映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
毎日のレビューは分かりやすく簡潔な寸評で、週1本の長文映画レビューでは作品をディープに掘り下げます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる公開作品 ◎
「ファミリー・ツリー」「ダーク・シャドウ」「サニー」

松山ケンイチ

僕達急行 A列車で行こう



鉄道オタクの青年二人が仕事に恋に奮闘する「僕達急行 A列車で行こう」。森田芳光監督の遺作は、軽妙な良作だ。

大手企業のぞみ地所に勤める小町は、音楽を聴きながら鉄道に乗るのが趣味のマイペース男子。ひょんなことから知り合った、下町の鉄工所二代目の小玉と、同じ鉄道好きということで意気投合する。九州支社に転勤になった小町は、そこで、頑固者でクセ者の社長がいる九州の大企業の仕事をまかされる。のぞみ地所が長年苦戦していたその企業の社長とは、同じ鉄道ファンということで、ちょうど九州に遊びにきていた小玉共々大いに盛り上がり、事態は一気に好転する。だが、仕事は順調でも恋となると、そう簡単にはいかなくて…。

主人公たちは大の鉄道好きの、いわゆる“鉄男”くん。仕事より趣味に生きると聞けば、すぐに思い浮かぶのは「釣りバカ日誌」だが、本作の主人公たちは、案外仕事もまじめにやっているのだ。だがその頑張りやこだわりは、大げさではなく、汗臭さもない。このあたり、イマドキの若者の感覚を上手くつかんでいる。さらに感心するのは、同じものを愛する者同士の、礼儀正しい距離感だ。もともとオタクとは自分の愛するポイントに徹底した持論がある。例えば小町は列車の音や風景よりも揺れに身を任せて音楽を楽しむ。小玉は鉄工所の跡取りらしく、鉄道を構成する金属にこだわりをみせる。彼らの“鉄男”っぷりには違いがあるのだが、二人ともその差異を埋めようとはせず、互いの好きな部分を尊重し決して侵害しないのだ。この気遣いが何とも心地よい。小町は眼鏡会社のあずさや社長秘書のみどりから好意を寄せられているし、小玉はお見合い相手のあやめに夢中。でも彼らは、本当は女性といるよりも、同じ鉄道好きの仲間といる方がずっと楽しそうだ。それでいいのか?とツッコミたくなるが、肩の力を抜きながら好きなものに夢中になる彼らがちょっとうらやましくもある。登場人物の名前がすべて特急の名前だったり、九州ロケの美しい風景、軽やかな会話や心地よい効果音など、すべてが旅情を喚起させて楽しい。主演の松山ケンイチ、瑛太をはじめ、出演者は皆、好演。森田監督の早すぎた遺作が、さらりとした幸福感に満ちた佳作だったことが何より嬉しい。
【65点】
(原題「僕達急行 A列車で行こう」)
(日本/森田芳光監督/松山ケンイチ、瑛太、松坂慶子、他)
(ゆるやか度:★★★★☆)
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僕達急行 A列車で行こう@ぴあ映画生活

うさぎドロップ

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独身サラリーマンがひょんなことから“イクメン”に。松ケンが走る、走る!

27歳の独身サラリーマン、ダイキチは、祖父の葬儀でりんという名前の少女に出会う。孤独で悲しげな彼女は、なんとおじいちゃんの隠し子だった。引き取り手のない少女を男気を見せて連れ帰ったはいいが、突然の共同生活や慣れない子育てに振り回される。だが、不器用でも一生懸命にりんを育てようとするダイキチに、りんも次第に心を開くようになる…。

原作は宇仁田ゆみの人気コミック。SABU監督にして、この“ほのぼの”ムードはとても意外だ。だが、らしさもある。それは主人公ダイキチが、走って走って走りまくること。会社から遠い保育園に通うのに、りんを連れ、荷物を抱えて急ぐため、スニーカーまで買い揃える。この疾走感こそSABUテイストだ。残業のない課に変わり、おねしょをするりんを叱らず、逆に笑わせるダイキチは、基本的に落ち着いた優しい男性。そんな彼が子育てという待ったなしの嵐に巻き込まれ、それまでとは違うスピードで人生を“走る”ことになる。シングルマザーの美女・ゆかりの助けもあり、ダイキチは育児によって多くのことを学んでいく。時折挿入される空想シーンは、あまり効果的とは思えないが、27歳の独身男性が、夢の女とクールな自分を空想しながら、育児にいそしむという図はちょっと面白い。何より、主人公が、子育てによって本当に大切なものを見極め成長していく姿は、好感を持たずにはいられないのだ。「子供ができたら強くなるのかと思っていたら、逆に臆病になった」というセリフがとてもいい。愛くるしい笑顔の名子役・芦田愛菜ちゃんが、松ケン相手に一歩も引かない名演を見せるのも見所だ。
【65点】
(原題「うさぎドロップ」)
(日本/SABU監督/松山ケンイチ、香里奈、芦田愛菜、他)
(ほのぼの度:★★★★☆)



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うさぎドロップ@ぴあ映画生活

映画レビュー「マイ・バック・ページ」

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◆プチレビュー◆
現実と理想の狭間で揺れる若者たちの苦い挫折の物語。妻夫木聡vs松山ケンイチの演技合戦は見応えがある。 【70点】

 1969年。大手新聞社の週刊誌編集記者・沢田は、全共闘や新左翼運動で社会全体が大きくうねる中、熱い理想を抱いて働いていた。それから2年後、梅山と名乗る男から接触を受け、武装決起の計画を知らされる。沢田は梅山の言葉に疑いを持ちながらも、不思議と彼に親近感を覚えていく…。

 この映画を作った山下敦弘監督は76年生まれ。60〜70年代の熱い政治の季節の夢と挫折を知らない世代だ。そのことが、作品に客観性を持たせている。結果的に、非常に政治的な題材ながら、時代と関わることで苦みを知る主人公の心情を描くエモーショナルな青春映画になった。

 沢田にはジャーナリストとしての潔癖さと若さゆえの甘さがある。梅山は、マスコミさえ利用する、うさんくさい男だ。そんな2人が善悪を超えた部分で共鳴しあったきっかけが、文学や音楽、映画だったりするのが、実にセンチメンタルだ。「真夜中のカーボーイ」のダスティン・ホフマンが好きだという梅山を信じてしまう沢田は、なるほど梅山が言うように“優しすぎる”。

 革命と権力とジャーナリズム。そのすべての背景にベトナム戦争があった時代の熱気は、経験してないものには、正直よくわからない。ただ、自分たちの手で社会を変えようという気概と暴力を短絡的に結びつける“イノセンス”は、革命の熱とは無縁の現代からは、一途に夢を追う青春そのものに見える。脆くも挫折していく結果まで知っているからなおのことだ。2人の運命は「駐屯地で自衛官殺害」というショッキングな事件で激しく交錯し、沢田は梅山に問う。「君らが目指したものって何だったんだ?!」。答えは永遠に出ない。

 原作は、評論家の川本三郎氏の同名ノンフィクションだ。薄気味の悪い活動家役の松山ケンイチが、終始、作品をリードしているかに見えるが、最後の最後に、妻夫木聡が涙を流す入魂の演技で一気に形勢が逆転する。苦い後悔と青春の終焉、人と距離を置いて生きる今の孤独な自分。それらすべてがないまぜになった、この泣くシーンは見事だ。劇中に沢田がデートするモデルの少女が「ファイブ・イージー・ピーセス」のジャック・ニコルソンが泣くところが好きだと言った。自分はきちんと泣ける男の人が好き、とも。この映画の主人公が“きちんと泣いてくれた”のが救いに思えた。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)青春映画度:★★★★★

□2011年 日本映画 原題「マイ・バック・ページ」
□監督:山下敦弘
□出演:妻夫木聡、松山ケンイチ、忽那汐里、他
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GANTZ PERFECT ANSWER

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奥浩哉の人気コミックを2部構成で実写映画化した完結編に当たる本作は、映画オリジナルのラストが見所。ただし、多くの謎を残したままの“完結”には不満が残る。

死んだ瞬間に謎の球体“GANTZ”に召集され、敵である“星人”たちとの理不尽な戦いを強いられる。幼馴染の玄野と加藤は、こんな不可解な世界に放り込まれ困惑するが、激しい戦いの末に加藤が命を落とす。さらに、GANTZが次に課したミッションは、玄野を慕う多恵を殺すこと。なぜ星人ではなく人間がターゲットになるのか。謎が深まる中、“卒業生”たちが集結する。さまざまな敵と戦う中で、玄野は、究極の決断を迫られる…。

“PERFECT ANSWER”と称した本作は、不条理な世界で戦うSF的要素より、玄野と多恵とのラブストーリーの比重が高い。本作の物語は、戦って点数を積み重ね100点を取るという共通認識があるはずの仲間同士で対立してしまうから、内と外の両方に敵がいるようなものだ。玄野は仲間を敵に回しても多恵を守ろうとするが、そこには小さなガンツボールを巡る新たな戦いが待っていて、戦闘は多重構造になり、より迫力を増している。ただし、ガンツとはそもそも何か?ガンツ部屋はどこにあるのか?星人と戦う理由とは?という、最も知りたい答えを期待していると肩透かしをクラッてしまうだろう。それでも、戦うことから守ることへと目的がスライドした玄野を見る限り、いまだ原作が続いている状態としては、映画で出した“パーフェクトな答え”は、妥当と見るべきかもしれない。前作が異形の星人のビジュアルやVFXが見所だったのに対し、戦う相手が人間と同じルックスの本作では、アクションが勝負。ガンツソードと呼ばれる刀を使ったアクションがなかなかの出来栄えだ。
【55点】
(原題「GANTZ PERFECT ANSWER」)
(日本/佐藤信介監督/二宮和也、松山ケンイチ、吉高由里子、他)
(パーフェクトな答度:★☆☆☆☆)
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GANTZ PERFECT ANSWER@ぴあ映画生活

Bungee Price DVD 邦画GANTZ PERFECT ANSWER 【DVD】

Bungee Price DVD 邦画GANTZ PERFECT ANSWER 【DVD】
価格:2,802円(税込、送料別)

GANTZ

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現在も連載中の人気コミックを原作とする物語は、独創的で不条理な世界で苦悩しながら戦う2人の青年が主人公。物語は前・後編で描かれる。存在感が薄い大学生・玄野は、ある日、幼馴染の加藤と出会う。地下鉄の線路に転落した酔っ払いを助けようとして電車に轢かれ命を落としたはずの2人は、気付いたら見知らぬマンションの一室にいた。そこには2人と同じように死んだはずの人々が集まっていた。彼らに与えられたミッションは、部屋の中央に置かれた謎の球体“GANTZ”の指示に従い、“星人”と呼ばれる異形の敵と戦うこと。やがて熾烈な戦いが始まり、彼らはサバイバルを強いられる…。

2部作で構成される作品だが、これから、というところで終わる前編ではどうにもフラストレーションがたまっていけない。とはいえ、原作は欧米でも人気のコミックとあって、有名なエピソードを散りばめ、原作ファンに配慮している。星人と呼ばれる謎の敵は、どれもどこかトボけていて、ネギ星人やおこりんぼう星人など、人をくったようなキャラばかりだ。生と死をいやおうなく実感できる究極のサバイバルでは、他者を利用しながらのせめぎあいが続く。そんな中、無気力な玄野が次第にいきいきとしてくるのが面白い。就活でも上の空でマニュアル通りの受け答えを繰り返していた彼が、やがて本心から力強く「人にはそれぞれ与えられた役割がある」と言葉にする。セリフは同じなのに、物語が進むにつれて徐々に気持ちが入り、自信に満ちた表情になることで、彼の変化を現す演出が非常に上手い。出演は、命懸けのサバイバルに情熱を傾ける玄野に二宮和也、2人きりの家族である弟の元に戻るため生き残ろうとしながら、無益な争いを避けようとする加藤に松山ケンイチ。若手演技派の競演も魅力のひとつだ。物語は半分終わっただけ。作品の評価は下せない状況だが、虚ろな若者が目標を見出して生を実感する展開は、時代の空気を確かにすくいとっていて、続きに期待が持てる内容だ。ビジュアルはダークでクール。それでいて現実とかけ離れることはない。ラストに登場する山田孝之の役割も含めて、PARTIIが楽しみである。
【50点】
(原題「GANTZ」)
(日本/佐藤信介監督/二宮和也、松山ケンイチ、吉高由里子、他)
(不条理度:★★★★☆)

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ノルウェイの森

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有名すぎる文学作品を映像化することのハードルの高さを改めて感じる映画だ。果たしてこの作品を村上春樹ファンがどう見るかが気になるが、小説と映画は別モノと割り切るべきだろう。高校時代の親友キズキを突然の自殺で喪った主人公のワタナベ。彼は誰も知らない新しい土地で生活するため東京の大学へ進学する。ある日、キズキの恋人だった直子と再会、共に喪失感を抱える二人は頻繁に会い、心を通わせる。だが直子は次第に精神を病み、京都の療養所に入ってしまう。ワタナベは、直子を愛しながら、大学で出会った緑にも同時に惹かれていくのだが…。

原作は1987年に刊行され今も世界中で読まれている大ベストセラー。ハルキスト(村上春樹の熱烈なファン)ではない私でも、この作品の特別な立ち位置は理解しているつもりだ。改めて感じるのは、村上春樹の小説の、軽さと深みが絶妙にブレンドされたセリフは文字で読むからこそ素晴らしいということ。独特のニュアンスが立ち上ってくる言葉を、そのまま声に出してセリフにした途端にどうしようもない違和感を感じてしまうのは、私だけではないはずだ。キャスティングの評価には諸説あるようだが、映画のスペシャル感から、主人公の松山ケンイチは良しとしたい。問題は、ルックスは可愛らしいがあまりに演技がヘタクソな、緑役の水原希子。そんな彼女に長ゼリフは酷というものだ。ストーリーは、大切な人を永遠に喪う悲劇、深く愛しながら分かり合えない哀しみ、そして、それでも前を向かねばならない人間を描くものだ。登場人物は皆、複雑な思いを抱えながら生きている。愛と性、強さと脆さ、生と死。映画にはさまざまな対比がある。どれほどの絶望を垣間見ても、その対極にあるのは、再び人を愛することの素晴らしさなのだ。この映画の最大の個性は、ベトナム系フランス人で、映像美でならすトラン・アン・ユン監督がメガホンをとっているということ。個人的には、村上春樹の世界には、もっとドライな空気がふさわしいように思うのだが、それはさておき、トラン・アン・ユンらしいしっとりとした美しい映像は堪能させてもらった。撮影は名手リー・ピンピン。深い森を思わせる物語に、日本の四季の移ろいをとらえたビジュアルの美しさが加わり、繊細な余韻を残している。
【50点】
(原題「Norwegian Wood」)
(日本/トラン・アン・ユン監督/松山ケンイチ、菊地凛子、水原希子、他)
(映像美度:★★★★☆)

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ノルウェイの森@ぴあ映画生活

誰かが私にキスをした

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日本の中の異国アメリカンスクールを舞台にしたことで新鮮な空気を漂わせる学園ラブストーリー。東京のインターナショナルスクールに通う女子高生ナオミは、階段から落ちて過去4年間の記憶を失う。退院して戻った日常には、すべてが初めての新鮮さと戸惑いが。ナオミの周りに、アメリカ人の彼氏のエース、親友のミライ、病院まで付き添ってくれたユウジの3人の男子学生が現れる。ナオミは何かと悪い噂のあるユウジに惹かれていくのだが…。

アメリカ人の手による原作・脚本のためか、日本のティーン・エイジャーの恋物語なのに、風変わりな手触りだ。記憶を失ったナオミには、3人の男子学生は、皆、新鮮で平等な出会いとなる。私はいったい誰を好きだったのかという疑問と共に、私はどんな女の子だったのかという自分探しの側面も。生徒が作る学校年鑑“イヤーブック”の存在が効果的で、写真とそれを撮る行為が物語に上手くからんでくる。ハンス・カノーザ監督は前作「カンバセーションズ」では画面を2分割するデュアル・フレームという手法を用いたが、映像に凝る監督らしく、本作では映像をレイヤーのように重ねた“アイ・フレーム”という立体的なビジュアルを創造した。アルバムに写真を貼り付けるように映像が自由にペーストされていく様がリズミカルで面白い。2Dなのに立体的に見える空間が映像をポップにし、同時に登場人物たちの心象風景になっていく。記憶喪失という設定が後半にはほとんど功を奏さなくなることが気になるが、ヒロインの関心は過去ではなく、あくまでも未来。このことが、10代特有の前を向く力を感じさせてくれた。少し変わったアイドル系“日本映画”だが、ドライな後味は悪くない。
【50点】
(原題「誰かが私にキスをした」)
(日本/ハンス・カノーザ監督/堀北真希、松山ケンイチ、手越祐也、アントン・イェルチン、他)
(新鮮度:★★★☆☆)

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カムイ外伝

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監督が崔洋一、脚本が宮藤官九郎と聞いて大いに期待したのだが、蓋を開けてみれば彼らのカラーはあまり感じられず、消化不良のアクションだけが目につく時代劇となった。強靭な意志と優れた剣術、独自の忍術を身に付けたカムイは、掟に縛られた忍びの世界を捨てて“抜忍”となる。偶然知り合った漁師の半兵衛のもとで暮らし始めるが、そこにはカムイと同じ抜忍の女忍者スガルが身を潜めていた。やがてサメ退治を生業とする“渡り衆”らと知り合ったカムイは、ひと時の安らぎの日々を過ごすが、陰謀と殺戮が目の前に迫っていた。

物語は、白土三平の同名傑作コミックの「スガルの島」編を原作とする。60年代、全共闘のバイブルだった「カムイ伝」は、階級闘争の精神がみなぎる力作。一方「カムイ外伝」は抜忍となったカムイの逃走の日々が中心なので、当然アクションが中心になる。だが、映画で描かれるそれは、CGやワイヤーアクションに迫力と工夫が足りない。特に渡り衆のサメ退治の場面のCGは苦笑を誘う。必殺忍法は、カムイの得意技・変移抜刀霞斬り(へんいばっとうかすみぎり)などが登場するが、もう少しバリエーションがほしかったところか。ただ、アクションは初挑戦の松山ケンイチは意外にも好演。迫力よりも哀しみを感じさせる表情が印象的だ。忍者という闇や影に溶け込む存在を描く物語なのに、ほとんどの映像が明るい色調なのが珍しい。
【55点】
(日本/崔洋一監督/松山ケンイチ、伊藤英明、小雪、他)
(CGバレバレ度:★★★★☆)

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ウルトラミラクルラブストーリー

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全編津軽弁で描く不思議系の恋愛映画だ。舞台は青森。風変わりで子供のような農業青年が東京から来た女性に一目ぼれし、初恋を実らせようと常識はずれの方法で猛アプローチ。やがて奇跡が起こる。

分かりやすさから出来るだけ離れようとしている作品で、それは農薬によって日常から離脱する主人公の言動とも重なっていく。あっけにとられるラストも含めて、新人監督・横浜聡子の個性を感じる映画だ。全体的に軽いテイストで演技も嘘臭い感じがちょっと面白い。この作品が好きかと問われると疑問なのだが、何か新しい流れが生まれる気配を感じてしまうのは否定できない。トンデモナイ役柄で演技するARATAなど、役者のすっとぼけた雰囲気を味わいたい。ありえないことが集まると“進化”が生まれる。それは映画も同じだ。
【60点】
(日本/横浜聡子監督/松山ケンイチ、麻生久美子、渡辺美佐子、他)
(ヘンテコ度:★★★★★)

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デトロイト・メタル・シティ

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好きなことでは認められず、不本意なことで大成するやるせなさが哀愁の怪作コメディ。オシャレなミュージシャンを目指し田舎から上京したのに、なぜか悪魔系デスメタルバンドで大活躍してしまう青年の物語だ。主人公の根岸くん/クラウザーさん役の松山ケンイチが白塗りでシャウトする姿は笑えるが誇張した演技はあまりにキモい。女社長にいたぶられるなど一見Mだが、殺害せよと絶叫する根岸くんの根っこはSと見た。原作ファンだというキッスのジーン・シモンズがブラックメタル界の帝王役で出演するなど、唐突なゴージャス感が見もの。
【55点】
(日本/李闘士男監督/松山ケンイチ、加藤ローサ、秋山竜二、他)
(カリカチュア度:★★★★☆)

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
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新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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