映画通信シネマッシモ


映画通信シネマッシモは、2018年4月をもって、終了しました。

ブログ終了にあたり、たくさんのあたたかいコメントをお寄せいただき、本当にありがとうございました。
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長い間のご愛顧に心より感謝いたします。

沼田まほかる

彼女がその名を知らない鳥たち

映画「彼女がその名を知らない鳥たち」オリジナル・サウンドトラック
15歳年上の男・陣治と同居し、彼の少ない稼ぎに依存しながら、働きもせず怠惰に暮らす十和子は、8年前に残酷なやり方で自分を捨てた男・黒崎のことが忘れられずにいた。ある日、十和子は、黒崎の面影と重なる妻子持ちの男・水島と出会い、彼との情事に溺れるようになる。そんな中、突然やってきた警察から黒崎が行方不明になったと知らされる。どんなに罵倒されても十和子につくし続ける陣治が執拗に自分を付け回していることを知った十和子は、黒崎の失踪に陣治が関わっているのではないかと疑い始める…。

嫌悪感を抱く男に依存する身勝手な女と、異常なまでに彼女に執着する下品な男の歪んだ関係を描くミステリー仕立ての恋愛映画「彼女がその名を知らない鳥たち」。原作はイヤミスの小説家・沼田まほかるの人気小説だ。何しろ、共感度0パーセント、不快度100パーセントとのキャッチコピー通り、登場人物はろくでなしばかり。自分勝手で自堕落な暮らしを送る自己中女の十和子。不潔で卑屈でストーカー気質の中年男・陣治。身勝手で卑劣、時に暴力さえふるうゲスな男・黒崎に、不誠実で薄っぺらなクズ男・水島。十和子のせりふではないが、どいつもこいつも虫唾が走るヤツばかりだ。

徹底的に共感を拒むキャラクターたちが引き起こす事件には、もちろん意外なオチがある。これが案外読めてしまうので、ミステリーとしては少し弱い気がするが、自分勝手な十和子が欲望に忠実であることがひとつの鍵だ。そう思ってこのラストを思い返すと、この作品が、究極のラブストーリーだと思えてくる。白石和彌監督は「凶悪」「日本で一番悪い奴ら」などの実録もので人間の醜い部分を容赦なくあぶり出したが、本作では、欠点を隠そうともしない人間臭い男女を通して愛の本質に迫っている。その気概に、蒼井優と阿部サダヲの2人が凄みのある演技で答えた。劇中では、十和子の心にふと紛れ込む幻想が、醜い現実をより一層際立たせるが、最後に登場する鳥の飛翔の美しさは、愛に飢えた人々に一筋の光を与えているかのようだった。
【70点】
(原題「彼女がその名を知らない鳥たち」)
(日本/白石和彌監督/蒼井優、阿部サダヲ、松坂桃李、他)
(共感度:☆☆☆☆☆)
チケットぴあ

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ユリゴコロ

ユリゴコロ (双葉文庫)
カフェを営む亮介の平穏な日常は、父が余命宣告され、さらに婚約者の千絵が失踪するという事態で、突如崩れ去ってしまう。失意の亮介は、父が住む実家で“ユリゴコロ”と書かれたノートを発見。そこには、人間の死でしか、生きていくための拠りどころを感じられない殺人者・美紗子の告白の物語がつづられていた。繰り返される殺人、友人の自殺、自分を心から愛してくれる男性・洋介との出会い…。これは創作か、事実か。誰が何のために書いたのか。なぜ自分はこれほどまでにこのノートに惹きつけられるのか。そんな時、亮介のもとに、千絵とかつて同僚だったという女性が、千絵の伝言を持って現れる…。

人間が死ぬ瞬間を見ることを唯一の心の拠りどころとして殺人を繰り返す女の壮絶な人生を描くミステリー「ユリゴコロ」。原作は沼田まほかるの同名小説で、いわゆる“イヤミス(読後にいやな気分になるミステリー)”と呼ばれるジャンルだ。映画は、亮介が読む手記の中の過去の物語と、亮介と父、失踪した婚約者・千絵らの現在のパートが交錯しながら、進んでいく。

殺人でしか心が満たされないという設定上、かなり凄惨な描写が登場するが、同じく死に取りつかれた美紗子の友人・みつ子のリストカットといった、殺人とは少し違う流血場面も相当に生々しい。ミステリーなので詳細は明かさないが、ノートに引きこまれる前半が心をザワつかせる異様なサスペンスなのに対し、後半は一気にラブストーリーに傾き、トーンダウンする感は否めない。さらに終盤には衝撃の事実が用意されているが、これが、あまりに偶然に頼る設定なのが、気になった。とはいえ、終始、暗い情念を感じさせるヒロイン役の吉高由里子は熱演だし、心に深い傷を抱えながら美紗子を愛し抜く洋介を演じる松山ケンイチもいい。サイコ・スリラーから純愛ラブストーリー、そして家族愛のドラマへ。テイストの変化がこの作品の個性だろう。
【60点】
(原題「ユリゴコロ」)
(日本/熊澤尚人監督/吉高由里子、松坂桃李、松山ケンイチ、他)
(流血度:★★★★☆)
チケットぴあ

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