映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「ラ・ラ・ランド」「トリプルX 再起動」「彼らが本気で編むときは、」etc.

高良健吾

きみはいい子

きみはいい子 Blu-ray
新米の小学校教師の岡野は、まじめだが優柔不断な性格。クラスの子供の問題に正面から向き合うことができない。夫の海外単身赴任で3歳の娘・あやねと2人で暮らす雅美は、幼い頃に親から虐待を受けたため、たびたび娘に暴力をふるってしまう。小学校へ続く坂道の一軒家に一人で暮らす老人・あきこは、認知症が始まったのかと不安を感じている。ひとつの街でそれぞれに暮らす彼らは、さまざまな局面で孤独や不安と向き合っているが…。

原作は中脇初枝の同名短編集。「そこのみにて光輝く」でも丁寧な人間描写が光った呉美保監督は、それぞれが持つ心の傷や不安、孤独を、誰かにそっと抱きしめられることによって氷解させていくというクレバーな手法をとった。描かれるのは、幼児虐待、認知症、いじめ、モンスターペアレントといった社会の病巣と、現代人の孤独な日常。登場人物たちは皆、人との距離の取り方が分からない不器用な人間ばかりだ。物語は、大人と子どもの区別なく、傷つきやすい人間に対してあたたかいまなざしを注いでいる。特に、我が子を虐待する自分に嫌悪感を抱く雅美が、ママ友の中でちょっと見下していた陽子から、そっと肩と背中を抱きしめられる場面には、思わず落涙した。人は誰もが愛されたいと願うが、それを簡単に口にするとたちまち俗化する。そもそも彼らが抱える問題に安易な答はない。それでも、ひと時のぬくもりで確かに人は勇気付けられる。そのハグが「あなたは一人ではない」と励ましてくれる。岡野と雅美とあきこが直接的に交錯することはないのに、群像劇として3つが結びついてみえるのは、桜の美しさを愛でるあきこを演じるベテラン・喜多道枝の柔らかい空気感が、3人が共有する時間と巡る季節を感じさせてくれるからだろうか。ラスト、決意を込めた精悍な表情を見せる高良健吾の顔がとてもいい。いろいろと問題がある現代社会だが、希望は確かにあるのだと信じられる秀作。特別な事件は起こらない小さな物語でも、こんなにも人の心を動かす作品が生まれることに感激した。
【85点】
(原題「きみはいい子」)
(日本/呉美保監督/高良健吾、尾野真千子、池脇千鶴、他)
(希望度:★★★★☆)
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きみはいい子@ぴあ映画生活

悼む人

悼む人 [Blu-ray]
見知らぬ人を悼む旅を続ける青年を通して生と死の意味を問う人間ドラマ「悼む人」。儀式のように繰り返す主人公の所作が美しい。

残忍な殺人や下世話な事件ばかりを扱う週刊誌記者の蒔野は、ある時、死者を“悼む”ために全国を放浪している青年・静人と出会って興味を持ち、静人のことを調べはじめる。また夫を殺して服役して以来、夫の亡霊につきまとわれている女性・倖世も静人と出会い、旅に同行することになるが…。

原作は、天童荒太の直木賞受賞作。縁もゆかりもない、不慮の死を遂げた死者を悼む旅は、まるで巡礼のようだ。主人公の静人がそんな旅をする目的は、本当に親しく愛した人のことさえ記憶が薄れることへの危機感と罪悪感だと、説明らしきセリフがあるが、実際のところ、彼の何を求めているのかは曖昧になっている。人の善意を信じられない蒔野や、夫の霊につきまとわれる倖世と同じように、観客は最初は訝しい思いを感じるだろう。そしてそのモヤモヤした何かを知るために、観客もまた静人の旅に同行することになる。「誰に愛され、愛したか、どんなことをして人に感謝されたか」を問いかけ、そのことを覚えておくと語るのは、非業の死より、生きた証を刻みたいということだろう。主人公を演じる高良健吾は、片膝をつき、左右の手を順に広げた後、胸の前でそっと組む。最初は大仰に思えるその仕草も、末期がんにおかされた彼の母や、たとえ一人でも子供を生もうと決めた彼の妹などのエピソードが積み重なっていくにつれ、荘厳な儀式に見えてくるから不思議だ。旅のロケ地は主に東北地方。春の桜や冬の雪の美しい自然の風景と共に、ラストの、生と死が交錯するかのような幻想的な場面のように、人の手による技術的なヴィジュアルが絶妙に混在した映像が印象的だった。
【65点】
(原題「悼む人」)
(日本/堤幸彦監督/高良健吾、石田ゆり子、井浦新、他)
(鎮魂度:★★★★☆)
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悼む人@ぴあ映画生活

武士の献立

武士の献立 Blu-ray
料理で藩に仕える包丁侍の家に嫁いだヒロインの奮闘を描く人情時代劇「武士の献立」。江戸時代って、実はグルメな時代だったのだ!

江戸時代。優れた味覚と料理の腕を見込まれた春は、加賀藩の料理方・舟木伝内に懇願されて跡継ぎの安信の嫁になる。だが夫・安信は剣術の稽古ばかりで料理は大の苦手。年上で離婚歴もある春を古ダヌキと呼び、料理方などつまらぬ仕事とボヤく安信に、堪忍袋の緒が切れた春は料理勝負を挑んで見事に勝利。安信は春の指南で次第に料理の腕を上げていく…。

時代劇としては異例のヒットとなった「武士の家計簿」に続く、資料から物語をつむいでいく“生活時代劇”の第2弾。今回は、石川県の加賀藩を舞台に、料理の腕で殿様に仕えた包丁侍とその家族の絆を描いていく。ヒロインの春は、気が強い出戻り娘。夫の安信は料理下手の落ちこぼれ包丁侍。こんな凸凹コンビの夫婦が、少しずつ絆を深めるプロセスには、本気でぶつかり合い、共に料理を工夫し、時には藩の危機にも遭遇する紆余曲折がある。物語のベースは春の内助の功だが、包丁侍としての運命を受け入れることができず仕事に不満ばかりいう安信に、春が「つまらない仕事だと思っているからつまらない料理しかできないのではないのですか」と諭す言葉は、仕事に悩みを抱える現代人には、ハッとさせられることだろう。加賀騒動と呼ばれたお家騒動が意外なほど残酷で、ユーモラスなグルメ時代劇であるこの物語の中で少々浮いているエピソードなのは気になるが、それでもその加賀騒動で失墜した藩の権威を取り戻すために催された、武家伝統の豪華なフルコース“饗応料理”を再現した場面は圧巻だ。舟木家が残した江戸時代のレシピ本「料理無言抄」には、能登の豊かな食材、それを最も活かす調理法、健康面や栄養価まで詳細に記されているそう。上戸彩と高良健吾の二人は時代ものには現代的すぎるイメージだが、脇を固めるベテラン俳優が彼らをしっかりと支えている。食は昔も今も生きる基本。日本映画伝統の家族愛を描く作品だが、料理の腕の成長が夫婦として人間としての成長に重なる展開が共感を呼ぶ。
【65点】
(原題「武士の献立」)
(日本/朝原雄三監督/上戸彩、高良健吾、西田敏行、他)
(夫婦愛度:★★★★☆)
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武士の献立@ぴあ映画生活

かぐや姫の物語

かぐや姫の物語 [Blu-ray]
竹取物語をベースにかぐや姫の生き様を描く力作アニメーション「かぐや姫の物語」。水彩画のような優しい色なのに獰猛さも併せ持つ絵の力に圧倒される。

光り輝く竹の中から生まれ、竹取の翁夫婦に大切に育てられた少女は、やがて都へ行き、美しく高貴な姫君“かぐや姫”となる。5人の貴公子や帝からの求婚をすべて退けるかぐや姫は、幼馴染の捨丸らと共に過ごした山での生き生きとした暮らしを懐かしむ。しかし、かぐや姫はやがて月に戻っていかねばならない運命だった…。

かぐや姫が都の大通りを走る。ものすごいスピードと形相で、まるで巨大な月に挑むかのように激走する。こんなかぐや姫は今まで見たことがない。かぐや姫を主人公とする、日本最古の物語「竹取物語」の筋をごく乱暴に要約すると、異世界からきたヒロインが人間と一定期間暮らし、再び異界に戻るというSFチックなストーリーということになろう。そんなファンタジーのヒロインを、高畑勲監督は、人間らしく描いて、かぐや姫に感情移入させるという離れ業をやってのけた。村の子供たちと遊ぶ無邪気でおてんばな少女は、少し成長すれば、高貴な姫君となる修行をサボるティーンのような顔も見せる。幼馴染の捨丸に対する淡い恋心や、やがては月に帰らねばならない自分の宿命に思い悩みもする。姫は天界で罪をおかし罰としてこの世に使わされたのだが、そのことはことさらに強調はされていない。むしろ、この世での暮らしを謳歌する姫の自由すぎる行動や、5人の貴公子に無理難題をふっかける傲慢さが罪に思えるほど。さらには翁の罪や捨丸の罪など、この世に存在するあらゆる人間の罪が淡い色調の中で淡々と浮き彫りになっていくのだ。だがこの作品のメッセージは「それでもこの世は生きるに値する」という、前向きなもの。その証拠に、感極まったかぐや姫は「この世はけがれてなどいない!」と断言する。羽衣をまといすべてを忘れて月世界に戻っても、かぐや姫はこの世の善も悪もすべて受け入れている。これは生きることを強く肯定する物語なのだと気付かされた。製作期間8年、総製作費50億という、日本映画としてはとてつもない規模の作品ながら、親しみやすさと哀しさ、オリジナリティと革新性をみせつける、とんでもない秀作アニメ。高畑勲監督の渾身の1本に仕上がった。
【75点】
(原題「かぐや姫の物語」)
(日本/高畑勲監督/朝倉あき、高良健吾、地井武男、他)
(生命力度:★★★★☆)
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かぐや姫の物語@ぴあ映画生活

横道世之介

横道世之介 (スペシャル版) [Blu-ray]横道世之介 (スペシャル版) [Blu-ray] [Blu-ray]
人のいい主人公と彼に関わった人々をオフビートな笑いで描く青春映画「横道世之介」。彼がいた過去と彼がいない現在がブレンドされほろ苦い記憶となっている。

1987年。長崎から上京してきたばかりの大学一年生の横道世之介は、人の頼みが断れないお人よし。嫌味のない図々しさで周囲に好かれる彼は、同級生の一平や女性に興味がない雄介、お嬢様育ちのガールフレンドの祥子らと過ごしたり、年上の女性・千春に心惹かれたりしながら大学生活を送っていた。そして時は流れて2003年。それぞれに年を重ねた彼らは、あるニュースを聞き、日常のふとした瞬間に、世之介の笑顔を思い出していた…。

原作は「悪人」「パレード」の吉田修一の小説。物語は、2003年の現在と、1987年の過去を、振り子のように行きつ戻りつしながら進んでいく。世之介という憎めない青年を誰もが思いだすが、現在のその場所に彼はいない。この映画は、甘くてほろ苦い後日談だ。キャラクターも含めた本作の長所は、いい意味で“普通”であることだろう。80年代という時代は、小道具や音楽で表現されてはいるが、バブルの華やかさはない。友情、恋愛、お気楽な大学生活のエピソードは、誰もがどれかひとつは自分の中でヒットするありふれたものばかりだ。そんな中にも小さな悩みや事件があるが、世之介は彼らしいやり方でそれらを受け入れて行く。大学を辞めた友が借金を頼めばポンと引き受け、友が同性愛を衝撃告白してもサラリと流す。詐欺まがいのパーティガールに無邪気に憧れたりもする。不器用でお調子者の世之介のすごいところは、目の前の人間の存在をありのままの状態で全肯定してしまうところなのだ。そんな彼を周囲は好きにならずにはいられない。普通の人間のちょっとユニークでズレた感覚も見所で、この作品の独特の間合いとなってオフビートな笑いを生んでいる。映画は単なる青春映画ではなく、大人になった彼らの記憶の扉を開ける仕掛けだ。世之介とやがて恋仲になる富豪の令嬢の祥子の言動が突拍子もなく浮いているのだが、16年後の彼女の落ち着きと好対照となって、ラストの感動へとつながる。160分の長尺が本当に必要か?!との疑問は残るが、見終われば、皆を笑顔にした横道世之介の存在がたまらなく愛おしかった。クセのある役が多い高良健吾が、珍しく、天然の好青年を演じていて新鮮だ。
【60点】
(原題「横道世之介」)
(日本/沖田修一監督/高良健吾、吉高由里子、池松壮亮、他)
(ほろ苦度:★★★★☆)
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横道世之介@ぴあ映画生活

キツツキと雨

キツツキと雨 ブルーレイ 豪華版 [Blu-ray]キツツキと雨 ブルーレイ 豪華版 [Blu-ray]
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きこりと新人監督との異業種交流を描くハートウォーミング・ドラマ「キツツキと雨」。時に非常識で傍若無人な映画作りの妙味が面白い。役所広司のゾンビメイクに大笑い!

山あいの山村にゾンビ映画を作る撮影隊がやってくる。ひょんなことから手伝うことになったきこりの克彦は、最初はいやいや参加していたが、やがて映画作りの面白さに目覚める。一方、プレッシャーに弱く、使えない新人監督の幸一は、現場をまとめきれず、ついに逃げ出してしまうのだが…。

60歳のきこりと25歳の新人監督。年齢も職業も価値観も違う二人が、不器用でも少しずつ距離を縮めて判り合っていく。究極の異業種交流のツールがゾンビ映画というのが絶妙だ。噛み合わないきこりの父子、自信が持てない監督業。身近な人にイラついたり、他人にあきれたり。誰もが問題を抱えているが、それでも思いがけないつながりが“新しい自分”を教えてくれる。緑豊かな山の自然にゾンビの異化効果、さらには、劇中のゾンビ映画の徹底したチープさが、半人前にもなれず孤立する映画監督・幸一そのもののようで情けなくも可笑しい。映画作りとは複数の人が力を合わせて初めて成し遂げることができるミッション。クライマックス、一瞬雨が上がる瞬間に、擬似親子のような絆で結ばれた克彦と幸一の連帯感は見事に結実する。ゆっくりでもいい、少しずつ成長していければいい。「あの木が一人前になるには100年かかるよ」。このセリフにグッときた。映画作りを描く作品は内輪受け風になりがちだが、本作は控えめな映画愛が心地よい、愛すべき人情ドラマに仕上がった。
【60点】
(原題「キツツキと雨」)
(日本/沖田修一監督/役所広司、小栗旬、高良健吾、他)
(映画愛度:★★★★☆)
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軽蔑

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破滅型の愛のドラマは、ただ愛し合っているだけでは幸せにはなれない男女の運命を描く。若手実力派の高良健吾と鈴木杏は熱演だが、作品の手触りがあまりに古臭い。

新宿・歌舞伎町にたむろし、堕落した生活を送る青年カズと、ポールダンサーの真知子は、激しく惹かれあう。問題を起こして東京から去ることになったカズは、真知子を伴って実家がある田舎で暮らし始めるが、そこで彼らを歓迎するものはいなかった。やがて真知子は東京に帰ることに。それでも自分を連れ戻しにきたカズとの愛を守ろうとする真知子だったが、カズは高利貸しの山畑に多額の借金を作っていた…。

原作は、“紀州サーガ”で知られ、破滅的な人間の愛を描き続けた芥川賞作家の中上健次の最後の長編小説だ。「男と女は五分と五分」というフレーズが物語を象徴するのだが、残念ながらこの映画ではその言葉の深みが感じられない。さらには、携帯電話という小道具がなかったら、昭和の時代の物語かと思ってしまう。つまり今の息吹が感じられないのだ。地方の名家の一人息子で甘やかされて育ち真面目に生きる道を知らないカズはなぜか周囲に愛されるが、カズの故郷で一人孤立しながらも命懸けで愛を貫こうとする真知子はここでは五分ではいられないことを理解していて、最初から「こうなることは分かっていた」。本作の高良健吾と鈴木杏は大胆なベッドシーンも含めて熱演なのだが、どこか冷めて線が細い現代の若者というムードが漂う。そんな“今”の俳優と、中上作品の世界の情念そのものが、すでにフィットしなくなっているのかもしれない。廣木作品の特徴である、疾走する場面は、破滅へ向かう物語の中、行き場のない純愛に殉じるようで美しく、記憶に残るシーンだった。
【50点】
(原題「軽蔑」)
(日本/廣木隆一監督/高良健吾、鈴木杏、大森南朋、他)
(泥沼度:★★★★☆)
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軽蔑@ぴあ映画生活

白夜行

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加害者の娘と被害者の息子。長い年月をかけて育んだ、2人だけが理解できる“愛”は、あまりにも悲しいものだ。感情を殺すことでしか生きられなかった男女の運命がやるせない。昭和55年、質屋の店主が殺害される。だが、被疑者の死亡によって事件の真相は闇の中へ。数年後、加害者の娘で、美貌の少女・雪穂は、美しく成長し、遠戚の養女となり名門学校へ通っていた。一方、被害者の息子で、孤独な青年・亮司は、家を出て社会の片隅で暮らしていた。やがて雪穂の周囲で不可解な凶悪犯罪が連続して起こるのだが…。

原作は東野圭吾のベストセラーで、同名の長編ミステリー小説だ。特徴的なのは、雪穂と亮司の2人が、現在のシークエンスでは決して一緒の画面に登場しないことである。つまり2人は顔を合わせることがなく、心理描写も極力控えている。とはいえ、彼らの心情は、小説と違い、映像化されると俳優の表情やしぐさなどでどうしてもにじみ出てしまう。それを短所ではなく長所ととらえれば、映像作品も楽しめるはずだ。ミステリーなので内容に触れることはできないが、雪穂と亮司は、互いに唯一無二の存在で、暗い秘密を共有することで堅固な絆で結ばれている。2人はある方法で連絡をとり“会話”をするのだが、そこには、犯罪だけでなく愛情もあったのだと思いたい。2人だけが入ることが許されるその罪の世界は、同時に互いが生きていることを実感できる唯一の場所なのだ。物語は19年間という長い時間を凝縮しているが、ラスト、過去の事件に執着する刑事の笹垣が、2人の知られざる関係と悲惨な過去を語り、それが謎解きになっていく。この演出が、いきなり説明調になり、TVの2時間ドラマのようで興ざめするのが惜しい。亮司は雪穂に操られた被害者なのか、それとも彼女の守護天使なのか。あるいは、雪穂の方が亮司の“作品”だったのか。さまざまな解釈を見るものに委ね、これから先も白い闇の中で生きねばならない者の哀しみを、余韻の中に漂わせた。ヒロインの堀北真希が高校生、大学生、さらに資産家に嫁いでブティック経営で成功する大人の女までを演じているのだが、顔色ひとつ変えずに、しかも自分の手を汚さずに犯罪を重ねる“悪女”を、静かな迫力で演じていて、新しい魅力を見せている。
【65点】
(原題「白夜行」)
(日本/深川栄洋監督/堀北真希、高良健吾、船越英一郎、他)
(純愛度:★★★☆☆)


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白夜行@ぴあ映画生活

おにいちゃんのハナビ

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素直な演技と思いがけない感動があり、ご当地映画としても実に良く出来ている。また難病ものか…と敬遠せず、フラットな気持ちで見てほしい。16歳の娘・華の白血病の療養のため新潟県小千谷市に越してきた須藤家。半年間の入院生活を終えて華が帰宅すると、頭が良くて優しい自慢の兄・太郎が引きこもりになっていた。心配した華は強引に兄を町に連れ出し、アルバイトを見つけ、地元の青年会に参加させようとする。成人会という名のその集まりは、花火を奉納する片貝まつりのために準備をしているところだった。華の後押しで次第に心を開いていく太郎だったが、華の病気が再発してしまう…。

難病の華は、花火を幸せの象徴と考えている。だがこの映画のタイトルは「華の花火」ではなく「おにいちゃんの花火」。ここが上手いところだ。引きこもりの太郎は、最初は人とろくに話もできずアルバイトの新聞配達も華に付き添ってもらってやっとこなしている。明るく社交的な妹のおかげで少しずつ社会になじんでいくが、そのプロセスはもどかしいほどだ。通常のお涙頂戴の難病ものなら、瀕死の華に、祭りの花火を見せて、涙のクライマックスとなるところだが、本作はそうはならない。家族の懸命な願いも届かず、華は短い生涯を終えるが、物語の感動はそのあとにやってくる。太郎は華のために花火をあげることを決意し自分だけの力でチャレンジするが、そんな太郎の頑張りを周囲はちゃんと見てくれていたのだ。新潟県小千谷市の片貝花火祭りは、400年の歴史があることや、世界一の四尺玉花火で有名だが、特筆なのはこの祭りの花火は、町民がスポンサーになり、結婚や出産、家内安全や商売繁盛などの願いを込めて奉納するという町民参加型の催しだということ。終盤、すべての人が見守る中、ついに祭りが始まると、新聞配達を優しく見守ってくれたおばあちゃんや、病院で仲良くなった妊婦の奥さん、新居に越してきたメガネの新婚夫婦など、バラバラに思えた小さなエピソードが、それぞれのメッセージで紹介され見事に収束・昇華していく。この演出が感動を呼び、素晴らしい。そこには、おにいちゃんである太郎が華のために準備した花火もある。さらに思いがけない“プレゼント”も。これにはこらえきれずに落涙した。華の行動は時に過剰だし、太郎があっさり花火作りをマスターするなど、安易な描写もある。だが、それほど気にならないのは、主役2人が、恋人ではなく兄妹という関係なので、物語がベタつかなかったからかもしれない。夜空に花開き渾身の美しさを見せる赤い花火。太郎の新しい旅立ちを祝福するようだった。
【75点】
(原題「おにいちゃんのハナビ」)
(日本/国本雅広監督/高良健吾、谷村美月、宮崎美子、他)
(感動度:★★★★☆)

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ケンタとジュンとカヨちゃんの国

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希望と絶望がブレンドされた青春映画は、“今”をブチ壊したものだけがたどりつける場所を目指すロード・ムービーだ。孤児院で育ったケンタとジュンは、解体現場でひたすら壁を壊す“はつり”という不毛な仕事をこなしながら日々をやり過ごしている。安い賃金、過酷な労働、職場の先輩の陰惨ないじめ。怒りが沸点に達した彼らは、先輩の愛車を叩き潰し、ナンパしたブスな女の子・カヨちゃんを連れて、ケンタの兄がいる北海道に向けて逃避行の旅に出る…。

現状を壊した先に何があるか知りたい。この映画のテイストはアメリカン・ニューシネマに近いが、それゆえに悲劇的な結末がデジャヴのようにまとわりつく。ケンタもジュンも社会の底辺で生きる若者だ。彼らには金も学歴も目標もない。絶望でがんじがらめで身動きできない二人は愛憎半ばの関係を保ちながら支えあっている。いつも誰かをバカと言い、「お前とは違う」「違うって言うな」と叫ぶ彼らの存在証明はすべてをぶっ壊すことしかないのだ。共に旅をすることになるカヨちゃんもまた、男と寝ることでしか自分の存在を確かめられない女の子で、世間一般の常識から見れば、どうしようもなくバカでだらしがない。このカヨちゃんを、母性の象徴のように描くのが興味深い。北に向かう旅の中で、ケンタとジュンはカヨちゃんと寄り添って眠るときだけ、安らいだ表情を見せる。そこは安心できる唯一の場所でありカヨちゃんのモノローグ「それでも愛されたい」との言葉がケンタとジュンにも重なるからなのだ。全編寒々とした映像が続くが、わずかな希望にすがって訪ねた兄の拒絶に遭った後の北国の風景は不思議なほど開放感がある。旅の終わりに一人前を向くカヨちゃんを演じる安藤サクラの表情が絶品だ。今まで映画やTVドラマでアイドルのような役ばかり演じてきた松田翔太が、圧倒的な気迫で演じていて素晴らしい。本作は、彼の役者としてのターニングポイントになりそうだ。
【65点】
(原題「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」)
(日本/大森立嗣監督/松田翔太、高良健吾、安藤サクラ、他)
(過酷度:★★★★☆)

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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