映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「ドリーム」「亜人」「僕のワンダフルライフ」etc.

瑛太

土竜の唄 香港狂騒曲

土竜の唄 香港狂騒曲 Blu-ray スペシャル・エディション(Blu-ray1枚+DVD2枚)
交番勤務のダメ巡査から潜入捜査官、通称モグラになった菊川玲二。犯罪組織・数寄矢会に潜り込んだはいいが、クレイジーパピヨンこと日浦匡也と兄弟の契りを交わすハメに。その日浦が日浦組組長となり、玲二は若頭に就任する。さらに最終ターゲットである数寄矢会会長・轟周宝から、極悪非道のチャイニーズマフィア・仙骨竜の撲滅、そして、轟周宝とその娘・迦蓮のボディーガードを任される。その頃、警察では、エリート警察官の兜真矢が、組織犯罪対策部課長に就任し、警察官とヤクザの癒着撲滅をモットーに掲げて、玲二の逮捕に向けて動き出した…。
高橋のぼるの大ヒットコミックを映画化した人気作の続編「土竜の唄 香港狂騒曲」。今回は原作の「チャイニーズマフィア編」がベースになっていて、前作にもまして、三池崇史監督の演出も、宮藤官九郎の脚本もハイテンションである。続編ではすべてにVS(バーサス・対決)の構図が見られるのが特徴だ。正義のモグラの玲二VSエリート警官の兜。クレイジーパピヨンこと日浦VS日浦の元兄貴分で暴走ヤクザのモモンガ。玲二が唯一惚れた婦警の純奈VS轟周宝の娘で奇跡の処女こと迦蓮。全身ヒョウ柄ヒットマン・剣太VSチャイニーズマフィアの美脚ヒットガール・胡蜂。前作からの続投組と新規参入組が入り乱れて、もはやカオス状態だ。宮藤官九郎の脚本は、例によって情報過多でギャグ満載なのだが、一応、チャイニーズマフィアの台頭の裏側でうごめく巨大な陰謀というサスペンス(?!)もある。主人公の玲二は、どこまでも熱血漢で、そんな彼に突如モテ期が訪れるのだが、女優陣のお色気…というより暴走は、男性ファンには目の保養といったところだ。香港狂騒曲という割には、ほとんどがセット撮影で香港は実景部分のみというところが、トホホだが、この“作りもの”テイストが、逆に土竜らしいととらえるべきだろう。例によって生田斗真の捨て身の全裸シーンあり。さらに今回は、虎(注:CG)、女装、宙刷りと、出演者を遊び倒す三池ワールド“バッチ来ーい”である。
【60点】
(原題「土竜の唄 香港狂騒曲」)
(日本/三池崇史監督/生田斗真、瑛太、本田翼、他)
(ド派手度:★★★★☆)
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殿、利息でござる!

殿、利息でござる! [Blu-ray]
江戸中期。財政難の仙台藩は、百姓町人へ厳しい重税を課したため、夜逃げが後を絶たなかった。寂れゆく宿場町・吉岡藩では、造り酒屋の主・穀田屋十三郎が町の将来を心配していた。そんな中、知恵者の菅原屋篤平治がある秘策を打ちだす。それは、藩に大金を貸し付け利息を巻き上げるという、百姓が搾取される側から搾取する側に回る逆転の発想だった。目標額は千両(約三億円)。しかしこの計画が明るみに出れば打ち首は必至。十三郎、その弟の甚内、そして彼らの計画に賛同した仲間たちは、大金を水面下で集める前代未聞の頭脳戦に挑むことになるが…。

大金を藩に貸し付け、その利子で宿場町復活を目指す異色の時代劇「殿、利息でござる!」。原作は、「武士の家計簿」の作者・磯田道史による「無私の日本人」の一編「穀田屋十三郎」で、なんと実話だそうだ。藩から利子をとろうという発想もすごいが、私財をなげうって大金を集めたことがすごい。何よりも「この行いを末代まで決して人様に自慢してはならない」という“つつしみの掟”を課して、文字通り、私利私欲を捨てて町のために尽力したというから、まさに美談だ。何年もかかって見事に成功までこぎつける、その粘り強さにも頭が下がる。物語は、結果はわかっているのに、めっぽう面白い。計画の難しさに加え、賛同する人々のそれぞれの思惑や、お金の集め方、藩との攻防(?)にいたるまで、そのプロセスは飽きることがない。さらに主人公の十三郎と弟、彼らの父との過去のエピソードには思わず感動してしまう。日本人がすべてこのように無欲だとは思わないが、こんなにも純粋で、かつ知恵が働く庶民がいたのかと思うと、なかなかやるじゃないか!とこっちが誇らしくなった。これって、現代に応用できないものか?! 庶民が、国、あるいは大企業から利子をとる。いや、まずはつつしみの掟から学ばねば。いやいや、その前に私利私欲を捨てねば…。時代劇初主演の阿部サダヲをはじめ、主役をはれる実力派が贅沢に競演し、なかなかの豪華キャストだ。映画の最後には、現代の吉岡(藩)の街並みが映される。そこにはちゃんと酒店「穀田屋」が営業している!何だか無性に嬉しくなってしまった。
【70点】
(原題「殿、利息でござる!」)
(日本/中村義洋監督/阿部サダヲ、瑛太、妻夫木聡、他)
(痛快度:★★★★☆)
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まほろ駅前狂騒曲

まほろ駅前狂騒曲 ブルーレイ豪華版 [Blu-ray]
便利屋を営む多田とその相棒の行天が思わぬピンチに遭遇する「まほろ駅前」シリーズ第2弾「まほろ駅前狂騒曲」。エピソードが多く賑やかな展開だがユル〜い雰囲気はしっかり継承。

何かとガラが悪い街・まほろで便利屋を営む多田のところに、中学時代の同級生の行天が転がり込んできてから3年。子守代行、元新興宗教団体の秘密調査などのやっかいな仕事に奔走していた2人は、かねてから地元バス会社の不正を疑う老人グループが起こしたバスジャック事件に巻き込まれてしまう…。

三浦しをん原作の大ヒット小説で、劇響板、TV版と人気を博したシリーズの最新作。今回は、おなじみのやっかいな頼まれごとの他に、行天の過去や多田の恋などが描かれ、少々散文的な作りになった。冒頭、坂道をスーパーの袋を持ってダラダラ歩く男2人の、つかず離れずの距離感が示す通り、ユルいバディ・ムービーのテイストはしっかりと継承されているのが嬉しい。本作の軸は、淡い恋に不器用に踏み出す多田よりも、行天の側にある。行天が会ったこともない遺伝子上の娘はるを預かったり、元・新興宗教団体で自然食品栽培を謳う怪しげな団体の代表・小林と行天とは浅からぬ仲だったり。まほろの街のクセのある住人たちが巻き起こす緊張感のない大ピンチでも、思いがけない形で行天が中心になる。それにしても松田龍平はバディ・ムービーの相棒役にフィットする俳優だ。ひょうひょうとした“受け”の演技がいいのだろう。まほろに住む人々が抱える心の傷みやわだかまりは、いわば人生の中でくっついたり離れたりする疼きのようなもの。行天の不安定な小指にそっくりなのだ。一見不愛想なようで他人を思いやる“奥ゆかしい優しさ”がこのシリーズの最大の魅力である。
【65点】
(原題「まほろ駅前狂騒曲」)
(日本/大森立嗣監督/瑛太、松田龍平、真木よう子、他)
(思いやり度:★★★★☆)
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プレーンズ

プレーンズ MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー(クラウド対応)+MovieNEXワールド] [Blu-ray]
飛行機が主人公のアドベンチャーアニメーション「プレーンズ」。安心感のあるストーリーと個性的なキャラで楽しめる。

農薬散布機のダスティの夢は、世界一周レースに出場しチャンピオンになること。だがダスティは、飛行機なのに高所恐怖症という致命的な弱点があった。それでも、どうしても夢をあきらめられないダスティは、伝説の元海軍飛行教官として名高い戦闘機スキッパーの協力で訓練を積み、レースに出場することになる。高性能のライバルたちは最初はダスティをバカにしていたが、彼の勇気や仲間を助ける友情に打たれ、次第にダスティを助けてレースを盛り上げていく。グングン順位を上げていくダスティだったが、高所恐怖症の彼の前に、最大の難所ヒマラヤ越えが控えていた…。

車に顔をつけて魅力的なキャラクターを生み出した「カーズ」の世界観を踏襲し、今度は夢を追う飛行機を主役にすえた冒険ファンタジーが生まれた。本来なら到底世界一周レースになど参加できるはずがない農薬散布機のダスティの冒険は、アメリカ、ヨーロッパ、アジア、中米と世界中を巡る壮大なスケールのものだ。大空を雄大に飛行する映像は、気象の変化や機体の質感までリアルに再現されていて素晴らしい。だが最大の魅力は、主人公をはじめ、それぞれの国の代表機たちの、くっきりと描き分けられたキャラクターの楽しさだ。陽気なメキシコ代表、誇り高い英国代表、エキゾチックなインド代表。日本代表機サクラは、切れ長の瞳でクールな美女だ。彼らがダスティのチャレンジ精神に魅せられ、やがて仲間意識が芽生えていくプロセスは、危険を共有する出場者たちがレースで競いながらも助け合う友情を描いてテッパンの作りである。そこに悪役のスター飛行機の陰謀や、伝説の戦闘機スキッパーの秘密もからみ、ついにクライマックスへと突入する頃には、観客全員が小さなプロペラ機ダスティの応援団になっている。彼は名もない労働者の代表であり、世界中の働く機械たちの希望なのだ。個人的には、最高の技術と知識でダスティを支えるフォークリフトのドッティの控えめなキャラが気に入っている。安全な場所・農園から出て初めて知る、世界の広さと素晴らしさ。たとえそこに多くの危険が待っていても自らの恐怖心を克服し挑んでいく勇気が胸を打つ。欠点をもちながらもそれを長所に変えて夢に挑んだ飛行機のアドベンチャーは、子供はもちろん大人が見ても十分に楽しめる作品に仕上がっている。
【60点】
(原題「Planes」)
(アメリカ/クレイ・ホール監督/(声)デイン・クック、ステイシー・キーチ、ブラッド・ギャレット、他)
(勇気度:★★★★☆)
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僕達急行 A列車で行こう

僕達急行 A列車で行こう  [Blu-ray]僕達急行 A列車で行こう [Blu-ray]
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鉄道オタクの青年二人が仕事に恋に奮闘する「僕達急行 A列車で行こう」。森田芳光監督の遺作は、軽妙な良作だ。

大手企業のぞみ地所に勤める小町は、音楽を聴きながら鉄道に乗るのが趣味のマイペース男子。ひょんなことから知り合った、下町の鉄工所二代目の小玉と、同じ鉄道好きということで意気投合する。九州支社に転勤になった小町は、そこで、頑固者でクセ者の社長がいる九州の大企業の仕事をまかされる。のぞみ地所が長年苦戦していたその企業の社長とは、同じ鉄道ファンということで、ちょうど九州に遊びにきていた小玉共々大いに盛り上がり、事態は一気に好転する。だが、仕事は順調でも恋となると、そう簡単にはいかなくて…。

主人公たちは大の鉄道好きの、いわゆる“鉄男”くん。仕事より趣味に生きると聞けば、すぐに思い浮かぶのは「釣りバカ日誌」だが、本作の主人公たちは、案外仕事もまじめにやっているのだ。だがその頑張りやこだわりは、大げさではなく、汗臭さもない。このあたり、イマドキの若者の感覚を上手くつかんでいる。さらに感心するのは、同じものを愛する者同士の、礼儀正しい距離感だ。もともとオタクとは自分の愛するポイントに徹底した持論がある。例えば小町は列車の音や風景よりも揺れに身を任せて音楽を楽しむ。小玉は鉄工所の跡取りらしく、鉄道を構成する金属にこだわりをみせる。彼らの“鉄男”っぷりには違いがあるのだが、二人ともその差異を埋めようとはせず、互いの好きな部分を尊重し決して侵害しないのだ。この気遣いが何とも心地よい。小町は眼鏡会社のあずさや社長秘書のみどりから好意を寄せられているし、小玉はお見合い相手のあやめに夢中。でも彼らは、本当は女性といるよりも、同じ鉄道好きの仲間といる方がずっと楽しそうだ。それでいいのか?とツッコミたくなるが、肩の力を抜きながら好きなものに夢中になる彼らがちょっとうらやましくもある。登場人物の名前がすべて特急の名前だったり、九州ロケの美しい風景、軽やかな会話や心地よい効果音など、すべてが旅情を喚起させて楽しい。主演の松山ケンイチ、瑛太をはじめ、出演者は皆、好演。森田監督の早すぎた遺作が、さらりとした幸福感に満ちた佳作だったことが何より嬉しい。
【65点】
(原題「僕達急行 A列車で行こう」)
(日本/森田芳光監督/松山ケンイチ、瑛太、松坂慶子、他)
(ゆるやか度:★★★★☆)
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ワイルド7

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リアリティはさておき、アクションはダイナミックな犯罪劇「ワイルド7」。出演者全員が大型免許を取得したというバイク・アクションに注目だ。

逮捕も裁判もなしに、凶悪犯を処刑する権限を与えられた超法規的警察組織、通称“ワイルド7”。凶悪犯罪が後を絶たない現代日本で、警視庁内に極秘に設置されたその組織を構成するのは、いずれも重い犯罪歴の持ち主だ。彼らは罪を免除される代わりに、テロリストなどの凶悪犯を退治する任務が与えられている。ある日、いよいよ犯人を逮捕する寸前に、謎のスナイパーが現れ、犯人を射殺して走り去る。メンバーの一人、飛葉は、スナイパーを追うが見失い、追跡の際に迷い込んだクラブで美しい女性ユキと知り合う。2人は急速に親しくなっていくが、ユキにはある秘密があった…。

原作は、望月三起也による人気コミック。犯罪者が犯罪者を裁くという“目には目を、悪には悪を”というスタイルは、法では裁けない悪人を退治するには、権力者にとってこれほど好都合なやり方はない。だが致死率90パーセントのバイオテロを企て、現金2億ドルを要求する凶悪事件の裏側に潜んでいた陰謀は、警視庁や国家そのものを揺るがすものだ。監視社会の盲点と弱点によって仕組まれたその犯罪は、ワイルド7が極秘であることと激しく矛盾するし、7人が一枚岩で闘う心理描写も極めて浅い。飛葉以外のキャラクターの背景も、ごくあっさりと触れるのみだ。ドラマ性という点では欠点だらけだが、その分、本作は、バイク好きにはたまらないアクションであふれている。映画冒頭、大型トラックの中から改造バイクに乗ったメンバーたちが次々に飛び出す登場シーンは、バイクに詳しくなくても思わず興奮するはずだ。さらに邦画では特筆するほどの大量の銃弾が飛び交うガン・アクションとしてもド迫力。とりあえず、形だけはハリウッドに近付いたこの作品、クライマックスにみせる男同士の絆も含め、まずは日本のアクション・エンタテインメントの飛躍を評価したい。
【55点】
(原題「WILD SEVEN」)
(日本/羽住英一郎監督/瑛太、椎名桔平、中井貴一、他)
(男の子向け度:★★★★☆)
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一命

一命 【2D&3D】 プレミアム・エディション [Blu-ray]一命 【2D&3D】 プレミアム・エディション [Blu-ray]
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狂言切腹を通して武家社会の矛盾とそれに立ち向かう侍の運命を描く時代劇。静かな静かな3D映画だ。

江戸時代初頭。相次ぐ大名家の御取り潰しにより、仕事を失い困窮した浪人たちの間で「狂言切腹」が流行する。裕福な大名屋敷で切腹を申し出れば、面倒を避けたい大名側から職や金銭をもらえるためだった。そんな折、名門の井伊家を訪ねた浪人・津雲半四郎が切腹を願い出る。家老の斎藤勘解由(さいとうかげゆ)は、数ヶ月前に同じように狂言切腹を申し出た若浪人・千々岩求女(ちぢいわもとめ)の無残な最期を半四郎に話し、切腹を思いとどまらせようとする。だが、話を聞き終わった半四郎は、衝撃的な事実を語り始めるのだった…。

原作は滝口康彦の「異聞浪人記」。かつて小林正樹監督が「切腹」のタイトルで映画化している小説だ。太平の世の武家社会にあっては、武士道は形骸化し、職を失った武士たちは浪人になり生きていくだけで精一杯だ。何やら、格差社会の現代を見るようでもある。狂言切腹はいわば都合のいいゆすりだが、そんなことまでしなければいけないほど、武家社会は歪んでいた。名誉や正義は、その時代背景によって意味が変わる。さらに幸福の意味さえも。武士としてのメンツだけは存在する一方で、武士の情けはどこにもない社会の矛盾が腹立たしい。まるで幽鬼のような姿の半四郎の訥々とした語りは凄味さえ帯びて、狂言切腹などが存在する世の中の不条理そのものに対して怒りが湧いてくる。終盤のクライマックスの大立ち回りは、リアリティよりも、映像美を優先した独創的なものだ。実年齢で5歳しか違わない市川海老蔵と瑛太を父子役に据えるのは、あまりに無理があるのだが、無理を押してまで、海老蔵の所作の美しさを優先させたことを見れば、様式美へのこだわりが理解できる。すべてが終わっても、武家社会は変わりはしない。家老の勘解由が飼う猫が、人間の愚かな修羅場を神の視点のようにみつめる姿が印象的だった。
【65点】
(原題「一命」)
(日本/三池崇史監督/市川海老蔵、瑛太、満島ひかり、他)
(壮絶度:★★★★☆)
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まほろ駅前多田便利軒

まほろ駅前多田便利軒 スタンダード・エディション [DVD]まほろ駅前多田便利軒 スタンダード・エディション [DVD]
心に傷を持つ同士のバディ・ムービー「まほろ駅前多田便利軒」は、力の抜け具合が絶妙だ。ゆるい空気の中にうっすらとにじむ正義感がいい。瑛太と松田龍平のコンビがいい味を出している。

東京郊外の町まほろ市の駅前で便利屋を営む多田のもとへ、ひょんなことから同級生の行天が転がり込む。まじめでしっかり者の多田と、飄々としてつかみどころがない行天は、便利屋にやって来るワケありの客の人生にかかわるうちに、互いの距離を縮めていく。二人の前には、自称コロンビア人娼婦のルルや、あぶないアルバイトに手を染める小学生の由良など、一筋縄ではいかない客たちが、次々に現れる…。

二人の男は、共にバツイチで三十路。世間一般から見ればショボくれた負け組人間に見えるだろう。確かに、ままならない人生をまったりと生きる彼らは勝ち組とは言えないが、そんな人間でも二人になれば不思議なパワーが生まれるから、やっぱり人のつながりとはあなどれないものだ。特に頑固できちょうめんな多田が一歩踏み出せずにいるとき、自分勝手に生きているように見える行天が言う、的を突いた言葉に胸を打たれる。「誰かに必要とされるということは、誰かの希望になるということでしょ」。こう言われては、多田じゃなくても見て見ぬふりなどできないではないか。多田と行天が抱えるそれぞれの心の傷が、無言のうちに共鳴しあった時、結果的にとぼけた人助けにつながっていく。それが説教くさくなく、淡々とした描写なのが心地よい。原作は三浦しをんの人気小説で、映画に描かれた以外にも魅力的なエピソードがたくさんある。もしや続編ができるかも…と、期待している。
【65点】
(原題「まほろ駅前多田便利軒」)
(日本/大森立嗣監督/瑛太、松田龍平、片岡礼子、他)
(名コンビ度:★★★★☆)
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なくもんか

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相変わらずのハイテンション、コロコロと変化する物語、人情とバカバカしさが同居する本作は、勢いだけが勝負のような作品だ。幼い頃に生き別れた兄・祐太と弟・祐介はお互いの顔も名前も知らずに育つ。東京下町・善人通り商店街でハムカツが名物の店を切り盛りする祐太は、誰に対しても親切をモットーに生きていた。お人好しの祐太、突然実家に戻った初代店主の一人娘・徹子、さらに赤の他人を兄としてお笑い芸人コンビでブレイクした弟の祐介の運命と再会劇は、意外な方向へと転がっていく。

情報量過多のクドカンの脚本を、阿部サダヲのテンションの高い演技で活写しているが、こう何から何まで詰め込まれてはかなわない。親切なようでいて祐太を利用する商店街の人々の存在や、徹子がプチ整形で美人になる設定、ハムカツのエコ化など、無くてもいいことが山ほどあって、楽しいというより疲れを誘う。家族の絆をテーマにしているのは分かるが、どれをとっても絆を感じないのだ。焦点がぼやけた家族写真のような印象を受ける。むしろ、作り話で売れまくる芸能界のからくりや、本物ではない兄と弟の関係性など、「ニセモノ」の面白さとアイロニーが際立っている。記憶に残るのは、いつも笑っているのに、根っこの部分はまったく笑っていないとのセリフ。ニセモノというキーワードで見ればこの映画も興味深い。
【40点】
(日本/水田伸生監督/阿部サダヲ、瑛太、竹内結子、他)
(ドタバタ度:★★★★☆)

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映画レビュー「ディア・ドクター」

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◆プチレビュー◆
嘘と真実が入れ替わる不思議。若手女性監督のエース・西川美和監督の深い心理描写が光る。 【85点】

 山あいの村でただ一人の医者・伊野が失踪する。彼は誰からも慕われ頼りにされていただけに村中が動揺するが、捜査が進み、伊野の生い立ちや職歴などすべてが曖昧であることが分かる。やがてある嘘が浮かび上がり…。

 主人公・伊野はニセ医者だ。ミステリアスな話なのに最初からネタばれするとは!と叱られそうだが、物語のポイントは正体を暴くことではないので、あえて書く。嘘の中にひそむ真実、あるいは真実にくるまった嘘。二つが入れ替わり混ざり合う瞬間を探ることがこの映画の極意である。

 日付改ざんや産地偽装などニセモノ騒ぎは数多いが、医師免許なしの医療行為となると大問題だ。しかし捜査を進めれば進めるほど、伊野がいかに好人物で優秀かが分かってくる。高額の報酬に見合う、本物顔負けの高度な施術だって行なっていたのだ。偶然と必然が重なって、知識を身につけた結果だが、命を救ったことは事実である。しかもそこには、都会の医療現場では望めない、心の触れ合いまで存在した。僻地医療や高齢化の問題が奇麗事ではなく横たわる村にあって、患者が本当に望む生き方と死に方に耳を傾ける。この行為に資格が必要か? にわかに主人公をかばいたくなるが、コトはそう単純ではない。

 その証拠に、伊野がニセ医者だと知ったときの周囲の反応は複雑だ。村人は、伊野を素直に肯定はしないが、否定もしない。彼らにはたとえ無免許でも医者が必要だったのだ。村人よりもやりきれない気持ちを抱いたのは、若い研修医の相馬だろう。惰性の研修で訪れた僻村で充実した日々を過ごし、医者としての自覚が芽生えた彼に「ニセ医者」という事実は、まさに踏み絵だ。裏切られた悔しさとそれを口にしない巧妙さ。彼の曖昧な表情の中には、医療とは何かという、医者が一生かけて探す命題が刻まれた。

 本物と贋物という本作の通奏低音は、キャスティングからも響いてくる。ニセ医者・伊野を演じるのは、柔和な笑顔の笑福亭鶴瓶だ。この人の本職は落語家であって俳優ではないことは、物語に絶妙にリンクする。唸るのは、そこにベテランの八千草薫をぶつけた妙技だ。彼女が演じる老婦人の病はかなり悪いのだが、住み慣れた土地で納得できる死を迎えたいと願う気持ちを、本物の医者である実の娘ではなく、ニセ医者の伊野が受け止める。老婦人は、もしかしたら何もかも知っていたのではないか。そんな思いさえよぎった。「先生、私と一緒に嘘ついてくださいよ」。劇中で、最も切なく凄味のあるセリフだ。こんな言葉を柔らかく言えるのは八千草薫が本物の女優だからに他ならない。

 物語や神話には、身につければ姿を変えることができるグッズが多く登場する。本作では白衣がその役割を果たす。主人公はそれを着て医者に変身したが、元の姿に戻れず、ついには姿を消した。「あんたたちが伊野を本物に仕立て上げたんじゃないのか」。刑事が言うこのセリフは村人に向けられたものだが、日本の医療制度の矛盾への言葉にも聞こえてしまう。人には信じたいものを信じる習癖があるという。映画はニセ医者を糾弾しない。同時に好人物として擁護もしない。単純な二分法では答えは出ないのだ。善と悪。本物と贋物。その間で揺れ続ける人間心理を、医療という切実な問題を通して問いかけ上質な深みへと導いていく。これこそ“本物の映画”のなせる技だ。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)問題提起度:★★★★★

□2009年 日本映画
□監督:西川美和
□出演:笑福亭鶴瓶、瑛太、余貴美子、他


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プロフィール
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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