映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
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◎ 今週の気になる映画 ◎
「カンフー・ヨガ」「勝手にふるえてろ」「ダンシング・ベートーヴェン」etc.

湯浅政明

夜明け告げるルーのうた



中学生のカイは、両親が離婚したため、父母の故郷である漁港の町・日無町に引っ越してくる。東京で暮らしていたカイは、寂れた田舎町になじめず、両親への複雑な思いを抱えて心を閉ざしていた。唯一の心の拠り所は、作曲した音楽をネット上にアップすること。ある日、クラスメイトの国男と遊歩に彼らのバンド・セイレーンに強引に勧誘され、彼らが練習場所にしている、立ち入り禁止の人魚島にしぶしぶ向かったところ、人魚の少女・ルーと出会う。音楽が大好きで楽しそうに歌い踊るルーと一緒に過ごすうちに、カイは少しずつ周囲に心を開き始める。だがルーを町興しに利用しようとする大人や、人魚は災いをもたらすと信じる人々によって不穏な動きが起こり、ルーとルーを守ろうとするカイは大事件に巻き込まれていく…。

孤独な少年が人魚と出会い自我に目覚めて成長していく様を独特のテイストで描くアニメーション「夜明け告げるルーのうた」。湯浅政明監督は、「夜は短し歩けよ乙女」が公開されたばかりなのに、もう次の作品が見られるのか?!とファンを驚かせてくれた。だが真の驚きは、その内容である。湯浅作品の持ち味は、見る人を選ぶ、いい意味でのブッ飛んだ作風だ。そんな異能の映像作家の新作が、内向的な少年の成長物語というテッパンの青春ファンタジーで“万人に優しい”作品に仕上がっていることにビックリした。湯浅アニメを偏愛し、その独創性を大切に思ってきたコアなファンにとっては、このオーソドックスが何とも物足りなく感じるはず。何を隠そう、私も最初はそんな思いをいだいたのだが、落ち着いて考えると本作は湯浅監督の長編映画として初の劇場オリジナル作品だ。より多くの人にアニメーションの楽しさをストレートに感じてほしいという強い思いがあふれている。天真爛漫な人魚のルーというキャラや、人間社会との溝によって起こる大騒動という展開に、ジブリ作品を連想する人も多いだろう。そんな類似性は承知の上で、他者との違いを受け入れ、自分が心から好きなものを好きという勇気や、自分で未来を決める決断を、前向きに描くストーリーは、素直に好ましいと感じるものだった。無論、ポップでシュールな絵柄やカラフルな色彩は健在で、音楽やダンスでストーリーそのもののテンションをグッと上げる演出は、心憎いほどハマッている。国内外での高評価と受賞歴、尖がった作風、時に難解なストーリーなどで、湯浅作品のハードルを無意識に上げてしまっていた。人魚のルーと少年カイを結び付ける名曲「歌うたいのバラッド」でも“唄うことは難しいことじゃない”と言っている。映画を難しく見る必要など、ないのだ。ボーイ・ミーツ・マーメイドの本作は、鬼才・湯浅政明の新境地に見えて、原点なのかもしれない。
【70点】
(原題「夜明け告げるルーのうた」)
(日本/湯浅政明監督/(声)谷花音、下田翔大、篠原信一、他)
(成長物語度:★★★★★)
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夜は短し歩けよ乙女

夜は短し歩けよ乙女 オフィシャルガイド
京都。大学のクラブの後輩である“黒髪の乙女”に想いを寄せる“先輩”は、なるべく彼女の目にとまる作戦(頭文字をとってナカメ作戦)を実行し彼女の気を引こうとしている。ある夜、酒豪の乙女は飲み歩き、先輩は、春の先斗町、夏の古本市、秋の学園祭と彼女の姿を追い求めるが、季節はどんどん過ぎていくばかりで乙女との距離はいっこうに縮まらない。さらに先輩は、仲間たちや不思議な老人による珍事件に巻き込まれていく…。

京都を舞台に、大学の後輩の黒髪の乙女に恋する先輩の恋模様を摩訶不思議な世界観で描くアニメーション「夜は短し歩けよ乙女」。原作は「四畳半神話大系」の森見登美彦の同名小説だ。何しろ「MIND GAME(マインド・ゲーム)」の奇才監督・湯浅政明の13年ぶりの新作アニメというだけでワクワクしてしまうが、期待通りの“自由な”作品である。酒好きの乙女が京都の街を飲み歩くが、彼女に恋する先輩はことごとくタイミングが合わない。奇妙なエロおやじ、個性的な大学生、謎の老人と、次々にヘンテコな登場人物が現れるが、乙女は、時に愛あるパンチを繰り出しつつも、すべての人に優しく礼儀正しい。時間や空間の概念が覆される物語もさることながら、のっぺりとしたイラストのような絵柄とカラフルな色彩のビジュアルが非常に新鮮だ。形も色も動きさえも、自由すぎるほど変幻自在に変わるそのテイストは、リアルとは対極にある。今やアニメーションは、いかに実写に近づくかを目指して奮闘している感があるが、本作は、アニメーションの特権である自由奔放さを爆発させている。このマジカルな心地よさは、酒豪の乙女が際限なく飲む酒に酔いしれるかのような、酩酊感とでも言おうか。ゲリラ演劇のミュージカルパートにいたっては、完全に酔いが回って幻覚を見ているような気さえする。そして恋する男女の運命には、最高の着地点を用意しているのだ。先輩の声を担当する星野源が、膨大なセリフをまくしたて、存在感を示す一方、他のキャストは実力派の声優たちで手堅い作りだ。93分、稀有な映像体験が味わえる逸品である。
【75点】
(原題「夜は短し歩けよ乙女」)
(日本/湯浅政明監督/(声)星野源、花澤香菜、神谷浩史、他)
(酩酊感度:★★★★★)
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Genius Party ジーニアス・パーティ

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STUDIO4°Cの下に集まった7人のアニメ作家によるオムニバス映画。現在の日本製アニメの作風のカタログ的雰囲気がある。SFあり、不条理話あり、切ない青春物語ありでバラエティに富むが、アート系寄りなので万人受けは難しい。物語は渡辺信一郎の「BABY BLUE」が好きだが、湯浅政明作品「夢みるキカイ」が抜きん出ておもしろ味がある。シリーズ化も決定。期待したい。
【70点】
(日本/ 福島敦子、河森正治、木村真二、福山庸治、二村秀樹、湯浅政明、渡辺信一郎監督/(声)柳楽優弥、菊池凜子、他)
(アートアニメ度:★★★☆☆)

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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