映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「オリエント急行殺人事件」「DESTINY 鎌倉ものがたり」「ルージュの手紙」etc.

東野圭吾

ナミヤ雑貨店の奇蹟

「ナミヤ雑貨店の奇蹟」オリジナル・サウンドトラック
2012年。少年時代を養護施設で過ごした敦也、翔太、幸平の幼馴染3人は、ある理由から悪事を働き、逃げる途中に廃屋のナミヤ雑貨店に身を隠す。そこは、かつて悩み相談を請け負っていて、郵便受けに投げ込まれた手紙に店主が真剣に答えてくれることで知られていた。すでに店は廃屋になっているが、その晩、敦也らは店に32年前に書かれた手紙が届けられたことに気付く。その郵便受けは1980年につながっていたのだ。3人は戸惑いながらも、当時の店主・浪矢雄治に代わって返事を書きはじめる。やがて手紙のやりとりから雑貨店と3人との意外な共通点が見えてくる…。

現在と過去が手紙を通してつながっていく時空を超えたファンタジー「ナミヤ雑貨店の奇蹟」。原作は、人気ミステリー作家・東野圭吾の小説だ。不思議な郵便受けに投函される手紙を通して現在と過去がつながるファンタジーというと、ハリウッドでもリメイクされた韓国映画のラブストーリー「イルマーレ」がすぐに思い浮かぶが、本作は恋愛要素はほとんどなく、複数のエピソードによって過去と現在が次々につながる、人間ドラマだ。ミュージシャン志望の青年、金持ちの愛人になろうとする若い女性らの悩みに答える形で、雑貨店店主と、敦也らを含む、施設の人々の人生が交錯する。やがて、それぞれが手紙に書かれた答えから自分の生き方を導き出した末に、あたたかい奇蹟が訪れる。

キーとなるのは、山下達郎の主題歌「REBORN」。この歌の歌詞が映画のストーリーとメッセージに絶妙にフィットした演出が上手い。大分県豊後高田市でロケした、昭和の香りの街並もノスタルジックだ。虚実がミックスする物語は、無論、ご都合主義も多いのだが、廣木隆一監督の演出は概ね自然体だ。ただ人気アイドルの山田涼介の顔のアップがやたらと多いのは少々気になる。一方で、重要な役を演じる子役の鈴木梨央ちゃんの好演(名演と呼びたい)が光っていた。登場人物は、2012年も1980年も、共に人生の岐路で迷う人々だ。そんな彼らの背中をそっと押すのが店主役の名優・西田敏行。“白い手紙”という最高難易度の相談に店主がくれた答えが、すべての人々の希望に思えた。泣ける話というより、ほっこりする話として楽しんでほしい。
【60点】
(原題「ナミヤ雑貨店の奇蹟」)
(日本/廣木隆一監督/山田涼介、西田敏行、尾野真千子、他)
(泣ける度:★★☆☆☆)
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疾風ロンド

疾風ロンド 特別限定版(初回生産限定) [Blu-ray]
大学の研究施設の違法生物兵器「K-55」が盗まれ、犯人から、全国民を人質に、身代3億円を要求するメールが届く。違法なので警察に届けるわけにもいかず、研究所所長は、中間管理職の研究員・栗林和幸に、秘密裏に奪還を命じる。猶予は4日間。栗林はひそかに兵器を探すがそんな時、犯人が死亡するというまさかの事態が起こる。大惨事を回避するため、隠された生物兵器を見つけねばならない。犯人の遺品とわずかな手がかりから、それが日本最大級の規模のスキー場のどこかに隠されたことを突き止める。スキー初心者の栗林は、パトロール隊員の根津やスノーボード選手の千晶らの協力を得ながら生物兵器を捜しはじめるが、そこには思わぬ事態が待ち受けていた…。

頼りない研究員が、盗まれた違法生物兵器の行方を追って奮闘するサスペンス「疾風ロンド」。原作は大人気作家・東野圭吾が17年ぶりの文庫描き下ろしとして出版した同名小説だ。多くの作品が映画化・ドラマ化されている東野圭吾だが、シリアスな社会派ドラマと、コミカルな娯楽作に分かれる。本作は後者だ。白銀のスキー場を舞台に、中間管理職のサラリーマンの悲哀、息子と分かり合えない父親の切なさ、さらに無駄にテンションが高い雪上アクションと、なかなかバラエティーに富んでいて飽きさせない。サスペンス・コメディーなので、笑いの部分はユルユルなのだが、父と息子のドラマが実は味がある。いつも貧乏くじを引いてしまう頼りないダメな父親の栗林は、男手ひとつで息子を育てているが、サラリーマンの悲しさからついつい保身に走りがち。それもこれも、大事な息子のためなのだが、息子の方は、父が正義のために頑張る姿と、何でも話せる父子の関係を望んでいるのだ。一方で、スキー場の根津と千晶の関係は、恋愛未満のもどかしさだが、雪上ですべりながらスターウォーズばりのバトルを披露する大島優子の思いがけない頑張りが光る。この人にアクションのイメージはなかったが、9歳からスノーボードをやっているそうで、雪上アクションを見事にこなしていた。監督が「サラリーマンNEO 劇場版(笑)」の演出を手掛けた吉田照幸と聞いて、本作の脱力系ギャグに大いに納得。緊張と緩和がほどよいウェルメイドな娯楽作だ。
【60点】
(原題「疾風ロンド」)
(日本/吉田照幸監督/阿部寛、大倉忠義、大島優子、他)
(アクション度:★★★★☆)
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疾風ロンド|映画情報のぴあ映画生活

天空の蜂

天空の蜂 [Blu-ray]
原発をテーマにした社会派クライシス・サスペンス「天空の蜂」。見事に現代社会の問題を射抜いたエンタテインメント。

1995年・夏。最新の設備を搭載した自衛隊用超巨大ヘリ“ビッグB”が、遠隔操作によってハイジャックされる事件が発生する。ヘリは原子力発電所“新陽”の上空で静止しホバリングを開始。“天空の蜂”を名乗る犯人は、全国すべての原発の停止を要求し、従わない場合は大量の爆発物を搭載したヘリを原子炉に墜落させると宣言する。ヘリ設計士・湯原と原子力発電所設計士・三島は、日本が消滅しかねない絶対絶命の危機を回避するべく奔走するが、政府は原発破棄に難色を示す。タイムリミットが迫る中、謎のテロリストとの攻防が始まった…。

原作は人気作家・東野圭吾の傑作小説。1995年刊行の小説だが、東日本大震災とその後の原発事故を経験した日本人にとって、とても20年も前に書かれたとは思えないリアルな恐怖がある。脱原発、原発稼働の脆弱性、政府の思惑と政治的駆け引きなど、かなり難解な内容なのに、比較的すんなりとストーリーを追えるのは、私たちが現実に起こった原発事故を目の当たりにしニュースなどでさんざん専門用語を聞いてきたからだ。何より社会派サスペンスであるこの物語を、エンタテインメントとして仕上げているのがクレバーな点である。あらゆるジャンルを器用にこなす堤幸彦監督の手腕と、江口洋介、本木雅弘、仲間由紀恵、綾野剛といった人気俳優の起用が、映画を身近なものにしてくれた。物語は、ヘリ設計士・湯原の家族愛のドラマをからめつつ、実行犯と思いがけない共犯者、さらに彼らの背景を紐解いていく。原発に携わる人々や巨大ヘリを作る人間の側からだけのドラマで、現実の国民の混乱はほとんど登場しない。政治的暗部の描き方もやや浅い。それでも、緊迫感あふれるストーリーから一瞬も目が離せなかった。原発の是非に答をだすよりも、あくまでも問題提起という立ち位置に徹したことが、この社会派エンタメ映画を意義あるものにしている。
【80点】
(原題「天空の蜂」)
(日本/堤幸彦監督/江口洋介、本木雅弘、仲間由紀恵、他)
(緊張感度:★★★★☆)
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天空の蜂@ぴあ映画生活

さまよう刃

さまよう刃 Blu-ray
愛する娘を殺された父親の復讐劇「さまよう刃」。バイオレンス描写が激しいのは、さすがは韓国映画。

サンヒョンは妻亡き後、男手ひとつで娘のスジンを育ててきた。残業ばかりの父親に不満顔のスジンは、ある朝、朝食も食べずに登校する。その夜、サンヒョンが雨の中帰宅するとスジンの姿はなく、翌日、警察よりスジンが殺害されたとの連絡が入る。廃屋で少年グループに薬物を投与され暴行されたあげく殺されたという知らせに茫然とするサンヒョク。匿名の情報により犯人の一人の居場所をつきとめたサンヒョンは、衝動的にその少年を殴り殺す。一方、刑事のオッグァンは、サンヒョンに同情しながらも殺人犯として彼を追うのだが…。

原作は東野圭吾の同名ベストセラー小説で、日本でも寺尾聰主演で映画化された問題作だ。罪の意識さえない少年グループ、怒りと絶望に苛まされる父親、法律と感情の間で揺れる刑事と、さまざまな立場の人間が登場し、父親の壮絶な復讐劇が繰り広げられる。愛する娘が凌辱され命を奪われる映像を見た父親のショックは計り知れないが、少年をなぐり殺す大人という構図もまたショッキングなものだ。一方で、少年たちの罪の意識のなさや彼らの親の身勝手な言い分などには、怒りが湧き上がるし、正義のあり方や遺族の心情と法律とのかい離という問題は、日本も韓国も、何も解決されていない。韓国映画特有の苛烈なバイオレンス描写が、これらの矛盾をより強くあぶりだしている。特に事件を担当する刑事オッグァンの立場はやるせない。心の中では少年犯罪が許せず「犯罪に大人も子供もない」と言いきるオッグァンは、それでも法律で守られる未成年を保護し、絶望の果てにいる父親サンヒョンを逮捕せねばならないのだ。刑事と父親、さらに犯人が顔をあわせるクライマックスの結末は明かせないが、刑事がとる、ある秘密の行動に、共感してしまう観客も多いだろう。日本映画が哀しみを全面に出した作りだとすれば、韓国映画でより強く浮かび上がるのは怒りの感情だ。特有の情緒感情である“恨(ハン)”を持つ韓国映画の方が、この物語を語るのにふさわしいのかもしれない。
【65点】
(原題「Roving Edge」)
(韓国/イ・ジョンホ監督/チョン・ジェヨン、イ・ソンミン、ソ・ジュニョン、他)
(バイオレンス度:★★★★☆)
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さまよう刃@ぴあ映画生活

真夏の方程式

真夏の方程式 Blu-rayスペシャル・エディション
「ガリレオ」シリーズ劇場版第2弾「真夏の方程式」。謎解きミステリーよりも人間ドラマの比重が高い。

美しい海をたたえる玻璃ヶ浦。そこで行われた海底鉱物資源の開発計画の説明会に招かれた物理学者の湯川学は、“緑岩荘“という旅館に滞在する。川畑夫妻が経営するその旅館で、列車の中で出会った、夫妻の甥の少年・恭平と再会。恭平は湯川に興味津々だ。一方、旅館の一人娘の成実は開発計画の反対運動にのめりこんでいた。翌朝、緑岩荘に宿泊していた元刑事の塚原の遺体が岩場で発見される。こんな場所で死ぬはずはないと疑問を持つ恭平。秘密を抱える川畑夫妻。やがて塚原と家族の思わぬ因縁、そして一家の秘密が解き明かされていく…。

原作はベストセラー作家、東野圭吾の同名大ヒット小説。今回は、クールなガリレオ・湯川が少年とともにひと夏を過ごす。美しい海とは対照的に、描かれる事件の背景は暗く悲しいものだ。この対比の構図が象徴するように、今回の事件は、緻密な謎解きの妙というより、互いを愛するあまり秘密を胸に抱いて生きる家族と、そうとは知らずに事件に関わってしまう無垢な少年の人間ドラマの趣が強い。子供嫌いなはずの湯川は、なぜか恭平とはウマが合い、行動をともにするが、そこで湯川が科学の面白さと有益さを教えていく図は、擬似親子のようでほほえましい。だがそれは結果として、恭平少年に科学の恐ろしさをも学ばせることになるのだ。本作では、開発か環境保護かで揺れる現実社会を投影した設定が盛り込まれていて興味深いが、そこで住民、とりわけ環境保護活動に不自然なほどのめりこんでいる旅館の娘の成実に、科学技術と自然がどう共存してきたかを解き「すべてを知った上で結論を出せ」と諭す。理論派の湯川らしい持論だが、これが、最終的に、殺人事件の謎を解いた後の人々への問いかけに繋がっていくのが見事だ。前作に引き続き、福山雅治がクールなたたずまいで主人公を好演。夏休み、海、花火、少年。夏を彩るアイテムが散りばめられ、ほろ苦く切ない余韻を残す物語になった。
【65点】
(原題「真夏の方程式」)
(日本/西谷弘監督/福山雅治、吉高由里子、北村一輝、他)
(切なさ度:★★★★☆)
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真夏の方程式@ぴあ映画生活

プラチナデータ

プラチナデータ Blu-ray プラチナ・エディション
DNAデータによる管理社会で起きた殺人事件の謎を追う「プラチナデータ」。所詮、人間をデータ化することなど不可能なのかもしれない。

極秘裏に集められた全日本国民のDNAデータ、通称“プラチナデータ”。警察庁の特殊解析研究所に所属する、天才科学者・神楽龍平は、最先端のDNA捜査によって難事件を解決してきた。だが、DNA捜査の重要関係者が殺される連続殺人事件で、DNA捜査システムが導き出した犯人は、なんと、神楽自身だった。まったく身に覚えのない犯罪によって、突然追う者から追われる身に。辣腕刑事・浅間は、神楽に隠されたある秘密を知り、神楽自身は、逃亡の果てに、プラチナデータにまつわる驚愕の事実を知ることになる…。

原作は東野圭吾のミステリーで、映画化を前提に書かれた小説である。物語の舞台は、究極の個人情報であるDNAデータが万に一つの間違いもないという前提で、犯罪捜査利用のため法律化されようとしている近未来に日本だ。天才科学者の神楽が、DNAさえあれば人の顔など見なくても犯罪は解決できると信じるデジタル人間であるのに対し、彼を追う無骨な刑事の浅間は、その考えを疑い、自分自身の足で事件を捜査するアナログ人間だ。この、正反対の2人が、最初は反発しながらも、神楽自身が容疑者になってしまった事件発生後は、遠隔操作のような設定で協力しあっていくプロセスは面白い。実は神楽は二重人格者。あえてネタバレをするのは、理由がある。神楽が二重人格であること以上の“秘密”が、その先に幾重にも用意されているからなのだ。そもそも一人の人間の中に、相反する要素があることは何ら不思議はない。だが数値重視の科学は、そんな不確定要素を許さず、そのことが予想外の展開を生み、本作のテーマとつながっていく仕掛けだ。プラチナデータに隠された驚愕の事実は、現代社会では十分に有り得ることで、背筋がゾッとする。もっとも神楽を見守ってきた精神科医の思考や行動は、少々とっぴ過ぎる気がしないでもないが。アイドルでありながら、確かな演技力を持つ二宮和也が二重人格の一人二役という難役を演じるが、表情やしぐさなど、わざとらしさはほとんどなく、感心した。いわゆる巻き込まれ型サスペンスのスタイルを取る物語だが、人間愛も含むラブストーリーとして見ると、意外にも楽しめる。
【60点】
(原題「プラチナデータ」)
(日本/大友啓史監督/二宮和也、豊川悦司、鈴木保奈美、他)
(疾走感度:★★★★☆)
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プラチナデータ@ぴあ映画生活

麒麟の翼〜劇場版・新参者〜

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東野圭吾のミステリー小説“加賀恭一郎シリーズ”の映画化「麒麟の翼〜劇場版・新参者〜」。ダイイングメッセージは父からの愛だった。

東京・日本橋で男性が殺害される。被害者・青柳武明はナイフで胸を刺された状態で8分間も歩き、日本橋の翼のある麒麟(きりん)の像の下で、息絶えた。一方、容疑者の青年・八島冬樹は、現場から逃亡する際、車に轢かれて意識不明になってしまう。捜査に当たる日本橋署の切れ者刑事・加賀恭一郎は、事件を調べるうちに、関係者それぞれの家族や恋人、知られざる一面に近付いていく…。

「事件によって心が傷つけられた人がいるなら、その人だって被害者だ。そういう被害者を救う手立てを探し出すのも、刑事の役目です」。東野圭吾の作品群の中でも人気シリーズの主人公・加賀恭一郎が、なぜ多くのファンから愛されているのかが、この名セリフで瞬時に分かる。彼は単に事件を解決するだけでなく、関係者それぞれの思いに深く関わっていく。今回の事件では、いじめ、派遣切り、恋人の思いや親子の絆などが描かれる。ミステリーなのでストーリーを詳しくは明かせないのだが、物語には、麒麟の像の由来や、七福神など、魅力的で謎めいたアイテムが散りばめられていて、なかなか楽しい。だが、“泣ける”と評判のその謎には、実は疑問を感じる。なぜなら被害者が伝えようとしたメッセージは、彼が“生きているうちに”直接伝えるべきものだからだ。映画では“間違った教育”が重要な要素となるので、二重の意味で興味深い点ではある。容疑者・冬樹の恋人・香織のキャラクター造形にも首をひねる。都会で肩を寄せ合って生きる恋人同士が直面する現実は、なるほどやるせないが、冬樹を信じる強い言葉があるかと思えば、直後にはたちまち疑心暗鬼に。事件の動機と解明は、彼女とは離れた部分で進んでいくのだが、香織というキャラクターがブレずにいてくれれば、もっと物語に共感できただろう。阿部寛と中井貴一。共に、近年、日本映画で最も頻繁に“顔を見る”役者が共演しているのが何ともゴージャスだ。事件の性質上、2人が顔を会わせるシーンはないのだが、子を思う父の姿を静かに熱演した中井貴一の存在感が印象的だった。
【60点】
(原題「麒麟の翼〜劇場版・新参者〜」)
(日本/土井裕泰監督/阿部寛、黒木メイサ、溝端淳平、他)
(親子愛度:★★★★☆)
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夜明けの街で

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ラブストーリーとしてもミステリーとしても中途半端だが、従順な妻を演じる木村多江の最後の演技で救われている。

大手建設会社の課長・渡部は、理想的な家庭がありながら、どこか寂しげな表情の女性・秋葉と出会い恋に落ちる。家庭では、良き夫、良き父親を演じながらも、まだ自分がときめくような感情を持てることに喜びを感じて、秋葉との逢瀬を重ねる日々だった。ある日、秋葉は、かつて自分の家で起こった殺人事件について衝撃的な事実を語り始める…。

原作は、ミステリー作家・東野圭吾の初の本格的恋愛小説と話題のベストセラー。物語は、殺人犯かもしれない女と、そんな女との不倫というのっぴきならない状態に苦しみながらも快楽を覚える中年男の“純愛”だ。だが、秋葉の父の秘書が殺された過去の事件の謎解きは、終盤にバタバタと説明口調で明かされるだけで、さっぱり迫力がない。ではドロドロで官能的な不倫愛の物語かというと、そちらも綺麗事のようにあっさりしている。生真面目な中年男を、やがて離婚を決意するほどまでに変えてしまうファム・ファタールを演じるのは深田恭子。今までのガーリーなイメージを振り払うかのように、最近の出演作では、不倫する方、される方と、大人の恋愛の役に懸命に挑戦しているのだが、この作品では残念ながらミスキャストだ。一方で、静かな上手さを見せるのは、従順な妻・有美子を演じる木村多江。薄幸の女性を演じるとピタリとハマる彼女が、最後の最後に見せる意外な素顔こそが見所で、この映画のキャッチコピーである“甘い地獄”の意味を思い知る。
【50点】
(原題「夜明けの街で」)
(日本/若松節朗監督/岸谷五朗、深田恭子、木村多江、他)
(ミステリー度:★★☆☆☆)
夜明けの街で
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白夜行

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加害者の娘と被害者の息子。長い年月をかけて育んだ、2人だけが理解できる“愛”は、あまりにも悲しいものだ。感情を殺すことでしか生きられなかった男女の運命がやるせない。昭和55年、質屋の店主が殺害される。だが、被疑者の死亡によって事件の真相は闇の中へ。数年後、加害者の娘で、美貌の少女・雪穂は、美しく成長し、遠戚の養女となり名門学校へ通っていた。一方、被害者の息子で、孤独な青年・亮司は、家を出て社会の片隅で暮らしていた。やがて雪穂の周囲で不可解な凶悪犯罪が連続して起こるのだが…。

原作は東野圭吾のベストセラーで、同名の長編ミステリー小説だ。特徴的なのは、雪穂と亮司の2人が、現在のシークエンスでは決して一緒の画面に登場しないことである。つまり2人は顔を合わせることがなく、心理描写も極力控えている。とはいえ、彼らの心情は、小説と違い、映像化されると俳優の表情やしぐさなどでどうしてもにじみ出てしまう。それを短所ではなく長所ととらえれば、映像作品も楽しめるはずだ。ミステリーなので内容に触れることはできないが、雪穂と亮司は、互いに唯一無二の存在で、暗い秘密を共有することで堅固な絆で結ばれている。2人はある方法で連絡をとり“会話”をするのだが、そこには、犯罪だけでなく愛情もあったのだと思いたい。2人だけが入ることが許されるその罪の世界は、同時に互いが生きていることを実感できる唯一の場所なのだ。物語は19年間という長い時間を凝縮しているが、ラスト、過去の事件に執着する刑事の笹垣が、2人の知られざる関係と悲惨な過去を語り、それが謎解きになっていく。この演出が、いきなり説明調になり、TVの2時間ドラマのようで興ざめするのが惜しい。亮司は雪穂に操られた被害者なのか、それとも彼女の守護天使なのか。あるいは、雪穂の方が亮司の“作品”だったのか。さまざまな解釈を見るものに委ね、これから先も白い闇の中で生きねばならない者の哀しみを、余韻の中に漂わせた。ヒロインの堀北真希が高校生、大学生、さらに資産家に嫁いでブティック経営で成功する大人の女までを演じているのだが、顔色ひとつ変えずに、しかも自分の手を汚さずに犯罪を重ねる“悪女”を、静かな迫力で演じていて、新しい魅力を見せている。
【65点】
(原題「白夜行」)
(日本/深川栄洋監督/堀北真希、高良健吾、船越英一郎、他)
(純愛度:★★★☆☆)


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さまよう刃

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法律への不信と不満。重いテーマを扱った問題作だ。むごい事件によって大切な一人娘を失くした長峰は、娘を凌辱して殺した少年たちの名を知る。少年法によって現在の日本の法律では犯人を極刑にできないと考えた長峰は、自ら犯人を追い復讐することを決意。刑事の織部は長峰を追いながらも法と正義の狭間で悩んでいた。

「警察が守るのは市民ではなく法律のほうなのか」。このセリフが太い軸となって物語を貫いている。法律とはいったい何のためにあるのかと、深く考えさせられるはずだ。犯人の命を狙う主人公の長峰、長峰を追う刑事たち、逃げながらさらに罪を重ねる少年。それぞれの立場によって法の意味は変わってくる。被害者の家族の底知れない絶望が、寺尾聰の熱演によって痛いほど伝わってきて胸が苦しくなるほどだ。だがそれに対する竹野内豊があまりに迫力不足でバランスが悪いのが残念。長峰が最後に取った行動とその結末は衝撃的なものだが、欧米の映画では考えられない弱さも感じる。怒りより哀しみが勝る日本人特有の決着の付け方で主人公の価値観を暗黙のうちに正当化したと言えば言い過ぎだろうか。良心のかけらもない若者を生みだす社会構造に触れない物語には不満だが、法の秩序にわずかに期待して終わるのは、人間性を信じる余韻となろう。ベテラン刑事役の伊東四朗の演技が味がある。
【65点】
(日本/益子昌一監督/寺尾聰、竹野内豊、伊東四朗、他)
(理不尽度:★★★★☆)

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プロフィール
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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