映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「フィフティ・シェイズ・ダーカー」「ハクソー・リッジ」「結婚」「ありがとう、トニ・エルドマン」etc.

浅野忠信

淵に立つ

淵に立つ(豪華版)[Blu-ray]
郊外で小さな金属加工工場を営む鈴岡家は、夫の利雄と妻の章江、10歳の娘・蛍の3人で穏やかに暮らしていた。ある日、利雄の古い知り合いで、最近、服役を終えたばかりの八坂草太郎がやってくる。利雄は妻の章江に何の相談もなく彼に職を与え、自宅の空室を提供する。最初は不満だった妻はやがて礼儀正しい八坂に惹かれ、蛍もまた無邪気になついていき、八坂は一家になじんでいく。だが、彼はある時、一家にあまりにも残酷な事態を引き起こした末に唐突に姿を消す…。

ある一家に謎めいた男がやってきたことから起こる不条理な人間ドラマ「淵に立つ」。一見幸せな家族が、異質な闖入者によって、崩壊していくストーリーは、P.P.パゾリーニ監督の「テオレマ」を思い起こさせる。だが闖入者であるテレンス・スタンプがふっといなくなって終わる「テオレマ」と違い、本作で闖入者を演じる浅野忠信は物語の中盤で姿を消す。その後の展開にこそ、本作の凄みがあるのだ。鈴木夫婦は一見仲がよさそうだが実際は仕事の連絡以外に会話はなく、夫婦仲は冷え切っている。従順そうな娘も嘘をついている。夫の利雄は過去のある事件のことを妻に秘密にしている。八坂は一家を崩壊させるが、この家族はすでに壊れていたのだ。中盤に起こる暴挙、八坂が姿を消して8年がたってからわかる真実とその後の衝撃。物語は、社会最小の単位である家族というつながりの常識を覆すものだ。家族を覆う欺瞞を暴力的にはぎとり、壮絶な不条理を突きつける。浅野忠信が静かに熱演する八坂が、真っ白なシャツで登場し、中盤に真っ赤なTシャツに着替えるのが象徴的だ。役者は皆、怪演に近い熱演だが、本作の本当の軸は妻を演じる筒井真理子だろう。肉体改造も含めて、この人の女優魂を見た。決して後味がいい作品ではない。いや、むしろ見たことを後悔させる恐れさえある。だが、ただ気持ちよくわかりやすいものだけが映画ではない。この衝撃はまぎれもなく観客に「映画とは何か」と問い詰める。カンヌ国際映画祭ある視点部門審査員賞を受賞した、極めつけの問題作だ。
【70点】
(原題「淵に立つ」)
(日本・仏/深田晃司監督/浅野忠信、古舘寛治、筒井真理子、他)
(後味悪さ度:★★★★★)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)

岸辺の旅

岸辺の旅 [Blu-ray]
3年間行方不明だった夫の優介が、突然、妻の瑞希のもとへ戻ってくる。優介は「自分は死んだ」と告げ、瑞希に一緒に旅に出ようと誘う。それは優介がお世話になった人々を訪ねる旅だった。空白の時間を埋めるかのように、ふたりは各地を転々としながら、互いのことを深く知るようになる。そして優介が姿を消した本当の理由が明かされるが、彼が瑞希にさよならを言う時は刻々と迫っていた…。

湯本香樹実の小説を映画化した「岸辺の旅」は、夫婦二人の旅を描くラブストーリーだ。死者と生者が何の疑問もなく同居している不思議なストーリーである。岸辺とはおそらく彼岸のことだろう。あちら側とこちら側の境界線は限りなく曖昧で、黒沢清監督ならではの不気味なホラーテイストもしっかりと味わえる。全編を不穏な空気で包みながらも、それでもこの物語はどこかあたたかみがあるのだ。「俺、死んだよ」としれっと言う優介と、その言葉をあっさりと受け止めるだけでなく一緒に旅までしてしまう瑞希。映画序盤で、説明抜きで生と死をさらりと超越してみせるのが上手い。ほのぼのとしたエピソードもあれば、後悔や無念、時には執念もある。いったいこの夫婦はどこへ向かうのか。ひょうひょうとした浅野忠信、静かだがどこか凄味を感じさせる深津絵里、ひときわ存在感がある小松政夫と、役者も揃っているが、中でも短い登場シーンながら強烈な爪痕を残す蒼井優が印象的だ。現実と幻を同じ地平で描きつつ、しっかりと未来を肯定する物語に仕上がっている。
【70点】
(原題「岸辺の旅」)
(日本/黒沢清監督/深津絵里、浅野忠信、小松政夫、他)
(不穏度:★★★☆☆)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
岸辺の旅@ぴあ映画生活

私の男

私の男 [Blu-ray]
雪に閉ざされた世界を舞台に禁断の愛を描く「私の男」。北海道パートの映像が素晴らしく魅力的。

北海道・奥尻島を襲った大津波によって家族を失った10歳の少女・花は、遠い親戚だという腐野淳悟に引き取られ、互いに寄り添うように暮らす。高校生になった花と淳悟のただならぬ関係に気付いた地元の名士・大塩は、そのことを花に問い詰め、淳悟と離れるように諭す。やがて大塩の死体が流氷の海で発見され、花と淳悟の二人は、逃げるように北の海から東京へと向かうが…。

原作は直木賞を受賞した桜庭一樹の同名小説。近親相姦や殺人など、ショッキングな要素が散りばめられた、官能的な衝撃作だ。何と言っても、オホーツクの北の海、流氷、雪に閉ざされた街といった寒々しい空気をとらえたカメラワークが素晴らしい。閉ざされた世界で生きる孤独な男女のゆがんだ関係と、雪と氷の世界が呼応して、インモラルな愛の物語を構築しているのだ。北海道パートの物語がこのように魅力的なのに対し、逃避行先の東京は、花の小悪魔ぶりが紋切型で面白味に欠ける。とはいえ、若き演技派の二階堂ふみの、無垢と淫蕩の二面性は、見事なファム・ファタールぶりだ。熊切和嘉監督は「海炭市叙景」と同じ北国を舞台に、「夏の終り」にも通じる暗く濃密な愛を描いたが、本作では、禁断の愛に溺れる部屋が血の海になるといった異様な幻想シーンなど、らしからぬ演出も織り交ぜている。原作では様々な語り部が登場する物語を、時系列に沿って分かりやすく構築したのは、花が結果的にすべての主導権を握るストーリーを浮き彫りにするためなのだろう。グロテスクな後味が残る本作は、好きな映画かと問われれば、明らかに違うのだが、記憶に強く焼き付く作品だった。
【65点】
(原題「私の男」)
(日本/熊切和嘉監督/浅野忠信、二階堂ふみ、藤竜也、他)
(ファム・ファタール官能度:★★★★☆)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
私の男@ぴあ映画生活

バトルシップ

バトルシップ Blu-ray & DVD (デジタルコピー付)バトルシップ Blu-ray & DVD (デジタルコピー付)
クチコミを見る
正体不明のエイリアンの侵略部隊と闘う世界連合艦隊の壮絶なバトルを描くSF超大作「バトルシップ」。浅野忠信が主役級の役で奮闘している。

アメリカをはじめとする世界各国の護衛艦が集結して大規模な軍事演習が行われるハワイ沖。アメリカ海軍の新人将校アレックスは、日本の自衛艦の艦長ナガタに対しライバル心をむき出しにしながら演習に参加していた。だが、沖合に突如エイリアンの母船が現れ、未知なる武器と圧倒的な破壊力で人類に攻撃を開始。弱点も戦略も読めないエイリアンたちから、バリアの内側に閉じ込められ、基地と連絡がとれなくなったアレックスらは、ナガタと協力してこの強敵に立ち向かうことになる…。

宇宙からの侵略というシンプルなストーリーの、このSF超大作の元ネタは、アメリカで定番のボードゲーム“Battleship”。相手に見えないように自分の陣地に船を配置、そして相手の船の位置を予測して当てるというものだそう。こんな単純なルールのゲームがよくもまぁこれだけの“大騒ぎの映画”になったものよと感心する。だが、そのゲームのルールのキモの部分は、圧倒的な敵であるエイリアンへの戦略として巧みに生かされている。エイリアンの母船はレーダーに写らないので、ある方法で敵の位置を察知する作戦がそれ。浅野忠信演じるナガタ発案のこの作戦の場面は、潜水艦ものにも似た緊張感が漂い、見所のひとつだ。さらに相手に見えないようにとのルールは、映画終盤にアレックスがとる驚くべき戦法として再登場するという仕掛けである。クライマックスには博物館である戦艦ミズーリまで総動員。何しろ、ド迫力の戦闘シーンが映画の9割を占めていて、人間ドラマなど、あったのか?と首をかしげたくなるほどなのだが、水という、VFXで最も高度な技術を要する映像表現の高度なテクニックにはただただ目を見張るばかりだ。海上を舞台に大型の駆逐艦とエイリアン、さらに歯車状の未知なる武器など、徹底したバトルで観客を圧倒し、ハリウッドの力技を見せ付けられる。そんな作品に、日本人俳優が主役級の役で出演していることを誇るべきなのだろう。
【50点】
(原題「BATTLESHIP」)
(アメリカ/ピーター・バーグ監督/テイラー・キッチュ、浅野忠信、リーアム・ニーソン、他)
(破壊度:★★★★★)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)

バトルシップ@ぴあ映画生活

月光ノ仮面

月光ノ仮面 [DVD]月光ノ仮面 [DVD]
クチコミを見る
板尾創路の監督第2作は名作落語をベースにした「月光ノ仮面」。シュールな展開に絶句する。

昭和22年。戦争で負傷し記憶を失った男が帰郷する。この男こそ、戦前、人気、実力ともに認められた落語家・森乃家うさぎ。男はかすかな記憶をたどるように、十八番だった落語“祖忽長屋(そこつながや)”を、空ろな口調でつぶやく。やがて、もう一人の男が戦地から復員してきて、こちらが本物のうさぎではないかと騒ぎが持ち上がる…。

古典落語の“祖忽長屋”とは「死んでいる自分を見ている自分はいったい誰だ」と悩む、一種の幽体離脱を描いたシュールな演目。祖忽(そこつ)とはあわて者という意味だ。その祖忽長屋をベースにした本作の世界観は、前作「板尾創路の脱獄王」でも見せた、多くを語らず謎を投げつける独特なもの。大好きな月への思いを込めたおとぎ話を撮りたかったという監督自身の言葉からもわかるように、人を惑わす月のように、観客はこの物語に翻弄される。うさぎの正体や穴の中の女の意味、さらには流血と阿鼻叫喚のラストシーンと謎だらけ。時空が歪んだようなレトロな世界で観客を振り回す板尾ワールドは、理屈やつじつまよりも、アイデアが独り歩きしているかのように思える。観た人が「ワケがわからない」思いを抱いて劇場を出ることが目的と語っていた板尾監督。その目論見はとりあえず成功している。無論私も“ワケがわからない”のだが、監督の、不条理なものへの憧憬を感じた。
【50点】
(原題「月光ノ仮面」)
(日本/板尾創路監督/板尾創路、浅野忠信、石原さとみ、他)
(レトロ度:★★★★★)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)

月光ノ仮面@ぴあ映画生活

マイティ・ソー

マイティ・ソー 3Dスーパーセット [Blu-ray]マイティ・ソー 3Dスーパーセット [Blu-ray]
北欧神話にアメコミを足し合わせ、ケネス・ブラナー流に料理すると、古典的なヒーローが誕生する不思議。クリス・ヘムズワースのマッチョぶりが妙に笑える。

神の世界“アスガルド”で最強の戦士であったソーは、横暴なふるまいで神々の世界を危険にさらす。父であり神々の王であるオーディンはソーの行為の怒り、彼の力と最強の武器“ムジョルニア”を奪い、地球へと追放する。無力で地球に落ちたソーは天文学者のジェーンと出会ったことで、徐々に人の痛みや弱さを理解していく。一方で、邪神のロキは神々の世界の征服を企み、ソーのもとへ凶悪な敵を送りこむ…。

何しろ主人公は神様だ。豪快で乱暴でオレ様ヒーローっぷりはハンパではない。荒々しいイメージの北欧神話をベースに、最新VFXを駆使した映像世界が、不思議なムードを醸し出している。監督は、意外なことに、シェークスピア劇を得意とするケネス・ブラナーだ。落ち着いて考えれば、かなりムチャクチャな話なのに、重厚に仕上げてしまうのは、さすがとしかいいようがない。物語を楽しめる理由は、主人公ソーが極めて分かりやすいキャラクターだからだろう。神々の王の息子という高貴な血筋の彼は、後継者としての自覚は有り余るほどで、闘いには進んで身を投じる正義感。傲慢な性格も、地球人の女性に恋すればあっさりと改善される。根は素直なのだ。トンカチ…、いやいや、ハンマーの形をした武器“ムジョルニア”はいかにも無骨だが、本物の戦士だけが使いこなすことができる。その資格は、父と子の葛藤を乗り越えた先にあったというのは、ほとんどギリシャ悲劇のようだ。ソーに仕える3人の忠実な戦士の一人ホーガンを演じる浅野忠信が、本作でハリウッドデビューを果たしているが、セリフは少ないもののビジュアル的には決して埋没していない。話は荒唐無稽だが実力ある役者との共演で、日本人俳優が存在感を示したことは喜ばしい。
【60点】
(原題「THOR」)
(アメリカ/ケネス・ブラナー監督/クリス・ヘムズワース、ナタリー・ポートマン、アンソニー・ホプキンス、他)
(豪快度:★★★★☆)
チケットぴあ


にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!


人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)

マイティ・ソー@ぴあ映画生活

【送料無料】マイティ・ソー【MARVELCorner】

【送料無料】マイティ・ソー【MARVELCorner】
価格:3,092円(税込、送料別)

これでいいのだ!! 映画★赤塚不二夫

これでいいのだ!!映画★赤塚不二夫 スタンダード版 [DVD]これでいいのだ!!映画★赤塚不二夫 スタンダード版 [DVD]
“本物のバカになる”ことは一種の才能。天才ギャグ漫画家の赤塚不二夫と担当編集者の破天荒な日々は、ギャグに真剣に取り組むことと実生活の両立のバランスを見極める日々だった。

小学館に入社した生真面目な初美は、大好きな少女マンガではなく「少年サンデー」に配属され、人気絶頂のギャグ漫画「おそ松くん」の作者・赤塚不二夫の担当になる。赤塚の強烈な手ほどきのもと、徐々に“バカ”の才能を開花させる初美。だがそんな時、赤塚がライバル出版社に「天才バカボン」の連載を始め、人気が爆発してしまう…。

原作は赤塚不二夫の編集担当者として35年の親交があった武居俊樹氏の著書「赤塚不二夫のことを書いたのだ!!」。映画は、性別を女性に変更して堀北真希を配し、華やかさを演出している。バレリーナやセーラー服など、コスプレで熱演するのは、国際派俳優の浅野忠信。意表を突くキャスティングがまず見所だ。昭和を熱狂させたギャグ漫画の生みの親は、マザコンで社会性には欠けるのだが、心身ともに命懸けでバカになることで作品を生みだしていく情熱はやはり凡人ではない。初美がバカになる才能を発揮するのが酒の力を借りるという設定が少々安易なのが不満だが、赤塚の漫画同様にドタバタを描きながら、裏側にはシビアな現実が透けて見えるところが興味深いところだ。思ったほど笑えないのだが、それがこの作品の持ち味。何しろ悲劇と喜劇は表裏一体なのだから。
【55点】
(原題「これでいいのだ!! 映画★赤塚不二夫」)
(日本/佐藤英明監督/浅野忠信、堀北真希、阿部力、他)
(コスプレ度:★★★★☆)
チケットぴあ


人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)

酔いがさめたら、うちに帰ろう。

酔いがさめたら、うちに帰ろう。 [DVD]酔いがさめたら、うちに帰ろう。 [DVD]
アルコール依存症の苦難の中でみつけた“うち”とは家族のこと。内面の苦しさとは裏腹に、ユーモアと穏やかさが感じられる闘病生活が印象的だ。戦場カメラマンの塚原安行は、人気漫画家の園田由紀と結婚し、子供にも恵まれる。だがアルコール依存症を患う安行は、吐血や失神、暴力を繰り返し、妻とも離婚。ついにアルコール病棟に入院することに。それでも由紀は安行を支え続けた。安行は、病院で出会う風変わりな患者や医者との触れ合いの中で、不思議な安堵感を覚え、次第に体力と気力を回復していく。だが、彼の身体の中で、もうひとつの大きな病気が進行していた…。

人気漫画家・西原理恵子の元夫で戦場カメラマンの鴨志田穣の自伝的小説を原作とするこの物語は、アルコール依存症のどん底状態の中で家族という希望の光を見出す主人公の姿と、彼を支える家族の無償の愛情が感動的だ。東陽一監督の演出は、決して大仰なものではなく、あくまでも淡々と、それでいて愛情深くキャラクターたちをみつめている。ただ、倒れた安行の身体の中から“黒い安行”が出てくる異様な場面から、アルコール依存症とは、現実と妄想が激しく入り乱れ、暴力的な病魔が肉体と精神を蝕んでいくことが、恐ろしいほど伝わってきた。料理屋でサービスとして出されたたった一切れの奈良漬から、断酒が脆くも崩れ去ること、アルコール依存症の吐血のすさまじさ、病棟に入院する患者の実態や治療法。さまざまなことに驚いてしまったが、浅野忠信のどこかひょうひょうとした演技のおかげで、主人公の心が回復して行くプロセスが穏やかな時の流れに思えるのがいい。それは実はガンに蝕まれた安行の、死へのカウントダウンなのだが、自分自身の弱さと支えてくれる家族の重みを知った主人公の心のカメラには、深い愛情が記録されたに違いない。黙々と仕事をしながら、母として妻として安行を支える由紀を演じる永作博美が素晴らしい。彼女の強さと弱さの演技がいく層にも重なって、作品を味わい深いものにしている。ラストの浜辺のシーンが、哀しいのに安らぎを感じさせ、余韻として残った。
【65点】
(原題「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」)
(日本/東陽一監督/浅野忠信、永作博美、市川実日子、他)
(壮絶度:★★★★☆)

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)

乱暴と待機

乱暴と待機(通常版) [DVD]乱暴と待機(通常版) [DVD]
濃密でこっけいな男女四人の愛憎劇は、互いのいびつな距離感が面白い。木造平屋立ての市営住宅に引っ越してきた、番上と妊娠中の妻・あずさ。その住宅には、あずさの高校時代の天敵の奈々瀬が住んでいた。奈々瀬は怪しげな男・英則と兄妹のフリをしながら同居。さらに英則は毎日屋根裏から奈々瀬をのぞくことを習慣にしながら、約20年前に起きたある悲劇の復讐の機会を狙っていて、しかも、そのことを奈々瀬も承知なのだ。番上が奈々瀬に興味を持ち、言葉巧みに彼女を誘惑したことから、4人の関係にズレが生じていく…。

この映画が好きかと問われれば、間違いなくNOなのだが、何だか無償に気になるのもまた事実。まったく困った作品である。原作は本谷有希子。もともと舞台劇というだけあり、世界観は非常に小さい。シケた木造住宅、あか抜けないファッション、イラつく登場人物と、およそ共感できない要素がてんこもりの物語を、浅野忠信や山田孝之らの人気・実力ともに兼ね備えた俳優たちが怪演しているアンバランスがこの作品の魅力だ。何しろ、軸になる奈々瀬という女、外見は丸メガネにグレーのジャージ姿、内面は、終始オドオドしながら人から嫌われないことだけを目標にしているのに、結果的に他人の神経を逆なでする行為に至るというどうしようもないキャラなのだ。そんな奈々瀬と兄妹のふりをしながら暮らす英則は奈々瀬を5年も軟禁中。この世で最も惨い復讐を考え続ける男と、この世で最も惨い罰が下るのを待ち続ける女の間には、哀しくも可笑しい愛がある。番上とあずさの夫婦は、いろいろな意味でこのニセ兄妹に振り回され“壊されて”いくわけだが、ここで言えるのは、人間とは本来かっこ悪い存在であるという単純な事実。ジャージ姿のエロティシズムや男も女も持つズルさ、復讐の原因のマヌケな真実に、最後の最後に出る本音。面倒くさい関係の中でもがく登場人物たちが愛しく見えたら、この作品から心の底を覗かれた証拠だ。奈々瀬というキャラにどう向き合うか。これは、観客にとって一種の踏み絵である。4人全員が可笑しな役だが、浅野忠信の醸し出す雰囲気がダントツに奇妙奇天烈だ。この人はこういう役柄が本当に“自然に”上手い。
【60点】
(原題「乱暴と待機」)
(日本/冨永昌敬監督/浅野忠信、美波、小池栄子、山田孝之、他)
(かっこ悪さ度:★★★★★)


にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
乱暴と待機@ぴあ映画生活

【送料無料】乱暴と待機 【初回生産限定】

【送料無料】乱暴と待機 【初回生産限定】
価格:5,481円(税込、送料別)

劔岳 点の記

劔岳 点の記 メモリアル・エディション [DVD]劔岳 点の記 メモリアル・エディション [DVD]
日本地図誕生にこんな秘話があったとは。明治40年、未踏峰の劔岳山頂を目指す測量手と山の案内人がいた。軍部が、日本山岳会への強いライバル意識をあらわにする中、命がけで地図作りに挑んだ男たちの気骨に胸を打たれる。名カメラマン木村大作の初監督作だが、圧巻なのは、CGや空撮を使わずに撮影した本物嗜好の映像。冬山の厳しい美しさと同時に色鮮やかな緑や紅葉の木々が素晴らしい。クラシック中心の音楽が荘厳すぎて少々重苦しいのが惜しいが、それを緩和するのが飄々としながらも軽くならない浅野忠信の存在感だ。ラストには意外な展開が用意され聖なる山のイメージを新たにする。長期にわたる危険な撮影ではスタッフに怪我人も出たと聞く。地図作りと同じくらい、この映画製作の労をもねぎらいたい。
【70点】
(日本/木村大作監督/浅野忠信、香川照之、宮崎あおい、他)
(映像美度:★★★★☆)

人気ブログランキング用バナー

←この記事が気に入ったら、ポチッとクリックお願いします(^o^)

シネマッシモにようこそ
◇ シネマッシモについて ◇

このブログが気に入ったら、ポチッとクリックお願いします♪
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

映画レビュー用BRバナー
インフォメーション


映画ライター渡まち子が運営するセカンド・ブログ「映画の中に猫がいる」もよろしく!【猫目線】で語る映画評で、のんびり、まったり運営中です(笑)。 猫好きの方、映画好きの方、ぜひ遊びにきてください。相互リンクも募集中!
こちらからどうぞ!
おすすめ情報
作品検索はこちら
Google
WWW を検索
このブログ内を検索
コメント(承認済)
映画レビュー(長文)索引

    
    
    
    
    
    
    
  
    

A−Z
0−9
カテゴリ
お仕事受注
映画評やコラムの執筆、講演など、映画に関する仕事を承ります。連絡はメールでお気軽にどうぞ。

 メールはこちらから↓
cinemassimo555★jcom.home.ne.jp
(★を@に変更して下さい)

執筆やラジオ出演など、メールと電話で対応可能な場合は、全国から仕事を受注していますので、まずはお問合せください。
プロフィール
プロフィール more
◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
震災には負けない!
リンクシェア・ジャパン 東北地方太平洋沖地震 義援金プロジェクト

犬・猫の総合情報サイト『PEPPY(ペピイ)』

icon icon
おすすめ情報
おすすめ情報

twitterやってます!
おすすめ情報

楽天市場
おすすめ情報

Archives
相互リンクについて
相互リンクについて

  ↑ 必ずお読みください。
いいね!もよろしく♪
Facebookをご利用の皆さん、このブログが気に入ったら、ぜひ「いいね!」ボタンをポチッと押してください。 渡まち子の励みになります!
タグクラウド
  • ライブドアブログ