映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「ザ・マミー」「君の膵臓をたべたい」「ファウンダー」etc.

神木隆之介

3月のライオン 後編

映画『3月のライオン』オリジナルサウンドトラック
プロ棋士の桐山零が、川本家の3姉妹と出会い、家族同然に食卓を囲むようになって1年。零は、初めて感じる家庭のぬくもりに安らぎを感じる一方で、獅子王戦という厳しい戦いに挑もうとしていた。父親代わりの幸田は息子の暴力が原因でケガをし緊急入院、幸田の長女・香子はプロ棋士・後藤との不倫の恋を持て余すなど、幸田家は崩壊寸前。零の周囲の棋士たちにも、病や重圧など、さまざまな問題が降りかかる。川本家でも、3姉妹を捨てた父親が突然舞い戻り、とんでもない要求を突きつける。人を愛することを知った零は、強くなることで大切な人々を守ろうと決心するが…。

孤独な青年プロ棋士の成長と闘いを描いた、羽海野チカのベストセラー漫画を実写化した2部作の後編「3月のライオン 後編」。零が抱える孤独や闘うしかない運命と共に、零の周囲の人々の悩みや葛藤など、青春群像、人間ドラマとして充実した仕上がりとなった。後編では、はじめての安らぎを与えてくれた川本家の3姉妹を守りたいという、零の強い思いが全面に出ている。同時に、闘いしか知らなかった彼が、自分自身を見つめ直し、ライバルや先輩棋士たちと、初めて自分から深く関わっていく。羽海野チカの原作の持つ魅力はもちろんのこと、アクション映画を得意とする大友啓史監督のキレの良い演出が、青年棋士の心の成長という静かなドラマを、激しい戦いのドラマへと昇華させてくれた。零が学ぶことは、たとえ負けたとしても努力し続ける意味。そして強さの本質だ。主人公を演じる神木隆之介がラストシーンに見せる“背中の演技”には、毅然とした決意が感じられ、感動的である。ただ、川本家3姉妹だけは、考えた末に決めた“次の一手”で、困難な人生にひとつの答えを出したが、登場人物それぞれが抱える問題のほとんどが未解決。映画は、闘いの前編、愛の後編という位置付けだが、2部作後編は完結ではなく、新たな始まりへのスタートラインという印象が残る。桐山零のその後を見てみたくなった。
【70点】
(原題「3月のライオン 後編」)
(日本/大友啓史監督/神木隆之介、佐々木蔵之介、有村架純、他)
(成長度:★★★★☆)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
3月のライオン 後編|映画情報のぴあ映画生活

3月のライオン 前編

映画『3月のライオン』オリジナルサウンドトラック
中学生でプロ棋士としてデビューした17歳の桐山零は、東京の下町で一人で暮らしている。幼少期に両親を交通事故で失い、父の友人の棋士・幸田に引き取られたが、自分のせいで幸田家に亀裂が入り、家を出るしかなかったのだ。深い孤独を抱え、すがるように将棋に打ち込む零だったが、ある日、川向こうに住む川本家の三姉妹と出会う。零は、彼女たちのにぎやかな食卓に招かれ、次第の自分の居場所を見出していった。友人でライバルの棋士たち、先輩の棋士、さらに頂点に君臨する天才名人。さまざまな人生や悩みを抱える人々との交流が、零を新たな闘いの場へと導いていく…。

孤独な青年が将棋を通して成長していくヒューマン・ドラマ「3月のライオン 前編」。羽海野チカの大人気コミックを、2部作で実写化したドラマの前編だ。内向的な主人公・零には、家族も居場所もない。あるのは将棋だけだが、その将棋への情熱も、本当に将棋が好きなのか、それとも父の友人の棋士の家で生きるため、あるいは孤独を紛らわせるためだけのものなのか、零にはまだわからない。そんな零に、人生のぬくもりを教えてくれるのが、川本家の三姉妹だ。厳しい勝負の世界で共に生きる友人や先輩たちもまた、零にはかけがえのない人々である。もちろん、プロ棋士らがそれぞれ背負う人生も、簡単なものではない。成長著しい神木隆之介演じる零を中心に、さまざまなキャラクターが見事に描き分けられているのがいい。本作では、演じる俳優たちの新しい側面を見ることができるのも楽しみのひとつだ。零の才能の前にプロ棋士の夢を絶たれた幸田家の長女・香子を演じる有村架純は、今までにない闇と毒を秘めた激しい演技を見せるし、友人でライバルの二階堂役の染谷将太に至っては、最初は彼だとわからないほどのルックスの変貌ぶりだ。プロ棋士たちは、実在の棋士をモデルにしているケースも多いので、将棋ファンには特に楽しめるだろう。命がけの決闘ような闘いを繰り広げる対局シーンは将棋に詳しくなかったとしても手に汗を握るはずだ。零の壮絶な闘いは、後編へと続いていく。この前編は、一人の青年が、自分はどう生きていくべきかを模索しながら、厳しくも豊かな勝負の世界に身を投じる入り口のように思える。愛すること、守りたいものを知った主人公の戦いに注目したい。
【70点】
(原題「3月のライオン 前編」)
(日本/大友啓史監督/神木隆之介、有村架純、倉科カナ、他)
(孤独感度:★★★★☆)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
3月のライオン 前編|映画情報のぴあ映画生活

君の名は。

「君の名は。」Blu-rayコレクターズ・エディション 4K Ultra HD Blu-ray同梱5枚組 (初回生産限定)(早期購入特典:特製フィルムしおり付き)
千年に1度のすい星来訪が、1か月後に迫る日本。山深い田舎町で暮らす女子高生の三葉は、父親の町長選挙や家系の神社の古い風習にうっくつとし、都会に憧れる日々を送っていた。ある日三葉は、自分が東京に住む男の子になっている夢を見る。一方で、東京に暮らす男子高生の瀧も、行ったこともない山奥の町で自分が女子高校生になって暮らしている夢を見ていた。二人の身体が入れ替わることが繰り返される不思議な夢。だが明らかに記憶が抜け落ち、時間がねじれている。戸惑いながらも現実を受け止める二人だったが、ついに瀧は三葉に会おうと決心する…。

高校生の男女の身体が入れ替わり、やがてその不思議な体験を通して成長していくファンタジー「君の名は。」。新海誠監督といえば、その独特の世界観で国内外で高い評価を得るアニメーション作家だ。繊細で文学的なセリフ、切なくみずみずしい恋、登場人物の思いに寄り添う心象風景としての緻密な背景。これらは過去の新海作品に共通だが、本作の美しい背景、とりわけ美麗な空の描写は今まで以上に秀逸で、実写と見紛うばかりだ。「君の名は」とはすれ違いメロドラマの名作として名高いラジオドラマのタイトル。だが本作「君の名は。」のすれ違いはそう単純ではない。ストーリーは「転校生」ばりの入れ替わりのファンタジーから、やがて宇宙規模の壮大な物語へと昇華していく。この飛躍ともいえる広がりには正直驚いてしまったが、ディテールがしっかりしているので、ファンタジーながらきちんとついていけるはずだ。そこに覆いかぶさるのは、3.11を彷彿とさせる大災害に見舞われる悲劇と、それでも続く人生の機微である。三葉と瀧の物語では、かけがえのない日常と、町まるごとの存亡をかけた大規模な攻防が、ゆっくりと、しかし確実に交錯していく。千年に一度のすい星の到来は、吉兆か、それとも吉凶か。二人の恋の行方は果たして…。日本の歴史の分岐点になった3.11は、ある日突然すべてを奪いとる無慈悲な大災害の存在を記憶に刻み込んだ。だが悲しい記憶とは、それを忘れるのではなく、喜びの記憶と同じ重さで背負っていくべきなのではないだろうか。わけもなく涙が流れ、何かを失いたくないと切望し、大切な何かが心に蘇る。この映画は、今の時代を生きるものたちへの、力強くて優しいエールだ。ビジュアル、ストーリー、メッセージ。すべてにおいて日本のアニメーションの底力を見せつけた傑作である。
【85点】
(原題「君の名は。」)
(日本/新海誠監督/(声)神木隆之介、上白石萌音、長澤まさみ、他)
(切なさ度:★★★★★)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
君の名は。|映画情報のぴあ映画生活

TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ

TOO YOUNG TO DIE トゥーヤング トゥーダイ!若くして死ぬ [レンタル落ち]
男子高校生の大助はクラスメートのひろ美ちゃんに片思い中。何とかして告白しようとしていた矢先、修学旅行中の事故で他界してしまう。大助が目覚めると、そこは人々が責め苦を受け続けている地獄だった。「何で俺だけ?!このまま死ぬには若すぎる!まだキスもしたことないのにっ!!」。死んだことを受け入れられずに混乱する大助の前に現れたのは、地獄農業高校の軽音楽部顧問で、地獄専属ロックバンド・地獄図(ヘルズ)を率いる赤鬼のキラーK。彼によると、えんま様の采配によっては現世に転生できるチャンスがあるという。こうして、ひろ美ちゃんに会いたい一心で、キラーKの鬼特訓のもと、よみがえりを賭けた大助の地獄巡りが始まるのだが…。

クドカンこと宮藤官九郎による超絶地獄コメディー「TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ」。本作は、本来2016年2月に公開予定だったものが、劇中に登場するバス転落事故と酷似した悲劇が起こってしまい、被害者やご遺族に配慮という形で延期になっていたものだ。今回、ようやく晴れて公開になったことをまずは喜びたい。物語は、不本意にも地獄に落ちた男子高校生(残念かつ可愛い系)が、赤鬼のキラーK(クールかつお笑い系)の指導のもと、あの手この手で現世に転生しようと奮闘する、ハチャメチャな音楽コメディーである。クドカン映画の例に漏れず、圧倒的な情報量で突拍子もない世界観が描かれる。そもそも、死んでいるのに“成長物語”というところが微笑ましい。出演者たちは、これまた、例によって豪華すぎる俳優たち。中でも今回は、音楽界からのカメオ出演がすごい。ジゴロック(地獄ロックバトルロイヤル)の挑戦者たちは、ぜひチェックしてほしい。ベースは純愛、テイストは特濃。今までのクドカン映画と少し違うのは、地獄パートが意識的に、演劇的に描かれていることだろうか。良くも悪くもクドカン・ワールド全開のこの映画、下ネタ含有率高めのノリの良さについていけないと見るのはツラいかもしれないが、原作ものやTVドラマの映画化があふれる中、オリジナル作品であることが何よりも頼もしい。本格的な音楽活動で男性ファンも多いという長瀬智也のロック魂は、一見の価値がある。
【50点】
(原題「TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ」)
(日本/宮藤官九郎監督/長瀬智也、神木隆之介、尾野真千子、他)
(ギャグ度:★★★★☆)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ@ぴあ映画生活

太陽

太陽 Blu-ray
ウイルスにより人類の大半が死滅した21世紀初頭。人類は、太陽の光に弱く夜にしか生きられない新人類・ノクスと、ノクスに管理されながら太陽の下で貧しく暮らすキュリオと呼ばれる旧人類に分かれていた。キュリオの青年・鉄彦はノクスになりたいと切望しているが、幼馴染の結は、自分と父を捨ててノクスになった母への嫌悪から、ノクスを憎んでいた。そんな時、ノクスによる経済封鎖が10年ぶりに解かれ、長年封鎖されていたゲートが空き、門衛として新たなノクスの駐在員・森繁がやって来る。鉄彦は、再開されたノクスへの転換手術の抽選に応募し、森繁とも親しくなるが…。

劇団イキウメを率いる劇作家で演出家、前川知大の舞台劇を映画化した異色SFドラマ「太陽」。SFといっても特別なビジュアルはなく、まるで20世紀初頭の日本の山村のような貧しい暮らしをするキュリオの世界で、ほとんどの物語が展開する。描かれるのは、どんなコミュニティでも必ず生じる人間の属性による格差だ。ノクスとキュリオとの歴然とした差はもちろんのこと、キュリオの中にも異なる考え方があり、おのずと格差が生まれる。ノクスに憧れる鉄彦は転換手術にただ一人応募し当然選ばれるものと思っていたのだが、本人は望んでいないのに結の父が応募してしまうことから、物語は思わぬ方向へ。さらに本来交わるはずのない、鉄彦と森繁の間に奇妙な友情が生まれ、彼らの未来を変えていく。異なる種が共存する道がひとつのテーマだが、一方で、貧しくても人と人との距離が近いキュリオ、洗練された文明社会だが無機質に暮らすノクスの、どちらが幸福な生き方なのかとも問いかける。ただ、この映画、元が舞台というだけあって、長回しや、ほとんどアップを使用しない引きの映像で占められているので、せっかくの若手俳優の演技があまり堪能できない。神木隆之介が、絶叫演技ばかりなので、少々辟易するのも事実。演出の方向性なのだからやむを得ないのだろうが、この若手実力派俳優は、繊細な表情が素晴らしいのに…と、ちょっと残念だった。ラストはある旅立ちを描き、明確な答えは出していない。このエンディングに希望を感じることができれば、未来はよりよくなるのだろう。
【55点】
(原題「太陽」)
(日本/入江悠監督/神木隆之介、門脇麦、古川雄輝、他)
(格差度:★★★★★☆)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
太陽@ぴあ映画生活

バクマン。

バクマン。Blu-ray 豪華版
天才的な画力を持ちながら将来の展望もなく毎日を過ごしていた高校生の真城最高(サイコー)は、同級生で漫画の原作者を目指す秀才・高木秋人(シュージン)に「漫画家になろう!」と誘われる。最初はとまどっていたサイコーだが、ひそかに憧れていたクラスメイトの亜豆美保への恋心をきっかけに、プロの漫画家を目指すことに。コンビを組んだ2人は週刊少年ジャンプ連載を目標に日々奮闘するが、彼らの前に、同じく高校生で天才漫画家の新妻エイジがたちはだかる…。

「デスノート」の原作者として知られる大場つぐみと小畑健のコンビが手がけた人気コミックを実写映画化した「バクマン。」は、週刊少年ジャンプでの連載を目指す漫画家志望の高校生たちの奮闘を描く物語だ。仕事、恋、友情、ライバルと、サイコーとシュージンが、悩みながら成長していくのは直球の青春映画。同時に、漫画家という特殊な職業のハウツーとしても面白くできている。「モテキ」の大根仁監督らしく、膨大な情報をテンポ良く描くのはさすがだが、キャラクターの内面の掘り下げが少々甘いのは、ちょっと気になる。サイコーの背景は、クドカン演じる叔父さんのエピソードでしっかりと伝わってくるが、シュージンに関してはほとんど描写がないのは残念。一方で、10年に一度の天才漫画家を演じる染谷将太の抜群の存在感には唸った。ブラック企業並に過酷な漫画家の生活と、そんな中でも持ち続ける漫画への情熱、そして漫画家同士のライバル関係と友情。ジャンプのキャッチフレーズ「友情・努力・勝利」という気恥ずかしくなるような言葉が、見終われば素直に納得できてしまうから不思議だ。トキワ荘とはまた別のまんが文化がここにある。実在の漫画作品や出版社が実名で登場するのも楽しいし、劇中使用される漫画の原稿を小畑自身が描いているのはファンにはお宝だろう。
【65点】
(原題「バクマン。」)
(日本/大根仁監督/佐藤健、神木隆之介、小松菜奈、他)
(直球青春映画度:★★★★☆)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
バクマン。@ぴあ映画生活

桐島、部活やめるってよ

桐島、部活やめるってよ (本編BD+特典DVD 2枚組) [Blu-ray]桐島、部活やめるってよ (本編BD+特典DVD 2枚組) [Blu-ray]
高校生活に歴然と存在するヒエラルキーを正面から描く、勇気ある青春映画「桐島、部活やめるってよ」。若手俳優の競演に勢いを感じる。

とある高校の金曜日、校内のスター的存在でバレー部エースの桐島が部活を辞めるという噂が駆け巡る。バレー部だけでなく、学校中がこのニュースに浮き足だち、波紋が広がる。桐島の親友や彼女でさえも桐島と連絡がつかない。不穏な空気が流れる中、目立たない存在の映画部の前田は、ある行動に出るのだが…。

原作は、浅井リョウの同名ベストセラー小説。日本映画が意識的に言明を避けてきた、学校生活におけるヒエラルキー(階層制)を、はっきりと認めて描くところがこの作品の新しさだ。桐島は、スポーツ万能、成績優秀、ガールフレンドは校内ナンバーワンの美少女。女子に騒がれ、男子からは一目置かれる、学校のスターである。その桐島が部活を辞める。それが何だ?!と言いたいが、ピラミッド型の段階的組織構造の頂点に位置する桐島の変化は、同じバレー部員を動揺させるだけでなく、関係のない部活の者にまで多大な影響を及ぼすことに。ティーンエイジャーの不安定な力関係に着目するところが鋭い。同じ階層にいると思っていた者同士に亀裂が生じたり、最下層にいた生徒たちが逆襲に出たり。同じシーンを異なる視点から何度も繰り返して描き、個々にとってまったく別の意味を持つ時間と事実を突きつける。学校という閉塞的な社会は、穏やかで何気ない日常を繰りかえしているようで、実はとても危ういバランスの上に成り立っているのだ。渦中の桐島が最後まで登場しない演出が効いていて、桐島という存在はいったい何なのかとそれぞれの胸に問いかけ、同時に誰もが“桐島になり得る”と示唆する。アメリカ映画では当たり前の、学校内の格差を明言したことが起爆剤となり、物語は、屋上で繰り広げられるクライマックスのカタルシスとなって昇華される。神木隆之介、橋本愛、大後寿々花など、日本映画の将来を担う若手俳優たちがリアルな高校生に扮し、部活、友情、恋愛だけでなく、秘密や嫌悪、劣等感、孤独や不安まで見事に演じきった。高橋優の主題歌「陽はまた昇る」は“愛しき人よ、どうか君に幸あれ”と歌う。甘くて苦い青春を通過してきた私たち大人からの、精一杯のエールに聞こえた。
【80点】
(原題「桐島、部活やめるってよ」)
(日本/吉田大八監督/神木隆之介、橋本愛、大後寿々花、他)
(リアル度:★★★★☆)
チケットぴあ

にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ←ランキング参加中です!

人気ブログランキング←この記事が気に入ったらポチッとクリックお願いします(^o^)
桐島、部活やめるってよ@ぴあ映画生活

映画レビュー「借りぐらしのアリエッティ」

借りぐらしのアリエッティ [DVD]借りぐらしのアリエッティ [DVD]
◆プチレビュー◆
小人の少女アリエッティのまなざしで人間の世界を照射する物語「借りぐらしのアリエッティ」。日常のすべてが冒険に思えてくる。 【70点】

 郊外の古い屋敷の台所の床下に住み、生活に必要なものは人間から借りて暮らす小人の一家。アリエッティは、ある日、人間に姿を見られてしまう。小人の種族では人間に姿を見られたら引っ越さなくてはいけない掟があった…。

 原作はイギリスの児童文学で、メアリー・ノートンの「床下の小人たち」だ。小人という設定はなるほどファンタジーだが、そこには魔法や特別な武器はない。人間にみつからない程度に借りるものは、角砂糖やティッシュなど。それらを借りに行くことを彼らは狩りと呼ぶ。時には、床に落ちたマチ針を獲物にすることも。小人たちは、これらを大切に利用して用心深く暮らしている。過剰な消費に慣れた人間の暮らしとは対極の、慎ましく合理的なライフスタイルだ。そう思うと、借りと狩りをかけあわせた言葉に、思いがけず深い意味を見出してしまう。さらに言えば、物をほとんど所有せず、姿を見られれば移動する彼らには定住の地はないことから、仮、つまり一時的なという意味も読み取れる。小人の少女は人間の少年に出会うが、そこに永続性はないのである。

 主人公の小人の少女アリエッティは、好奇心旺盛な14歳の女の子だ。ある時、油断したために、病気の静養でこの屋敷にやってきた12歳の少年・翔に姿を見られてしまう。翔は“生”への欲求が希薄なためか、小人という不思議をすんなりと受け入れた。アリエッティに話しかけ、角砂糖をそっとプレゼントする。だが翔の過剰な善意は小人の幸せにはつながらないのだ。人間は良かれと思ってやることで、いつだって“何か”を不幸にする。だから小人たちは人間に見られないように用心しているのだが、決して人間社会にこびることはない。彼らの精神は誇り高く、生きることはサバイバルだと全身で納得しているのだ。小人たちのたくましさには敬意さえ覚える。小人のことを滅びゆく種族と考えてしまう翔に対し、アリエッティはきっぱりと言う。「私たちは滅びたりしないわ。仲間はきっといる!」。
 
 魔法がないのに不思議なその世界は、人間の日常を視点を変えてみつめることから、生みだされたものだ。そこにあるものをどれだけ違う価値観でとらえられるか。これが本作の最も味わうべきエッセンスだろう。加えて、ジブリらしい温かみのある絵柄も健在で、特にディティールの細かさに感心させられる。洗濯バサミで髪を束ね、マチ針を剣のように腰に挿すアリエッティの凛々しさ。ドールハウスの内装の繊細さ。緑あふれる庭と光。すべてが魅力的だ。美しさという点では、緑の葉にアリエッティのシルエットが映り、スクリーンのような効果を出したシーンが素晴らしい。人間と小人の世界の境界であるとともに、アリエッティと翔との間に流れる淡い恋心をも映し出すようだ。

 監督の米林宏昌は、これが初監督となるが、数々のジブリ作品に携わってきた実力者で、作画も演出も手堅い。派手なアクションシーンもなければ、幻想的な空間も登場しない。何より説教くさいセリフなどない。最小限の登場人物、身近なものを新鮮に見せるアイデア、生きるという大冒険。これだけでこんなにも映画は広がりを持つのだ。人間に依存しない野生児の小人・スピラーの存在が、アリエッティを新たな冒険の野へと導いていく。愛おしい出会いがあるからこそ、別れは悲しいだけでなく前向きな一歩につながった。日常こそが、真のアドベンチャーであり、異なる種との融合が成り立つ場なのである。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)成長物語度:★★★★☆

□2010年 日本映画 原題「借りぐらしのアリエッティ」
□監督:米林宏昌
□出演:(声)志田未来、神木隆之介、大竹しのぶ、他

  映画レビュー用BRバナー

←応援ポチ、よろ しくお願いします!

映画レビュー「サマーウォーズ」

サマーウォーズ [DVD]サマーウォーズ [DVD]
◆プチレビュー◆
田舎の大家族が世界の危機を救うミスマッチが面白い。草食系男子のがんばりに拍手喝采だ。 【80点】

 数学の天才で内気な高校生ケンジは、あこがれの先輩ナツキの誘いで、彼女の田舎の長野を訪れ、大家族の仲間入りをするハメに。だが、メールで届いた不審な数学クイズをうっかり解いたことから、世界の危機を招いてしまう…。

 核家族は当たり前、隣に住む住人の顔も知らず、隙あらば引きこもってネットの世界に埋没する日々。人間関係の温もりと煩わしさのどちらも知らない、イマドキの若者にとって、総勢30名に及ぶ旧家一族が顔を揃える“個性豊かなご親戚”という構図こそ、ミラクル・ワールドではあるまいか。この物語は、秀作アニメ「時をかける少女」のスタッフが再結集して放つ、人呼んで“大家族アクション・ムービー”。世界中をテロの脅威にさらすデジタル・モンスターに立ち向かうが、さて、このタフな戦いの勝機はどこにある?!

 狙われたのは、世界で10億人以上が利用するOZ(オズ)だ。それは、ショッピングやコミュニティだけでなく、行政までもが参加するネットサービス。この上なく便利だが、社会がネットのインフラに依存する以上、テロリズムの標的になる。ケンジのアカウントがハッキングされ、サイバーテロの犯人にされてしまっただけでなく、宇宙の小惑星探査機が地球めがけて暴走を始める気配も。元凶の人工知能を開発したのが、ナツキの親戚の一人だったことから、戦国武将の末裔の陣内(じんのうち)家を束ねる90歳の曾祖母・栄の怒声が飛ぶ。「身内がしでかした不始末は、一家でカタをつけるよ!」。いよっ、待ってました!と叫びたくなるが、ここは「武運長久お祈りします」と言うべきか。

 しかし敵もヤワではない。仮パスワードでログインしてみると、謎のアバター(ネット上の分身キャラクター)・ラブマシーンは、世界中のアカウントをかき集めて巨大し、化け物と化していた。バーチャル・ワールドでは、カラフルかつグロテスクなビジュアルに目を見張る。一方、リアル・ワールドでは、朝顔の花を眺めながらツルツルと素麺をすする図に癒される。メリハリとはこういうことかと感心している場合ではなく、事態は一刻の猶予も許さぬ状態に。

 サイバーテロは目的も実態もない強大な悪意で、打つ手はないかに見えた。だが、誇り高き老婆・栄の信念は「人の力を信じること」。驚くべき人脈で、システム回復のネットワークを短時間で作り上げるが、OZの混乱が大家族に思わぬ悲劇をもたらすことに。一族は悲しみにくれるが、こうなったら負けるわけにはいかない。親戚それぞれの裏技とケンジの数学力、ナツキの強い想いが“夏の陣”の火蓋を切り、戦いは想像を超えたクライマックスへ。「時かけ」を思い出す甘酸っぱい恋愛を隠し味にしたスリリングな展開は、興奮必至だ。

 物語のプロットは、テクノロジーの暴走という古典的なものだが、光ったのは、現実世界の大家族の騒動と仮想空間のバトルのせめぎあいを交互に描いた立体感だ。さらに、あらゆる世代の力が集結しハイテクの巨悪に立ち向かう点が「サマーウォーズ」の大きな魅力である。家族という普遍的なツールは、いざという時、最強のプログラムになる。アナログとデジタル。どちらかを選択するのではない。これは、両方の連合軍による、高らかな勝利の物語なのだ。ほら、陣内家の大事な家族、犬のハヤテも笑っている。 

(シネマッシモ評価:★5つが満点)マンパワー度:★★★★☆

□2009年 日本映画
□監督:細田守
□出演:(声)神木隆之介、桜庭ななみ、谷村美月、富司純子、他

映画レビュー用BRバナー
←応援ポチ、よろしくお願いします!

Little DJ 小さな恋の物語

Little DJ 小さな恋の物語 [DVD]Little DJ 小さな恋の物語 [DVD]
物語は切なくあたたかいものだが、映画としてはパンチ不足。70年代の函館で、入院している病院の院内放送で大好きなDJを務める少年が主人公だ。子供を使った難病ものというのがそもそもあざとい。“リトルなんとか”というありふれた題名では、記憶に残ることもないだろう。天才子役の神木隆之介君のけれん味のない演技と、成長した少女のエピソードで一気に現代にリンクし、さわやかなあと味を残すのが救い。
【55点】
(日本/永田琴監督/神木隆之介、福田麻由子、広末涼子、原田芳雄、他)
(ノスタルジック度:★★★★☆)

人気ブログランキング用バナー

←この記事が気に入ったら、ポチッとクリックしてもらえると嬉しいです\(^o^)/

シネマッシモにようこそ
◇ シネマッシモについて ◇

このブログが気に入ったら、ポチッとクリックお願いします♪
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

映画レビュー用BRバナー
インフォメーション


映画ライター渡まち子が運営するセカンド・ブログ「映画の中に猫がいる」もよろしく!【猫目線】で語る映画評で、のんびり、まったり運営中です(笑)。 猫好きの方、映画好きの方、ぜひ遊びにきてください。相互リンクも募集中!
こちらからどうぞ!
おすすめ情報
作品検索はこちら
Google
WWW を検索
このブログ内を検索
コメント(承認済)
映画レビュー(長文)索引

    
    
    
    
    
    
    
  
    

A−Z
0−9
カテゴリ
お仕事受注
映画評やコラムの執筆、講演など、映画に関する仕事を承ります。連絡はメールでお気軽にどうぞ。

 メールはこちらから↓
cinemassimo555★jcom.home.ne.jp
(★を@に変更して下さい)

執筆やラジオ出演など、メールと電話で対応可能な場合は、全国から仕事を受注していますので、まずはお問合せください。
プロフィール
プロフィール more
◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
おすすめ情報
おすすめ情報

おすすめ情報

楽天市場
おすすめ情報

Archives
相互リンクについて
相互リンクについて

  ↑ 必ずお読みください。
タグクラウド
  • ライブドアブログ