映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
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(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週末の公開映画から オススメの1本! ◎
チリ他合作映画「ナチュラルウーマン」

門脇麦

サニー/32

映画『サニー/32』オリジナル・サウンドトラック
冬の新潟のとある町。24歳の誕生日を迎えた中学校教師の赤理(あかり)は、突然、二人組の男に拉致・誘拐される。廃屋に彼女を監禁した柏原と小田は、赤理に「ずっと会いたかったよ、サニー」と呼び掛ける。男たちは赤理のことを、2003年にカッターナイフで同級生の首を切って殺害した当時11歳の少女だと思い込んでいた。特徴的な決めポーズから32(サニー)と名付けられた加害者少女を神聖化する柏原と小田は、赤理に好みのドレスを着せ、写真や動画をネットの掲示板にアップしていく。一方、赤理は何とか脱出しようと試みるのだが…。

所属するNGT48卒業を発表したアイドルで、きたりえこと北原里英が主演を務める「サニー/32」。未成年犯罪の殺人犯を神格化するカルト集団と、監禁された女性の物語だが、無論、アイドル映画ではない。何しろメガホンを取るのは「凶悪」などの白石和彌監督だ。共演にもピエール瀧、リリー・フランキー、門脇麦といった、クセモノの実力派が揃う。北原も極限まで追い込まれたのだろう、身体を張った演技で熱演している。

モデルとなったのは長崎県で2004年に起こった小学生による同級生殺害事件。本作では“もっともかわいい殺人犯”サニーを神格化し、それぞれの方法で偏愛する人々の暴走や狂気、その裏側の心の傷を描きつつ、衝撃的な事件の逃れられない“後遺症”を冷徹なまなざしで描いている。廃屋に加わる予想外の人々、訪れる流血と死、予測不能の展開は、人間の本性を露わにするものだ。同じように実在の事件をモチーフにしていても「凶悪」よりもより複雑な心理描写が盛り込まれているのは、登場人物の数だけサニーが存在するからだろう。これは14年目に動き出したダークで過酷な冒険物語だ。次第に正気を失う赤理を演じる北原の本気度がすごいが、登場した瞬間にストーリーを激震させる門脇麦に釘付けになる。
【65点】
(原題「サニー/32」)
(日本/白石和彌監督/北原里英、ピエール瀧、門脇麦、他)
(二転三転度:★★★★☆)


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太陽

太陽 Blu-ray
ウイルスにより人類の大半が死滅した21世紀初頭。人類は、太陽の光に弱く夜にしか生きられない新人類・ノクスと、ノクスに管理されながら太陽の下で貧しく暮らすキュリオと呼ばれる旧人類に分かれていた。キュリオの青年・鉄彦はノクスになりたいと切望しているが、幼馴染の結は、自分と父を捨ててノクスになった母への嫌悪から、ノクスを憎んでいた。そんな時、ノクスによる経済封鎖が10年ぶりに解かれ、長年封鎖されていたゲートが空き、門衛として新たなノクスの駐在員・森繁がやって来る。鉄彦は、再開されたノクスへの転換手術の抽選に応募し、森繁とも親しくなるが…。

劇団イキウメを率いる劇作家で演出家、前川知大の舞台劇を映画化した異色SFドラマ「太陽」。SFといっても特別なビジュアルはなく、まるで20世紀初頭の日本の山村のような貧しい暮らしをするキュリオの世界で、ほとんどの物語が展開する。描かれるのは、どんなコミュニティでも必ず生じる人間の属性による格差だ。ノクスとキュリオとの歴然とした差はもちろんのこと、キュリオの中にも異なる考え方があり、おのずと格差が生まれる。ノクスに憧れる鉄彦は転換手術にただ一人応募し当然選ばれるものと思っていたのだが、本人は望んでいないのに結の父が応募してしまうことから、物語は思わぬ方向へ。さらに本来交わるはずのない、鉄彦と森繁の間に奇妙な友情が生まれ、彼らの未来を変えていく。異なる種が共存する道がひとつのテーマだが、一方で、貧しくても人と人との距離が近いキュリオ、洗練された文明社会だが無機質に暮らすノクスの、どちらが幸福な生き方なのかとも問いかける。ただ、この映画、元が舞台というだけあって、長回しや、ほとんどアップを使用しない引きの映像で占められているので、せっかくの若手俳優の演技があまり堪能できない。神木隆之介が、絶叫演技ばかりなので、少々辟易するのも事実。演出の方向性なのだからやむを得ないのだろうが、この若手実力派俳優は、繊細な表情が素晴らしいのに…と、ちょっと残念だった。ラストはある旅立ちを描き、明確な答えは出していない。このエンディングに希望を感じることができれば、未来はよりよくなるのだろう。
【55点】
(原題「太陽」)
(日本/入江悠監督/神木隆之介、門脇麦、古川雄輝、他)
(格差度:★★★★★☆)
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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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