映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「カンフー・ヨガ」「勝手にふるえてろ」「ダンシング・ベートーヴェン」etc.

藤沢周平

小川の辺

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正しいことをした友を斬らねばならない無念。兄妹で戦わねばならない不条理。藤沢文学らしく、登場人物たちは運命を受け入れる、ひたむきな人々だ。

海坂(うなさか)藩士・戌井朔之助は、藩から上意討ちの命を受ける。相手である佐久間は親友で、その上、妹・田鶴(たず)の夫でもあった。民を思って藩のずさんな政治を批判し、藩主の怒りを買った佐久間は、脱藩し夫婦で姿を消していた。剣の使い手である朔之助は、自分や妹と兄弟同様に育った、戌井家に仕える若党の新蔵を伴って、佐久間と田鶴を探しに旅立つ。気がかりなのは、自らも剣術の使い手である田鶴が、武士の妻として手向かってくることだった…。

劇中に「武士というものは真に難しいものだ」というセリフがある。体面主義の武家社会を真っ向から批判することができない主人公の苦しい胸の内をよく表している言葉だ。本来戦いたくない相手にやむを得ず刀を向けるという構図は、藤沢文学にしばしば登場するパターンだが、本作では戦いたくない相手が親友と妹と2人もいて、武家社会の理不尽を二重構造で描いている。そこに、ひそかに田鶴を慕う新蔵という若者を配して、ひとひねりしたのがいい。兄妹で戦うのも、友に刃を向けるのも、武士である以上は運命を受け入れるしかないが、そこに武士ではない新蔵の価値観が入り込むことによって、先が読めなくなっている。ただ、悪役の描き込みが浅いので、ストーリー全体が平坦な印象なのが惜しい。ラストに2つの“決闘”が用意されているが、その舞台が兄妹や新蔵が幼い頃に遊んだ小川に良く似た、すこぶる平和な場所であることが面白い。鋭さや緊張感よりも、どこかうららかなイメージのその場所が、主人公に武士としてできる精一杯の“決断”をさせたのではないか。組織の歯車である下級武士の悲哀を描きながらも、最後にはスッと風が通り抜けるような印象の作品だった。
【60点】
(原題「小川の辺 おがわのほとり」)
(日本/篠原哲雄監督/東山紀之、菊地凛子、勝地涼、他)
(悲哀度:★★★☆☆)
チケットぴあ



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小川の辺〈ほとり〉@ぴあ映画生活

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必死剣鳥刺し

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組織と権力の悪意に、個人の正義が利用され踏み潰されるこの物語は、藤沢文学の中でも異色の苛烈さを持つ時代劇だ。江戸時代の海坂藩。兼見三左ェ門は藩主の失政の元凶である愛妾を城中で刺し殺す。死を覚悟したその行為には意外なほど寛大な処分が下り、再び藩主の傍に仕えることに。腑に落ちない思いを抱きながらも、亡妻の姪・里尾とのおだやかな日々の中で三左ェ門は再び落ち着きを取り戻す。そんなある日、中老・津田民部から、天心独名流の剣豪の三左ェ門に、必勝技“鳥刺し”をお上のために役立てろという秘命が下る…。

藤沢周平の小説に登場する武士が刀を抜く理由は、いつもやるせないのだが、今回も陰謀によって“剣を抜かされる”。必死剣鳥刺しは、その秘剣が抜かれる時、遣い手は半ば死んでいるというセリフがあるが、その意味は最後に明かされる。クライマックスには、怒涛の斬り合いと流血描写が用意され、理不尽すぎる展開に驚くだろう。この熾烈な争いは、己を活かす場を見出せない剣豪が、もがき苦しみながらも、異様なパワーを発散させて圧倒される。生が報われないなら、自らの思いを死でまっとうするというのは、いかにも日本的な美意識だが、その“裏切り”の瞬間に、誰一人主人公を助けないのは、三左ェ門という男が極めて孤独なキャラクターだということ。映画化された藤沢文学の主人公には必ずその思いを理解する人物がいた。本作でも友はいるが、結局彼を助けることはない。その意味で、この映画は、勧善懲悪の形をとりながらも、剣に生きて死ぬ道を静かに否定しているように思う。それでも戦いに身を投じていく主人公のままならぬ人生が、人間の業となって浮かび上がってくるところに、暗い情熱がある。中老役の岸辺一徳の腹黒い表情、三左ェ門を慕う里尾役の池脇千鶴の秘めた情熱の顔つきが印象的だ。木彫りの鳥の人形を作る豊川悦司の横顔がストイックでいい。
【60点】
(原題「必死剣鳥刺し」)
(日本/平山秀幸監督/豊川悦司、池脇千鶴、吉川晃司、他)
(理不尽度:★★★★★)

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花のあと

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凛々しい女剣士の一途な思いが美しい珠玉の映画だ。江戸時代、東北の小藩・海坂藩。組頭の家の一人娘・以登は、男顔負けの腕を持つ剣術の使い手。藩でも有数の剣士で、一度だけ竹刀を交えた下級武士・江口孫四郎に恋心を抱くが、以登には決められた許婚・平助がいた。数ヵ月後、孫四郎が自ら命を絶ったと聞いた以登は、その裏の陰謀を感じ取り、平助に頼んで事の真相を探ろうとする…。

藤沢周平の同名小説は、文庫本にして40ページにも満たないささやかな掌編。だが映画は、小説の行間を映像で見事に埋め、はかなさと強さとが同居する鮮烈な作品になっている。まず年老いた以登が孫に聞かせる昔語りの回想というスタイルがいい。遠い娘時代を懐かしみながら彼女が伝えたいこととは、どんな恋、あるいは事件なのかと期待が高まる。ただ一度の剣術の試合だったが、自分を女と侮らず真剣に向き合ってくれた男性に恋心を抱いた以登は、彼が卑怯な罠に嵌ったことを知って仇討ちを決意する。武家の娘のたしなみなのか、ほとんど感情を表にださない以登だが、剣を持てばほとばしる情熱が露に。その変身ぶりが鮮やかだ。決闘の場面は、腹黒い悪党と正義の女剣士の息詰るアクションで、大いに盛り上がる。北川景子の美剣士コスプレの様相だが、これがなかなか魅力的だ。

だが映画の本当の魅力は、以登が、美形で凄腕の剣士の孫四郎に惹かれた一瞬の恋ではなく、以登の頼みを聞いて事件の真相を探り、彼女の思いを影からサポートする平助の、平穏な愛にある。風采が上がらず仕事熱心にも見えない昼行灯のような許婚が、どんなに心が広く、どんなに以登を深く思っているか、そして実はかなりデキる男だったかが、すべてが終わった後に痛いほどよく分かった。一瞬の恋、正義の剣、穏やかで深い愛。桜で始まり桜で終わる物語の余韻にずっと浸っていたくなる。出演はせず語りだけで参加する名女優・藤村志保の柔らかな声が、映画の大きな魅力のひとつであることは言うまでもない。
【70点】
(原題「花のあと」)
(日本/中西健二監督/北川景子、宮尾俊太郎、甲本雅裕、他)
(凛々しさ度:★★★★☆)

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山桜

山桜
藤沢周平の原作では珍しく、主人公は女性。不幸な結婚生活を送る女性が、誠実な武士との再会で生きる希望を取り戻す物語だ。あの短い小説をよくここまでふくらませたと感心するほど、原作はささやかな小品。田中麗奈がヒロイン野江を丁寧に演じて好感が持てる。だが、物語そのものは抑揚が少なく、野江の生き方も現代では共感は難しい。映画にするにはあまりに保守的な物語だが、登場人物のたおやかさが心に残った。
【55点】
(日本/篠原哲雄監督/田中麗奈、東山紀之、篠田三郎、他)
(保守的度:★★★★★)

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たそがれ清兵衛

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◆プチレビュー◆
これは日本映画の良心。山形県の庄内弁が柔らかで魅力的。お勧めでがんす。

明治維新目前の江戸末期。庄内、海坂藩の下級武士、井口清兵衛は、幼子と老婆を抱え、薄給を内職で補うわびしいやもめ暮らし。金もなく酒にもつきあわず、夕方になると自宅に直行する彼を、同僚は“たそがれ清兵衛”と陰で呼んでいた。そんな彼がひょんなことから剣の腕を買われ、藩内の対立分子を斬る命令を受けてしまう…。

時代劇は一種の様式(スタイル)だ。そこには必ずヒーローがいて、華麗な活躍やラストのカタルシスが用意されている。いい意味でのワンパターンの安心感もあり、それゆえ数々の名作、人気作が多い。日本映画を代表する監督である山田洋次監督が初めて手がけた本格時代劇の本作は、その意味では異色といえる作品だ。

真田広之扮する清兵衛は生活に追われる貧乏侍で、みなりも質素を通り越し薄汚く、風呂にも入らないので、上司から叱られたりしている。暮らしぶりもわびしさそのもので、内職で虫籠を作り、せんべい布団や粗末な食事も痛々しい。それでも、幼い娘を愛しみ、ちょっとボケた老母をいたわりながら平穏に暮らしている。清兵衛は基本的に出世には無関心で、家族で幸せに暮らすことが喜びのマイホーム主義者なのだ。

日頃ぱっとしない人物がここ一番という所でスペシャルな活躍を見せるのは、見ていて胸がすく思いだが、この清兵衛も実は剣の達人。幼なじみで密かに恋心を抱いている朋江(宮沢りえ)の危機を救う場面は痛快だ。しかし、この事件が災いし、藩命ではたし合いをするハメになる。もちろん清兵衛は望まない決闘だが、下級武士はいわば一介のサラリーマン、上司の命令を断れるわけがない。

江戸末期、明治維新の光明はもう目の前に迫っている。そんな時代の波を前にしても愚かな跡目争いを繰り広げる藩は、まるで会社が倒産寸前の不祥事に、社長や重役たちが右往左往する現代社会そのものに見える。城の詰所できっちり働く侍たちは、明日会社が潰れるとしても律儀に働くサラリーマンが透けて見えるよう。悲しい習性と宮仕えの不条理さは昔から変わらないし、上層部のワリを食うのはいつの時代も現場で働く者たちなのだ。

時代考証に1年以上かけ、細部にこだわり抜いただけあって、全編がリアリティ。決闘に臨む清兵衛の身支度を手伝うため走ってきた朋江の髪もちゃんと乱れている。清兵衛の髪を整える場面は濃厚なラブシーンにも似て、愛しい人を死地に送らねばならない朋江の声にならない思いが伝わるよう。武家の女性らしい凛々しさと黎明期特有の新しい価値観の持ち主の朋江は、日本女性の美を体言する存在に思えた。

特筆すべきは殺陣シーンの迫力。敵役を演じるのは前衛舞踏家の田中泯で、これが映画初出演となる。図らずも命のやりとりをする男たちの恐怖やむなしさが見事だ。宮使えの辛さを知る2人が心を通わせる会話と殺陣の緊張感の対比が、独特の“間”を生みだしている。解釈も見る人によりいろいろだろう決着の付け方もいい。

ささやかな希望、哀しみ、そして勇気。実際の侍家業はしんどいものである。リアルさが魅力のこの物語は、清兵衛の娘の遠い日の思い出として綴られている。回想形式は嫌いではないし、それはそれで効果的なのだが、観客と物語の間に距離感が生まれるのが難点。個人的には、通常のスタイルで、より生々しく侍魂のてん末を描いてほしかった気も。

藩命とはいえ命がけの決闘はおそらく主人公の人生のハイライト。しかしそれは愛するもののために闘っただけで、やがて忘れられる歴史の些細なひとコマにすぎない。ヒューマニズムが全体ににじむわりには説教臭さがないのがいい所だ。そのくせ、最後には涙なのだからかなわない。名もない下級武士の心意気をしみじみと描いて清々しい感動を生むドラマは、今後の時代劇の道しるべになりそうな予感だ。

原作は、故藤沢周平の短編「たそがれ清兵衛」「祝い人助八」「竹光始末」の3編。

□2002年 日本映画
□監督:山田洋次
□出演:真田広之、宮沢りえ、丹波哲郎、他

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
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新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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