映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
毎日のレビューは分かりやすく簡潔な寸評で、週1本の長文映画レビューでは作品をディープに掘り下げます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる公開作品 ◎
「ファミリー・ツリー」「ダーク・シャドウ」「サニー」

豊川悦司

一枚のハガキ

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1912年生まれの巨匠・新藤兼人が、戦争への怒りと笑いを同居させた渾身の一本。俳優たちが皆すばらしい。

戦争末期に中年兵として召集された啓太は、戦友の定造から、自分が死んだら確かにこの手紙を読んだと妻に伝えてくれと、一枚のハガキを託された。生き残った啓太は、終戦後に家に帰ると、妻と父が出奔したことを知り呆然とする。啓太は、ブラジルへ渡る決意をするが、日本を発つ前にハガキを届けに定造の故郷を訪ねる。そこには、夫を含め家族全員を失った友子の姿があった…。

「今日はお祭りですが、あなたがいらっしゃらないので何の風情もありません。友子」。素朴さゆえに胸を打つこのハガキの文面は、確か新藤兼人が脚本を担当した「陸に上がった軍艦」でも使われていた。再現ドラマと記録映画の混合であるその作品は新藤監督の実体験に基づいている。「一枚のハガキ」はその体験の最も濃いエッセンスを抜き出してドラマ化した作品なのだ。出征する兵士を見送る場面と、英霊となり、からっぽの木箱で戻る場面をまったく同じアングルで連続して描くなど、語り口の省略が潔く、その効果も抜群で、演出に無駄がない。戦争を徹底的に戯画化するのは新藤監督の得意とするところだ。最初はハガキを届けてくれた啓太を丁寧にもてなしていた友子役の大竹しのぶが「なぜ夫が死んで貴方が生きているのか」と問い詰め、やがて狂ったように泣き叫ぶ場面は、圧巻だ。戦争は、生き残ったものの人生さえも破壊するのだとハッキリわかる。だが、監督自ら「最後の映画」と語るこの物語では、どれほど深い悲しみや怒りの中からでも、立ち上がることができるのが人間だとも教えてくれる。思いのたけを吐き出し、すべてをリセットした後、啓太と友子は桶で水をくみ作物を育てる。名作「裸の島」を思わせる、水を運ぶシーンの力強さこそ、生を肯定するメッセージなのだ。
【70点】
(原題「一枚のハガキ」)
(日本/新藤兼人監督/豊川悦司、大竹しのぶ、六平直政、他)
(生命賛歌度:★★★★★)



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一枚のハガキ@ぴあ映画生活

必死剣鳥刺し

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組織と権力の悪意に、個人の正義が利用され踏み潰されるこの物語は、藤沢文学の中でも異色の苛烈さを持つ時代劇だ。江戸時代の海坂藩。兼見三左ェ門は藩主の失政の元凶である愛妾を城中で刺し殺す。死を覚悟したその行為には意外なほど寛大な処分が下り、再び藩主の傍に仕えることに。腑に落ちない思いを抱きながらも、亡妻の姪・里尾とのおだやかな日々の中で三左ェ門は再び落ち着きを取り戻す。そんなある日、中老・津田民部から、天心独名流の剣豪の三左ェ門に、必勝技“鳥刺し”をお上のために役立てろという秘命が下る…。

藤沢周平の小説に登場する武士が刀を抜く理由は、いつもやるせないのだが、今回も陰謀によって“剣を抜かされる”。必死剣鳥刺しは、その秘剣が抜かれる時、遣い手は半ば死んでいるというセリフがあるが、その意味は最後に明かされる。クライマックスには、怒涛の斬り合いと流血描写が用意され、理不尽すぎる展開に驚くだろう。この熾烈な争いは、己を活かす場を見出せない剣豪が、もがき苦しみながらも、異様なパワーを発散させて圧倒される。生が報われないなら、自らの思いを死でまっとうするというのは、いかにも日本的な美意識だが、その“裏切り”の瞬間に、誰一人主人公を助けないのは、三左ェ門という男が極めて孤独なキャラクターだということ。映画化された藤沢文学の主人公には必ずその思いを理解する人物がいた。本作でも友はいるが、結局彼を助けることはない。その意味で、この映画は、勧善懲悪の形をとりながらも、剣に生きて死ぬ道を静かに否定しているように思う。それでも戦いに身を投じていく主人公のままならぬ人生が、人間の業となって浮かび上がってくるところに、暗い情熱がある。中老役の岸辺一徳の腹黒い表情、三左ェ門を慕う里尾役の池脇千鶴の秘めた情熱の顔つきが印象的だ。木彫りの鳥の人形を作る豊川悦司の横顔がストイックでいい。
【60点】
(原題「必死剣鳥刺し」)
(日本/平山秀幸監督/豊川悦司、池脇千鶴、吉川晃司、他)
(理不尽度:★★★★★)

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今度は愛妻家

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平凡な中年夫婦が再出発を決意する物語は、ささやかな日常を丁寧に描く前半と後半のどんでん返しの対比が効いている。かつては売れっ子カメラマンだった北見俊介は、今では仕事もせずグウタラと暮らしている。浮気までするダメ亭主を、妻のさくらは明るく献身的に支えるが、ある日、さくらは唐突に「別れて」と切り出し、俊介を動揺させる…。

この物語はもともとは舞台劇だ。映画には沖縄旅行のパートがあるが、それ以外はほとんどが家の中で物語が進行する。ある種のファンタジーであるこの話の秘密はここでは明かせないが、夫がポツリと言うセリフだけですべてを物語る演出は上手かった。それまでの意識的にユルい流れを一気に逆流させる技ありの一言である。豊川悦司と薬師丸ひろ子の二人は、かつて「きらきらひかる」でもワケありの夫婦役で共演しているせいか、本作でもピッタリ息があっている。特に健康オタクの妻・さくらを演じる薬師丸ひろ子の、可愛らしくて少し寂しげな雰囲気が印象的だ。ただ、余計なサブストーリーのせいでモタつくのが惜しい。北見家に出入りするオカマの正体を明かす設定はやむを得ないが、カメラマン助手の恋愛パートは不必要だろう。喪失感を抱えた夫婦の再生の物語が丁寧なので、それだけで十分だ。走っていく妻の姿を写した写真に向き合い、さくらご自慢のニンジン茶の味が本当に苦いと分かったときが再スタートの瞬間だ。見終わってタイトルの意味が分かり、思わずホロリとする。
【60点】
(日本/行定勲監督/豊川悦司、薬師丸ひろ子、水川あさみ、他)
(喪失感度:★★★★☆)

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接吻

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タレントから女優へ。こう表現したいほど小池栄子の演技は鬼気迫る。凶悪事件を通じ、犯人、OL、弁護士が出会い、奇妙な関係を築いていく。殺人犯の坂口の顔に、自分と同じ孤独を感じて接近するOL京子の、静かな狂気がすさまじい。終盤の驚愕の行動の後の接吻は、冷たかった世間を、彼女なりに辱めたのだろう。一方的に“わたしたち”と同化するヒロインの姿勢は正直ウザいが、奇妙な一途さが胸を打つ。秀逸な緊迫感が漂う作品だ。
【70点】
(日本/万田邦敏監督/小池栄子、豊川悦司、仲村トオル、篠田三郎、他)
(緊張感度:★★★★☆)

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椿三十郎

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何をやっても文句が出るであろう黒澤明作品のリメークに、挑戦した気概は買う。だが、見ている間はそれなりに楽しいものの、後には何も残らない。物語は、陰謀を阻止しようとする若侍たちを、型破りな浪人が助ける痛快時代劇だ。ラストの決闘を除いて、黒澤本人の脚本をそのまま使用し、まるで“安全運転”。映画は拡大再生産型のメディアなのでリメークすることに異論はないが、名匠への敬意だけでは才人森田の名が泣く。
【50点】
(日本/森田芳光監督/織田裕二、豊川悦司、松山ケンイチ、他)
(可もなし不可もなし度:★★★★★)

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犯人に告ぐ

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トヨエツは意外にも刑事役が初らしいが、なかなかハマッている。連続児童殺人事件を、メディアを使った公開捜査で解決しようとする刑事の苦闘を描くサスペンスだ。全編を通して緊張感が持続し目が離せない。名脇役の笹野高史のさりげないサポートが効いている。劇場型捜査は、実は昔からある離れ業で、メディアに振り回される現代人への警鐘なのだ。ラストに甘さはあるが、むしろ好印象を残す。
【70点】
(日本/瀧本智行 監督/豊川悦司、笹野高史、片岡礼子、井川遥、他)
(メディア利用度:★★★★☆)

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サウスバウンド

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骨太な映画を予想したが、意外にも軽い感じに仕上がっていた。全共闘の心意気を今も引きずる破天荒な父親を息子の視点で描く物語。悪しき社会への熱い反抗は、現代にも必要だというメッセージは分かるが、南の島へ移住してからの行動は疑問も多い。影の大黒柱である母親の力をもっと強調してほしかった。トヨエツは熱演だが、地元住民や子役のセリフがあまりに棒読みで苦笑する。
【65点】
(日本/森田芳光監督/豊川悦司、天海祐希、北川景子、他)
(視点がブレてます度:★★★★★)

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愛の流刑地

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人気小説で通称“アイルケ”の映画化。愛人を殺害した男の罪とは、と問うが、これで究極の愛と言われても、全く共感できない。キャストに清潔感がないのもマイナスだ。「失楽園」の変形二番煎じのようで脱力。富司純子もこれで母娘共演は辛いだろう。
【20点】
(日本/鶴橋康夫監督/豊川悦司、寺島しのぶ、長谷川京子、他)
(共感度:★☆☆☆☆)

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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