映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
毎日のレビューは分かりやすく簡潔な寸評で、週1本の長文映画レビューでは作品をディープに掘り下げます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる公開作品 ◎
「ファミリー・ツリー」「ダーク・シャドウ」「サニー」

玉木宏

聯合艦隊司令長官 山本五十六 ―太平洋戦争70年目の真実―

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最も戦争に反対しながら開戦の口火を切ることになった指揮官の苦悩を描く「聯合艦隊司令長官 山本五十六 ―太平洋戦争70年目の真実―」。運命の皮肉というしかない。

1939年、海軍次官の山本五十六は、圧倒的な軍事力を持つ米国との戦いを避けるため、日独伊三国軍事同盟に強く反対の立場を貫く。だが、第二次世界大戦が勃発し、1941年、ついに対米開戦となる。連合艦隊司令長官に任命された山本が、早期終戦を目指し、練った策が真珠湾攻撃だった。奇策は効を奏するが、目的の空母撃破には失敗。山本は意に反して悪化する戦況へと巻き込まれていく…。

古くは名優・三船敏郎が演じた山本五十六の半生を、現代の名優・役所広司が重厚に演じて感動を呼ぶ戦争大作だ。だが戦闘の場面は意外なほど少ない。映画の本意は、激戦の模様を再現することではなく、誰よりも開戦に反対しながら、陣頭指揮を取る司令長官にならざるをえなかった軍人の苦悩と、それでも失わなかった温かい人間性を描くことだ。山本と彼の周囲のわずかな理解者だけが、戦況を冷静に見極めているが、無謀な精神論や好戦ムードの中、日本は戦争へとなだれこんでいく。山本は自分がこうむる理不尽を叫びたい気持ちを押し殺して、軍人として職務をまっとうする覚悟があり、それが終始、固い表情から伺える。そんな彼が唯一、心安らぐのが、甘いものを食べるときだ。山本は、故郷・長岡の名物である水饅頭にさらに砂糖をふりかけて食べるほどの甘党。この姿はちょっと意外だったが、それ以外は、本作で描かれる山本五十六という人物に一瞬のスキもない。世界情勢を見極める視野の広さ、部下に慕われる人徳、良き家庭人。戦闘ではなく人間を掘り下げるという、異色のアプローチだけに、主人公の弱さや欠点も少しは描いても良かったのでは。とはいえ、主役の役所広司をはじめ、柳葉敏郎や阿部寛など、共演者は皆、好演。苦渋の連続だった、真珠湾攻撃とミッドウェー海戦、ブーゲンビル島上空での非業の死まで、骨太なドラマとして仕上がっている。
【65点】
(原題「聯合艦隊司令長官 山本五十六 ―太平洋戦争70年目の真実―」)
(日本/成島出監督/役所広司、玉木宏、柄本明、他)
(シニア向け度:★★★★☆)
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聯合艦隊司令長官 山本五十六@ぴあ映画生活

のだめカンタービレ 最終楽章 後編

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のだめと千秋の恋の結末が気になるグランドフィナーレの後編だが、見終わってみると、わざわざ2部構成にする意味があったのだろうか??と大いに疑問だ。音楽に集中するため、互いに距離を置こうと離れ離れに暮らすことになったのだめと千秋。孫Ruiと共演し大成功を収める千秋とは対照的に、のだめはコンクールへの参加さえ許してもらえず焦る日々だ。千秋との恋愛にも限界を感じ、失意ののだめに、シュトレーゼマンが共演話を持ちかける…。

相変わらずのメンバーと相変わらずの展開で、安心感満載…と言えば聞こえはいいが、物語に新鮮味はまったくない。ヨーロッパロケの驚きは前編ですでにを経験済み。不思議な電子楽器テルミンを操る新キャラの活躍もごくささやかものだ。この後編のウリはいったい何なのか?と首をかしげたくなる。千秋に追いつこうと必死ののだめが、天才ぶりを発揮し、今度は千秋が焦る。やがて二人は、音楽と互いへの強い愛を認識する。最終楽章だというのに、お話は今までも何度も目にしたこのパターンの繰り返しではないか。のだめはプラハで遂に世界デビューを飾ったというのに、物語はみるみるスケールダウン。しかも本作にはコミカルな要素はほとんどなく、シリアス一点張りだ。本気モードは、本物の音楽があれば十分なのに。ついに実現した二人の“共演”は、グランドフィナーレにはあまりにも地味すぎやしないか。このために前・後編という長い時間を費やしてきたのかと思うと力が抜けた。ラストにガーシュインの「ラプソディー・イン・ブルー」が流れるが、映画は、狂詩曲というより未完成交響曲。いつものように、クラシックの名曲をオーケストラとピアノ、さらに千秋の解説付きでたっぷりと堪能できるのは嬉しいが、ファンにとっては見届けた気持ちはあっても達成感のないフィナーレだろう。
【30点】
(原題「のだめカンタービレ 最終楽章 後編」)
(日本/武内英樹監督/上野樹里、玉木宏、竹中直人、他)
(シリアス度:★★★★☆)

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のだめカンタービレ 最終楽章 前編

のだめカンタービレ 最終楽章 前編 スタンダード・エディション [DVD]のだめカンタービレ 最終楽章 前編 スタンダード・エディション [DVD]
二ノ宮知子の同名コミック、TVドラマともに大人気のラブ・コメディの劇場版。国際音楽コンクールでの優勝後、千秋は仏のルー・マルレ・オーケストラの常任指揮者に。だが、そのオケは財政難の上、団員の雰囲気は最悪だった。愕然とする千秋だったが、気を取り直して、のだめに定期公演での演奏を頼む。音楽学校の進級試験の練習に励んでいたのだめは、ついに千秋と初共演できると大喜び、妄想が広がるが、その大役は意外な人物にさらわれてしまう…。

一流の指揮者を目指す“オレ様キャラ”の千秋真一と、変態かつ妄想癖があるなど独特の感性と天才的なピアノの腕が同居する野田恵、通称のだめの、コミカルな恋物語を描いたこの作品は、お茶の間にクラシックを浸透させた功績がある。今回は劇場版にふさわしく、ウィーンやパリなど、欧州の華麗な都を舞台にする豪華なもの。TVドラマの安易な劇場版が氾濫する中、本作は名曲の数々を劇場のクリアな音響で堪能できる点に映画版ならではの説得力がある。外国人キャストに吹き替えで日本語を話させるという、映画として画期的な大冒険も。物語は、千秋とのだめの恋と、音楽的な成長のどちらも気になるところだ。見ているこっちが恥ずかしいほどのドタバタが、格調高いクラシックの名曲にのって繰り広げられるアンバランスは、一度見たらクセになる。個人的には、千秋先輩との初共演で妄想がふくらみ、のだめとアニメの動物たちの大競演(狂演?)となるシークエンスが気に入っている。ファン待望の最終章となるこの作品、わざわざ前・後編に分けて公開するという、あこぎな商売…、もとい、ファンサービスに、観客が喜ぶ姿が目に浮かぶようだ。前編は、やきもきする場面で終わるが、エンドロールの後に後編の予告があるので、最後まで席を立たずに鑑賞しよう。
【55点】
(日本/武内英樹監督/上野樹里、玉木宏、竹中直人、他)
(音楽堪能度:★★★★☆)

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MW−ムウ−

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日本が誇る漫画家・手塚治虫の偉大さは確認できても、映画化が成功したとは言い難い。物語は、16年前、ある島の島民全員が死滅した事件を発端に、生存者の壮絶な復讐と、鍵である謎の物質“ムウ”による世界滅亡の危機を描くものだ。話は荒唐無稽だが、善も悪もなく次々に命を落とす登場人物たちに、冷酷な殺人者・結城のどす黒い怒りを感じる。

映画は、アクション・エンタテインメントの方向を目指したようだが、これがマズかった。結城ともう一人の生存者の神父・賀来。二人の断ち切ることのできない絆や歪んだ関係性を掘り下げ、人間ドラマとしてまとめるべきだろう。原作にある同性愛要素を省くなど、弱腰の演出もいただけない。冒頭のタイ・ロケはなかなか見応えがあるが、残念ながらそれを活かす脚本が用意できず、先が続かない。懸命にワルを演じる玉木宏が痛々しいが、彼の美しさを称えるイメージビデオのようになってしまっては、ファンにはいいかもしれないが映画として評価できない。巨匠・手塚治虫の作品の中で最大の問題作を映画化することは、容易ではない。
【45点】
(日本/岩本仁志監督/玉木宏、山田孝之、石田ゆり子、他)
(ピカレスク度:★★★★☆)

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真夏のオリオン

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終戦まであと数日というのに、何もかもがこざっぱりしてまったく極限状況に見えない戦争映画だ。悲壮も絶望も、むろん希望も感じられない。亡くなった祖母が持っていた楽譜「真夏のオリオン」の哀しい由来を語る形で、米国海軍駆逐艦と決死の駆け引きを繰り広げたイ-77潜水艦の艦長・倉本をはじめ、親友や恋人、同船した部下たちの思いを描く。

そもそもすべてにユルい演出を施す篠原哲雄監督に、ハードな戦争ものを描かせるなど無茶なのだ。だが、海中深く身を潜めチャンスを伺う様子、人間魚雷“回天”を使った酸欠を防ぐ奇策など、潜水艦ものならではの描写は興味深い。お国のための死より生きることを肯定するスタンスは、現代の観客に受け入れられよう。ただし、好敵手同士のスポーツの対戦のような軽い物語として。
【45点】
(日本/篠原哲雄監督/玉木宏、北川景子、吉田栄作、他)
(リアリティ度:★★☆☆☆)

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KIDS

KIDS 通常版
玉木と小池のラブ・ストーリーを見たような不思議な後味を残す青春映画。傷を移す超能力を持つ少年と、孤独な青年の友情を描く。題名は、原作ではOKでも、映画には分かり易い副題がほしいところ。乙一らしい切なさや優しさは感じるが、主人公は傷は移動できても直せるわけではない。この屈折を描ければ映画に深みが増しただろう。劇中では軽く流す“傷の捨て場所”という箇所が面白い。ここにこだわれば全く違う物語ができそうだ。
【60点】
(日本/荻島達也監督/小池徹平、玉木宏、栗山千明、泉谷しげる、他)
(せつなさ度:★★★★☆)

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ミッドナイト イーグル

ミッドナイトイーグル スタンダード・エディション [DVD]ミッドナイトイーグル スタンダード・エディション [DVD]
軍事ものと山岳ものは、日本映画では資金も技術も発展途上。二つを併せ持つこの作品は邦画としては何とか合格点だろう。北アルプス山中に墜落したステルス戦闘機により日本滅亡の危機が迫る。物語的には、運命を託された大沢、玉木の二人が雪山のエキスパートであることをもっと強調するべきなのだが、その分、人間愛の描写に時間を割いている。撮影困難な雪山での、俳優やスタッフの苦労をねぎらいたい。
【65点】
(恋愛度:★☆☆☆☆)
(日本/成島出監督/大沢たかお、竹内結子、玉木宏、他)

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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