映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
毎日のレビューは分かりやすく簡潔な寸評で、週1本の長文映画レビューでは作品をディープに掘り下げます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる公開作品 ◎
「ファミリー・ツリー」「ダーク・シャドウ」「サニー」

深田恭子

ワイルド7

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リアリティはさておき、アクションはダイナミックな犯罪劇「ワイルド7」。出演者全員が大型免許を取得したというバイク・アクションに注目だ。

逮捕も裁判もなしに、凶悪犯を処刑する権限を与えられた超法規的警察組織、通称“ワイルド7”。凶悪犯罪が後を絶たない現代日本で、警視庁内に極秘に設置されたその組織を構成するのは、いずれも重い犯罪歴の持ち主だ。彼らは罪を免除される代わりに、テロリストなどの凶悪犯を退治する任務が与えられている。ある日、いよいよ犯人を逮捕する寸前に、謎のスナイパーが現れ、犯人を射殺して走り去る。メンバーの一人、飛葉は、スナイパーを追うが見失い、追跡の際に迷い込んだクラブで美しい女性ユキと知り合う。2人は急速に親しくなっていくが、ユキにはある秘密があった…。

原作は、望月三起也による人気コミック。犯罪者が犯罪者を裁くという“目には目を、悪には悪を”というスタイルは、法では裁けない悪人を退治するには、権力者にとってこれほど好都合なやり方はない。だが致死率90パーセントのバイオテロを企て、現金2億ドルを要求する凶悪事件の裏側に潜んでいた陰謀は、警視庁や国家そのものを揺るがすものだ。監視社会の盲点と弱点によって仕組まれたその犯罪は、ワイルド7が極秘であることと激しく矛盾するし、7人が一枚岩で闘う心理描写も極めて浅い。飛葉以外のキャラクターの背景も、ごくあっさりと触れるのみだ。ドラマ性という点では欠点だらけだが、その分、本作は、バイク好きにはたまらないアクションであふれている。映画冒頭、大型トラックの中から改造バイクに乗ったメンバーたちが次々に飛び出す登場シーンは、バイクに詳しくなくても思わず興奮するはずだ。さらに邦画では特筆するほどの大量の銃弾が飛び交うガン・アクションとしてもド迫力。とりあえず、形だけはハリウッドに近付いたこの作品、クライマックスにみせる男同士の絆も含め、まずは日本のアクション・エンタテインメントの飛躍を評価したい。
【55点】
(原題「WILD SEVEN」)
(日本/羽住英一郎監督/瑛太、椎名桔平、中井貴一、他)
(男の子向け度:★★★★☆)
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ワイルド7@ぴあ映画生活

夜明けの街で

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ラブストーリーとしてもミステリーとしても中途半端だが、従順な妻を演じる木村多江の最後の演技で救われている。

大手建設会社の課長・渡部は、理想的な家庭がありながら、どこか寂しげな表情の女性・秋葉と出会い恋に落ちる。家庭では、良き夫、良き父親を演じながらも、まだ自分がときめくような感情を持てることに喜びを感じて、秋葉との逢瀬を重ねる日々だった。ある日、秋葉は、かつて自分の家で起こった殺人事件について衝撃的な事実を語り始める…。

原作は、ミステリー作家・東野圭吾の初の本格的恋愛小説と話題のベストセラー。物語は、殺人犯かもしれない女と、そんな女との不倫というのっぴきならない状態に苦しみながらも快楽を覚える中年男の“純愛”だ。だが、秋葉の父の秘書が殺された過去の事件の謎解きは、終盤にバタバタと説明口調で明かされるだけで、さっぱり迫力がない。ではドロドロで官能的な不倫愛の物語かというと、そちらも綺麗事のようにあっさりしている。生真面目な中年男を、やがて離婚を決意するほどまでに変えてしまうファム・ファタールを演じるのは深田恭子。今までのガーリーなイメージを振り払うかのように、最近の出演作では、不倫する方、される方と、大人の恋愛の役に懸命に挑戦しているのだが、この作品では残念ながらミスキャストだ。一方で、静かな上手さを見せるのは、従順な妻・有美子を演じる木村多江。薄幸の女性を演じるとピタリとハマる彼女が、最後の最後に見せる意外な素顔こそが見所で、この映画のキャッチコピーである“甘い地獄”の意味を思い知る。
【50点】
(原題「夜明けの街で」)
(日本/若松節朗監督/岸谷五朗、深田恭子、木村多江、他)
(ミステリー度:★★☆☆☆)
夜明けの街で
夜明けの街で



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夜明けの街で@ぴあ映画生活

セカンドバージン

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スキャンダラスな純愛で話題だったTVドラマの劇場版。ドラマファン向けのサービス映画のような内容だが、マレーシアの湿度とオリエンタルムードが気分を盛り上げる。

出版業界では名の知れた辣腕プロデューサー・るいは、17歳年下のネット証券会社社長の鈴木行(こう)と恋に落ちる。結婚し万理江という妻がいる行と、るいは、さまざまな試練を乗り越えて一緒に暮らし始めるが、ある日、行はるいの前から忽然と姿を消す。5年後、出張先のマレーシアで行と再会したるいだったが、行は彼女の目の前で銃弾に倒れてしまう。生死の境をさまよう行を献身的に看病するるいだったが…。

NHKらしからぬ大胆な描写の不倫愛を描いたドラマは、働く女性たちの支持を得て、大人気だった。その理由は、アラフォーのヒロイン・るいがいつも凛として前を向く強さがあるからだ。だが、この映画版はなんとも薄味で、TVドラマのダイジェストにちょこっとおまけをつけたかのよう。ドラマ未見のファンもそこそこ理解できる作りだが、ディープなドラマファンはこの内容では納得できないのではないか。マレーシアくんだりでも実現する妻との対決という修羅場は、あっさりと終了。姿を消した行の衝撃の真実もセリフだけでさらりと説明。時間の都合とはいえ、拍子抜けしてしまう。映画版では、るいと行の二人だけにしぼった展開で、濃くてエキセントリックな登場人物たちは登場しない。そもそも、コテコテでどろどろのメロドラマは期待できない作りなのだ。献身的なるいと行の秘めた愛だけでは、年の差不倫愛の純度の高さは伝わりにくい。ただ、マレーシアという湿度と熱気をはらんだ土地は、スキャンダラスな恋愛に“決着をつける”場所としては、ふさわしい舞台。鈴木京香がふと見せる恍惚の表情が、運命に自分なりの方法で立ち向かった大人の年輪と自信に思えた。
【45点】
(原題「セカンドバージン」)
(日本/黒崎博監督/鈴木京香、長谷川博己、深田恭子、他)
(純愛度:★★★★☆)



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セカンドバージン@ぴあ映画生活

豆富小僧

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傑作「銀河鉄道の夜」の名匠・杉井ギサブローが総監督だけあって、絵柄はなんとも可愛らしく、見ているだけで癒される。ただし物語は大人が鑑賞するには少々キビしい。

人間と妖怪が共存していた遠い昔。お盆に豆腐を乗せて立っているだけの妖怪“豆富小僧”は、妖怪なのに人間を怖がらせることができず、父親の妖怪総大将の見越し入道に叱られてばかり。家出した豆富小僧はお目付役のダルマと共に、母親探しの旅に出るが、妖怪の敵・狸一族に騙され、お堂の中に閉じ込められてしまう。のんびりしている間に200年がたち、ようやく脱出したら、そこは現代の日本だった…。

原作は人気作家・京極夏彦の「豆腐小僧双六道中ふりだし」。ファミリー向け映画だけあって、京極特有の膨大な量の言葉遊びはないのはいいが、ストーリーはまったく練られておらず、自分探しという深いテーマも収束できていない。ユニークな妖怪・豆富小僧は母親を探して旅をするが、本当に探しているのは自分自身のアイデンティティーだ。豆腐を持ってただ立ちつくすだけという自分に存在意義ははたしてあるのか?というディープな問いがここにある。さらに現代の日本に来てみれば、そこは妖怪の存在を許さず、闇を恐れる気風も皆無。日本が近代化していくプロセスで失った自然や人情は今どこに?と同時に問いかける。…とまぁ、深読みは可能なのだが、何しろ映画は3Dに気を取られたのかストーリーが粗雑で、特に現代パートの母娘の関係性などあいまいすぎる。クライマックスの大バトルは見せ場だが、そのオトシマエはかなりご都合主義。ディズニーやピクサーといったハイ・クオリティーのストーリーを見慣れた映画ファンには脱力必至。ゆるキャラ的な可愛らしい絵で癒されるのが唯一の救いだ。
【50点】
(原題「豆富小僧」)
(日本/杉井ギサブロー監督/(声)深田恭子、武田鉄矢、松平健、他)
(癒し度:★★★☆☆)
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豆富小僧@ぴあ映画生活

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恋愛戯曲〜私と恋におちてください。〜

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人気舞台の映画化だが、恋愛映画というよりテレビ業界の内幕ものとして楽しめる。大手TV局制作のドラマの脚本を依頼された人気脚本家・谷山真由美は、深刻なスランプ状態。締切が迫っているのに台本は1行も書けていない。困ったTV局は、よりにもよって冴えないプロデューサーの向井を送り込む。脚本のためなら何でもすると懇願する向井に対し真由美は「私は恋をしないと恋愛ドラマが書けない。私と恋に落ちて!」と命令する。実はTV局側にはある思惑があるのだったが…。

もともとは同名の大ヒット舞台で、劇作家である鴻上尚史自らが監督して映画化となった。気が強くてワガママだがなぜか憎めない女性脚本家を、深田恭子が演じるが、今回彼女は一人三役。スランプで追いつめられた脚本家、劇中劇の中のおとなしくて地味な主婦、その主婦が書く脚本の中の奔放な女流作家の3役を演じている。劇中劇はあえてチープで飛躍する物語を設定し、現実の、真由美と向井のドラマのアウトラインが崩れないように見せているのは上手い。深キョンのベタな演技や、コミカルな役がいまひとつサマにならない椎名桔平も、ギリギリセーフといったところだ。だが、せっかくの映画化なのに、どうして物語をもっとアクティブにしないのか。限定空間の舞台と違い、映画は時間と空間を自由に操れる。ホテルに缶詰め状態で執筆する真由美のパートは狭い空間でも、2つの劇中劇はもっと大胆なストーリーにできたはず。舞台そのままのセットはあえて狙ったものらしいが、これでは映画にする意味をあまり感じない。逆に面白いのは、TV局内部の対立や力関係、さまざまな思惑の部分だ。制作、編成、営業がもつれあい、手柄を奪い合う構図。俳優やタレントのみならず、脚本家まで使い捨てと割り切り、消費して替え玉を用意する非情な態度。さらに、スポンサーにおもねる業界人たちの卑屈な様子を、痛烈に笑い飛ばす。そんな中、向井の“正体”とそれを知るある人物のイキな計らいには胸がすく思いだった。タイトルとは裏腹に、むしろラブストーリーが取ってつけたようにさえ見えるこの物語、業界ものとして見れば、なかなか味わい深い。
【55点】
(原題「恋愛戯曲〜私と恋におちてください。〜」)
(日本/鴻上尚史監督/深田恭子、椎名桔平、塚本高史、他)
(コミカル度:★★★☆☆)

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ウルルの森の物語

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実話をもとにした映画「マリと子犬の物語」のスタッフが、再び子供と動物という鉄板ネタで仕掛ける感動物語だが、あまりに露骨な二番煎じの内容に苦笑した。母親の入院をきっかけに獣医の父がいる北海道で暮らすことになった幼い兄妹のすばるとしずく。ほとんど一緒に暮らしたことがない父や慣れない土地での生活に戸惑っていたが、美しい自然の中で、少しずつ日々の暮らしになじんでいった。そんなある日、森でオオカミに似た子犬と出会い、ウルルと名付けて飼うようになる。だが、ウルルが絶滅したエゾオオカミである可能性が出てきたことで、野生動物保護協会がウルルをしかるべき機関で育てるべきと主張する。

北海道には「オオカミの国」と伝えられる伝説の“ホロケシ”という場所がある。幼い兄妹がウルルをその場所に連れて行こうとするのは、ウルルが自分たちと同じように母親と離れ離れになっていると思うからだ。だが、それなら森でウルルを拾って自分たちのもとで飼うことだって引き離すことじゃないか。そもそもこの時点で、人間に都合が良すぎる物語だ。幼い兄妹が大自然の中で、野生動物にとって何が大切かを学べば、それがそのまま、家族の絆を学ぶことになるだろうに。絵本で見た伝説のホロケシを目指す旅は、よく知らない場所を子供だけで歩いて目指すにはあまりにも無理があるし、ウルルが演技らしい演技をせず、オオカミの本能を感じられないのも説得力に欠ける。終盤は、無理やりこじつけた感動ファンタジーになり脱力してしまった。キタキツネやエゾシカ、エゾリスなど、劇中に出てくる動物たちはとても愛らしい。物語に無理が多いのが残念だが、北海道の自然の素晴らしさは堪能できる。
【30点】
(日本/長沼誠監督/船越英一郎、深田恭子、濱口優、他)
(家族愛度:★★★★☆)

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◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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