映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「フィフティ・シェイズ・ダーカー」「ハクソー・リッジ」「結婚」「ありがとう、トニ・エルドマン」etc.

松田龍平

ぼくのおじさん

ぼくのおじさん [DVD]
小学生のぼくこと雪男は、学校で「自分のまわりにいる大人について」をテーマにした作文の宿題を出される。困った雪男は、父の弟で怠惰な生活を送り、屁理屈ばかりこねる居候のおじさんのことを書こうと思いつく。そのおじさんが、見合いの相手で、ハワイの日系4世の美女・エリーにひと目ぼれ。だがエリーはコーヒー農園を継ぐためにハワイに戻ってしまい、おじさんは彼女に会いたい一心で、あの手この手でハワイに行こう画策する。ある日、雪男の作文がコンクールで優勝し、その賞品としてハワイ旅行が当たるという奇跡が起こる。雪男とおじさんは、さっそくエリーに会いにハワイに飛ぶが…。

変わり者で怠け者だがどこか憎めないおじさんとしっかり者の甥っ子の凸凹コンビが巻き起こす騒動を描くヒューマン・ドラマ「ぼくのおじさん」。一瞬、ジャック・タチの「ぼくの伯父さん」の日本版かと勘違いしてしまったが、原作は、芥川賞作家・北杜夫のユーモア小説だ。何しろ、このおじさんのダメダメぶりは、すさまじい。義姉に昼飯代をせびり、小学生の甥っ子にマンガを買わせ、宿題は手伝わない。居候のくせに、猫のエサの煮干しさえ強奪して食べる。屁理屈ばかりこねては万年床でぐうたらしている。職業は、大学の非常勤講師で、週に1コマだけ授業を持っている哲学者。小学生の雪男さえあきれるほどのダメ人間だが、なぜか憎めないのは、根っこの部分は善人で、何の役にもたっていないようで、思いもよらない状況で役に立つ人間だからだ。昭和の文豪の北杜夫は、自分をモデルにして書いたそうだが、このおじさんを演じる松田龍平が最高にハマっている。力が抜けきった棒読み演技と間延びしたたたずまい、淡々とした屁理屈やぼんやりした表情さえも味があって、誰もがおじさんを好きになるはずだ。物語は、おじさんの一方的な恋とその顛末を描くのだが、マドンナの恋を、結局は応援してしまう姿は、寅さんのようでもある。ユルい笑いと共に市井の人々が持つおかし味をあたたかくみつめる山下敦弘監督らしさがにじむ佳作に仕上がった。
【65点】
(原題「ぼくのおじさん」)
(日本/山下敦弘監督/松田龍平、大西利空、真木よう子、他)
(飄々度:★★★★☆)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
ぼくのおじさん|映画情報のぴあ映画生活

モヒカン故郷に帰る

モヒカン故郷に帰る (特装限定版) [Blu-ray]
モヒカン頭がトレードマークの売れないバンドマン・永吉は、恋人の由佳が妊娠したのを機に結婚を決め、その報告のために故郷である広島県の瀬戸内海に浮かぶ戸鼻島へ7年ぶりに帰郷する。広島県出身のミュージシャン・矢沢永吉をこよなく愛する頑固おやじの父・治、筋金入りの広島カープファンの母・春子、たまたま帰省していた弟・浩二の家族全員が久しぶりに顔を揃える。家族団らんかと思いきや、のらりくらりする永吉の態度に父・治は怒りを爆発、いつもの親子喧嘩が始まる。それでも永吉と由佳の結婚を祝う宴が盛大に祝われた。しかしその夜、治が倒れてしまう。検査の結果、ガンが見つかり、一家に動揺が走るが…。

売れないバンドマンの息子が余命わずかの父親のためにユルく奮闘するヒューマンドラマ「モヒカン故郷に帰る」。タイトルは、日本初のカラー映画で木下惠介監督の「カルメン故郷に帰る」のパロディだろう。だが無論、本作はまったく関係ないので念のため。この映画、役者のアンサンブルが魅力的だ。モヒカン頭でデスメタルを歌う主人公は、よく言えば朴訥だが、いつものらりくらりの冴えない性格。故郷の島(戸鼻島は架空の島らしい)で待ち構えるのは、熱くなりやすい性格の父と、達観したかのような細目の表情が印象的な母。こんな家族に、おバカだが気のいい恋人が加わり、とぼけた会話でユルい笑いを誘う。それぞれがちょっとずつズレた関係のまま、家族として成り立っているところがリアルだ。後半はいわゆる難病ものになるのだが、「横道世之介」などの沖田修一監督は、決してメソメソしたお涙頂戴物語にはしない。主人公は、余命わずかな父のために、大量のピザを注文したり矢沢永吉になりきったりと、ひょうひょうと、でも必死に奮闘。末期ガンという超シリアスな状況が、不器用ながらも一生懸命に生きる家族によって浄化されていくような錯覚を覚えた。クライマックスは、まさに盆と正月が一度にきたかのよう。柄本明の突き抜けた名演と、穏やかな瀬戸内の島の空気が、涙と笑いを同時に届けてくれる。
【65点】
(原題「モヒカン故郷に帰る」)
(日本/沖田修一/松田龍平、柄本明、前田敦子、他)
(家族愛度:★★★★☆)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
モヒカン故郷に帰る|映画情報のぴあ映画生活

ジヌよさらば かむろば村へ

ジヌよさらば 〜かむろば村へ〜 [Blu-ray]
お金を使わない生活を目指す主人公の奮闘記「ジヌよさらば かむろば村へ」。濃味・松尾スズキと薄味・松田龍平の相性が抜群。

お金アレルギーになってしまった元銀行マンのタケは、「何も売らない」「何も買わない」というお金を一銭も使わない生活を目指して東北の寒村・かむろば村へと移住する。だがそこには世話焼きの村長・与三郎や目が光る老人“神様”など、強烈に濃い個性の村人たちが住んでいた。物々交換や自給自足でなんとか暮らすタケだったが、ある時、村に怪しげな男がやってくる…。

原作はいがらしみきおの人気コミック「かむろば村へ」。ジヌとは東北地方の言葉で“銭”のことだそうだ。「お金を使わない」生活が可能かというファンタジックな問いかけは物語の発端ではあるが、映画のテーマは経済ではなく、むしろ共同体の存在意義にある。お金恐怖症という病(?)以外、特に何のこだわりもない主人公タケが、いつのまにか村の生活の溶け込むプロセスが、村社会の光と影を体現していて面白い。タケは田舎にユートピアを夢見ているわけではなく、貨幣経済を憎んでいるわけでもない。その証拠に、田舎暮らしをナメたあげく村人から助けられたり、東北の寒さをヒートテックだけで乗り切ろうという甘さで凍死寸前になったりと、計画性は皆無なのだ。村人たちもまた決して善意や純朴だけではなく、田舎だからこそ携帯やITが必要と自覚していたり、何もかもつつ抜けの生活と秘密を使い分けたりと器用に立ち回る。「いろいろあるのよ、田舎だから」の“いろいろ”がこれまた特濃だ。キャラが立っているのも魅力で、監督だけでなく俳優としても登場する松尾スズキ、大人計画の面々、松たか子や二階堂ふみら旬の俳優たちと、役者のコラボが絶妙。そしてなんといってもヘンテコなキャラたちの中をひょうひょうと漂う松田龍平の“軽さ”がいい。「来る者拒まず、去る者追わず」で、いつのまにか幸福になっているタケ。やはり、かむろば村はユートピアなのかもしれない。
【65点】
(原題「ジヌよさらば かむろば村へ」)
(日本/松尾スズキ監督/松田龍平、阿部サダヲ、松たか子、他)
(ファンタジー度:★★★☆☆)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
ジヌよさらば 〜かむろば村へ〜@ぴあ映画生活

まほろ駅前狂騒曲

まほろ駅前狂騒曲 ブルーレイ豪華版 [Blu-ray]
便利屋を営む多田とその相棒の行天が思わぬピンチに遭遇する「まほろ駅前」シリーズ第2弾「まほろ駅前狂騒曲」。エピソードが多く賑やかな展開だがユル〜い雰囲気はしっかり継承。

何かとガラが悪い街・まほろで便利屋を営む多田のところに、中学時代の同級生の行天が転がり込んできてから3年。子守代行、元新興宗教団体の秘密調査などのやっかいな仕事に奔走していた2人は、かねてから地元バス会社の不正を疑う老人グループが起こしたバスジャック事件に巻き込まれてしまう…。

三浦しをん原作の大ヒット小説で、劇響板、TV版と人気を博したシリーズの最新作。今回は、おなじみのやっかいな頼まれごとの他に、行天の過去や多田の恋などが描かれ、少々散文的な作りになった。冒頭、坂道をスーパーの袋を持ってダラダラ歩く男2人の、つかず離れずの距離感が示す通り、ユルいバディ・ムービーのテイストはしっかりと継承されているのが嬉しい。本作の軸は、淡い恋に不器用に踏み出す多田よりも、行天の側にある。行天が会ったこともない遺伝子上の娘はるを預かったり、元・新興宗教団体で自然食品栽培を謳う怪しげな団体の代表・小林と行天とは浅からぬ仲だったり。まほろの街のクセのある住人たちが巻き起こす緊張感のない大ピンチでも、思いがけない形で行天が中心になる。それにしても松田龍平はバディ・ムービーの相棒役にフィットする俳優だ。ひょうひょうとした“受け”の演技がいいのだろう。まほろに住む人々が抱える心の傷みやわだかまりは、いわば人生の中でくっついたり離れたりする疼きのようなもの。行天の不安定な小指にそっくりなのだ。一見不愛想なようで他人を思いやる“奥ゆかしい優しさ”がこのシリーズの最大の魅力である。
【65点】
(原題「まほろ駅前狂騒曲」)
(日本/大森立嗣監督/瑛太、松田龍平、真木よう子、他)
(思いやり度:★★★★☆)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
まほろ駅前狂騒曲@ぴあ映画生活

麦子さんと



亡き母の故郷で母の素顔を知り成長するヒロインを描く人間ドラマ「麦子さんと」。脱力系成長物語に、人気女優・堀北真希とは意外な組み合わせ。

アニメの声優を目指しアルバイト生活を送る麦子は、パチンコ店で働く兄・憲男と二人暮らし。父は亡くなり母は二人を置いて家を出ていたが、その母親・彩子が突然戻ってきて同居することになる。とまどう麦子だったが、ほどなく母は病で死亡。麦子は納骨のために母の故郷の田舎町を訪れる。そこで知ったのは、母が若い頃アイドル歌手を目指していたこと。町の人々は、かつての町のアイドルにそっくりな麦子の登場に活気づく。そんな彼らと交流するうちに、麦子は母の知られざる一面を知るようになるのだが…。

冴えない田舎町を舞台に描く、冴えない人々の冴えない日々。そんなヌルい空気の中に人生の真実をそっと忍び込ませるのが吉田恵輔監督の作風だ。作る映画は愛すべき小品。そんなささやかな作品に、メジャー系配給会社の顔である堀北真希がニット帽をかぶったオタク系女子というユニークな役柄で出演していることは、ちょっとした事件である。声優を目指すといってもさほど真剣な感じも受けないし才能もなさそう。兄は恩着せがましいばかりでどこか頼りない。そこに兄妹を捨てた母親が転がり込んだかと思ったらあっさりと他界。これでドラマになるのだろうか?と心配になるが、母の故郷で、かつての母を知る人々との交流を通して、ヒロインが大嫌いだった母親の“青春の続き”の日々を過ごす。過去と現在が交錯するような不思議な人間関係の中で、成長していくというドラマは、劇的な要素は何もなく、あくまでもまったりとしたものだ。麦子が目指すアニメの声優という設定が何も生かされていないことや、田舎町でアイドルを目指す女性の苦悩などがまったく描かれていないことなど、不満点は多い。それでも娘が母を理解し、母親に対して素直になりたかった自分を発見する姿は、心温まる。オフビートな笑いの中にちょっぴり涙。ユルいムードを楽しんで見てほしい。
【60点】
(原題「麦子さんと」)
(日本/吉田恵輔監督/堀北真希、松田龍平、余貴美子、他)
(母娘愛度:★★★★☆)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)

麦子さんと@ぴあ映画生活

探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点

探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点 ボーナスパック【Blu-ray1枚+DVD2枚組】
殺された友人の仇打ちに燃える探偵コンビの活躍を描く「探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点」。前回に比べ娯楽性がアップし、本格シリーズ化が楽しみな続編となった。

札幌・ススキノ。探偵の行きつけのショーパブの従業員で、友人のオカマのマサコちゃんが殺された。警察の捜査が一向に進まない状況の中、探偵は相棒の高田と共に独自に調査を始める。そんな中、美人ヴァイオリニストの河島弓子が探偵に正式に事件の調査を依頼する。マサコちゃんは弓子の熱烈なファンで、弓子にとっても大切な存在だったというのだ。調査を進めるうちに、マサコちゃん殺しには、地元のカリスマ政治家やヤクザ、さらに謎の政治活動団体の影がチラついてくる…。

原作は、札幌在住の東直己の小説「ススキノ探偵」シリーズ。北海道、札幌の歓楽街ススキノのバーを根城にする、女と酒が大好きでだらしないが正義感は強い探偵と、そんな彼にひょうひょうと寄り添う、腕っぷしの強い相棒・高田のコンビは、前作で観客をとりこにした。これはシリーズ化してほしい!と願っていたら、ちゃんとその期待にこたえてくれたのは、前作のヒットがあったからだろう。今回は、気のいいオカマの友人が手品大会で優勝しうっかり有名になってしまったため、地元の有力政治家の過去の汚点に触れてしまい、さらにはマサコちゃんがファンだった謎の美人ヴァイオリニストの思惑がからむという展開。冒頭の、大倉山シャンテのジャンプ場での探偵の絶対絶命の危機から始まり、札幌市内を走る市電の中での大乱闘、さらに札幌を飛び出し室蘭まで舞台を広げるなど、北海道の魅力を巧みに取り入れながら、アクションや娯楽性をスケールアップさせている。とはいえ、このシリーズの良さは、身の丈にあった事件を通して社会の闇を描いていくところにある。世界を救ったり、政治や経済の屋台骨を揺るがせたりはしないのだが、その分、欠点だらけの探偵が、友人を思い、自分の住む街を思って、日々を過ごし、疾走する姿に共感が持てるのだ。大泉洋、松田龍平の凸凹コンビはますます快調だし、尾野真千子扮するヒロインも事件をうまく転がす役で効いている。ハードボイルドなのだが笑いも絶妙。これは「3」を作るしかなさそうだ。
【70点】
(原題「探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点」)
(日本/橋本一監督/大泉洋、松田龍平、尾野真千子、ゴリ、他)
(友情度:★★★★☆)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点@ぴあ映画生活

映画レビュー「舟を編む」

舟を編む 豪華版(2枚組) 【初回限定生産】 [Blu-ray]
◆プチレビュー◆
辞書作りに携わる人々の静かな情熱を描く「舟を編む」。抑制したタッチが好感度大。 【70点】

 玄武書房に勤務する馬締光也は、卓越した言葉のセンスを買われ、辞書編集部に配属される。携わるのは、略語や若者言葉も取り入れた、今を生きる人のための生きた辞書「大渡海」作り。編集部の個性的な面々と共に、辞書作りに没頭していく馬締は、ある日、大家の孫娘の香具矢に出会いひと目惚れする…。

 原作は、2012年本屋大賞を獲得した三浦しをんの大ベストセラー。個性的なタイトルは、辞書(舟)を編集する(編む)の意味だ。途方もなく地味で長い作業に携わる人々を描くが、仕事に対してはこれみよがしの“頑張り”感はあえて描かない。だからこそ主人公の、恋への“一生懸命”が効いてくる。このバランスの妙が、本作の一番の魅力なのだ。

 馬締(マジメ)は、辞書作りという一生の仕事を見つけ、香具矢(かぐや)という生涯の伴侶を得た、幸福な人間である。そんな彼がさまざまな困難にぶつかりながら、情熱を傾ける辞書「大渡海」は、完成するまでなんと15年。用例採集、見出し語選定、語釈執筆、レイアウト、校正…。映画はそんな辞書作りの工程を丁寧かつユーモラスに描き、決して退屈させない。こつこつとした仕事ぶりは時に美しく、その“行間”には、恋や友情、出会いや別れがある。辞書作りが、次第に壮大なロマンに思えてくる。

 とりわけ、言葉に情熱を傾ける人たちの議論が、実にユーモラスで味わい深い。「右」という言葉の説明から始まり、「恋」の語釈に頭を悩ませ、「ダサい」は実体験に基づく例文がつく。言葉は生きているのだ。

 バラエティに富んだキャスティングは、脇役まで含めて実に味のある役者が揃っている。実は松田龍平を“久しぶりに”「いい俳優だ」と感じた。不器用で変人、親友はネコのトラさんというマジメが、仕事と恋によって成長し、いつしか人ときちんとコミュニケーションをとれる、頼れる編集者になっていくプロセスを、繊細に演じている。才人の石井裕也監督にしては、毒気が足りず、端正すぎるのだが、それが欠点になっていないのがこの作品の力だ。

 調べものはインターネットでサクッと検索が常識の今、この映画は「人によって紡がれる言葉は、人をつなぐ」という役割を再確認させてくれる。主人公は、他者と交わることによって、キラめく言葉の海へと舟をこぎ出していった。淡々としたタッチで途方もない情熱を描く、奥ゆかしい秀作である。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)端正度:★★★★☆

□2013年 日本映画 □原題「舟を編む」
□監督:石井裕也
□出演:松田龍平、宮崎あおい、オダギリジョー、他
(宮崎あおいの崎は代用文字。 正しくは“たつさき”)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
舟を編む@ぴあ映画生活

I'M FLASH!

I'M FLASH! [Blu-ray]I'M FLASH! [Blu-ray]
生と死の狭間で出会った二人の男の運命を描く「I'M FLASH」。常に死を意識した作品を撮る豊田利晃が、アクションも交え、珍しく生への渇望を見せる。

新興宗教“ライフイズビューティフル”の若き教祖・吉野ルイ。端正なルックスとカリスマ性で、マスコミにも注目される彼だが、ルイ自身は、インチキまがいのTVショーやセレブ並に贅沢な暮らしにうんざりしていた。ある夜ルイは、謎の美女・流美とドライブに出かけて事故を起こし、流美は植物状態になってしまう。ルイの母と姉は、スキャンダルを避けるために、3人のボディガードをつけて、ルイを教団の施設がある南海の孤島に避難させる。ボディガードの一人の新野風は、ゆがんだ一族とルイの言動に興味を持ち始めるが、ルイが教団を辞める決意を固めた時、新野たちに新たな指令が下った…。

「青い春」「ナイン・ソウルズ」「空中庭園」「蘇りの血」など異色作を連発する豊田利晃。“映画界の異端児”の新作は、藤原竜也と松田龍平の初共演で描く、生と死の境界線にある一瞬の閃光(FLASH)の物語だ。役割は藤原が教祖様、つまりは神。松田がボディガードあるいは殺し屋、つまりは悪魔といったところか。冒頭、ルイが事故を起こすシークエンスが描かれるが、バイクの少年は即死、同乗の女性は植物状態なのに、ルイは無傷。なんといっても神なのだから死なないのは当たり前なのだが、神自身が教団を離れるという“死”を望んでも、ギリギリのところでやっぱり生きようとしてしまうから、もうこれは業というしかない。新野はルイに興味をひかれるが、悪魔の役割を担う以上、ルイを殺すしかないのだ。ルイに家族はいびつを絵に描いたようで、教団の実質的支配者の母は、血縁者を教祖に仕立て、不要となれば容赦なく切り捨てる。姉は母の手先だし、兄は性転換して時折戻ってきては金をせびる有様。設定は、生と死の構図といい、デフォルメされたキャラといい、大げさな法螺話のように薄っぺらだ。だが、ここでふと気付く。この薄っぺらな感じがインチキくさい新興宗教のムードにぴったりフィットしているのだ。息をすることができない水中でのみ、初めて開放されるかのようなルイが、ラストに戦うのもまた海中。物語の救済は、最後に思わぬ形で表されるが、宗教の素地が基本的にない私などには、水へと帰るのは、この主人公には案外ハッピーエンドのような気がする。
【55点】
(原題「I'M FLASH!」)
(日本/豊田利晃監督/藤原竜也、松田龍平、水原希子、他)
(救済度:★★☆☆☆)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
I’M FLASH!@ぴあ映画生活

探偵はBARにいる

探偵はBARにいる 【Blu-ray1枚+DVD2枚組】「探偵はここにいる! ボーナスパック」探偵はBARにいる 【Blu-ray1枚+DVD2枚組】「探偵はここにいる! ボーナスパック」
クチコミを見る
名無しの探偵を演じる大泉洋がハマリ役の「探偵はBARにいる」。ススキノを舞台に、コミカルな味を加味して描くハード・ボイルドの快作だ。

札幌の歓楽街・ススキノのBARを根城にしている探偵に「コンドウキョウコ」と名乗る女から仕事が舞い込む。南という弁護士に会って「去年の2月5日、カトウはどこにいたか」と尋ねるというその奇妙な依頼を受けたとたんに、探偵は命を狙われるハメに。運転手兼助手の高田と共に事件を調べるうちに、浮かび上がってきたのは謎の美女・沙織。やがて探偵は過去の複数の殺人事件に関わっていくのだが…。

原作は、東直己の人気シリーズ「ススキノ探偵シリーズ」の第2作「バーにかかってきた電話」。酒と美女を愛する探偵には、事務所もなく、名前もない。「俺」としか表現されない彼は、クールにふるまってはいるが、中身は熱血漢でロマンチストという大胆かつ繊細な男だ。のんびり屋なのに、ケンカとなると滅法強い相棒の高田との名コンビぶりが魅力的で、二人の軽妙な会話は笑いを誘う。今のご時勢、どこまでもクールでタフな探偵ではなく、カッコいいのにドジも踏む、憎めない探偵の方がずっとリアリティーがあるというものだ。北海道出身の大泉洋が雪中での体当たりのアクションを披露し、今までのイメージを一新するのも見逃せない。過去の放火事件と会社社長撲殺事件、さらに関西裏社会の暗躍がつながったとき、哀しい復讐と愛が浮かび上がってくる。探偵ものにはファム・ファタールはお約束だが、魔性の女を演じるのは小雪。電話の声で依頼主の正体は最初からバレバレだし、謎解きとしては少々弱い。だが、探偵と助手のでこぼこコンビに絶妙な味がある。サブキャラも皆、イイ感じだ。続編に期待。いや、高田のスピンオフもいいかも。ともあれ、ぜひシリーズ化を望む。
【70点】
(原題「探偵はBARにいる」)
(日本/橋本一監督/大泉洋、松田龍平、小雪、西田敏行、他)
(名コンビ度:★★★★★)



にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)

探偵はBARにいる@ぴあ映画生活

まほろ駅前多田便利軒

まほろ駅前多田便利軒 スタンダード・エディション [DVD]まほろ駅前多田便利軒 スタンダード・エディション [DVD]
心に傷を持つ同士のバディ・ムービー「まほろ駅前多田便利軒」は、力の抜け具合が絶妙だ。ゆるい空気の中にうっすらとにじむ正義感がいい。瑛太と松田龍平のコンビがいい味を出している。

東京郊外の町まほろ市の駅前で便利屋を営む多田のもとへ、ひょんなことから同級生の行天が転がり込む。まじめでしっかり者の多田と、飄々としてつかみどころがない行天は、便利屋にやって来るワケありの客の人生にかかわるうちに、互いの距離を縮めていく。二人の前には、自称コロンビア人娼婦のルルや、あぶないアルバイトに手を染める小学生の由良など、一筋縄ではいかない客たちが、次々に現れる…。

二人の男は、共にバツイチで三十路。世間一般から見ればショボくれた負け組人間に見えるだろう。確かに、ままならない人生をまったりと生きる彼らは勝ち組とは言えないが、そんな人間でも二人になれば不思議なパワーが生まれるから、やっぱり人のつながりとはあなどれないものだ。特に頑固できちょうめんな多田が一歩踏み出せずにいるとき、自分勝手に生きているように見える行天が言う、的を突いた言葉に胸を打たれる。「誰かに必要とされるということは、誰かの希望になるということでしょ」。こう言われては、多田じゃなくても見て見ぬふりなどできないではないか。多田と行天が抱えるそれぞれの心の傷が、無言のうちに共鳴しあった時、結果的にとぼけた人助けにつながっていく。それが説教くさくなく、淡々とした描写なのが心地よい。原作は三浦しをんの人気小説で、映画に描かれた以外にも魅力的なエピソードがたくさんある。もしや続編ができるかも…と、期待している。
【65点】
(原題「まほろ駅前多田便利軒」)
(日本/大森立嗣監督/瑛太、松田龍平、片岡礼子、他)
(名コンビ度:★★★★☆)
チケットぴあ



にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
まほろ駅前多田便利軒@ぴあ映画生活

シネマッシモにようこそ
◇ シネマッシモについて ◇

このブログが気に入ったら、ポチッとクリックお願いします♪
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

映画レビュー用BRバナー
インフォメーション


映画ライター渡まち子が運営するセカンド・ブログ「映画の中に猫がいる」もよろしく!【猫目線】で語る映画評で、のんびり、まったり運営中です(笑)。 猫好きの方、映画好きの方、ぜひ遊びにきてください。相互リンクも募集中!
こちらからどうぞ!
おすすめ情報
作品検索はこちら
Google
WWW を検索
このブログ内を検索
コメント(承認済)
映画レビュー(長文)索引

    
    
    
    
    
    
    
  
    

A−Z
0−9
カテゴリ
お仕事受注
映画評やコラムの執筆、講演など、映画に関する仕事を承ります。連絡はメールでお気軽にどうぞ。

 メールはこちらから↓
cinemassimo555★jcom.home.ne.jp
(★を@に変更して下さい)

執筆やラジオ出演など、メールと電話で対応可能な場合は、全国から仕事を受注していますので、まずはお問合せください。
プロフィール
プロフィール more
◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
震災には負けない!
リンクシェア・ジャパン 東北地方太平洋沖地震 義援金プロジェクト

犬・猫の総合情報サイト『PEPPY(ペピイ)』

icon icon
おすすめ情報
おすすめ情報

twitterやってます!
おすすめ情報

楽天市場
おすすめ情報

Archives
相互リンクについて
相互リンクについて

  ↑ 必ずお読みください。
いいね!もよろしく♪
Facebookをご利用の皆さん、このブログが気に入ったら、ぜひ「いいね!」ボタンをポチッと押してください。 渡まち子の励みになります!
タグクラウド
  • ライブドアブログ