには強力な助っ人たちがついていた。シリアスな描写ばかりではなく、見えないからこそのエピソードは、時にはクスリと笑える楽しいものも。サリーがストレスのあまりドラッグに手を出すことや、サリーの父の失踪など、中途半端なエピソードが少々気になるが、何しろこの奇跡的な実話は、挫折しながらも決して夢をあきめなかった青年の挑戦を通して、幸せの意味を教えてくれる奮闘記。結果を知っているのに、最終試験の場面はやっぱりドキドキし、ラストのサリーの選択には拍手を送りたくなる。サリーの障害は、私たちの誰もが大なり小なり持つ欠点の象徴だ。ちょっとくらいの困難でヘコんでいる場合じゃない!人懐こい笑顔が魅力の主演のコスティア・ウルマンの好演が心に残る。
【60点】
(原題「MEIN BLIND DATE MIT DEM LEBEN/MY BLIND DATE WITH LIFE」)
(ドイツ/マルク・ローテムント監督/コスティア・ウルマン、ヤコブ・マッチェンツ、アンナ・マリア・ミューエ、他)
(ハートフル度:★★★★☆)


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西遊記 ヒーロー・イズ・バック

Monkey King: Hero Is Back/ [DVD] [Import]
伝説のヒーロー・孫悟空が、お釈迦様によって五行山に封じ込められて500年。長安の町に妖怪がたびたび現れ、子どもをさらう事件が多発する。修行僧の少年リュウアーは、ある日、妖怪に襲われた女の子・おチビちゃんを助けようとして五行山に迷いこみ、偶然にも孫悟空を解放してしまう。伝説のヒーローを目の前にして大興奮のリュウアーだったが、悟空は本来のチカラを封印され、すっかり自信を失っていた。やがて悟空は、リュウアー、猪八戒と共に、なりゆきでおチビちゃんを助けるが、妖怪の背後には、混沌という悪者がいて、幼い子どもをいけにえにして強大な力を手に入れようと目論んでいた…。

日本でも人気の西遊記の、これまた人気キャラの孫悟空の物語を大胆にアレンジしたアドベンチャー・アニメーション「西遊記 ヒーロー・イズ・バック」。自惚れ屋で暴れん坊の孫悟空が、自分のためでなく、他の誰かを守るために戦ううちに、本物のヒーローへと変わっていく。過去に何度も映画化された西遊記だが、本作では有名キャラを削り、換骨奪胎しているのが大胆だ。それでも物語は、ヒーロー映画としてテッパンの展開なので、安心して見ていられる。何より、この中国映画のアニメーションは、その独特の色彩や動き、キャラクターの造形や脚本など、意外なほど見所が多い。スピード感あふれるカンフー・アクションをふんだんに取り入れながら、中国武術や京劇、雑技などの伝統要素をも取り入れた意欲作なのだ。

新たに生まれ変わった西遊記の孫悟空とはいえ、長く赤い布を首に巻き裾をたなびかせた悟空のりりしいビジュアルはきっちりと再現。悟空が赤と金色をベースにした衣装で“正装”して戦う場面は、思わず見惚れてしまう。敵である混沌さえもその動きはなめらかで美しい。驚異的な力を秘めながら自信を失った孫悟空が真のヒーローとして覚醒するこの物語は、成長がテーマだ。幼く無邪気なリュウアーは後に三蔵法師になるに違いない。中国出身のティエン・シャオポン監督は、日本、ハリウッド、そしてアジアのさまざまな国のアニメーションのエッセンスを貪欲に吸収しつつ、中国、ひいては東洋ならではの美学を持つアニメーションを目指したそう。中国アニメは技術的にまだ発展途上だが、これからが楽しみと思える1本だ。
【70点】
(原題「MONKEY KING: HERO IS BACK」)
(中国/ティエン・シャオポン監督/日本語吹替制作監修:宮崎吾朗)
(オリエンタル度:★★★★★)


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目撃者 闇の中の瞳



2007年。新聞社の実習生シャオチーは、ある嵐の夜、台北郊外の山道で高級車同士の当て逃げ事故を目撃する。シャオチーはとっさに犯罪現場とその場から逃走した車の写真を撮るが、その写真がボヤけているという理由で記事にはならず、犯人もつかまらなかった。それから9年後、敏腕記者になったシャオチーは、買ったばかりの中古の高級車が、9年前に目撃した事故車だったと知り驚く。シャオチーは先輩記者マギーの協力を得て、事故の真相を調べ始めるが、それ以降、シャオチーの周囲では不可解な出来事が起こり始める…。

ある交通事故にまつわる謎とその先に待つ恐ろしい真実を描く台湾発のサスペンス・スリラー「目撃者 闇の中の瞳」。主人公シャオチーが記者魂で粘り強く事件を調べるのだが、浮上する謎の数がハンパなく多い。現場から逃走した謎の加害者、事故直後に失踪した被害者女性、自分が撮った証拠写真の一部が削除された痕跡、逃走車の所有者として浮かび上がった意外な人物、すべての謎の周囲にうごめく不気味な影。さらに事故と同じ日に発生した身代金目的の幼女誘拐事件も何やら関わりがある様子。これだけ謎や伏線があるとその回収に苦労しそうだが、ことごとく予想外の方向から真相が浮き彫りになっていくので、一瞬も気が抜けない。シャオチーが簡単に重要ポイントにたどりつくなど、時にはご都合主義もあるのだが、尋常ならざる緊張感の持続で突っ走ってしまう。

台湾映画といえば、歴史を通じて台湾人のアイデンティティーを追求した巨匠ホウ・シャオシェンや、みずみずしい青春映画が得意のエドワード・ヤン監督の作品群が思い浮かぶ。サスペンスやミステリーは時々登場するが、その印象は薄かった気がする。だが、本作はそんな思い込みをあっさりと覆してくれた。事故車にまつわる謎で、これはもしやホラー映画?と思わせておいて、すぐに物語は陰謀めいたミステリーへと変わる。そこで真犯人の解明と華麗な謎解きならば普通なのだが、本作はそこからの“飛躍”がすごい。そこには、想像を超える恐ろしい闇が広がり、人間が持つどす黒い欲望が露わになる。現在進行形の謎解きと回想シーンが巧妙に入り乱れるストーリー展開、手持ちカメラのリアルな映像が、観客をいやがおうでも“目撃者”にするのだ。一筋縄ではいかないエンタテインメントを作ったのは、これが長編第2作となるチェン・ウェイハオ監督。この人の名前は憶えておこう。
【75点】
(原題「目撃者/WHO KILLED COCK ROBIN」)
(台湾/チェン・ウェイハオ監督/カイザー・チュアン、ティファニー・シュー(シュー・ウェイニン)、アリス・クー、他)
(悪夢的度:★★★★★)


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嘘八百

嘘八百
大阪・堺。空振りばかりの古物商・小池則夫が娘を連れてお宝を探しにやってくる。そこで出会ったのは、落ちぶれた陶芸家の野田佐輔。二人はある大御所鑑定士と古美術店主にいっぱい食わされた経緯があり、“幻の利休の茶器”を仕立て上げ、仕返しと一攫千金を目論むことに。やがてそれは、それぞれの家族、仲間、大御所鑑定士だけでなく、文化庁までも巻き込む大騒動に発展していく…。

幻の茶器をめぐって、負け組の男たちが一世一代の詐欺を目論むコメディー「嘘八百」。騙し騙され、そして大掛かりなコン・ゲームへ。この流れは、古くは「スティング」、最近では「ローガン・ラッキー」などがあり、古今東西を問わず人気のジャンルだ。騙したり、詐欺を働くこと自体はもちろん良くない。だが主人公たちが基本的に善人で、腹黒い大物へのリベンジというモチベーションがあれが、観客はいつしか彼らを応援してしまう。大物狙いばかりで空振り続きのしがない古物商・則夫と、腕はいいのに贋作者に成り下がっていた陶芸家の佐輔。千利休を生んだ茶の湯の聖地・堺での、キツネとタヌキの騙し合いは、実力派の中井貴一と佐々木蔵之介、脇を固めるクセモノ役者たちの妙演でテンポ良く進み、軽妙な笑いとペーソスで飽きさせない。

うだつのあがらない中年男の悲哀と頑張りを軸に、さりげなく利休愛を盛り込むかと思えば、脇キャラの背景もしっかりと伝える。細部まで気を配ったこの物語が、オリジナル・ストーリーであることを何より高く評価したい。則夫と佐輔が、本物よりも本物らしい偽物作りに情熱を傾け、思いもよらない結果の果てに、自分たちが行くべき“ホンモノ”の道を見出すラストには、思わずにっこり。出演俳優の平均年齢高めのシニア向けムービー?いやいや、利休が愛したわび茶の味わいにも似た、大人のための渋い骨董コメディーだ。
【70点】
(原題「嘘八百」)
(日本/武正晴監督/中井貴一、佐々木蔵之介、近藤正臣 、他)
(軽妙洒脱度:★★★★☆)


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キングスマン:ゴールデン・サークル

Kingsman: the Golden Circle
ロンドンの高級スーツ店を隠れみのにしたスパイ機関“キングスマン”の拠点が、世界の麻薬市場を制覇する謎の敵“ゴールデン・サークル”の攻撃により壊滅してしまう。生き残ったのは、2年前にスカウトされて腕を磨いた若手スパイのエグジーと、教官でありメカ担当のマーリンだけだった。二人は敵を倒すため、アメリカにある同盟組織の“ステイツマン”の協力を求めてケンタッキーへ向かう。コテコテのアメリカ文化にとまどいつつ、エグジーらはステイツマンのメンバーたちと協力しながらゴールデン・サークルの陰謀に立ち向かうが…。

国家に所属しない粋なスパイ組織キングスマンの活躍を描いて大ヒットを記録したスパイ・アクションの続編「キングスマン:ゴールデン・サークル」。演技派コリン・ファースがアクションができるとは!という嬉しい驚きを提供してくれた前作が予想以上のヒットとなり、調子に乗ってしまった(?)この続編は、荒唐無稽な演出もキレ味も、大胆にスケールアップしている。アメリカのステイツマンにビックスターを揃えながら、無駄使いに等しい軽い扱いをするのは、第3作を見越してのことだろうか。その分、光っているのは50年代カルチャーに傾倒する麻薬王ポピーを演じるジュリアン・ムーアの怪演だ。エレガントなサイコパスという矛盾がブラックな笑いを誘ってくれる。

まるで古き良き時代の「007」シリーズを見ているかのような破天荒な展開ながら、カーチェイスや雪山でのハードなアクションなど、スペクタクルシーンの迫力には目を見張る。指名手配で母国に戻れないポピーがカンボジアのジャングルの奥地に作ったカラフルな50年代風のポピー・ランド、そこに囚われている大スター、エルトン・ジョン(本人役)が、せりふはほぼファックのみなのに、意外に大活躍するなど、狂気に近い遊び心がいっぱいで、前作で死んだはずのハリーのビックリの扱いにも驚かなくなる。しかし今回一番グッときたのは、マーク・ストロング演じるマーリンが歌う「カントリー・ロード」だ。最近なぜか映画の中でよく使われるこのカントリー・ソングのテーマは、故郷への愛。命懸けの戦いの中で腹の底から歌いあげる名曲の切なさに、思わず涙ぐんでしまった。型破りでハチャメチャな中に、愛する場所から遠く離れた人々のノスタルジーを織り込んだ点がニクい。なかなかスミに置けない続編だ。
【70点】
(原題「KINGSMAN: THE GOLDEN CIRCLE」)
(イギリス/マシュー・ヴォーン監督/コリン・ファース、ジュリアン・ムーア、タロン・エガートン、他)
(悪ノリ度:★★★★☆)


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花筐 HANAGATAMI

花 筐 (光文社文庫)
1941年、春。佐賀県唐津に暮らす美しい叔母の元に身を寄せる17歳の俊彦は、美少年の鵜飼、虚無的な吉良、お調子者の阿蘇ら学友と共に“勇気を試す冒険”に熱中している。肺病を患う従妹の美那に恋する一方で、他の女友達とも仲が良く、青春を謳歌していた。しかし彼らの純粋で自由な日常は、次第に戦争の荒波に飲み込まれていく…。

唐津を舞台に太平洋戦争勃発前夜を生きる若者たちの青春群像を描く「花筐 HANAGATAMI」。原作は檀一雄の純文学で、大林宣彦監督が商業映画デビュー作である「HOUSE/ハウス」(1977年)より前に本作の脚本を書いていたというから、念願の映画化ということになる。ガンで余命を宣告されながらも渾身の思いで作り上げた169分の力作は、「この空の花」「野のなななのか」に続く、戦争3部作の最終章。だが、社会派の反戦映画というよりは、昭和カラーが色濃い夢物語のようである。怪奇趣味の幻想ホラー「HOUSE/ハウス」を彷彿とさせる演出が多く見られる本作は、実験的な映像詩のような印象を受けるはずだ。

あえて人工的な特撮や、死や血を意識した鮮烈な色彩は、昭和初期を生きる若者たちの刹那の青春と呼応しているのだろうか。俳優たちの演技も、リアルというより様式美に貫かれていて、観客の好みは分かれそうだ。しかし、どこか受け身の俊彦が叫ぶ「殺されないぞ、戦争なんかに!」や「青春が戦争の消耗品だなんてまっぴらだ」などの台詞を聞けば、まるでセルフオマージュのようなこの幻想絵巻が、実は現代社会をしっかりと照射していることに気付くのだ。「HOUSE/ハウス」で描いた狂乱のブラックユーモアはさすがに封印されているが、その分、豪華な曳山で知られる祭・唐津くんちによって、時代がどれほどきな臭くとも、生きることに執着する人間を肯定するメッセージが焼き付けられている。死を描きながら生をみつめる、まぎれもない“大林ワールド”だ。
【65点】
(原題「花筐 HANAGATAMI」)
(日本/大林宣彦監督/窪塚俊介、満島真之介、矢作穂香、他)
(原点回帰度:★★★★☆)
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わたしは、幸福(フェリシテ)

わたしは、幸福 サウンドトラック+REMIX (解説付き)
コンゴ民主共和国の首都キンシャサ。“幸福”を意味する名前を持つシングルマザーのフェリシテは、バーで歌いながら息子を育てている。ある日、一人息子サモが交通事故に遭い重傷を負ってしまう。病院に駆けつけると、医者から医療費を前払いしないと手術はできないと言われる。フェリシテは、親戚や友人、以前金を貸した男女、見ず知らずの金持ちのボスにまで訴えて、なりふり構わず金策に奔走する。そんな中、誇り高いフェリシテの中で何かが壊れ始め、やがて絶望から歌うことができなくなる…。

コンゴ民主共和国の首都キンシャサを舞台に一人のシングルマザーが直面する厳しい現実を描く人間ドラマ「わたしは、幸福(フェリシテ)」。セネガル系フランス人アラン・ゴミス監督は、現代アフリカ映画界のエースと呼べる存在で、長編第4作となる本作で、2017年ベルリン映画祭で銀熊賞審査員大賞ほか、多くの賞を受賞している。幸福という名前とは裏腹に、ヒロインのフェリシテは、幸福の本当の意味を知らない。金がすべてという容赦ない現実に立ち向かいながら、生き抜いてきた女性だ。堂々とした体格と強いまなざし、無表情に近い顔つきからはふてぶてしさがにじむ。そんなフェリシテが、困窮と絶望の果てに小さな幸福の意味を見出す物語は、圧倒的な音楽の魅力、パワフルなのに摩訶不思議な語り口で、見るものを虜にする。

汚職や犯罪が蔓延し、混沌としたキンシャサではタフでなくては生きていけない。追い詰められていくフェリシテの前に、厳しい現実のリアルがある一方で、ほとんど唐突に夜の森の闇を彷徨う夢のようなシークエンスが挿入される。この虚と実は、生と死、聖と俗、闘いと諦めなどの対比だろうか。そこに覆いかぶさるように流れるサウンドが圧倒的に魅力がある。フェリシテの歌はもちろん、ワールド・ミュージックの雄、カサイ・オールスターズの音楽のグルーヴ感、地元のアマチュア交響楽団が繰り返し演奏する“フラトレス”(エストニアの作曲家アルヴォ・ペルト作)など、すべてがアフリカの大地を思わせるソウルフルなサウンドだ。アフリカの映画を見る機会は、決して多くはない。だが、自然でも社会派でもない、こんなにも生々しいアフリカをスクリーンで見たのはこれが初めて。分かりやすい映画の型にはまらない、むせかえるようなエネルギーを感じてほしい1本だ。
【75点】
(原題「FELICITE」)
(仏・セネガル・ベルギー・独・レバノン/アラン・ゴミス監督/ヴェロ・ツァンダ・ベヤ、ガエン・クラウディア、パピ・ムパカ、他)
(エネルギッシュ度:★★★★★)
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彼女が目覚めるその日まで



憧れのNYで働く21歳の若手新聞記者スザンナは、公私ともに充実した毎日を送っていた。だが突如、物忘れがひどくなり、仕事でも大失態、精神状態も極度に不安定になる。幻覚、幻聴、不眠、悪態に痙攣など、激しい発作を繰り返すが、病院で検査をしても原因が分からず、スザンナは精神病院に送られそうになる。両親や恋人のスティーブは何かが違うと疑問を持ち、医師に訴え続けるが…。

原因不明の病に苦しんだ女性記者の壮絶な闘病と、彼女を支えた家族や恋人の絆を描く「彼女が目覚めるその日まで」。描かれる病気の名前は、抗NMDA受容体脳炎。急性脳炎の一種だそうだ。ニューヨーク・ポスト紙で働くスザンナ・キャハランがこの原因不明の難病にかかり、実態を解明するまでは、精神病や悪魔憑きだと考えられ、ホラー映画の傑作「エクソシスト」の元ネタになった病気だというから、興味深い題材である。知的で明るかったスザンナが、極端なそうとうつを繰り返し、人間性が崩壊したかのような悪態をついて、周囲を困惑させる様は、まるでドキュメンタリーのようにリアルで痛々しい。

闘病の実態とヒロインを支え続けた家族・恋人の姿を事実に基づいて追っていくので、大事件が起こるわけではないドラマは少々盛り上がりに欠けるのは事実。だが過剰なお涙頂戴や感動の押し売りをしない演出は、むしろ好印象を持った。家族や恋人が、精神病なんかじゃない、何かが違うと信じ続け、あきらめずに闘う信念は、愛ゆえだろう。ミュージシャンの卵で何だか頼りなく見えた恋人のスティーブンが、意外なほどの粘り強さと思いやりでスザンナを支え続けるのが頼もしい。スティーブンのスザンナへの愛情に共感できるため、彼が言う何気ない一言が事態を好転させるのも納得だ。壮絶な闘病の末についに人生を取り戻したスザンナを演じるクロエ・グレース・モレッツが熱演だが、周囲の人々の心情も丁寧に描かれている。何より、日本でも年間に1000人が発症しているというこの抗NMDA受容体脳炎の認知に、本作が貢献したことを評価したい。
【60点】
(原題「BRAIN ON FIRE」)
(カナダ、アイルランド/ジェラルド・バレット監督/クロエ・グレース・モレッツ、トーマス・マン、キャリー=アン・モス、他)
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勝手にふるえてろ

勝手にふるえてろ (文春文庫)
24歳のOLヨシカは、10年もの間、中学時代の同級生で初恋の相手イチに片思い中。ずっと彼氏がいなかったヨシカだが、会社の同期のニに突然告白され、人生初の経験に舞い上がる。だが、正直、ニはまったくタイプではなく、ノリきれない。そんなある日、ボヤ騒ぎを起こしたヨシカは、死ぬ前にもう一度イチに会いたいと、ありえない嘘をついて同窓会を計画。ついに憧れのイチと再会するのだが…。

中学時代から片想い中の同級生と突然告白してきた会社の同期との間で揺れ動きながら暴走するヒロインの恋の行く末を描く異色のラブコメディー「勝手にふるえてろ」。原作は、19歳で芥川賞作家となった綿矢りさの同名小説だ。ヒロインのヨシカは脳内では夢見がちな暴走女子。リアルではひねくれで自分勝手なこじらせ女子。絶滅危惧種をこよなく愛するヨシカが、どうやって現実に目を向け、理想やプライドから自分自身を解放するのかという、成長物語である。

ニはヨシカにとってはまったくタイプではないのだが、それでも確かに存在するのに対し、10年片想い中のイチはいわばヨシカの脳内で理想化された幻のような王子様だ。主な登場人物はこの3人だが、ヨシカの周囲には個性的な人ばかりが集まっていて、彼らを見ているだけでも面白い。物語にはある仕掛けがあって、それが判明する時、ヨシカのこじらせっぷりの根深さが伝わる仕組みだ。ずっと彼氏がいない役には可愛すぎる松岡茉優が、めんどくさいヒロインを大量のモノローグや、時には歌まで交えて熱演。ロックバンド黒猫チェルシーのボーカリストで監督や俳優としても活躍する渡辺大知が、空気が読めず暑苦しいニを好演している。ぶざまでかっこ悪くても、傷ついても傷つけても、それでも一歩踏み出すこと。そこから人生は動き出すのだ。イタい笑いたっぷりのラブストーリーだが、同時に個性的な味わいの人生讃歌と見た。
【60点】
(原題「勝手にふるえてろ」)
(日本/大九明子監督/松岡茉優、渡辺大知、石橋杏奈、他)
(めんどくさい度:★★★★★)
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カンフー・ヨガ

Kung Fu Yoga [Blu-ray] [Import]
約1000年前、唐(中国)と天竺(インド)との間に争乱が起こり、伝説の秘宝が行方不明になった。現代。中国の名高い考古学者にしてカンフーの達人ジャックは、同じく考古学者でヨガの達人であるインド人美女アスミタらとともに、その宝を探す旅に出る。一行は、唯一の手掛かりである古い地図を片手に、宝の行方を追うが、行く手には宝を狙う謎の一味が。やがて長い間歴史に埋もれていた伝説が人々の前に姿を現すが…。

世界的なアクションスター、ジャッキー・チェン主演のアクション大作「カンフー・ヨガ」。この安直なタイトルから、共に長い歴史を持つ中国のカンフーとインドのヨガを合体した、奇妙奇天烈なアクションが登場するのでは…と、ひそかに期待したのだが、カンフーとヨガはそれぞれの立ち位置で静かに自己主張するのみ。物語は、ジャッキー扮する中国の考古学者が、インディ・ジョーンズばりの宝探しを繰り広げるという、平たんな、だが、安心感満載なお話だ。

高級車のカーチェイス、なぜか車に同乗するライオンとの名(迷)コンビぶり、大道芸人とのバトルと、サービス精神はてんこ盛り。とりわけ、水と氷の洞窟でのアクションは、なかなかの迫力だ。登場人物はそろいもそろって美男美女で、中でもインドの超絶美女(ヨガの達人)は、いちいち華麗な衣装で満面の笑みをたたえていて、それだけでスクリーンがむやみに華やぐ。もしやこれがインドの“秘宝”か?!ストーリーのいいかげんさは、この際スルーして、ジャッキーのハイテンションのアクションとサービス精神をたっぷりと楽しむのが正しい鑑賞法だ。そう腹をくくれば、ラストには本作の一番の見所、楽しすぎるダンス・シーンが待っている。ダンスが予想より少ないのはちょっぴり不満だが、マサラ・ムービーらしい色鮮やかな大群舞の中で、ジャッキーがニコニコと笑いながら踊るその姿は、いかにもエンタテインメンである。とことん楽しむ。それがジャッキー映画の唯一のお約束なのだ。
【65点】
(原題「KUNG FU YOGA」)
(中国・インド/スタンリー・トン監督/ジャッキー・チェン、ディシャ・パタニ、アーリフ・リー、他)
(ダンス度:★★★☆☆)
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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