映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「あさひなぐ」「ナミヤ雑貨店の奇蹟」「プラネタリウム」「ユリゴコロ」etc.

永瀬正敏

パターソン

Paterson (Blu-ray + Digital HD)
ニュージャージー州パターソン。街と同じ名前のバスの運転手、パターソンは、毎日を規則正しいリズムで暮らしていた。早朝、隣で眠っている妻ローラにキスをし、朝食を食べて出勤、業務をこなして帰宅する。妻と夕食を取り、愛犬マーヴィンと夜の散歩。馴染みのバーに立ち寄り一杯だけ飲んで帰宅した後は、妻の横で眠りにつく。そんな変わり映えのしない日々の中、パターソンは秘密のノートに、心に浮かぶ詩を書き留めていく…。

バスの運転手で詩人である主人公の一週間を淡々としたタッチで描く「パターソン」。市井の人々の、平凡な日常を丁寧に描く作風は、NYインディーズ映画の雄と呼ばれるジム・ジャームッシュ監督の初期の作品群にとてもよく似ている。バスの運転手のパターソンが作る詩は、どれも身の回りの物事を描写する静かな作品ばかりだ。映画で描かれる1週間には、内向的なパターソンの心を少しだけざわつかせる“事件”が起こったりはするが、外交的で活発な妻ローラのあたたかい励ましもあり、パターソンは詩作に励むことができる。バスの窓から見える風景や車内の乗客のとりとめのない会話、無邪気な狂気を感じさせるローラへの変わらぬ愛。そんな日常に目を凝らし、耳を澄ますパターソンは、毎日は1日として同じ日はないことを知っている。そのことがワーキングクラスの彼をアーティストにしているのだ。

繰り返し登場する双子、バーの常連客の痴話喧嘩、ローラのモノトーンへのこだわりなど、どうでもいいけれど愛おしいディテールは、日常からインスピレーションを得るパターソンの詩の得がたい味わいの糧なのだろう。ハリウッド大作からインディーズ作品まで神出鬼没のアダム・ドライバーの独特のたたずまいが素晴らしい。終盤に登場する日本の詩人役の永瀬正敏の存在感もまた印象的だ。この穏やかな映画は、平凡な日常の美しさと奥深さをつかめたなら、人生はきっと豊かなものになると教えてくれる。イングリッシュ・ブルドッグの名演と、まったりと流れる音楽が隠れた魅力だ。
【70点】
(原題「PATERSON」)
(アメリカ/ジム・ジャームッシュ監督/アダム・ドライヴァー、ゴルシフテ・ファラハニ、永瀬正敏、他)
(原点回帰度:★★★★★)
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単調な毎日を送っていた美佐子は、視覚障害者向けの“映画の音声ガイド”の仕事をすることになり、その仕事がきっかけで、弱視の天才カメラマン・雅哉と出会う。雅哉は無愛想で、美佐子の仕事にも容赦なく厳しい言葉を浴びせるが、雅哉が過去に撮影した夕日の写真に深く感動した美佐子は、いつかその場所に連れ行ってほしいと頼む。だが、命よりも大切なカメラを前にしながらも、雅哉の視力は次第に奪われていった。光を失っていく雅哉の葛藤を見つめるうちに美佐子の中で何かが変わり始める…。

映画の音声ガイドを作成する女性が視力を失いゆくカメラマンと出会ったことで生きる希望を見出していく人間ドラマ「光」。映画の音声ガイトとは、視覚障害者が映画を楽しめるように、映画の登場人物の動作や情景を言葉で伝える仕事。バリアフリー上映会などで知られているサービスだ。恥ずかしながら私は、映画業界の隅っこにいながら、映画の音声ガイドがこんなにも推敲を重ねて作られていることを、本作で初めて知り、まずその繊細で丁寧な仕事に感動を覚えた。ストーリーは、人間ドラマにしてラブストーリーともいえるものだが、悩みながら音声ガイトの仕事をしている美佐子は人生における道しるべである光を求め、やがて視力を失うカメラマンの雅哉は、文字通り光を失いつつある。光というテーマが非常に象徴的で、物理的な明るさを意味すると共に、生き方を導く光という希望の意味もある。物語は美佐子と雅哉のそれぞれの人間関係を描きながら、二人のコミュニケーションの行方を掘り下げる。映画そのものも光と影の芸術だが、単なる映画論を超えて、人間関係を深く洞察したところが素晴らしい。劇中に登場する映画は難解な作品と称されているが、本作は決して難解ではなく、むしろすうっと心に入り込んでくるような透明感を感じた。永瀬正敏は「あん」に続いての好演で、この難役を真摯に演じているし、河瀬組初参加の水崎綾女の、ちょっとぎこちない感じもまた役柄にフィットしている。主観を排除し事実を正確に描写することで映画の輝きを言葉で伝える音声ガイドの難しさと素晴らしさが印象に残ったが、視覚障害者は目ではなく心で映画を“見る”というスタンスに、襟を正したくなった。暗闇で迷うことはあっても、コミュニケーションによって、きっと希望の光をみつけることができることを教えてくれる作品である。
【70点】
(原題「光」)
(日本/河瀬直美監督/永瀬正敏、水崎綾女、藤竜也、他)
(繊細度:★★★★☆)
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KANO 1931海の向こうの甲子園

KANO ―カノ―: 1931 海の向こうの甲子園
1931年に台湾代表として見事甲子園出場を果たした学校・嘉農の実話「KANO 1931海の向こうの甲子園」。3時間5分の長尺の理由は野球シーンへの徹底したこだわり。

日本統治下の台湾。1931年。弱小チームの嘉義農林野球部に新監督として日本人の近藤兵太郎が赴任する。どこかのんびりとしたチームだった嘉農は、近藤監督による厳しい指導で実力をつけ、勝利への意欲も湧き上がってきた。そして1931年、台湾代表大会で優勝した彼らは、日本に渡り、憧れの甲子園で決勝まで勝ち進むのだが…。

台湾代表が日本国内の高校生たちとともに甲子園に出場し、素晴らしい成績を残していたという事実を、私はこの映画で初めて知った。、日本統治下の台湾で嘉農を指導した近藤兵太郎の野球への情熱は、そのままスパルタ式の指導となって球児たちを鍛えていくが、少なからぬ民族差別があったであろう当時の台湾で、日本人、台湾人(漢人)、台湾原住民それぞれの特徴をいかしたチーム作りを試み、民族の壁を越えてチーム一丸となって戦った事実は、崇高なものだ。弱小チームの躍進劇、監督とチームの絆など、ストーリーに新味はない。歴史的に知られる水利技術者のエピソードは、台湾では有名でも、いっそ別の映画としてきちんと語るべきものだし、台湾にもきっとあった反日感情にまったく触れられていないこともやや気になる。それでも、ある人物の回想によって思い出される青春時代というスタイルは、郷愁を誘うものだし、何より野球シーンに嘘がない。チームのエース・呉を演じるツァオ・ヨウニンは、名門大学の現役外野手。他のキャストも野球経験者多数だそう。決してあきらめない嘉農の精神に、観客はいつしか“天下の嘉農”の応援団になってしまうはずだ。185分という長尺で体力を要する映画だが、情熱を込めてたっぷりと野球を描き込んだ物語に、気が付けば引き込まれていた。
【65点】
(原題「KANO」)
(台湾/マー・ジーシアン監督/永瀬正敏、坂井真紀、ツァオ・ヨウニン、他)
(スポ根度:★★★★☆)
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KANO〜1931海の向こうの甲子園〜@ぴあ映画生活

毎日かあさん

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西原理恵子の人気エッセイ漫画の映画化は、独特のおおらかなユーモアで綴る、泣き笑い型ホームドラマだ。元夫婦の、小泉今日子と永瀬正敏が共演し、共にいい味を出している。締切に追われる人気漫画家のサイバラは、わんぱく盛りの二人の子供を育てながら、毎日忙しく働いている。ある日、元戦場カメラマンでアルコール依存症の治療中の夫のカモシダが勝手に退院、家に戻ってくるが、酒を止められず同じ失敗を繰り返す夫にサイバラはついに離婚を決意することに。それでも、彼を支えるサイバラだったが、カモシダはガンで長く生きられないことが分かる…。

東陽一監督の「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」は、アルコール依存症と戦い、ガンで逝った元戦場カメラマンの鴨志田穣の視点から描いた物語だった。本作は、同じ時期、同じ状況を描くが、妻サイバラの目を通して語る家族の物語になっている。ひとつの事実を同じ映画の中で別の視点から描くケースはあるが、別の作品として2本の映画が完成するのは珍しい。カモシダが失った家族の大切さに気付くとき、本作のサイバラは「一度好きになった人を嫌いになるのはむずかしい」ことを悟り、そのやるせない思いがこの作品のテーマになっている。家庭内暴力や離婚、アル中に闘病。こんな要素を並べると、ずいぶんシリアスに思えるが、映画は非常にあっけらかんとしている。それはひとえにヒロインのサイバラの懐の深さだ。特徴的なのは母親の存在で、カモシダ目線だった東作品では香山美子が演じる母が息子を支えながら元嫁のサイバラを頼りにするのに対し、本作で正司照枝演じる母は実の娘のサイバラと孫たちがカモシダによってダメになりはしないかと心配でならない。それでも二人の母はこのフツーじゃない夫婦を温かく見守っていて、それは母としてのサイバラの強さの源になっているように思う。酒を飲みながら寝る前の子供に絵本を読み聞かせ、家庭内でのゴタゴタをママ友たちと豪快に笑い飛ばす。小泉今日子のキモの座り具合、永瀬正敏のどこか居心地の悪そうなたたずまいがいい。元夫婦共演が興味深いが、出演する俳優の私生活や過去の作品が映りこむのが、活字とは違う映像メディアの面白さだ。
【65点】
(原題「毎日かあさん」)
(日本/小林聖太郎監督/小泉今日子、永瀬正敏、矢部光祐、他)
(おおらか度:★★★★★)

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ゼラチンシルバーLOVE

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映画と呼ぶにはあまりに不思議な手触りの作品だ。一流の写真家・操上和美の美意識にどっぷり浸って、日常から乖離する感覚が味わえる。カメラマンの男は、依頼されて、向いの部屋に住む謎めいた女を盗撮し続けるが、やがて仕事を越えて彼女に惹かれてゆく。セリフはほとんどなくアップを多用した映像はおしゃれな写真集のよう。総じてひとりよがりの世界だが、それでもまったりとした雰囲気は奇妙に心地よい。一応ストーリーはあるもののイメージの羅列でつづるこの作品、一種の実験映画と言えようか。女は実は殺し屋。繰り返し描かれる、ゆでたまごを食べる場面がエロチックだ。
【50点】
(日本/操上和美監督/永瀬正敏、宮沢りえ、役所広司、他)
(アーティスティック度:★★★★★)

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腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

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サトエリの演技力のなさは、エキセントリックな役柄の時、かえってプラスに作用するから不思議である。物語はド田舎を舞台に自意識過剰の美女と彼女にいたぶられる家族の話だ。傲慢な姉と、実はしたたかな妹のバトルは、終盤に大技が仕込まれている。だが、一番コワいのは虐待にメゲない兄嫁だ。
【50点】
(日本/吉田大八監督/佐藤江梨子、佐津川愛美、永作博美、永瀬正敏、他)
(女は怖いヨ度:★★★★☆)

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プロフィール
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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