映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「パッセンジャー」「キングコング 髑髏島の巨神」etc.

蒼井優

アズミ・ハルコは行方不明

アズミ・ハルコは行方不明 (幻冬舎文庫)
地方都市に住む28歳、独身のOL・安曇春子は、実家で両親と祖母と暮らしている。祖母の介護で疲弊した家庭、セクハラ三昧の発言がまかり通る会社と、春子の毎日はストレスばかり。そんなある日、春子は突然姿を消す。20歳の愛菜は成人式の会場で、同級生・ユキオと再会。なんとなく会って遊んだり、なんとなく身体の関係を持つ。一方、街では、無差別に男たちをボコる女子高生集団が暗躍している。春子が消えた街では、行方不明のポスターをグラフィック・アートにした落書きが不気味に拡散していった…。

寂れた地方都市を舞台に、アラサー、ハタチ、女子高生の三世代の女性たちの生き方を独特の感性で活写する群像劇「アズミ・ハルコは行方不明」。原作は山内マリコの同名小説だ。独身OL春子が消える前と消えた後の時間が交錯し、男たちが異物のように物語に混入するスタイルが個性的である。劇中で重要な役割を果たしているのが、ポップアートと化した、ハルコの顔とMISSINGの文字を組み合わせた落書きの連作だ。ポップアートといえば、アンディ・ウォーホールなどに代表される都会的な大衆文化が思い浮かぶ。若者文化の代名詞で、現代では、バンクシーなどの覆面アーティストがストリート・カルチャーを引っ張っている。アズミ・ハルコの行方不明のポスターは、愛菜のボーイフレンドらによって、街に拡散し、謎めいたムーブメントになっていくのだが、ハルコのアートが拡散した街は、都会的なムードとはほど遠い、閉塞的でダサい地方都市。このギャップが面白い。本作は、ミステリーとは違う。高らかな成長物語でもなければ社会派でもない。ただ、女性が抱える鬱屈や諦念は、不思議なほど伝わってくるし、垢ぬけない場所で暮らすモヤモヤと未来への不安、それでも生きていく強さが、時系列を崩しエピソードをシャッフルしたぐちゃぐちゃな構成から、フワリと伝わってくる。それはもしかしたら、時代の空気のかけらなのだろうか。どんよりと暗い蒼井優、今までになくチャラい高畑充希と、難しい役を的確に演じた女優たちの魅力が際立っていた。
【70点】
(原題「アズミ・ハルコは行方不明」)
(日本/松居大悟監督/蒼井優、高畑充希、太賀、他)
(ポップ度:★★★★☆)
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アズミ・ハルコは行方不明|映画情報のぴあ映画生活

家族はつらいよ

家族はつらいよ 豪華版(初回限定生産) [Blu-ray]
3世代で同居をする平田家の主、周造は、妻の富子の誕生日に何か欲しいものがあるかと尋ねると、何と離婚届を突き付けられる。突然の熟年離婚の危機に一家は騒然となり、急きょ家族会議が開かれることに。何も知らない次男の庄太が恋人を紹介するため帰宅する中、会議が始まるが、それぞれの不満や本音が噴出し、さらに家族会議は思いもよらない局面を迎えてしまう…。

名匠・山田洋次監督によるコメディー「家族はつらいよ」は、「東京家族」のキャストが全員再集結し、別の家族を演じている。平田家の主の周造は、典型的な亭主関白で、自分が一家を養ってきた自負からか、妻や嫁へのいたわりなどなく、電話では「オレだ!」と言うだけ、帰宅すれば服や下着は脱ぎっぱなし、妻が自分の世話をするのが当然だと思っている。そんな彼は、50年連れ添った妻から突然離婚を突きつけられて狼狽するが、それでも反省するのではなく「俺は被害者だ!」と怒鳴る始末だ。父親似の長男はオロオロし、これまた父親似の長女がわめきちらす中、母に似て心優しい次男だけは、なぜ母が離婚したいと思うのかその原因を探ろうとする。3世代7人が同居するとなれば、それぞれ言い分や思いが違うのは当然だが、それでも家族は家族。勝手なことを言い合っているようで、根っこの部分は互いを思いやっているという設定が、いかにも山田作品らしい。家族会議の日にそうとは知らず連れてこられた次男の恋人は「こんな風にお互いに言いたいことを言い合う家族がうらやましい」とつぶやくのも頷ける。このドタバタ騒動の結末は…、それは映画を見て確かめてほしい。家族をテーマにしたのは「東京家族」と同じだが、本作は「男はつらよ」シリーズの系譜につながるコメディー作品。小津安二郎作品で大女優の原節子が演じた役と同じ“間宮のりこ”を演じる蒼井優がいわば善意の象徴だ。原は紀子、蒼井は憲子と、漢字は違うが、山田監督世代の理想の現代女性像なのかもしれない。私はむしろ、ちょっとあきれたまなざしで、それでも優しく家族をみつめる愛犬のトトに可愛さにヤラれてしまった。
【60点】
(原題「家族はつらいよ」)
(日本/山田洋次監督/橋爪功、吉行和子、西村雅彦、他)
(ドタバタ度:★★★★☆)
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花とアリス殺人事件

花とアリス殺人事件 [Blu-ray]
「花とアリス」の前日譚を長編アニメで描いた「花とアリス殺人事件」。思春期のみずみずしさをアニメで最大限に表現している。

石ノ森学園中学校に転校してきた中学3年生の有栖川徹子、通称アリスは“ユダが、4人のユダに殺された”という奇妙な噂を耳にする。さらに、アリスの隣の家は“花屋敷”と呼ばれ、そこに住む、不登校のクラスメイト・荒井花、通称ハナなら、ユダと事件のことを詳しく知っているらしいということも。アリスは花屋敷に潜入し、そこで出会ったハナと共に、殺人事件の謎を解くために動き始めるが…。

2004年に公開された岩井俊二監督の「花とアリス」の前日譚に当たる本作では、主人公たちの出会いのきっかけとなった奇妙な事件と、彼女たちの間に友情が芽生える瞬間を描いている。思春期の女の子の揺れ動く心情をとらえるのに岩井監督は、自身初となるアニメーションを用いたが、これが大成功なのだ。技法としては、実写から描き起こすロトスコープという独特の手法である。バレエ教室のシーンや、街を疾走する場面で、全体の不フォルムが伸びたような、少し不思議なテイストが好印象を残す。淡い水彩画のような色彩の背景もいい。物語は1年前に起こった不思議な事件の謎を、ハナとアリスが紐解いていくミステリーなのだが、そこは中学生の女の子、何度も失敗し、何度も脱線し、何度もピンチを迎えることに。名作「生きる」へのオマージュらしきエピソードもあったりする。この物語の一番の魅力は、アリスとハナのキャラクターが魅力的なこと。離婚や転校、いじめなどにクールに対応する転校生のアリスは、ドライなようでいて実は人情家。引きこもりのハナは、頭の回転が早い変わり者だが、本当は恋する女の子。殺人事件の真相は映画を見て確かめてほしいが、ラストに生まれる、何でもない、でも、特別な関係性の中に青春のみずみずしさが凝縮されている。エンドロールの後に、岩井俊二監督の次回作の予告編が流れるので、最後まで楽しんでほしい。
【65点】
(原題「花とアリス殺人事件」)
(日本/岩井俊二監督/(声)蒼井優、鈴木杏、勝地涼、他)
(みずみずしさ度:★★★★☆)
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春を背負って

春を背負って 豪華版(Blu-ray2枚組)
立山連峰を舞台に山で生きる人々の愛と絆が描かれる「春を背負って」。気恥ずかしいくらい真っ直ぐな映画だ。

富山県立山連峰で山小屋を営む父に反発するかのように、東京の金融業界で働いている長嶺亨。ある日、亨のもとに父の訃報が届けられる。久々に帰郷した亨は、改めて山を愛した父の思いに触れ、山小屋を継ぐ決心をする。慣れない山の生活に四苦八苦する亨だったが、世界を旅してきたゴロさんや、山小屋で料理を担当する女性・愛から助けられ、また雄大な立山の自然に触れて、次第に新たな自分の人生に踏み出していく…。

原作は笹本稜平の同名小説。監督デビュー作「劔(つるぎ)岳 点の記」同様、本作でもCGに頼らない唯一無二の映像を追及し、俳優たちにも実際に山登りや山での生活を体験させることによって“本物の顔”を作る演出を施したのは、木村大作監督だ。日本映画を支えてきた名カメラマンでもある彼らしく、圧倒的な自然を大胆かつ繊細に切り取った映像が一番の魅力である。物語は、都会で生活していた青年が、厳しくも豊かな自然と山を愛する仲間たちとの交流によって、一人前の山小屋の主人に成長していくというもの。風来坊のゴロさんが突然の病に倒れるという事件はあるものの、ストーリーは山で暮らす人々の日々を淡々と描くのみ。しかも「一歩一歩、自分の力で普通に歩けばいい」や「人は誰も荷物を背負って生きている」といった直球の言葉にあふれている。素直な思いで受け止めればいいのだろうが、ここまでストレートなセリフだと、どうにも気恥ずかしい。終盤に登場する、亨と愛のラブシーンにいたっては、手をとりあってクルクルと回転するという古めかしい演出で、思わず苦笑してしまった。そんなオールドスタイルの本作だが、何だか浄化されたかのようにすがすがしいのは、やはり山という揺るぎない大自然を中心軸に据えているから。見終われば、移り変わる山の表情と、いつも変わらない純粋な笑顔が心に残っていた。
【65点】
(原題「春を背負って」)
(日本/木村大作監督/松山ケンイチ、蒼井優、豊川悦司、他)
(オールドスタイル度:★★★★☆)
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映画レビュー「東京家族」

東京家族 豪華版(2枚組・横尾忠則ポスターアート使用特製アウターケース付)Blu-ray 【初回限定生産】東京家族 豪華版(2枚組・横尾忠則ポスターアート使用特製アウターケース付)Blu-ray 【初回限定生産】 [Blu-ray]
◆プチレビュー◆
名作「東京物語」を現代に置き換えた家族ドラマ「東京家族」。小津の愛した“紀子”が希望を象徴する。 【70点】

 瀬戸内の小島で暮らす周吉ととみこの老夫婦が、子供たちに会いに上京してくる。だが子供たちはそれぞれ忙しくて両親の面倒を見られない。寂しさをつのらせる老夫婦だが、心配の種の次男・昌次に気立てのいい恋人がいることを知り、安心もするのだった。そんな時、とみこが突然倒れてしまう…。

 映画界の宝物である「東京物語」は、名匠・小津安二郎の代表作だ。家族のゆるやかな崩壊を、冷徹なまなざしでみつめた不朽の名作である。その傑作を、現代の名匠・山田洋次監督が、小津へのオマージュを随所に散りばめながら再構築した。その時代、時代の家族を描き続ける山田監督は、本作で、これからの日本の家族はどうなってしまうのか、どこへ向かおうとしているのかという普遍的な問いを投げかける。

 上京してきた両親に優しくしたいのに、都会で忙しく暮らす子供たちと老いた両親とでは、生活のリズムが合わない。なかなか親の思うようにはいかないものだとの老夫婦の諦観と寂しさ。家族間の溝は「東京物語」と同じだ。

 異なるのは次男の描き方である。「東京物語」では次男は戦死していて、原節子演じる次男の嫁が、実の子供たちとは対象的に、細やかに老夫婦の世話を焼く。次男の不在が戦争の傷跡を照射していたのに対し、本作では父親と確執がある次男の存在によって、若者が生きづらい不安な現代を浮き彫りにした。

 この映画は当初の脚本から山田監督自身の手により改変を加えられている。東日本大震災が起こり、もはや同じ気持ちで作品は作れないと感じたそうだ。次男と恋人は、被災地のボランティアで出会ったという設定になり、震災の影響がさりげない形で盛り込まれた。個人的には、大震災という視点がはたしてこの作品に必要だったのか?!との疑問はある。それでも、悲劇の中にもある出会いは、復興への願いと重なる。山田監督は、震災後の日本は大きく変わるのだと確信しつつも、そこには必ず希望があると訴えているのだろう。

 希望の象徴として登場する次男の恋人の名前は、もちろん“紀子”。伝説の名女優・原節子が小津作品で演じた女性の名前の多くが、紀子だった。原節子とはタイプは違うが、蒼井優演じる“紀子”はとてもいい。心優しく正直な紀子に、頑固で寡黙な父親が「息子をよろしく頼みます」と頭を下げる場面は、感動的だ。この心に染み入るシーンを、小津の代名詞であるローアングルで撮る心配りが、いかにも山田監督らしい。それぞれの場所でそれぞれが精一杯生きていく。やっかいで煩わしいのに、愛しくてたまらない家族と共に。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)普遍性度:★★★★☆

□2012年 日本映画 □原題「東京家族」
□監督:山田洋次
□出演:橋爪功、妻夫木聡、蒼井優、他
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東京家族@ぴあ映画生活

ヴァンパイア

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岩井俊二監督8年ぶりの長編劇映画「ヴァンパイア」は全編英語でカナダで撮影された小品。吸血願望というアブノーマルな嗜好を、詩的世界に昇華させるテクニックに感心する。

アルツハイマーを患う母と同居する仕事熱心な生物教師のサイモンは、若い女性の血を飲みたいという衝動を抑えられずにいた。サイモンは自殺サイトで“プルート”と名乗り、死にたい少女たちに近付いて、血をくれる人を探している。そんなある日、誤解から警官と知り合い、彼の妹ローラがサイモンの静かでうっ屈した世界へ強引に入り込んでくる。とまどうサイモンだったが、さらにサイトで知り合った少女から集団自殺に巻き込まれてしまう。からくも逃げたサイモンは、同じく命拾いした少女“レディバード”と森をさまようが…。

タイトルから、昨今流行のヴァンパイア映画と勘違いしてしまいそうだが、“ヴァンパイア”は比喩にすぎない。中身は血を求める青年と自殺志願の少女たちの心の触れ合いをスケッチ風に描く異色作だ。主人公サイモンには吸血嗜好があるが殺人願望や不死への渇望はまったくない。自殺したい少女にそっと近付き、静かに美しく死ねる方法として、血を抜くことを提案する。お互いの合意の元での命のやりとりは、加害者と被害者の独特の連帯関係を感じさせるものだ。空気が読めずサイモンの生活に土足で踏み込むローラより、サイモンの望みを叶えようとする自殺志願の少女“レディバード”の方が、礼儀正しく崇高に感じられるのだから、不思議である。古典的なヴァンパイアと現代的な自殺サイトという組合せの妙に、この作品の面白さがあるが、映画そのものは、繊細な美意識と不穏な空気の映像が特徴の、岩井ワールドそのもの。低予算の典型的なインディーズ作品であることは、岩井監督自身が、監督、脚本、撮影、編集、プロデュース、音楽をひとりで手掛けていることでも伺える。この、アンモラルとリリカルが同居する“閉じた世界”を存分に描ききるには、それは最も適したスタイルに違いない。監督の言う“変態な純愛物語”は、孤独な魂がひっそりと寄り添うごとくリリカルで、うかつにも酔いしれてしまった。
【55点】
(原題「VAMPIRE」)
(日・米・カナダ/岩井俊二監督/ケヴィン・ゼガーズ、ケイシャ・キャッスル=ヒューズ、蒼井優、他)
(インディーズ度:★★★★★)
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ヴァンパイア@ぴあ映画生活

がんばっぺ フラガール!〜フクシマに生きる。彼女たちのいま〜

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復活を目指すフラガールの笑顔に感動する。ナレーションは映画「フラガール」の蒼井優。ジェイク・シマブクロの優しい音楽が心にしみた。

映画「フラガール」でおなじみの福島県いわき市の大型レジャー施設「スパリゾートハワイアンズ」は、2011年3月11日の東日本大震災で大きな被害を受けた。踊る場所を失ったフラガールたちは、避難所を含めた全国の街に元気を届けようと、46年ぶりにキャラバンを復活させようと決意する。その名も「フラガール全国きずなキャラバン」。かつて、すたれゆく炭坑の街を楽園に変えたフラガール。今、21世紀のフラガールたちはあの頃の彼女たちのように、踊りと笑顔で復興を目指そうとしていた…。

地震、津波、原発、風評被害。これは、かつてない困難に直面したフラガールたちが楽園を取り戻そうと立ち上がった姿を追う感動的なドキュメンタリーだ。描かれるのは、自ら被災しながら避難住民に施設を提供したスパリゾートハワイアンズの営業再開への歩みと、フラガールの全国キャラバンの活動。特に中心に描かれるのは、ダンシングチームのサブリーダーであり避難地域の双葉町出身の大森梨江さん。踊っている間は笑顔で元気に頑張っているが、ペット保護センターに預けた愛犬や愛猫と触れ合うとき、ふと見せる不安や切ない表情は胸に迫る。「あたりまえって何だろうと思うことがあります」との言葉は、大震災が心に残した決して消えない傷跡のようにも思えた。悲しみや不安はある。だが、それ以上に、フラガールの満面の微笑みのおかげで、フラの本質“愛情あふれる精神性”が感じられ、作品を悲壮感から救っているのが嬉しい。映画は、10月1日の、ハワイアンズ営業と一部ショー再開をクライマックスとするため、公開直前まで撮影を敢行。編集は猛スピードで行われただろうことは想像に難くない。しかし、その荒っぽさは欠点にはならず、再びステージに立ったフラガールの喜びに呼応する勢いになっている。ついに復活となった情熱的なステージには、思わず涙が溢れた。フラガールを、福島を、被災地すべてを応援すること。フラガールたちの前向きな笑顔を届けること。この映画にはその力が確かにある。
【70点】
(原題「がんばっぺ フラガール!〜フクシマに生きる。彼女たちのいま〜」)
(日本/小林正樹監督/蒼井優、スパリゾートハワイアンズ・ダンシングチーム、他)
(がんばるぞ、日本!度:★★★★★)
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洋菓子店コアンドル

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芸術的なスイーツが並ぶ人気洋菓子店を舞台に、挫折を乗り越えて再生し、未来へ進む男女を応援するストーリー。繊細で寡黙なキャラが似合う蒼井優が、空気の読めない無骨な田舎娘を演じているのが珍しい。鹿児島のケーキ屋の娘・なつめは恋人を追って上京、彼が働いていたおしゃれな洋菓子店“パティスリー・コアンドル”を訪ねるが、彼はすでに店を辞めて行方知れずになっていた。行く宛のないなつめは半ば強引に店主の依子に頼みこみ、住み込みでコアンドルで働きはじめる。先輩スタッフに怒られ、失敗ばかりのなつめだったが、ある日店で、元天才パティシエで、スイーツ評論家の十村と出会う…。

本当は捨てられているのに元恋人を強引に追いかけ、彼の才能を勝手に評価するかと思えば、自分から店を辞めた彼を引き止めなかったと言って、店のオーナーやスタッフを「冷たい」と責める。さらに強引に「ここで働きたい」と言いだしてきかない。押しが強いというより、他人の都合も顧みず自分勝手な意見を通す主人公のなつめには、最初はまったく好感が持てない。だが、人生は何が幸いするか判らないもの。田舎のケーキ屋の娘だった彼女の目のうろこを落とすほど絶品のコアンドルのケーキは、もともと負けず嫌いで頑張り屋のなつめのチャレンジ精神に火を付けた。物語はいつしか、すれ違った男女のラブストーリーではなく、ケーキ作りの修行に励む若い女性の奮闘記になっていく。そこに、ある事情から“人を幸せにするケーキ”が作れなくなった元天才パティシエの再生物語や、経営危機に追い込まれたコアンドルの起死回生の勝負がからむ。美味しい食べ物、とりわけスイーツが人を幸せな気持ちにするというのは本当だと思う。だが、この物語の欠点は、主人公のなつめにケーキ作りの才能があるのかどうかがはっきりしないことと、なつめと、コアンドルの店主や十村との絆を描ききれてない点だ。お菓子作りの基礎があるとはいえ、お客を魅了するケーキを作りだすのは簡単ではないはず。頑張っている姿だけでなく、彼女に強いインスピレーションを与えるエピソードが欲しかった。それでも、たとえ未知数のものに対しても夢を託せるのが、若者の特権。がむしゃらに頑張りコアンドルを守ろうとするなつめの奮闘に、閉ざされた十村の心が次第に未来に向かうのは、説得力がある。コアンドルとは“街角”の意味。小さな街かどで出会った美味しいケーキが、元気をくれる。思いがけない展開から自分の居場所を見つけたヒロインが、一ヶ所に留まらず、さらに羽ばたいていくラストがさわやかだった。
【50点】
(原題「洋菓子店コアンドル」)
(日本/深川栄洋監督/江口洋介、蒼井優、戸田恵子、他)
(ビター・アンド・スイート度:★★★☆☆)


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洋菓子店コアンドル(DVD) ◆20%OFF!

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価格:3,948円(税込、送料別)

雷桜

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日本版「ロミオとジュリエット」との触れ込みなので悲劇に終わるのは予想はつくが、美しすぎる山の自然のためか、むしろおとぎ話のような浮遊感が漂っている。徳川将軍・秀斉の十七男、清水斉道は、心の病の静養のため家臣・瀬田助次郎の故郷・瀬田村に向かう。そこには雷に打たれた銀杏に桜が芽をつけた不思議な巨木“雷桜”があった。一人で山に分け入った斉道は、そこで自由奔放な山の娘・雷と運命的に出会い、恋に落ちる。雷は実は幼い頃行方不明になった助次郎の妹で、庄屋の娘・遊だった。山から里へ降りることになり息苦しさを感じる遊と将軍家の血をひく斉道。共に生きる場所を模索する2人だったが、それは所詮許されない恋だった…。

身分違いの恋という手垢のついた素材を、岡田将生と蒼井優の若手実力派コンビに演じさせたことで、野原に一陣の涼やかな風が吹くような透明感が生まれた。特に雷/遊を演じる蒼井優の山娘が非常に魅力がある。天狗のコスプレで暴れる様子といい、生家に戻って美しい着物を着ても寂しげな表情といい、インパクトのある男言葉といい、もしやこの娘は、雷桜と呼ばれる樹の精なのではないかとさえ思ったほどだ。だが物語は表層的で、雷/遊を連れ去る原因となる藩同士の諍いも、斉道のトラウマとなっている亡き母の血を受け継ぐ心の病についても、まるで深みがない。物語はあくまでも純愛ラブストーリーで、しかも、時代的の形をしているが、ムードは現代劇そのものだ。何しろ斉道のセリフが軽い。徳川将軍家の殿さまがこの時代に「愛している」という言葉を言う陳腐さに脚本家は気付いていないのか。最後の経年のエピソードもありがちなものだ。ただ、遊が一世一代の賭けに出る場面の「おまえをかどわかしに来た!」というセリフはいい。子供の頃に自分を連れ去った育ての親への愛と、叶わぬ恋に挑戦するには、今いる場所から消えるしかないという悲しい決意が込められている。斉道の飼う鷹が最初と最後に効果的に登場し、鷹の視点で下界を見下ろすショットがあるのが、ひらめきを感じさせ印象に残った。居場所がないと感じる男女の出会いと別れを俯瞰で見下ろし、運命に抗って愛を貫こうとする二人を見守っているかのようだった。
【55点】
(原題「雷桜」)
(日本/廣木隆一監督/岡田将生、蒼井優、小出恵介、他)
(現代風度:★★★★☆)

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REDLINE

REDLINE スタンダード・エディション 【DVD】REDLINE スタンダード・エディション 【DVD】
体感型の興奮が味わえるとのキャッチコピーが納得のアニメーションの力作。10万枚を超える作画枚数で作り上げた力技に脱帽する。エアカーが爆走する遠い未来。宇宙最速の座を賭けて5年に一度の祭典“REDLINE”が開催される。ドでかいリーゼントがトレードマークのJPは極限までスピードを追い求める天才レーサーだが、実は、初恋のソノシーをふり向かせるために走っている純情男だ。JP、ソノシー、さらに個性豊かなライバルたちが参戦するカーレースREDLINEは、ルール無用のデッドヒート、もちろん武器搭載は当たり前である。そんな中、JPの親友で天才メカニックのフリスビーの裏切りが発覚する…。

日本を代表するアニメ制作会社マッドハウスが、CGでは獲得できない表現を求めて、人物、背景までも手描きにこだわった究極のアニメーションは、なるほど魅力的だ。カーレースのスピード感と、個性的なキャラクターたち、クールでポップな色彩の洪水。どれをとっても興奮させられる。作品のコンセプトは“刺激的な映像”、根底にあるのは、友情と純情だ。フリスビーの裏切りを知りながらマシーンに乗るJPは、どこまでも天才ドライバーだし、JPが思いを寄せるソノシーをはじめ、女性キャラはどこまでもセクシー。JPのチームメイトのもぐらオヤジがいい味を出せば、登場するマシーンはデフォルメの極致のフォルムだ。それ以外にも、濃すぎるキャラクターがまるで劇中に舞う紙吹雪のごとく乱舞。彼らの後ろにはそれぞれ魅力にあふれた物語があるだろうことが透けて見えるが、それは観客の脳内に留め、物語はあくまでもぶっちぎりのレースに終始する潔さが心地よい。ここには壮大な物語のラストだけがアニメとして具現化されている。極限まで遠近法を引き延ばしたヴィジュアルは常識を超えながら2Dの頂点に立つものだ。音響・音楽がこれまたノリがよく、サウンドがこの映画のもうひとつの主役と言っても過言ではない。声優陣はビッグネームだが、人間と海洋族のハーフ、ソノシー役の蒼井優が特にいい。漫画、劇画、アニメ。そのすべての要素がミックスされながら、どれでもない奇跡のような濃密な空間が、スクリーンに広がっている。こんな手作りの作品は二度とは作れないだろう。物語性を捨ててまで映像を追求したこのアニメーション、まずは必見である。
【65点】
(原題「REDLINE」)
(日本/小池健監督/(声)木村拓哉、蒼井優、浅野忠信、他)
(密度の高さ度:★★★★★)


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プロフィール
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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