映画通信シネマッシモ


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

伊藤くん A to E

伊藤くんA to E (幻冬舎文庫)
アラサーの脚本家・矢崎莉桜は、5年前に手掛けたドラマが大ヒットし売れっ子になったものの、今は新作が書けず落ち目になって焦っている。自分のトークショーに参加した4人の女性たち(A〜D)の恋愛相談に乗るフリをして、次回作のネタにしようと企む莉桜の前に、彼女が講師を務めるシナリオスクールの生徒で、見た目はいいが口先ばかりの軽薄な青年・伊藤誠二郎が現れる。彼こそ4人の女性たちを振り回している伊藤だった。伊藤は、自分に関わる4人の女たちの物語の企画を提出しようとしていることが判明。そこには莉桜のネタにはない5人目の女(E)も登場していた。伊藤の狙いは一体何なのか。莉桜は次第に追い詰められていくが…。

関わる女性たちを不幸にするイケメン青年と彼に振り回される女性たちの姿を描く異色の恋愛ドラマ「伊藤くん A to E」。原作は柚木麻子の小説で、TVドラマ化もされているが、劇場版では岡田将生演じる“痛男”と木村文乃扮する“毒女”のW主演として再構築している。女たちを振り回す伊藤は、容姿端麗、自意識過剰、無神経、童貞、フリーターでナルシストというとらえどころのない異質のモンスターだ。だが物語は、どうしようもない伊藤を非難はしない。落ち目の脚本家・莉桜が、自分も含めた女たちの本音を通して、伊藤を克服すべき象徴ととらえていくプロセスが面白い。

伊藤にぞんざいに扱われる都合のいい女・A。伊藤から執拗に言い寄られながら自己防衛を貫く女・B。男を切らしたことがない美女ながら愛に飢える女・C。伊藤に処女が重いというという理由でフラれ自暴自棄になるヘビー級処女・D。それぞれキャラが立っているが、誰もがみっともなくて痛いのは共通している。そんな女たちを軽蔑しつつ脚本のネタにするため、もっと無様になるように導いていた莉桜もまた、伊藤の存在によって自らの欲望や欺瞞といった毒を吐き出していく。こうなるともはやラブストーリーではなく、現代社会を投影した人間ドラマだ。しかも身勝手な伊藤が周囲を振り回すのは、自分が傷つくのを防ぐためというのだから、これもまた現代の若者の一面を表している。物語は予想もつかない流れになっていくが、見終わってみれば、どんなに無様でも、どんなに傷ついても、懸命に前を向こうと頑張る女性応援ムービーという印象が残った。軽いトレンディードラマに見えて、なかなか噛み応えのある小品である。
【65点】
(原題「伊藤くん A to E」)
(日本/廣木隆一監督/岡田将生、木村文乃、佐々木希、他)
(痛い度:★★★★★)


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少女ファニーと運命の旅

ナチスドイツ支配下の1943年フランス。13歳のユダヤ人少女ファニーは、両親と離れ、二人の幼い妹たちと一緒に協力者による児童施設に匿われていた。密告者の通報でナチスの捜査が迫り、別の施設に移動することになるが、そこもまた危険が迫る。ファニーを含む9人の子どもたちはスイスを目指して移動するが、途中、引率者の大人とはぐれてしまう。リーダー役となったファニーは、子どもたちをまとめながら、数々の困難を、知恵と勇気で乗り越え、スイス国境を目指すのだった…。

ナチス支配下のフランスからスイスを目指したユダヤ人の子供たちの逃避行の旅を描くドラマ「少女ファニーと運命の旅」。実在した女性ファニー・ベン=アミの自伝をもとにした実話だ。ナチスの手を逃れるため、子どもたちだけでスイスを目指したサスペンス風味のドラマなのだが、極限状態の中でも、フランスの田舎の風景は牧歌的で美しく、無邪気な子どもの目を通した旅はどこか冒険旅行のような趣さえ感じられる。リーダー役となったファニーは、頑固で勝気だが、同時に心優しい女の子だ。子どもたちの中には、まだ戦争や迫害といった現実を理解できないほど幼い子がいる一方で、複雑な出自をかかえ悩む子もいる。そんな“混合チーム”を率いる小さな指揮官ファニーの、どれほどの逆境でも決してあきらめない意志の強さと健気な姿が感動的だ。ファニーは心の中の不安を封じて皆を引っ張り、旅を通して大きく成長していくことになる。

監督のローラ・ドワイヨンは、「ポネット」などの名匠ジャック・ドワイヨンの娘だそう。才能は確かに受け継がれているようだ。不安な現代に、平和の尊さを訴えるのは、いつだって希望を失わない子どもたちのまっすぐなまなざしだ。子どもたちの生命力と、危険を顧みず正義を行った大人たちの存在が、胸を打つ佳作である。
【70点】
(原題「LE VOYAGE DE FANNY/FANNY’S JOURNEY」)
(仏・ベルギー/ローラ・ドワイヨン監督/セシル・ドゥ・フランス、ステファン・ドログロート、レオニー・スーショー、他)
(健気度:★★★★★)
チケットぴあ

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