家路 [Blu-ray]
東日本大震災後にバラバラになった家族が絆を取り戻すヒューマン・ドラマ「家路」。松山ケンイチのラストの表情が素晴らしい。

震災後の福島。総一は、先祖代々受け継いできた土地を失い、鬱屈した思いを抱えながら、妻や娘、血のつながらない母と共に仮設住宅で暮らしていた。そんなある日、原違いの弟で、ある理由で20年前に故郷を追われた次郎が、立ち入り禁止区域となった家に戻ってきていることを知る。家族や周囲がとまどう中、次郎は一人で誰もいない田んぼに苗を植えて育てる。故郷で生きていくという次郎の決意を知り、バラバラだった家族の心は次第に再生に向かっていく…。

東日本大震災後の福島でオール・ロケを行った本作の映像は、緑にあふれ何と美しいことだろう。だが、富岡町、川内村の美しい土地は、警戒区域に指定され、人は住めない場所なのだと思うとやりきれない。故郷を突然追われた人々の実態は実にシビアだ。ある農民は、借金を抱え、将来の見通しがたたずに自殺する。総一の妻は生活のためにデリヘルで働いている。老母は痴呆が始まり、狭い仮設住宅で総一たちに遠慮しながら暮らしている。そんな絶望感が漂う避難生活と対比するのが、無人となった家にたった一人で住み、黙々と稲を作る次郎の満足げな表情だ。かつて、追われるように出たこの故郷で生きていく決意は、痴呆が始まった母を背負って田んぼに向かうその姿から痛いほど伝わり、原発事故という理不尽な理由でふるさとを失った人々の思いを背負っているかのようだ。緑の中で土とたわむれる松山ケンイチがとても自然なたたずまいで好感が持てるのだが、ラストに見せる彼の表情はまさに名優級。次郎の顔からは、罪をかぶって追われた町に戻り、誰もいなくなったからこそ初めて愛しいと感じるふるさとと家族への思いが読み取れる。複雑で哀しく、それでいて希望に満ちた後味を残すのは、松山ケンイチのこの表情が残像として焼きつくからなのだ。
【65点】
(原題「家路」)
(日本/久保田直監督/松山ケンイチ、田中裕子、安藤サクラ、他)
(再生度:★★★★☆)
チケットぴあ

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