映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
毎日のレビューは分かりやすく簡潔な寸評で、週1本の長文映画レビューでは作品をディープに掘り下げます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる公開作品 ◎
「ファミリー・ツリー」「ダーク・シャドウ」「サニー」

松田龍平

探偵はBARにいる

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名無しの探偵を演じる大泉洋がハマリ役の「探偵はBARにいる」。ススキノを舞台に、コミカルな味を加味して描くハード・ボイルドの快作だ。

札幌の歓楽街・ススキノのBARを根城にしている探偵に「コンドウキョウコ」と名乗る女から仕事が舞い込む。南という弁護士に会って「去年の2月5日、カトウはどこにいたか」と尋ねるというその奇妙な依頼を受けたとたんに、探偵は命を狙われるハメに。運転手兼助手の高田と共に事件を調べるうちに、浮かび上がってきたのは謎の美女・沙織。やがて探偵は過去の複数の殺人事件に関わっていくのだが…。

原作は、東直己の人気シリーズ「ススキノ探偵シリーズ」の第2作「バーにかかってきた電話」。酒と美女を愛する探偵には、事務所もなく、名前もない。「俺」としか表現されない彼は、クールにふるまってはいるが、中身は熱血漢でロマンチストという大胆かつ繊細な男だ。のんびり屋なのに、ケンカとなると滅法強い相棒の高田との名コンビぶりが魅力的で、二人の軽妙な会話は笑いを誘う。今のご時勢、どこまでもクールでタフな探偵ではなく、カッコいいのにドジも踏む、憎めない探偵の方がずっとリアリティーがあるというものだ。北海道出身の大泉洋が雪中での体当たりのアクションを披露し、今までのイメージを一新するのも見逃せない。過去の放火事件と会社社長撲殺事件、さらに関西裏社会の暗躍がつながったとき、哀しい復讐と愛が浮かび上がってくる。探偵ものにはファム・ファタールはお約束だが、魔性の女を演じるのは小雪。電話の声で依頼主の正体は最初からバレバレだし、謎解きとしては少々弱い。だが、探偵と助手のでこぼこコンビに絶妙な味がある。サブキャラも皆、イイ感じだ。続編に期待。いや、高田のスピンオフもいいかも。ともあれ、ぜひシリーズ化を望む。
【70点】
(原題「探偵はBARにいる」)
(日本/橋本一監督/大泉洋、松田龍平、小雪、西田敏行、他)
(名コンビ度:★★★★★)



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探偵はBARにいる@ぴあ映画生活

まほろ駅前多田便利軒

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心に傷を持つ同士のバディ・ムービー「まほろ駅前多田便利軒」は、力の抜け具合が絶妙だ。ゆるい空気の中にうっすらとにじむ正義感がいい。瑛太と松田龍平のコンビがいい味を出している。

東京郊外の町まほろ市の駅前で便利屋を営む多田のもとへ、ひょんなことから同級生の行天が転がり込む。まじめでしっかり者の多田と、飄々としてつかみどころがない行天は、便利屋にやって来るワケありの客の人生にかかわるうちに、互いの距離を縮めていく。二人の前には、自称コロンビア人娼婦のルルや、あぶないアルバイトに手を染める小学生の由良など、一筋縄ではいかない客たちが、次々に現れる…。

二人の男は、共にバツイチで三十路。世間一般から見ればショボくれた負け組人間に見えるだろう。確かに、ままならない人生をまったりと生きる彼らは勝ち組とは言えないが、そんな人間でも二人になれば不思議なパワーが生まれるから、やっぱり人のつながりとはあなどれないものだ。特に頑固できちょうめんな多田が一歩踏み出せずにいるとき、自分勝手に生きているように見える行天が言う、的を突いた言葉に胸を打たれる。「誰かに必要とされるということは、誰かの希望になるということでしょ」。こう言われては、多田じゃなくても見て見ぬふりなどできないではないか。多田と行天が抱えるそれぞれの心の傷が、無言のうちに共鳴しあった時、結果的にとぼけた人助けにつながっていく。それが説教くさくなく、淡々とした描写なのが心地よい。原作は三浦しをんの人気小説で、映画に描かれた以外にも魅力的なエピソードがたくさんある。もしや続編ができるかも…と、期待している。
【65点】
(原題「まほろ駅前多田便利軒」)
(日本/大森立嗣監督/瑛太、松田龍平、片岡礼子、他)
(名コンビ度:★★★★☆)
チケットぴあ



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まほろ駅前多田便利軒@ぴあ映画生活

ボーイズ・オン・ザ・ラン

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うだつの上がらない青年の“本気”が泣けてくる青春ドラマだ。弱小玩具メーカーに勤める田西は29歳。同僚の女性ちはるに恋しているが、まともに声さえかけることができず思い悩む日々だった。そんなときライバル会社で大手玩具会社のやり手の営業マン・青山が手助けしてくれる。いい雰囲気になったのもつかの間、ちはるの誤解を招く大失敗をやらかした田西はフラれてしまう。そんなある日、青山がちはるを横取りした上、もてあそんで捨てたことを知る…。

三十路目前だというのに、仕事も恋愛も全力投球できない主人公は、正直言って、ダサくてウザい。だが、初めて本気で恋した女性の心が自分にないと知ってもなお、恋にあがき突っ走る姿を見ていると、いつしか応援したくなるから不思議だ。「タクシードライバー」のデ・ニーロには遠く及ばないが、田西なりの本気は本物。イタい田西、性悪の青山、不誠実なちはる。3人ともかっこよさとはほど遠いのだが、そんなヤツらの姿は妙にリアルだ。格好をつける術さえ知らない田西が、悪役の青山を倒すため、ボクシングの基礎を習い精進する様子に、これはもしや…と期待するが、物語はそう簡単にヒーローを誕生させない。考えてみれば、ろくにケンカもしたことがないヤワな男がいきなり強くなって正義をまっとうするなんて“映画じゃあるまいし”現実ではそう簡単には起こりはしない。だがこの物語の上手いところは、そんな変わらない現実をシビアに描きながら、田西がひとつ突き抜けて「彼は変わった!」と観客に思わせる演出にある。ぶざまにもがき続ける主人公が懸命に走るラストは奇妙なさわやかさを覚えた。かなりキワどい描写やセリフが満載なのでデート・ムービーにはちょっと不向き。でも同性同士で見終わって本音トークをすれば盛り上がりそうな映画だ。主人公を怪演するのは銀杏BOYZの峯田和伸。最高に適役だった。
【60点】
(原題「ボーイズ・オン・ザ・ラン」)
(日本/三浦大輔監督/峯田和伸、黒川芽以、松田龍平、他)
(がむしゃら度:★★★★☆)

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悪夢探偵2

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独自の美意識で“世界のツカモト”と呼ばれる塚本晋也監督の「悪夢探偵」の続編。他人の夢に入る能力を持った“悪夢探偵”が主人公だが、彼の特徴は、事件を解決するのも、犯人をみつけるのも、依頼人を守るも、すべていやでいやでたまらないということ。自分の能力を持て余し、その能力ゆえに苦しむ、極めて後ろ向きのヒーロー像が新鮮だ。

悪夢で眠れない少女・雪絵から、依頼を受けた影沼京一は、雪絵たちがイタズラでいじめた同級生・菊川が、自殺した京一の母と同じ能力を持つ人間であることを見抜く。他人の心の声が聞こえ、一時も安らげないのは、京一も、母も、菊川も同じ。母の死がトラウマである京一は、菊川を通して、母親の思いを知ろうと、雪絵の夢に入る決意をする…。

京一はいつもはボロアパートに住み、黒いボロ布のような衣服を着ているが、他人の夢に入るときの服装は、決まって黒い防水素材のフード付きの長いマントだ。マント(manteau・仏語)は、衣服の上に羽織って着る、袖のないゆったりとした衣の総称。トーガ、ケープ、合羽(かっぱ)など、さまざまな呼称と種類がある。歴史は古く、人間が狩猟生活を始め、し止めた動物の毛皮を羽織って寒さを防いだことから始まったとされている。単純な布として利用した古代ローマやギリシャ、豪華なファッションが生まれた中世・ルネサンス期を経て、産業革命以降、さまざまな種類のマントが登場する。フード付きマントが誕生したのもこの頃とされるが、その後、オーバーコートの出現で日常着としてのマントはすたれていく。現在では、礼装用(オペラ観劇の際に着用するオペラケープなど)、裁判官などの法曹界、高位階の僧侶が儀式で着用する宗教界、一部の軍隊の正装、民族衣装、欧米の学校の卒業式など、特殊な場合に着用されている。日本では、明治末期から大正初期にかけて、学生が身に付けた。

マントの本来の役割は、防寒だが、その一方で、歴史的には、権威の象徴として、儀式的に使われてきたことが分かる。主人公・京一が着るマントは、いわば“勝負服”だ。それを身につけることによって、異界へ入る権利を得る。映画に登場するマントは、しばしば人知を超えた特殊な能力を象徴することが多い。空を飛ぶスーパーマンや、悪人を退治するバットマンなどのヒーローたちは、マントなど身につけない方が絶対に効率的に動けるはずなのに、アメコミの作者たちは必ず彼らにマントを着せた。理由はヒロイズムを強調するため。ファンタジーでは、着ると透明になり、一種の変装の役割も果たす。ダースベイダーを見ただけで強烈なカリスマ性を感じるのは、彼が漆黒の長いマントを身につけているからに他ならない。物語の中でマントが象徴するのは日常から離れた特殊な“何か”なのだ。悪夢探偵は、マントを現実と非現実を行き来する道具として使っている。

菊川のことを知るために雪絵の悪夢に入ったはずの京一は、いつのまにか、自分の夢の中に入ってしまう。記憶をたどることで、母、そして父の思いを知ることに。「世の中はこわいものばかりなの?」。これは子供時代の京一が母に投げかけた素朴な疑問だ。確かにこの世は醜く恐ろしいものに満ちている。とりわけ人の心の声が聞こえてしまう特別な人間にとっては。それでも、主人公は、青い空や緑あふれる木々を感じる。美しいものと醜いものが同居するのが、自分が生きる世界だと理解するためには、自らの記憶をたどる必要があった。前作がサイコ・サスペンスだとしたら、本作は、幻想的な恐怖の先にある切ない親子愛の物語。映画としての独自性は前作が上だが、キャラクターの背景を分かりやすく描いた点が評価できる。

(出演:松田龍平、三浦由衣、市川実和子、他)
(2008年/日本/塚本晋也監督/英語原題「Nightmare Detective II」)

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蟹工船

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言わずと知れた小林多喜二の傑作小説の映画化だが、ポップな地獄絵図とでも呼びたいライトな「蟹工船」に仕上がった。カムチャッカ沖の船上で蟹の缶詰を加工する蟹工船で働く労働者たちが、過酷な重労働と横暴な支配者に対してついに立ち上がる姿を描く物語だ。

ユーモアを漂わせ、シュールな映像を作り出したのは面白いが、演技が軽すぎて、限界ギリギリの絶望は伝わってこない。また、共産主義のソ連の船上にユートピアを見るのなら、時代設定を小説と同じにすべき。ただ、どこか線が細い西島秀俊の悪徳監督ぶりは意外にもハマッていて、原作の時代と現代との接点を感じさせた。しかしこの暗くてやるせないプロレタリア文学が再ブームになってしまう現代という時代は、やはり不安の中にあると言わざるを得ない。
【55点】
(日本/SABU監督/松田龍平、西島秀俊、高良健吾、他)
(ユーモア度:★★★☆☆)

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THE 焼肉ムービー プルコギ

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生き別れた兄弟の絆を描きつつ、焼肉をテーマにした異色グルメ映画。登場する料理はおいしそうだが、人間ドラマはおそまつな出来で脱力。出演者のギャグセンスがかみあってないのが原因か。名優田村高廣の遺作となった。合掌。
【20点】
(日本/グ・スーヨン監督/松田龍平、山田優、ARATA、田村高廣、他)
(グルメ度:★★★☆☆)

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悪夢探偵

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他人の夢に入り込む特殊能力を持った探偵が主人公。このキャラが事件解決に後ろ向きという設定がおもしろい。ハリウッド・リメイクも決定している異色サイコ・サスペンスで、塚本らしくイタイ場面が多数登場する。しかし、hitomiの起用はなぜなんだ?!
【60点】
(日本/塚本晋也監督/松田龍平、hitomi、安藤政信、他)
(流血度:★★★★☆)

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◆映画ライター、映画評論家
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新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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