一枚のハガキ [DVD]
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1912年生まれの巨匠・新藤兼人が、戦争への怒りと笑いを同居させた渾身の一本。俳優たちが皆すばらしい。
戦争末期に中年兵として召集された啓太は、戦友の定造から、自分が死んだら確かにこの手紙を読んだと妻に伝えてくれと、一枚のハガキを託された。生き残った啓太は、終戦後に家に帰ると、妻と父が出奔したことを知り呆然とする。啓太は、ブラジルへ渡る決意をするが、日本を発つ前にハガキを届けに定造の故郷を訪ねる。そこには、夫を含め家族全員を失った友子の姿があった…。
「今日はお祭りですが、あなたがいらっしゃらないので何の風情もありません。友子」。素朴さゆえに胸を打つこのハガキの文面は、確か新藤兼人が脚本を担当した「陸に上がった軍艦」でも使われていた。再現ドラマと記録映画の混合であるその作品は新藤監督の実体験に基づいている。「一枚のハガキ」はその体験の最も濃いエッセンスを抜き出してドラマ化した作品なのだ。出征する兵士を見送る場面と、英霊となり、からっぽの木箱で戻る場面をまったく同じアングルで連続して描くなど、語り口の省略が潔く、その効果も抜群で、演出に無駄がない。戦争を徹底的に戯画化するのは新藤監督の得意とするところだ。最初はハガキを届けてくれた啓太を丁寧にもてなしていた友子役の大竹しのぶが「なぜ夫が死んで貴方が生きているのか」と問い詰め、やがて狂ったように泣き叫ぶ場面は、圧巻だ。戦争は、生き残ったものの人生さえも破壊するのだとハッキリわかる。だが、監督自ら「最後の映画」と語るこの物語では、どれほど深い悲しみや怒りの中からでも、立ち上がることができるのが人間だとも教えてくれる。思いのたけを吐き出し、すべてをリセットした後、啓太と友子は桶で水をくみ作物を育てる。名作「裸の島」を思わせる、水を運ぶシーンの力強さこそ、生を肯定するメッセージなのだ。
【70点】
(原題「一枚のハガキ」)
(日本/新藤兼人監督/豊川悦司、大竹しのぶ、六平直政、他)
(生命賛歌度:★★★★★)
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