映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評


【本音で語る新作映画レビュー】
シネマッシモでは、映画レビューはネタバレなしのヒントあり。映画を見る前と見た後と、2度読んで楽しめます。
映画評サイトもこのブログで4代目になりました。すべての映画好きを歓迎します!
(点数は100点が、★は5つが満点)
シネマッシモとは、シネマ(映画)とマッシモ(イタリア語でmax,最大)とを組み合わせた造語。
どうぞゆっくり楽しんでください \(^▽^)/

◎ 今週の気になる映画 ◎
「ジャスティス・リーグ」「火花」「ギフテッド」「光」etc.

黒沢清

散歩する侵略者

映画『散歩する侵略者』オリジナル・サウンドトラック
数日間、行方不明になっていた鳴海の夫・真治が、突然帰ってきた。不仲だった真治が別人のように優しくなり、どこか以前と違う様子に、鳴海はとまどいを覚えるが、その後、真治は毎日散歩に出かけ、鳴海にガイドになってくれと、謎の提案をする。一方、町ではある一家の惨殺事件が起こり奇妙な出来事が頻発。事件を取材していたジャーナリストの桜井は、謎の若者に出会い行動を共にするうちに、ある事実に気付く…。

謎の侵略者によって日常が破壊されていく様子を描くSFスリラー「散歩する侵略者」。劇作家・前川知大による劇団イキウメの人気舞台を映画化したもので、国内外で高い評価を得る黒沢清監督の新作だ。侵略型SFには、何度もリメイクされている古典SF「ボディ・スナッチャー/恐怖の街」(1956)があり、本作はまさに黒沢清版“ボディ・スナッチャー”という趣である。50年代に多く作られた米国映画のSF特有の不穏な空気は、目に見えない何かの気配を常に感じさせ、つかみどころがない黒沢ホラーの恐怖とも共通するものだ。

エイリアンたちは侵略のプロセスとして、身体を乗っ取るだけでなく、家族、仕事、所有などの人間の行動原理のベースとなる“概念”を奪っていく。この設定が新鮮で、興味深い。概念を奪われた人間は、不思議なほど解放され、自由になるというのは、現代社会への痛烈な皮肉に思える。鳴海と真治(の形をしたエイリアン)の夫婦の物語がラブストーリーならば、ジャーナリスト桜井と謎の若者の暴走は、奇妙な友情物語と言えようか。本作はSFという大枠を借りながら、ラブストーリー、ブラック・コメディー、サスペンス、ホラー、アクションと、さまざまなジャンルをクロスオーバーしたジャンルレス映画なのだ。のどかな地方都市を散歩する侵略者は、ゆっくりと、でも確実に世界を崩壊させていく。それでもなお、人間たちは、愛する人と一緒にいたいと願っている。絶望を描くかに見えて、今までにない“前向き”なメッセージを感じさせる内容に、黒沢清監督の新たな挑戦を感じる作品だった。
【75点】
(原題「散歩する侵略者」)
(日本/黒沢清監督/松田龍平、長澤まさみ、長谷川博己、他)
(ジャンルレス度:★★★★★)
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ダゲレオタイプの女

ダゲレオタイプの女[Blu-ray]
ダゲレオタイプの写真を撮り続けている風変わりな写真家ステファンのもとで働き始めた青年ジャンは、ステファンの娘で写真のモデルをつとめるマリーに惹かれる。マリーは、写真のために長時間、拘束器具に身を委ねてポーズをとるという苦行に耐えていた。自分の人生を歩みたいマリーを自由にさせたいという思いから、ジャンは、彼女をパリ郊外の古い屋敷から連れ出そうとするが…。

特殊な撮影方法に固執する写真家とそのモデルを務める娘、娘に恋した青年がたどる悲劇的な愛を描く「ダゲレオタイプの女」。独特のホラー映画で世界的にも評価が高い黒沢清監督が、全編フランス語、仏人キャストで撮り上げた初の海外作品だ。ダゲレオタイプとは世界最古の写真撮影法で、長時間の露光を必要とするため、その間被写体を拘束する。直接銅板に焼き付けるのその写真は、世界にひとつしか残らないという。パリ郊外にある古い屋敷にこもり、そんな写真を撮り続けるステファンは孤高の芸術家だが、かつて被写体だった妻ドゥニーズが自殺したことから妻の幻影におびえている。黒沢清作品の特徴でもある、どこか寒々しい空気感と不穏な気配は本作でも健在で、それは、現実と幻影、生と死の境界線を限りなく曖昧にしてしまうのだ。永遠を焼き付けるダゲレオタイプの写真に写る古風な衣装の女性の姿はゴシック・ホラーのようだが、幻影のような存在の女性に愛を捧げる青年の恋は、むしろ、「雨月物語」にも通じる日本の怪談噺を思わせる。マリーを演じる、はかない美しさをたたえた女優コンスタンス・ルソーの姿は、最初に登場したその時から、生死を超えているかのよう。ホラーテイストだが、クラシックな美しさをたたえた恋愛物語に仕上がっている。
【70点】
(原題「THE WOMAN IN THE SILVER PLATE/LA FEMME DE LA PLAQUE ARGENTIQUE」)
(仏・ベルギー・日本/黒沢清監督/タハール・ラヒム、コンスタンス・ルソー、オリヴィエ・グルメ、他)
(ラブストーリー度:★★★★☆)
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映画レビュー「トウキョウソナタ」

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◆プチレビュー◆
平凡な家族の崩壊と再生を描いたホームドラマの秀作。「月の光」のピアノ演奏に思わず涙した。 【75点】

 佐々木家は東京に住むごく普通の4人家族。だが夫の竜平はリストラされたことを妻の恵に言い出せず、長男は米国の軍隊に入ると宣言する。次男はこっそりピアノを習っている。恵は、バラバラの家族をぼんやりと見つめるが…。

 ホラーのイメージが強い黒沢清監督が、ごく普通の家族を題材にしたホームドラマに挑んだ。黒沢作品らしい緊張感を保ちつつ、時にシニカルな笑いもまじえた家庭劇には、現代日本の混沌とした空気が投影されている。

 どこか息苦しい家族の物語を大きく包み込むのは、母親の恵の視線だ。彼女は家族の要だが、中心になって皆をまとめたりはせず、夫や子供から一定の距離を置き、クールにたたずんでいる。女としてもう若くはないが、すべてをあきらめてしまうほど年老いてもいない。中途半端な彼女の立ち位置は、幸も不幸も受けとめるペナルティーエリアのよう。不協和音を奏でる家族の中で、恵こそ最もいびつな音を秘めた旋律ではなかろうか。

 そんな彼女が事件に巻き込まれたことで、物語は突如、外側へ向かって転がりはじめる。閉塞感に満ちた前半と対比する後半の動的な展開は、まったく先が読めなかった。佐々木家に強盗が押し入り、恵は強盗の顔を見たために家から連れ出される。ショッピングモールで清掃員として働く竜平と鉢合わせるが、かたや妻に内緒での清掃作業、かたや人質状態だ。互いに驚いた夫婦がすれ違う場面は緊張感とともに微妙なユーモアが漂う。ギリギリの状態の家族を呑みこんだ池に、突然投げられた強盗という大きな石は、はたしてどんな波紋を広げるのか。ホームドラマは、にわかにサスペンスの様相を帯びていく。

 夫婦、親子、家族。それぞれの孤独を丁寧にすくい取る演出が素晴らしいが、希望を見出す手掛かりは、小学6年生の次男の健二の存在だ。父の反対を押し切り、給食費を月謝に当ててまでピアノを習う彼は、実は教師も驚くほどの才能の持ち主。もちろん健二にも悩みはあるが、それでも彼なりのこだわりと本能で、人生を模索していた。社会的弱者である子供に希望を託そうとする監督の願いは、健二がピアノで弾くドビュッシーの「月の光」に込められている。明るすぎず、暗すぎず、それでいて情感豊かなメロディーは、家族の心の傷とわだかまりを浄化し、彼らはきっとやり直せると信じさせてくれるものだ。悲しみの中から立ち上がる幸福な静寂感。そんな思いがにじむこの曲は、フェリーニの「そして船は行く」のラストでも流れていた名曲だ。

 ただし、映画は単純な希望だけを与えてはくれない。見逃せないのは、崩壊寸前の一家を救うのが、ともに偶然の産物ということだ。よく見ると、誰も家族の絆を取り戻そうとする積極的な努力はしていない。たまたま入った強盗と、降って湧いたようにプレゼントされた次男のピアノの才能。この家族を救うのは必然ではなく偶然なのだというところに、正体不明の恐怖を描き続けた黒沢清の無意識のメッセージがあるのではないか。もっとも偶然を活かせるかはその人の意思と才覚による。それらを強く象徴するのが健二が堂々と弾く「月の光」なのだ。佐々木家の物語を見ていると、絶望の中に希望を見出すことこそ人間の力強さだと教えられる。魯迅の言う“絶望が虚妄であるのは、まさに希望と同じ”という言葉が納得できる気がしてくる。

(シネマッシモ評価:★5つが満点)リアル度:★★★★☆

□2008年 日本映画
□監督:黒沢清
□出演:香川照之、小泉今日子、役所広司、他

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叫(さけび)

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主人公は女の幽霊を見る刑事。事件の犯人を追うことで忘れていた過去と向き合うが、そこには新たな恐怖が待っていた。黒沢清らしい静かな不気味さと不条理が満載。真っ赤なワンピース姿の幽霊役、葉月里緒奈のまばたきしない表情がコワイ。
【70点】
(日本/黒沢清監督/役所広司、葉月里緒奈、オダギリジョー、他)
(気付いてほしいの度:★★★★☆)

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◆ペンネーム:渡まち子
◆映画ライター、映画評論家
◆こんなお仕事やってます:
新聞、雑誌、インターネットで、映画評、映画コラム、DVD紹介などを執筆。他にも、映画コメンテーターとしてラジオ出演、大学での公開講座や企業主催の映画セミナーなど、映画に関する幅広い仕事をこなしながら活動中です。
◆青山学院文学部史学科卒業。西洋史が専攻で、卒業論文はベネチア史。学んだことを生きている間に有効に活かせるのだろうか…と、かなり心配。
◆エトセトラ:
古今東西の映画をこよなく愛す、自他ともに認めるシネフィル(映画狂)です。時に苦言を呈すこともあるその映画批評の基本は、映画へのあふれる愛情と自負しています。どんなダメ映画でも必ずひとつはあるイイところを発見するのが得意技。大のサッカー好きで、欧州リーグからJリーグまでTPOに合わせて楽しんでます。
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