隠された日記~母たち、娘たち~ [DVD]隠された日記~母たち、娘たち~ [DVD]
3世代にわたる女性の生き方を描くヒューマン・ドラマは、自由に生きることの意味を問うものだ。カナダで働くオドレイは、久しぶりにフランスに戻り両親の住む片田舎の街を訪ねる。優しい父とは対照的に、母のマルティーヌはいつも厳しくよそよそしい。オドレイは、母とのぎこちない関係に耐えられず、仕事を理由に、亡くなった祖父が住んでいた、今は空き家の海辺の一軒家で休暇を過ごすことに。ある時、キッチンの奥に隠されていた古い日記を偶然見つける。それは50年前にマルティーヌら子供を捨てて家を出た祖母ルイーズのものだった…。

その時代その時代で悩みながら懸命に生きる女性たちを描く物語は、名作「めぐりあう時間たち」を思い出させるが、本作では、祖母の日記をひも解くことで徐々に静かなミステリーが立ち上ってくる。現代女性のオドレイは仕事もあり経済的にも自立している。だが恋愛には不器用で、現在妊娠しているが家庭を築く自信がない。母マルティーヌは医師として優秀だが娘も含め他人との関係を上手く築けない。日記の持ち主の祖母ルイーズは、1950年代に女性が社会に出て働くことが難しかった時代を悩みぬいて生きた女性だ。古い日記には、料理のレシピと共に、家庭だけに縛られる生き方や、自分を理解してくれない夫への苦悩が綴られている。50年代のフランスがこんなにも女性に対して保守的だったのかと驚くが、開放的で世界の先端を行っていたのは大都会のパリだけ、片田舎の名もない街の現状はこのようなものだったのかもしれない。ルイーズの姿を“見る”のは彼女の孫であるオドレイだけで、娘のマルティーヌは姿を見るどころかルイーズの存在そのものを否定するように冷たい態度だ。それは自分たちを捨てて家を出た母への憎しみに見えるのだが、実はそれだけではない。物語は、オドレイの出産や、母娘の和解などには曖昧な答えしか出さない。その代わりに終盤に、50年前に忽然と姿を消したルイーズの秘密を明らかにして観客を驚かせる。静かな物語に似つかわしくないとさえ思うその衝撃の事実を、おそらく母のマルティーヌはうすうす感じていたのだろう。台所の奥深くに隠された日記に書かれた「子供たちには自由に生きてほしい」との言葉と、残された大金。切なくて衝撃的な事実を受け入れた時、母からも娘からも捨てられたと思いこむことで、心を武装して生きてきたマルティーヌは、初めて涙を流すことができた。好感が持てない母親を演じるドヌーブが、さすがの貫録で上手さを見せる。謎解きを主眼にはせず、女性史を寡黙に語りながら、母と娘の小さな前進をみつめる物語として味わいたい。
【60点】
(原題「MERES ET FILLES」)
(フランス・カナダ/ジュリー・ロペス=クルヴァル監督/カトリーヌ・ドヌーヴ、マリナ・ハンズ、マリ=ジョゼ・クローズ、他)
(女性映画度:★★★★★)


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